こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

筆者近影 作品「静物2025-Ⅲ」と共に
さて、動物を描くと、「なぜかそれらしく見えない」「輪郭を丁寧に描いているのに歪んでしまう」、描き終わった後で「何かおかしい」と感じることはありませんか?
その多くの場合、原因は描写力ではなく「形の理解」にあります。毛並みや目の可愛さを描く前に、動物特有の立体構造を把握していないと、どれだけ丁寧に描いても、バランスは崩れてしまうのです。
この記事では、鉛筆画やデッサン初心者の人が必ず通る「形崩れの原因」を整理して、観察・構造理解・修整の順番で、改善する具体的方法を解説しましょう。
ここを直すだけで、動物は一気に「生き物らしく」見えるようになります。
それでは、早速どうぞ!
なぜ輪郭から描くと動物は崩れるのか
動物を描くときに、多くの人は「見えている外側の線」を頼りに描き始めます。
ところが、この描き方は丁寧に描いているにもかかわらず、最も形が不安定になる方法です。なぜならば、動物の鉛筆画やデッサンは線を写す作業ではなく、立体の配置を組み立てる作業だからです。

輪郭を先に決めてしまうと、内部構造の整合性が後から合わせられなくなり、結果として歪みが発生します。
本章では、形が適切に取れない原因の多くは観察不足ではなく、「描き始めの順番」にある点について解説しましょう。
この練習ルーティンの考え方は、無料メルマガで順序立てて解説しています。
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輪郭は形ではなく「立体の結果」である
目に見える動物の外形は、骨格・筋肉・身体の厚み・毛量が重なって生じた境界です。つまり輪郭とは、最初に存在するものではなく、最後に現れるものです。
たとえば、動物の口元のラインは、顎の骨・頬の筋肉と肉づき・毛の広がりが重なって決まります。これを最初に一本の線で固定してしまうと、内部構造を置く余地がなくなり、途中で辻褄が合わなくなってくることがあります。

鉛筆画やデッサン初心者の人ほど、「見えた形を正確に写す」という意識が強くなるのでしょうが、本来は「どの立体がどこにあるか」を決めた後の結果として、輪郭が決まります。輪郭は、出発点ではなく到着点です。
動物は常に傾きとねじれを持っている
動物の姿勢は、静止していても完全な左右対称にはなりません。頭の傾き、肩の高さ、背骨の湾曲、重心の偏りが必ず存在します。
輪郭を先に描くと、脳は形を整理してしまい、これらのズレを平均化してしまいます。その結果、整っているのに似ていない、生きている感じがしない、あるいは硬い印象になるのです。

崩れているのではなく、立体の偏りを消してしまっているのです。動物らしさは左右差の中にあります。
毛は実際の体積より外側に見えている
動物特有の難しさは、毛の厚みです。動物の頬、胸、尻尾の膨らみは骨格より外側に広がっています。
外側の毛を、そのまま輪郭として捉えると、内部の骨格より大きな形を描くことになります。すると、頭が小さく・体が太い・首が短い・関節位置がずれる、などの現象が起こるのです。

これは、観察不足ではなく、「見えている境界」と「実際の体積」を区別していないためです。当然ですが、動物は毛の内側に、本当の形があります。
最初の線は修整能力を奪う
輪郭線を描いた瞬間に、人の脳はそれを正しい基準として認識します。以降の比較判断が弱まり、修整が難しくなります。デッサンの初期では、動かせる・比較できる・やり直せる、状態を保つ必要があります。
一方、外形を囲うと、内部の位置関係を調整できなくなり、部分修整の積み重ねが全体の歪みを拡大させます。形が崩れる原因は、ここにあるのです。

動物の鉛筆画やデッサンで、形が安定しない最大の理由は、観察力の不足ではなく「輪郭先行」の手順です。
外側の線を最初に決めてしまうと、立体構造・姿勢の偏り・毛の厚みを無視した状態で固定され、後から整合性が取れなくなります。
動物は線の集合体ではなく、体積の集合体です。輪郭は、最後に導かれる結果であり、最初に描く基準ではありません。
比率が狂う本当の理由
動物を描いていて、「測っているのに合わない」「直しても整わない」と感じるとき、原因は観察不足ではありません。
その多くの場合、見方の順序が逆転しています。人は形を見るとき、無意識のうちに単独の大きさを決めてから、周囲を合わせようとします。

しかし、動物の鉛筆画やデッサンでは、この判断方法がそのまま比率の破綻になります。比率とは長さを決めることではなく、「関係を決めること」だからです。
本章では、ひとつの部分を確定させるほど、他の位置は拘束され、修整が局所化してしまい、直しているのに、全体はむしろ崩れていくという点について解説します。
形の崩れを感覚ではなく練習手順から直したい場合は、
鉛筆画が上達しない人のための練習完全ガイドも参考になります。
頭の大きさを基準にしてしまう
最も多いのは、描き始めに頭の大きさを決めてしまうケースです。「このくらいだろう」と置いた瞬間、それが画面の基準になってしまいます。
その後は、首や胴体を合わせる作業に変わります。しかし動物の頭は単体で成立する大きさではなく、体との割合の中で意味を持つのです。

猫は、体に対して頭が大きく、犬の場合には、犬種によっては頭が小さく、幼体ではさらに変化します。ここを独立して判断してしまうと、胴体の長さが伸び縮みして、脚の位置まで連鎖的にずれます。
本来は、背骨の流れと、胴体の長さを基準に、頭の位置を決める必要があります。形より先に、関連性を構築しなければ整合性は生まれないのです。
関節位置を外形から判断してしまう
次に起こるのが、関節の誤認です。深い毛に覆われた動物では、脚の付け根や膝は見えている位置に存在しません。
前脚は、胸の奥から始まり、後脚は、腹部の内側から体を支えています。輪郭を頼って関節を置くと支点が移動し、短足や胴長などの違和感に通じます。

このとき多くの人は、脚の長さを直そうとしますが、原因は長さではなく関節の支点の位置です。骨格の位置関係がずれたまま、長さを合わせようとするほど別の部分が崩れます。比率は距離ではなく関節の支点の関係で決まるのです。
奥行きを高さとして描いてしまう
さらに、奥行きの誤認があります。動物の体は正面から見た場合に、前後に重なっていますが、平面として見ると前後の距離を上下の長さに変換してしまいます。
その結果、首が長くなり、胴体が縦に伸び、顔が平たくなったりします。多くの人は、長さを測り直しますが、実際に狂っているのは方向なのです。
典型的には、こういう形で現れます。
- **前後に重なっている量(奥行き)**を、紙の上で処理できず
→ **上下方向の伸び(高さ)**として足してしまう。 - 結果として
→ 首が不自然に長い/胴が縦に伸びる/顔が平たく大きい(前に出るべき量が「上」に行く)。
「奥行き=高さ」というより、実際には “奥行きを表すための手掛かりが不足したとき、脳が上下方向に逃がす” という感じになってしまうのです。
動物の場合には、毛や模様の情報が多くて、体積の前後関係が曖昧になりやすいので起きます。
見分ける簡単チェックはこれです。
- 横顔・斜め向きのときに、首〜胸の間がやたら縦に増える。
- 背中〜腰の量が「前後」ではなく、上に積まれて丸太みたいになる。
- 立体のはずなのに、頭だけ“貼り付いた板”みたいに平たい。


奥行きは、高さではありません。前後の位置として把握したとき、初めて適切な率に近づけます。
部分的な完成が全体を固定してしまう
動物の目や鼻を描き込んだ瞬間に、それが基準になってしまいます。以降は他の部分を合わせる作業に変わり、全体の比較が失われます。本来は、全体の大きな描写から中間の描写、そして細部へと進む必要があります。
部分から描き始めると、比較対象が消え、修整の余地がなくなります。似ない状態が固定される理由はここにあるのです。

動物の、鉛筆画やデッサンの比率が狂う理由は、測れていないことではなく、比較の順序にあります。頭・関節・奥行き・細部を単独で決めるほど関係は崩れます。
比率は、長さの問題ではなく、位置関係の問題です。常に複数及び、全体を同時に見ることで初めて安定するものです。
立体として見られない理由
動物を描いていると、比率は大きく間違っていないのに、平面的に見えることがあります。写真と並べても、位置関係は近いのに、存在感だけが弱い状態です。
このとき多くの人は、陰影不足や描き込み不足を疑いますが、原因は描写量ではありません。立体として認識できていないまま、形を整理していることにあります。

人は、理解しやすい情報から処理するため、複雑な制作対象ほど、線として単純化して捉えます。しかし、動物は線の輪郭で成立しているのではなく、空間の中に配置された体積の集合体です。
線を基準にすると、位置は合っていても厚みが失われ、動物特有の存在感が消えます。
本章では、平面的に見える鉛筆画やデッサンは、形が間違っているのではなく、空間に置けていない状態である点について解説します。
面の向きを見ていない
輪郭や模様の境界は目立つため、人はそこを頼りに形を判断します。しかし、境界は面の変化ではなく、表面の区切りに過ぎません。頬の丸みや背中の膨らみは、線の曲がりではなく、面の向きの連続で感じられます。
面を見ずに線を追ってしまうと、前後関係が判断できずに厚みを表現できません。とくに、毛深い動物では外形が曖昧なため、境界を頼るほど立体感の表現は弱くなるのです。

面の向きとは、光がどちらへ逃げるかを観察することです。明るさの変化を追うことで、線を描かなくても形の向きが整理できます。
前後関係を横並びにしてしまう
動物の体は正面から見ると、頭・胸・腹・骨盤の順番に配置されていますが、平面として認識すると、横に並んだ形として処理してしまいます。
その結果、奥にある部分が手前へ移動し、胴体が板のように見えます。比率が合っていても厚みが出ないのは、距離の方向を間違えているためです。

前後関係を把握すると、同じ線でも急に奥行きが生まれます。重なりを観察することは長さを測ることより重要になります。
奥行きの理解は、配置の考え方にも関係します。次の、構図の基本も合わせて確認しておくと理解が安定します。構図で差がつく!表現力を引き出す鉛筆画の構図アイデア5選とは?
なぜ横並びに見えてしまうのか
人間の脳は、3Dを正しく理解しているわけではありません。実際には「2Dの形を推測して理解」しています。つまり脳はこう処理しています。
重なりが弱い → 横に並んでいると判断
距離が読めない → 同じ位置にあると判断
動物の体は本来こういう構造です。
- 頭:最も手前。
- 胸:少し奥。
- 骨盤:さらに奥。
しかし、毛・模様・明暗に惑わされると、脳は前後を判断できなくなり「並んだ形」として処理してしまいます。
実際に起きる崩れ
この誤認が起きると、次の現象が同時に発生します。
- 胴体が板のように平たくなる。
- 首が妙に長くなる。
- 背中が一直線になる。
- 足の位置が合わなくなる。
- 顔だけ立体、体だけ平面になる。
比率を測っても直らないタイプの崩れです。なぜなら 長さではなく方向が狂っている からです。
初心者が気付きにくい理由
ここが一番重要です。多くの人はこう考えます。
「長さを測れば合う」
しかし、この崩れは長さの問題ではありません。実際はこうです。
距離(前後)を長さ(左右)に変換してしまっている
つまり、測れば測るほど、間違いを強化してしまいます。
上達している人が無意識に見ているもの
上達している人は形を見ていません。見ているのはこれです。
- 重なり。
- 接地順。
- 前後の圧縮。
- 見えない部分の位置。
つまり、「位置関係」です。だから輪郭を描かなくても形が合います。
影を色として見てしまう
影は、立体物の情報ですが、模様として扱うと形の手掛かりを失います。毛色の変化と、影を同じものとして扱ってしまうと、面の向きが消えます。
明暗は、濃淡ではなく方向の記録です。光が当たる面と離れる面の差を追うことで、見えない側の体積が想像できるのです。

影は、塗りつぶすほど平面化してしまい、光の流れを追うことで立体化を表現できます。
重さの方向を感じていない
動物の身体が、接地している感覚を感じられないと、体は浮いて見えてしまいます。足先の位置が合っていても、体重の方向が適切でなければ立体の動物は固定できません。
動物の姿勢は、重心によって保たれています。頭から背骨を通り、脚へ抜ける力の流れを意識すると、各部の位置が自然に整理されます。重さの方向は、立体の位置そのものなのです。

立体感が出ない理由は、描き込み量ではなく、線中心の理解にあります。面の向き、前後の重なり、光の方向、重さの方向を同時に捉えると形は自然に安定します。

動物は、輪郭の集合体ではなく、空間内の中の、体積の集合体として存在しているのです。
観察しているのに似ない理由
時間をかけて、制作対象を見ながら描いているのに似ないとき、多くの人は観察量が足りないと考えます。しかし、実際には、見ていないのではなく「意味を変換して見ている」状態になっています。
人の脳は、理解しやすさを優先するため、入ってきた情報をそのまま扱うのではなく、既に知っている形へ整理してしまうのです。

とくに、動物のように馴染みのある対象では、この補正が強く働き、見えている個体の特徴よりも「知っている動物像」を優先してしまいます。その結果、丁寧に描いているほど平均的な形へ近づき、似ていない印象になってしまいます。
本章では、似ない原因は観察不足ではなく、観察の処理方法にある点について解説しましょう。
記号として動物の顔を認識してしまう
動物の目や口を見た瞬間に、我々人間は、それを構造ではなく「顔」として理解してしまいます。この時点で、角度や厚みの情報は弱まり、代わりに記号的な印象が強くなります。
猫の目を観察していても、実際の傾きや奥行きではなく、「猫らしい目」として認識してしまうため、細部を描いても個体差が失われてしまうのです。

本来、観察すべきなのは形ではなく、配置関係です。左右の距離、傾きの差、奥行きの位置を追うことで初めて似てきます。
知識が形を上書きする
耳は三角、鼻は丸いといった知識は理解を助けますが、同時に観察を妨げます。
実際の耳は傾き、鼻は立体の一部として角度を持っています。しかし脳は欠けた情報を知識で補完し、見えない部分まで想像で埋めてしまうのです。

描いている対象は、目の前の個体ではなく、頭の中の平均像へ変わってしまいます。知識を外し、角度や距離の差を見ることで実際の形が現れます。
特徴を部分で捉えるほど似なくなる
似せようとして、目や身体の模様から描き始めると、かえって似なくなるものです。
特徴は、単独で存在するのではなく、全体の関係の中で成立します。目の形が適切でも、頭の傾きが違えば別の個体になってしまいます。

部分を固定すると、他の位置が動かせなくなり、修整の余地が消えます。似せる作業は、細部の強調ではなく、全体の関係を整えることです。
比較が減ると修整が止まる
描き進めるほど、人はスケッチブックや紙を見ている時間が増え、制作対象を観察する時間が減ります。
形が出来てきたと感じた瞬間に、観察の回数は減り、違和感だけが残ります。似るかどうかは描写量ではなく、比較(観察)の回数で決まるのです。

描くたびに、見比べる往復を続けることで、思い込みが修整できます。
似ない原因は、観察不足ではなく理解の補正です。記号・知識・部分判断・比較(観察)停止が、本来の形を置き換えてしまいます。全体の関連性を見続けることで、個体差が現れ、似ていく方向へ進むのです。
修整できる描き方へ切り替える方法
ここまで見てきましたように、形が崩れる原因の多くは描写力ではなく、固定してしまう描き方にあるのです。
最初に輪郭を決め、部分を確定させるほど修整が難しくなり、違和感が残ったまま完成に近づいていきます。

逆に言えば、途中で何度でも動かせる状態を保てれば、観察と修整を繰り返す中で、自然に整っていくのです。
動物の、鉛筆画やデッサンを安定させるには、上手く描くことより「直せる状態で描く」ことが重要になります。
本章では、描き方を完成志向から調整志向へ切り替えることで、形は急激に安定する点について解説しましょう。
外形を描く前に位置を定める
最初に行うべき作業は、線を描くことではなく、位置を決めることです。 頭・胸・骨盤の三点を画面の中に配置し、それぞれの距離関係を確認します。
この段階では形を作らず、置き場所だけを簡単な丸などで決めます。 外形を描かなければ、いくらでも動かせるのです。

位置関係が決まってから、初めて体の方向が見え始め、自然に輪郭が導かれます。形は描くものではなく、配置から生まれるものとして扱います。
一本の線を描く前に比較する
線を描いた瞬間に、基準が固定されるため、その前に必ず比較を行います。描く→見るではなく、見る→比べる→配置の順番に変えます。
スケッチブックや紙と、制作対象を交互に確認しながら、簡単な位置を表す線を置くことで、ズレは小さい段階で止まります。

長い線を描いてしまうほど、後の修整量が増え、形は崩れやすくなります。観察比較の回数を増やすほど、完成度は安定します。
面の向きで形を決める
輪郭ではなく、面の向きで身体を作ります。頭部・胸部・骨盤を、それぞれ傾きのある面として捉え、光の方向と一致しているかを確認しましょう。
面の向きが合えば、輪郭は多少曖昧でも立体は成立します。

逆に、外形が正確でも、面の方向が違えば歪んで見えます。形を線で合わせるのではなく、向きで合わせる意識が必要です。
実際の動物モチーフで試す場合は、次の動物の練習例も参考にしてください。
犬や猫のデッサンが上達する!形と比率を理解する練習ステップ完全ガイド
常に制作画面上の動物全体へ戻る
細部に入った後でも、一定時間ごとに全体へ戻ります。部分に集中すると関係が崩れるため、必ず離れて確認します。修整は、細部ではなく大きな関係から行います。
小さな狂いは、全体のズレから生じるため、広い範囲を整えると自然に収まります。完成へ近づくほど、観察に戻る回数を増やすことで、安定した形になるのです。
具体的には、制作当初の、制作画面上に全体的な位置・配置・バランスなどを取った際は勿論のこと、制作の区切り区切りで一旦休憩を入れましょう。
そして、制作画面を2~3m離れたところから「点検」しましょう。常に、制作画面に接近して描いている状態では、気づけない点がたくさんあるものなのです。
筆者は、かれこれ30年以上も制作を続けていますが、いまだに、この「点検」によって、毎回2~3ヶ所の修整点を見出しています。
このひと手間を惜しんでしまうと、制作上の矛盾点に突き当たったりして、大きく修整を余儀なくされることから回避できます。また、それによって、時間的な回り道を防げるばかりか、制作画面も汚れずに済むのです。^^

動物の、鉛筆画やデッサンを安定させる鍵は、上手く描くことではなく、直せる状態を維持することです。制作画面上の位置にモチーフを配置し、観察の比較を増やして、面で判断し、全体へ戻ることが必要なのです。

この手順に変えるだけで、観察力はそのままでも形は整い始めます。完成を目指すほど固定され、調整を続けるほど似ていきます。
練習課題(3つ)

現在の位置を確認したい方は、次の全体の練習の流れも合わせて確認しておくと迷いません。初心者から中級者へ進むための鉛筆画・デッサン練習ロードマップ完全版
本章では、あなたが実際に手を動かして練習できる課題を用意しました。鉛筆画やデッサンは練習しただけ上達できますので、早速試してみてください。
輪郭を描かない配置トレーニング
内容
動物の写真や画像を用意して、描き始めの5分間は、外形を一切描きません。頭・胸・骨盤の3点のみを紙の上に、簡単な丸などでしるし、距離関係と傾きだけを確認します。
この段階では目・耳・脚は描かず、囲う線を引かないことを徹底します。
3点を配置しましたら、背骨の流れだけを1本の線で通し、体の向きと重心の方向を決めます。形を作るのではなく、位置と方向だけを決める練習です。
目的
「形を描く前に位置を決める」感覚を身につけること。輪郭を描かずに配置が整うと、後から描く外形が、自然に安定することを体験します。
ポイント
- 丸を正確に描こうとしない。
- 大きさよりも、距離関係を優先する。
- 背骨の流れは、1度で描こうとしない。
- 常に3点の関係を見比べ続ける。
- 囲いたくなったら、止まって比較する。
効果
輪郭依存が減り、描き出しで形が崩れなくなります。「上手く描こう」とする癖が弱まり、観察が先行する状態が作れます。

参考画像です
関節位置の想像スケッチ
内容
毛の多い犬や猫の写真や画像を選び、外側の毛を無視して骨格を想像して描きます。脚の付け根・膝・かかとの位置だけを点で置き、それらを細い線で結びます。この段階では、目・耳・脚の外形は描きません。
骨格の位置が決まった後に、肉付きの厚みを外側へ足していきます。最初から輪郭を作らないことが重要です。
目的
「見えている線ではなく、支点で比率を決める」理解を体に覚えさせること。長さではなく、構造で形が決まることを体験します。
ポイント
- 毛の外形を絶対に追わない。
- 点の位置を何度も修整する。
- 脚の長さは、後で決める。
- 関節は、体の内側にあると考える。
- 線より支点を優先する。
効果
脚の長さや、胴の厚みの狂いが激減します。「似ない」の原因が、観察不足ではなく支点の誤認だったと理解できます。

参考画像です
面の向きだけで描く明暗トレーニング
内容
写真や画像を見ながら、輪郭線を使わずに、明るい面と暗い面の境界だけで動物を表します。毛並みや模様は無視し、大きな面の傾きのみを描きます。この段階では目・耳・脚の細部は描きません。
顔・胸・腹・骨盤の四つの面が、どの方向を向いているかを確認しながら進めます。
目的
線ではなく、面で立体を理解する視点を作ること。形は境界線ではなく、光の方向で決まると理解します。
ポイント
- 線を描きたくなったら止まる。
- 模様を追わない。
- 明るさではなく、向きを見る。
- 大きな面から、小さな面へ進む。
- 陰影を塗らず、境界を観察する。
効果
立体感が急激に安定し、描き込み量に頼らなくなれます。少ない線でも、存在感が出る感覚が身につきます。

参考画像です
まとめ

動物の、鉛筆画やデッサンで形が崩れる原因は、描写力や観察量の不足ではありません。多くの場合、見方と描き方の順序が逆になっていることにあります。
私たちは、制作対象を見るとき、理解しやすい形へ整理しながら認識します。そのため、見たままを扱っているつもりでも、実際には記憶や知識に近い形へ変換しています。
動物が似ない、歪む、平面的になるといった問題は、この無意識の補正がスケッチブックや紙の上に現れた結果です。
まず、輪郭から描き始めると、内部構造が入る余地を失います。外形は立体の結果であり、原因ではありません。
骨格や、体積の位置関係が決まる前に囲ってしまうほど修整は難しくなり、後から合わせる作業が続きます。修整を繰り返しているのに整わないのは、部分修整が全体の整合性を崩し続けるためです。
次に比率の狂いは、長さの誤りではなく関係の誤りです。頭や脚を単独で決めると、他のすべてが拘束されてしまいます。
動物の形は、各部位の割合ではなく、位置関係の連続として成立します。支点の位置を想像せず、外形を基準にするほど、長さを直しても違和感は消えません。比率とは測ることではなく、比較し続けることです。
また、立体感が出ないのは陰影不足ではなく、線として理解しているためです。面の向き、前後の重なり、光の方向、重心の動きを同時に捉えたとき、線を描かなくても形は成立します。
毛並みや、模様を追うほど平面化し、面の方向を追うほど量感は現れます。動物は輪郭で存在するのではなく、空間に置かれた体積の集合体として存在しているのです。
そして、似ない原因は、観察不足ではなく理解による置き換えです。目を見れば目の記号に、耳を見れば耳の形に変換されてしまいます。個体差は、形ではなく位置関係の偏りにあります。
部分を先に決めるほど平均化され、特徴は消えます。似せる作業とは、細部を描くことではなく、関係を修整し続けることです。
最終的に重要になるのは、完成させる描き方から、調整し続ける描き方へ意識を変えることです。位置を定めて、比較を繰り返し、面の向きで確認し、全体へ戻る。この流れを維持すると観察力は変わらなくても形は安定していきます。
動物デッサンは、一度で正解を出す制作ではなく、誤差を減らし続ける制作なのです。
<要点整理>
- 輪郭は、最初に描くものではなく、最後に決まる結果。
- 比率は長さではなく、位置関係で成立する。
- 立体感は線ではなく、面と奥行きで生まれる。
- 似なさは、知識による平均化から起きる。
- 部分から描くほど、修整不能になる。
- 描く量より、観察比較の回数が精度を上げる。
- 毛並みより、骨格の位置を優先する。
- 完成を急ぐほど、形は固定される。
- 調整を続けるほど、自然に似ていく。
動物の、鉛筆画やデッサンとは、「上手く描く」という意識から、「誤差を減らす過程」と捉えましょう。一度で完成させる意識を手放し、何度でも直せる状態を保つことが上達への近道になるのです。
この練習ルーティンの考え方は、無料メルマガで順序立てて解説しています。
毎日10分で続けられる練習の考え方を配信しています。
ではまた!あなたの未来を応援しています。







描き始めを立体配置に変えるだけで、同じ観察でも形の安定感は大きく改善します。