こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

さて、鉛筆画やデッサンを独学で続けていると、「描いているのに変わらない」と感じる時期が必ず訪れます。しかし、その原因の多くは才能や努力量ではなく、練習の順番にあります。
本来、デッサンには「先に整える理解」と「後から積み重ねる理解」があり、この順序が入れ替わると、描いた枚数は増えても上達は止まります。逆に言えば、順番を整えるだけで停滞は一気に解消します。
この記事では、独学でも迷わず進める練習の順番と、次へ進んでよいかを判断するチェック基準を整理します。感覚ではなく基準で進めることで、無駄な反復を減らし、最短距離で上達へつなげていきましょう。
独学で、伸び悩む原因を全体から整理したい場合は、鉛筆画・デッサンが上達しない人のための練習完全ガイドもあわせて読むと、迷いが減ります。
それでは、早速どうぞ!
次に「線と形」で再現性を作る。
その後に「陰影」「複数配置」へ進み、最後に「上達チェック」で合否を決める。
練習を始める前に整える:比較できる状態を作る準備段階
鉛筆画やデッサンに初めて取り組む際には、とかく、実際に描く内容ばかりに注目しがちですが、その前に整えなければいけない環境や手順があります。
この部分をあまり考えずに進んでしまうと、思いのほか上達にブレーキがかかってしまうものです。
本章では、初めて鉛筆画やデッサンに取り組む人の、心得ておくべき点について解説します。
この章の内容は、「順番」で理解すると一気に定着します。
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集中が続かない状態では判断は育たない
仕事や家事などで多忙な場合には、せっかく始めようと思っている鉛筆画やデッサンでも、集中力を欠いて、うまく先へ進むことができません。
そして、疲れていたり、いらいらしていたりで、集中力を欠いてしまう要素がたくさんあると、本来楽しんで取り組むべき新たな趣味が、修行のような状態になってしまいます。^^
そのような時には、無理して取り組まないことが大切です。ここが出発点としては、一番重要であり、「楽しんで取り組めるようにする」ことが、上達できるためのコツです。
形が狂う原因は道具ではなく距離と視点にある
当たり前ですが、落ち着いて鉛筆画やデッサンに取り組む際には、適度な温度・湿度・静けさ・整理整頓された環境が必要ではないでしょうか。
そして、できればあなたの落ち着ける音楽なども用意しましょう。落ち着いて、たとえわずかな時間でも、集中できる状態を作るためには重要な点です。
姿勢を固定すると比較が可能になる
ここも重要な部分ですが、イーゼルや机の上にスケッチブックや紙を乗せて取り組む際には、イーゼルでは問題ありません。
しかし、机で取り組むとすれば、机の上に「空き箱」などを置いて、そこへスケッチブックや画板に紙をつけた状態で、立て掛けることで制作がしやすくなるのです。
そして、制作時の姿勢は、足を組まずにイスに深く腰掛けることで、安定した姿勢が保てると同時に、長時間描いても疲れにくい姿勢を保てます。
描く前に止まる習慣が練習の質を決める
制作画面上へ実際に描きこみを始める際には、鉛筆を人指し指・中指・親指で優しく軽く持ち、鉛筆は2B程度の柔らかい鉛筆で、肩・腕・肘全体を大きく使うイメージで描き進みましょう。
また、いちいち「描いては消し・描いては消し」を繰り返すのではなく、大きなイメージで制作画面上のおさまりの良い場所に、全体を描き込むように、複数の線で描いて行きます。
描いていく内に、「この線だ」と確信の持てる線に出会えますので、その調子でまず全体を描き、そこで一旦休憩を入れて、2~3m離れたところからも「点検」して、制作を続けていきましょう。
尚、この「点検」を描き進む中で、何度も繰り返すことで、完成度の高い作品に仕上げることにつながっていきます。
また、制作当初は、「構図」などの余計なことは一切考えずに、5作品ほど好きなように描いて、描くことに慣れることに主眼を置いた制作をしましょう。
その後、描くことにある程度慣れてきたところで、「構図」についての研究を始めましょう。構図と聞くと「難しい物」と思いがちですが、簡単なものがたくさんありますので、簡単なもの、から順番に取り組んでいくと効果的です。
そして、ここで重要なのは、1つの取り組みを始めた構図で、静物・風景・人物・動物全部に使うことができるので、是非試してみましょう。^^
描き始めの詳細な説明については、次の「鉛筆画の描き方が初心者の人にもよくわかる!基本から応用まで徹底解説」も参考になります。
まず描き込みを減らす:上達を止める最初の勘違い
独学で、鉛筆画やデッサンを始めたとき、多くの人は長時間かけてでも一枚を完成させることが上達の近道だと考えます。しかし、初期段階では、この考え方がもっとも大きな遠回りになります。
必要なのは、描写量ではなく認識の修整であり、描き込むほど理解が進むわけではないのです。

葡萄Ⅱ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
むしろ、描き込みは、誤った理解を固定する方向に働くことが多く、最初に身につけるべき習慣は「描き切ること」ではなく「止めること」になります。
本章では、描きこみを詰め込み過ぎる勘違いについて解説しましょう。
観察より記号で描いてしまう理由
私たち人間は、制作対象をそのまま見ているようで、実際には記憶の中の単純な図形へ置き換えて理解しているのです。
コップは、円柱、リンゴは丸、皿は楕円という知識の形で把握してしまうため、観察しているつもりでも、実際には記号をなぞっている状態になります。

林檎 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
この段階では時間をかけるほど、現実との差ではなく記号の適切さを高める練習になってしまい、似ない原因が増幅されるのです。
独学の、鉛筆画やデッサン初心者の人が伸び悩む多くのケースは、努力不足ではなく、この置き換えを続けたまま、描写量を増やしてしまう点にあります。
情報量を増やすほど狂う仕組み
形が合っていない状態で、陰影や質感を加えると、違和感は一時的に隠れます。濃淡が入ることで、完成度が上がったように感じてしまいますが、修整の判断が遅れて、実際には誤差を固定しているだけなのです。
鉛筆画やデッサンは、足し算ではなく、制作画面の中のモチーフとそれを取りまく関係との確認作業であり、高さと幅、傾き、距離の関係が崩れている状態では、どれだけ描き込んでも似て見えません。

誕生前夜 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画やデッサン独学者の人が、「描いているのに変わらない」と感じるのは、観察の回数より描写の量が増えてしまうためです。
「似せる」ではなく「関係を取る」段階
初期段階の目的は、再現ではなく比較です。物の形は、輪郭より位置関係によって成立しており、高さと幅の比率、角度、間隔の4つが整うと細部の描写がなくても自然に見えます。
逆に、これらが崩れていると、影や質感をどれほど描いても違和感は消えません。

水滴Ⅹ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
そのため必要なのは、長時間の描写よりも短時間の頻繁な確認が重要であり、一度描いて違いを探して描き直す反復が、もっとも効率的に形の理解を進めてくれます。
初期段階で必要な練習の質
ここで重要になるのが、途中でやめる練習です。完成を目指すほど最初の思い込みを修整できなくなるため、一定時間で区切り、似ていなければ描き込まず描き直します。
目安として、20分から30分描いてから確認を行い、違和感が残る場合は新しく描き始める方が観察力は早く育つのです。

邂逅Ⅰ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画やデッサンを独学で上達する人は、一枚を最後まで仕上げるのではなく、一枚を適切なタイミングで終えられる人です。描写量を減らすことで初めて比較が始まり、その瞬間から上達が動き出します。
初期段階では、完成度を高めるほど理解が進むのではなく、確認回数を増やすほど認識が修整されるのです。
描き込みを抑え、やめる判断を早くすることが、最短距離で上達へ向かう最初の条件になります。
線と形を安定させる:形の狂いを止める基礎段階
描き込みを減らして、比較ができるようになると、次に気づくのは形が毎回変わる問題です。
似せようとしているのに安定せず、描くたびに大きさや傾きが変化してしまう状態は、多くの場合観察不足ではなく、デッサンの取り方の順序に原因があります。

邂逅Ⅱ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
本章では、この段階では「どこを見て描くか」ではなく、「どう測って描くか」を身につける必要がある点について解説しましょう。
輪郭をなぞる癖が崩れを固定する
鉛筆画やデッサン初心者の人は、制作対象を見ると外側の輪郭から描き始めますが、この方法では形は安定しません。
輪郭は、結果として現れる線であり、最初に描く基準にはならないためです。外形を追うほど、部分ごとに判断が独立し、わずかな誤差が積み重なって全体の比率が崩れます。

月夜の帰り道 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
似せようとして、修整を繰り返すほど歪みが広がるのは、基準のない線を重ねているからです。形を安定させるためには、輪郭ではなく、基準となる方向(角度)と長さから入る必要があるのです。
大きさ比較で形を取る考え方
形は単体で決まるのではなく、必ず他の部分との比較で決まります。高さは幅との関係、角度は水平との関係、位置は隣との距離で判断できます。
この比較を行わずに描くと、目で見ているつもりでも感覚で調整することになり、毎回結果が変わります。基準を決め、そこから他の部分を測り続けることで形は急速に安定するのです。

予期せぬ訪問者 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
重要なのは、適切(正確)に描こうとすることではなく、同じ方法で判断し続けることです。再現性が生まれたとき、初めて観察が機能し始めます。
補助線の役割と消し方の順番
補助線は下描きではなく、確認の記録です。多くの人は、仕上がりを気にして早く消そうとしますが、判断の痕跡を消すほど誤差の原因が分からなくなってしまいます。
どこを基準に測ったのか、どの角度で取ったのかを残すことで、崩れた理由を特定できるのです。修整とは線をきれいにすることではなく、判断を更新することなのです。

水滴Ⅺ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
最後に整える段階までは、補助線を残し、比較が終わった後に整理することで形の再現性が保たれます。
線が安定しない原因が「筆圧や運動」側にあると感じたら、「線がかすれる・薄いと感じたら?鉛筆画・デッサンで印象を引き締める方法!」の記事も練習の補助になります。
適切に歪ませる練習
形が安定しない人ほど、歪みを失敗として扱います。しかし、実際には歪みの方向を把握することが重要です。
どちらへ長いか、どちらへ傾いたかを言葉で説明できる状態になると、修整は偶然ではなくなります。

誕生2020-Ⅰ F3 鉛筆画 中山眞治
毎回違う崩れ方をする段階から、同じ崩れ方を再現できる段階へ進むと、そこから調整が可能になります。適切に歪ませられるようになったとき、初めて正確に近づく準備が整うのです。
形の安定は観察量ではなく、測定方法によって生まれます。輪郭を追う描き方から比較で決める描き方へ切り替えることで、毎回変わっていた形は一定になり、修整が意味を持ち始めます。

描き込みを抑え、やめる判断を早くすることが、最短距離で上達へ向かう最初の条件になります。
陰影に入るタイミング:まだ影を描くべきではない状態
形が安定してくると、多くの人は早く立体感を出したくなり陰影へと進みます。しかし、この段階で影を描き始めると、かえって立体の理解が止まることがあります。
陰影は形を補うものではなく、形の理解が整ったあとに確認として働く要素です。つまり、影を描いてよい状態と、まだ早い状態が存在するのです。

入り江の夜明け 2024 F3 鉛筆画 中山眞治
本章では、この区別がつかないまま進むと、描写量は増えても立体の把握が進まない点について解説します。
明暗が汚れる原因は形にある
陰影が濁ると、多くの人は塗り方や濃さの問題だと考えます。しかし、原因の大半はトーンではなく形の不安定さに問題があるのです。
面の向きが曖昧なまま暗さを加えていくと、異なる方向の面が同じ調子になり、結果として濁って見えます。

春の気配 2024 F3 鉛筆画 中山眞治
影は、光に対する角度の違いを示す情報であり、形の理解が不充分な状態では均一な灰色が増えるだけになります。
塗り直しても改善しない場合には、陰影ではなく、面の区別ができていない可能性が高くなるのです。
トーンの練習が無駄になるケース
トーンの段階の練習を繰り返しても、立体感が出ない場合には、濃淡の操作と形の理解が分離している可能性があります。
滑らかに塗ること自体は重要ですが、それは面の方向を区別できていることが前提になります。方向の違う面を同じ調子でつなげてしまうと、どれだけ丁寧に塗っても平面的になるのです。

寒椿 2024 F3 鉛筆画 中山眞治
陰影の練習は、濃さを増やす訓練ではなく、面を分ける訓練です。この順序が逆になると、上達している錯覚だけが増え、結果が変わらない状態が続いてしまいます。
立体が見える最低条件
影を描く前に確認すべきなのは、光を想定したとき明るい面と、暗い面を線だけで分けられるかどうかです。
輪郭の中に境界が想像できない場合は、まだ陰影の段階ではありません。立体は濃淡の量ではなく面の切り替わりで認識されます。

シャクヤク 2024 F3 鉛筆画 中山眞治
つまり、暗くする前に分けられるかが基準になります。この状態が整うと、わずかなトーンでも立体が現れ、逆に整っていないと、トーンを濃くしても平面のままに見えるのです。
影を描いてよい判断基準
トーンを入れ始めてよい目安は、陰影を入れなくても、形の向きが説明できる状態です。どちらを向いているか、どこが手前かを言葉で言えるならば、影は確認として機能します。
言えない場合は、陰影が形を補う役割を背負ってしまい、描くほど混乱します。影は立体を作る工程ではなく、立体理解を検証する工程です。

黄昏 2024 F4 鉛筆画 中山眞治
この順序を守ることで、描写量を増やしたとき初めて情報が整理され、立体感が安定します。 陰影は、早く入れるほど上達する要素ではなく、形の理解が揃った後に効果を持ちます。
面の区別ができる段階まで待つことで、少ないトーンでも立体が成立し、描き込みが、そのまま完成度の向上へつながるようになれるのです。
モチーフを増やす段階:複数配置へ進む条件
単体のモチーフのデッサンと陰影が安定してくると、次に迷うのがモチーフを増やすタイミングではないでしょうか。
多くの鉛筆画やデッサン独学者の人は、「まだ基礎が足りない」と考え、一つのモチーフを長く描き続けますが、この停滞は能力不足ではなく、段階の移行が遅れている状態です。

灯(あかり)の点(とも)る窓辺の静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画やデッサンの観察力は、モチーフ単体の精度だけでは伸びず、複数のモチーフを扱い始めると急速に変化してきます。
本章では、一定の条件を満たした時点で、複数のモチーフの配置へ進む必要がある点について解説しましょう。
単体モチーフの練習が長すぎる人の停滞
一つのモチーフを繰り返す練習は、形の安定に有効ですが、続け過ぎると判断の基準が固定してしまいます。見慣れた形では、誤差に気づきにくくなり、似ているかどうかを感覚で処理するようになります。
これは、上達しているのではなく、慣れている状態です。単体での精度がある程度揃った段階で、制作対象を増やさないと、比較能力が育たず、別のモチーフに変えた途端に崩れる現象が起こり得るのです。

モアイのある静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治
安定して描ける状態を作るためには、同じモチーフを描き続けるのではなく、モチーフの数を増やす必要があります。
複数のモチーフの配置で観察力が向上する理由
モチーフが2つ以上になると、形の判断はモチーフ単体ではなく、距離や方向の比較で決まります。高さの違い、重なり方、間隔の変化など、新しい基準が生まれることで、観察が具体的になります。
単体では曖昧だった位置関係が、並べた瞬間に明確に見えるのはこのためです。複数のモチーフの配置は、難易度を上がる練習ではなく、観察の仕組みを強制的に働かせる段階です。

ミヒカリコオロギボラのある静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治
この段階に入ると、似せようとする意識が減り、合わせる意識へ変化できます。
失敗して良い崩れ方と悪い崩れ方
複数のモチーフの配置では、必ず崩れが増えますが、すべてが悪いわけではありません。位置の取り違えによる崩れは比較能力が働いている証拠で、修整が可能な誤差となります。
一方、形そのものが毎回変わる場合は基準が定まっていません。重要なのは崩れの種類を区別することです。

家族の肖像 2022 F4 鉛筆画 中山眞治
モチーフ同士の関係の誤差が中心になっていれば、段階は適切に進んでおり、形の誤差が増える場合では、単体描写の練習へ一度戻る必要があります。この判断ができると、練習の迷いが減ります。
初めての複合モチーフの選び方
最初の、複数のモチーフの配置では、複雑な組み合わせを避け、形の違いが明確な物を選びます。大きさの差、角度の差、前後関係が分かりやすい組み合わせにすると比較が成立します。


逆に、似た形を並べると判断基準が増えず、難易度だけが上がります。重要なのは完成度ではなく、距離と方向を説明できるかどうかです。

説明できる配置は、描き直しが容易で、観察の修正が進みます。複数配置は応用ではなく観察を成立させる基礎段階となります。

モチーフ単体での安定が一定に達しましたら、関係の練習へ移行することで、似せる作業から合わせる作業へ変わり、デッサン全体の理解が大きく前進するでしょう。
次へ進む判断:上達チェックの具体的な基準
次に何を練習するかを体系で確認したい場合は、「初心者から中級者へ進むための鉛筆画・デッサン練習ロードマップ完全版」も参考になります。
ここまで進むと、多くの人が新しい迷いに入ります。それは「上達しているのか分からない」という状態になります。
鉛筆画やデッサンの独学では、周囲からの指摘がないため、練習量は増えても進んでよいのか戻るべきかの判断が曖昧になります。この段階で必要なのは、感覚ではなく基準です。

第3回個展出品作品 心地の良い場所 2023 F4 鉛筆画 中山眞治
本章では、客観的な確認方法を持つことで、無駄な反復や過度な不安を避け、次の段階へ移行するタイミングを自分で決められるようになれる点について解説します。
自己評価が当てにならない理由
作品を描き終えた直後の評価は、ほとんど信頼できません。制作中は脳が補完を行い、実際より整って見えるためです。
時間をかけたほど、良く見えるのは努力量の記憶が影響しており、形の適切さとは別の判断になります。

誕生2023-Ⅰ F4 鉛筆画 中山眞治
この状態で修整を続けると、適切かどうかではなく、納得できるかどうかで終わりを決めてしまいます。上達の停滞は能力ではなく、この判断の曖昧さによって起こるのです。
5分チェック法(客観視)
最も簡単なチェック方法は、描いた後に一定時間離れることです。数分間視線を外し、戻って最初に違和感を覚える場所を記録します。
重要なのは、直そうとせず、気づいた箇所を言葉にすることです。人は、説明できない誤差を修整できません。

家族の肖像 2024 F4 鉛筆画 中山眞治
違和感が、毎回同じ部分に現れるならば、基準の取り方に問題があり、毎回違うなら比較が不足しています。この短い確認を繰り返すだけで、感覚の評価は徐々に客観へ近づけられるのです。
筆者の場合には、描き始めの全体のレイアウトをした際は勿論のこと、制作の区切り区切りでは、一旦休憩を入れています。
そして、制作画面から2~3m離れたところからも、定期的に「点検」することで、必ず毎回2~3ヶ所の修整点を見出しているのです。
また、一旦は完成したと思っても、そこで定着材(フィキサチーフ)を掛けずに、最低でも丸一日置いてから改めて画面を見るようにしています。
そうすることで、まだ完成していないことに気づくことが多いからです。丸一日以上おいて改めて「点検」して、OKの際には、サインを入れて定着材を噴霧しましょう。^^
比較保存チェック(成長確認)
もう一つ有効な方法は、描き直しを並べて保存する方法です。一枚ごとの完成度ではなく、前回との差を見ることで変化の方向が分かります。
独学では、良し悪しより変化の有無を確認する方が適切です。似せようとして修整した結果、誤差が同じ方向に減っていれば進歩しており、毎回別の誤差が出るなら基準が定まっていません。

ふと見た光景Ⅰ 2024 F4 鉛筆画 中山眞治
連続した比較は、自身の判断の癖を可視化する役割を持ちます。
次の課題へ進む合格ライン
次の課題へ進む目安は、完成度ではなく再現性です。同じ手順で描いたとき、誤差の種類が安定していれば段階を越えています。
逆に、一枚だけ良く見える状態は偶然の可能性が高く、練習内容を変えると崩れます。安定した誤差は、修整可能な状態を意味し、ここで初めて次の課題が有効に働くのです。

ふと見た光景Ⅱ 2024 F4 鉛筆画 中山眞治
判断基準を持つことで、戻るべきか進むべきかを迷わず決定できます。鉛筆画やデッサンの独学での上達は、量ではなく判断の精度で決まります。
短時間の客観視と、継続した比較によって再現性を確認できれば、練習は確実に次の段階へつながるのです。
基準を持つことで、感覚に頼らない成長の循環が生まれます。
練習課題(3つ)

新しい未来Ⅰ 2024 F4 鉛筆画 中山眞治
本章では、あなたが実際に手を動かして練習できる課題を用意しました。鉛筆画やデッサンは練習しただけ上達できますので、早速試してみてください。
線と比率の確認スケッチ
目的
形を似せようとする意識を減らし、位置関係を基準に判断する習慣を作る。
内容
- コップや箱など、単純な形を1つ選び、陰影を一切入れずに形のみで20分以内に描く。
- 輪郭をなぞらず、高さ・幅・角度・距離の4つだけを確認しながら進める。
- 制限時間が来たら完成させず必ず終了し、似ていなくても描き込まない。
ポイント
- 消す前に、どこが違うか言葉で記録する。
- 修整ではなく、描き直しを選ぶ。
- 細部に入る前に止める。
- 毎回同じ手順で描く。
効果
- 記号的に描く癖が弱まり、観察と判断が分離し始める。
- 形の誤差が一定になり、修整の方向が分かるようになる。
合格ライン:20分で止めても、高さ・幅・角度・距離の誤差が毎回「同じ傾向」で出る。

参考画像です
モチーフ単体→2個配置の段階移行練習
目的
単体の再現から関係の把握へ移行し、比較による観察力を働かせる。
内容
- 同じモチーフを2個用意し、前後や左右に距離をつけて配置する。
- まず片方の位置を決め、もう一方を高さ・間隔・重なりだけで合わせる。
- 陰影は最小限に抑え、距離関係が説明できる状態で止める。
ポイント
- 似せるより、間隔を優先する。
- 手前と奥を言葉で説明する。
- 片方を基準にして動かさない。
- 崩れた場合は、形ではなく距離を確認する。
効果
- 単体では気づかなかった誤差が見え始め、観察が具体的になる。
- 形を合わせる作業から、関係を合わせる作業へ意識が変化する。
合格ライン:2個配置で、距離・重なりを言葉で説明できる。

参考画像です
5分チェック評価シート実践
目的
感覚に頼らず客観的に上達を判断する基準を作る。
内容
- 描き終えた後5分離れてから見直し、最初に違和感を覚えた場所を3点書き出す。
- 修整後も再度5分置き、変化したかを改めて確認する。
- 同じモチーフを数回繰り返し、記録を並べて比較する。
ポイント
- 良し悪しではなく、違いを記録する。
- 説明できない部分を残さない。
- 毎回同じ時間だけ離れる。
- 一枚の完成度で判断しない。
効果
- 自己評価のブレが減り、進むべき段階を判断できるようになる。
- 偶然の出来と、安定した成長を区別できるようになる。
合格ライン:5分チェックで、違和感3点を毎回言語化できる(曖昧語なし)。

参考画像です
まとめ

遠い約束Ⅱ 2024 F4 鉛筆画 中山眞治
独学で、鉛筆画やデッサンを続けていると、描いた枚数は増えているのに上達している実感が得られない時期が必ず訪れます。この停滞は努力不足ではなく、練習内容の順番が入れ替わっていることで起こります。
独学を続けるか、教室も検討するかで迷う場合は、「独学と教室、どっちがいい?鉛筆画を学ぶ最適な方法と成功する選び方!」の記事で判断材料を整理できます。
多くの場合、形の理解が不充分なまま描き込みを増やし、陰影や質感によって完成度を上げようとするため、誤差を修整する機会を失ってしまうのです。
上達を早めるためには、描写量ではなく判断の回数を増やすことが重要になります。最初の段階では、似せることよりも比較することが目的になります。
制作対象を記号として処理してしまう認識を弱めるため、短時間で区切り、描き直す反復を行うことで、形の違いに気づく力が育つのです。
形が安定してきましたら、輪郭ではなく、高さや幅の関係を基準に測り、同じ手順で判断を繰り返すことで再現性が生まれます。この再現性が、次の陰影理解の前提にもなります。
陰影は立体を作る工程ではなく、立体理解を確認する工程です。面の向きが説明できない段階で濃淡を増やしても、情報が増えるだけで形の理解は進みません。
明るい面と暗い面を、線だけで区別できる状態になったとき、初めてトーンが意味を持ちます。ここを越えると、描き込みがそのまま完成度へつながるようになれます。
モチーフ単体の描写が安定した後は、モチーフ複数の配置へ移行します。関係を扱う段階に入ると、観察の基準がモチーフから空間へ移り、似せる意識が減って合わせる意識へ変わるのです。
この変化が起きると、異なるモチーフでも崩れにくくなり、デッサン全体の理解が進みます。 最後に必要なのが、客観的な判断基準です。描き上げた直後の評価は、記憶の補完に影響されるため信頼できません。
一定時間離れて違和感を言葉にし、過去の記録と比較することで成長の方向が見えるようになれます。
完成度ではなく、再現性を基準にすることで、進むべきか戻るべきかを自身で決められるようになれます。
鉛筆画やデッサンの独学での上達は、量の積み重ねではなく判断の精度の積み重ねによって安定していくでしょう。
<要点整理>
- 最初は完成させるより、描き直す回数を増やす。
- 輪郭ではなく、高さと幅の関係で形を取る。
- 陰影は、形の理解が整ってから入れる。
- 単体が安定したら、複数配置へ進む。
- 似せる意識を減らし、関係を合わせる意識へ変える。
- 描いた直後の評価は信用しない。
- 5分離れて、違和感を言葉にする。
- 記録を並べて、変化の方向を確認する。
- 完成度ではなく、再現性で段階を判断する。
この練習ルーティンの考え方は、無料メルマガで順序立てて解説しています。
毎日10分で続けられる練習の考え方を配信しています。
ではまた!あなたの未来を応援しています。





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独学で行う鉛筆画やデッサンでは、基本的なことから整えることが重要です。