こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
筆者近影 作品「遠い約束Ⅱ」と共に
さて、鉛筆画で風景をリアルに描くためには、基本的な技法を習得し、着実に練習を重ねることが重要です。この記事では、初心者の人が最初に取り組むべき基礎知識から、効果的な練習法までを丁寧に解説します。
光と影を活かした立体感の表現、奥行きを感じさせる遠近法、構図の重要性、さらに質感を描き分けるテクニックなど、リアルな風景を描くためのポイントを網羅しています。
それでは、早速見ていきましょう!
初心者が鉛筆画で風景に取り組む際の一番重要なこととは?
坂のある風景Ⅰ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治
初心者の人が、鉛筆画に取り組む際には、最初から色々なことを考えないことが重要です。 本章では、最初に取り組むべき心づもりについて解説します。
最初は楽しんで描くことに集中する
どなたでも、最初に描いた作品は、うまく描けないことが当たり前です。そのようなことよりも、あなたが描いてみたいと思える風景に楽しんで取り組むことが最も重要です。
多少歪んでいようが、いびつになっていようが構いません。あなたが描きたい作品を描きましょう。最初から「構図及び構成や構想を練るなど」を考えてしまうと、挫折してしまうからです。^^
5作品ほど描いてみる
まず、描くことに慣れることが重要なので、あなたの近所の公園及び駅や田園風景など何でも良いのです。
描くことによって、徐々に鉛筆の握り方や鉛筆の扱い方が分かってくるものです。鉛筆の削り具合や「練り消しゴム」の扱いにも慣れるでしょう。難しいことではないですよね。今まで学生時代からお馴染みの筆記用具ですし、シャープペンでも同じようなものです。
そして、鉛筆で絵を描くことは初めてでしょうが、特別なことをしているわけではないので、それほど違和感はないはずです。
やがて描いていく内に、「何となくまとまりが悪い気がする」「どうすれば見映えが良くなるんだろう」「画面を引き立てる方法は何かないのだろうか」と、やがて気になってくるはずです。それを解決してくれるのが構図です。
描くことに慣れてこられたら構図を研究する
構図と聞くと、何か難しいことのように聞こえるかもしれませんが、簡単なものもたくさんありますので、構図のたくさん載っている本を一冊購入しましょう。
構図とは、先人の築き上げてきた美の構成に裏打ちされた、バランス・緊張感・力強さ・躍動感などを伝えることができる技術です。
構図は、作品に動きやリズムを生みだすための重要な要素であり、対角線なども活用することで、作品に緊張感や力強さを生みだすことができます。また、バランスや躍動感を意識することで、作品に活力を与えることもできます。
構図の選択は、鉛筆画の作品を成功させるためには重要な要素なので、作家は各種構図の種類や技術を学び、継続的な練習と自身の感性を磨くことが重要になります。それは同時に、他の作家の構図の使い方を研究することにも通じてきます。
このように構図を導入できることによって、あなたの作品には観てくださる人へ「あなたの感動や強調」を伝えるられることにつながります。そして、そのような魅力的な構成の作品であれば、「公募展への出品」も現実的になってきます。
名作と言われる作品には、必ずしっかりとした「構図」が導入されています。
初心者が知っておくべき鉛筆画でリアルな風景を描くための基礎知識
第1回個展出品作品 潮騒 2001 F100 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画でリアルな風景を描くためには、基本技法をしっかりと理解することが大切です。特にモノトーンの鉛筆画では、光と影及び、奥行きを表現するためのスキルが重要です。
本章では、初心者の人が最初に知っておくべき基礎を紹介し、リアルな風景を描くためのステップを解説します。
鉛筆のコントラストで明暗を使い分ける
風景画では、光と影の表現が立体感を生み出す重要な要素です。鉛筆の濃さや筆圧の調整により、明暗のコントラスト(明暗差)を意識的に描き分けることが、リアリティーを引き出すための基本です。
たとえば、H系統の鉛筆で明るい部分を、B系統の鉛筆で影の部分を描くと、自然な奥行きと立体感が表現できます。初心者のうちは、さまざまな濃さの鉛筆を試しながら、自身の描きたい表現に合った鉛筆のトーンを見つける練習をしてみましょう。
尚、風景画の描き始めの輪郭を捉える際には、鉛筆を人指し指・中指・親指で優しく軽く持ち、肩と腕を使って大きく全体を描いて行きましょう。
この場合には、優しく軽く描いてもスケッチブックや紙にしっかりと鉛筆ののる「Bや2B」の鉛筆で描くことがオススメです。優しく描いても充分描けて、「練り消しゴム」で簡単に修整ができるので扱いやすいのです。
鉛筆のコントラストは、実際に色々な鉛筆で描いてみて実感することが一番の近道です。
遠近法を使って奥行きを感じさせる
風景をリアルに描くためには、遠近法も不可欠です。鉛筆画では、対象が遠ざかるほど輪郭やディテール(詳細)がぼやけ、薄くなる効果を利用して奥行きを表現できます。
近景には細かいディテールや強い陰影を加え、遠景には軽めの線を使うことで自然な距離感を出せます。
特に風景スケッチでは、遠近法を意識するだけで画面に深みが生まれ、観てくださる人に、よりリアルな印象を与えることができます。次の筆者の作品を参照してください。
国画会展 入選作品 誕生2008-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治
風景全体の構図を考える
構図は、風景画の全体的な印象を左右する重要な要素です。描き始める前に、画面内でどの部分を強調し、どのように配置するかを計画しておくと、完成度の高い作品になります。それが「構想を練る」という作業です。
一般的に、画面の左右や上部・下部に視線を導く要素を配置することで、視覚的にバランスの取れた構図を作り出すことが可能になります。構図が整うと、風景の雰囲気やリアリティーがより一層引き立ちます。
繰り返しますが、構図と聞くと何か難しいことのように聞こえるかもしれませんが、構図は簡単なものもたくさんあります。
具体的には、黄金分割という構図がありますが、これは制作画面の縦横を正確に測って、その値に対して÷1.618で得られた寸法を、画面の左右から測った位置が黄金分割点(線)になります。
上下の寸法に対しても同じであり、それぞれ上下から測った位置の分割点(線)を使って、水平線や地平線にすると自然に構図を導入できます。
画面の左右からの黄金分割点(線)の位置には、あなたが風景の中で強調したい樹木や時計台などをその位置に据えるだけです、もう片方の黄金分割点(線)には、あなたが2番目に気に入っている部分や強調したい部分を据えるといったことです。
この場合、現実的には離れた位置にあるものを、この黄金分割点(線)に据えても良いですし、あなたの撮りためた画像やネットからのスクリーショットの画像を合成しても良いのです。
あるいは、実際の風景には電柱や電線があっても、それらを削除して「見映え」のする作品に仕上げるのも良いです。これをデフォルメと呼び、どの作家も当たり前に行っています。
尚、このデフォルメは、削除の他に、省略・拡大・縮小・つけたしなど、何でもありです。具体的には、実際の風景にある構図上の分割点に据えたいモチーフが小さい場合には、「あなたの都合の良い大きさ」にすればよいのです。
また、こまごまと模様や柄のあるものが制作画面上にあると人の目は無意識のうちにそれらの部分を注目してしまうので、それらの部分の模様や柄を「省略」して、あなたが観てくださる人の目を、注目してほしい部分に惹きつけられるようにするということです。
このデフォルメを活用することは、あなたの作品制作の幅を広げてくれると同時に、見映えのする作品に仕上げられます。
光と影を使ったリアルな風景表現のためのポイント
国画会展 入選作品 誕生2006-Ⅱ F100 鉛筆画 中山眞治
モノトーンの鉛筆画において、リアルな風景を描くためには光と影の使い方が鍵となります。色がない分、光と影によって立体感や深みを表現し、風景に命を吹き込むことが重要です。
本章では、リアルな風景描写のための光と影の基本ポイントを解説します。
光の方向を意識して描く
リアルな風景を表現するには、まず光の方向を正確に捉えることが大切です。光の方向によって、物体の陰影がどこに落ちるかが決まり、全体の奥行きが生まれます。
たとえば、太陽が左上から差し込む場合、右下には影ができ、樹々や建物などに自然な立体感が出ます。描き始める前に光源の位置を確認し、それを意識して影を配置することで、リアルな風景を表現できます。
光が差し込む方向に沿った、それぞれの影の向きを統一することで、観てくださる人に自然な印象を与えられます。
影の濃さで距離感を表現する
鉛筆画で風景に奥行きを出すためには、影の濃さを使って遠近感を表現することが効果的です。近くの物体は影が濃く、遠くなるに従って物体の影は薄くなっていく傾向にあります。
これにより、手前の要素が鮮明で遠くの要素がぼやけた自然な奥行きが生まれます。濃さの異なる鉛筆を使い分け、前景と遠景のコントラスト(明暗差)を調整することで、リアリティーが増します。
国画会展 入選作品 誕生2014-Ⅱ 鉛筆画 中山眞治
光と影の境界を滑らかにする
リアルな鉛筆画において、光と影の境界線(縁)を滑らかに表現することで、風景全体に柔らかな印象を与えられます。特に、雲や山、湖の反射などの風景要素では、影の境界線(縁)がシャープでないほうが自然な表現になります。
分かりやすく説明すれば、仮に真夏の昼下がりの樹木の影は、くっきりとした濃い影ですが、窓から室内に入っていく光の縁は、部屋の中へ進むにしたがって淡くなっていきます。つまりこのような状態を見逃さずに描写するということです。
そのためにも、ぼかし技法を使って、柔らかなグラデーション(階調)を作ることで、リアルな風景に仕上げることができます。擦筆(さっぴつ)を使って擦ったり、ティッシュペーパーを小さくたたんだもの及び、綿棒や指を使って代用もできます。
光と影の強調を意識するだけで、鉛筆画に深みとリアルさが増します。モノトーンでの表現だからこそ、光と影のコントラストや境界の描き方が重要です。これらのポイントを実践し、風景にリアルな立体感と奥行きを加えましょう。
遠近法を活かした奥行きのある風景の描き方
国画会展 入選作品 誕生2006-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治
モノトーンの鉛筆画でリアルな風景を表現するには、遠近法を活用して奥行きを持たせることが重要です。遠近法を適切に使うことで、風景に深みが生まれ、観てくださる人を画面の中に引き込むような立体感を与えることができます。
本章では、奥行きのある風景を描くための基本的な遠近法のポイントを解説します。
一点透視図法で奥行きを強調する
一点透視図法は、最も基本的な遠近法で、特に道や建物が遠ざかる風景に有効です。この手法では、全ての線が一点に向かって収束し、手前から奥へと自然に視線を誘導できます。下の画像を参照してください。
例えば、まっすぐな道を描く場合、道の両端が遠くの一点に向かって狭まっていく様子を描くと、簡単に奥行きが表現できます。初めて遠近法を使う人は、この方法から始めると理解が深まりやすくなります。筆者の次の作品を参照してください。
坂のある風景Ⅱ F1 2019 鉛筆画 中山眞治
画面の道路の奥行の高さは、√2の位置に設定しています。具体的には、画面縦の寸法に対して÷1.414で得られた寸法を使って得られた高さを基準にするということです。こんな風にも「構図」は活用できます。
遠くの物体ほど小さく薄く描く
鉛筆画で奥行きを表現するためには、遠くにある物体を小さく、かつ薄く描くことがポイントです。山や樹々など、距離によってサイズを小さくし、ディテール(詳細)も少なく描くことで、遠近感が自然に生まれます。
また、遠景には軽めの線を用い、輪郭をぼやかすことで、手前の物体とのコントラスト(明暗差)が際立ち、リアルな奥行きが強調できます。この技法を活かすと、風景画に奥深さが加わります。
重ね描きで前後関係を明確にする
奥行きを表現するもう一つの方法として、物体の前後関係を重ね描きで明確にする技法があります。手前の木や岩などを描いた後、その後ろに配置する要素を少し薄めに描くことで、画面に奥行きが出ます。
さらに、手前の物体に濃い影を加えると、奥に配置した物体が遠くに感じられ、より一層リアリティーが増します。このように、重ね描きを使って遠近感を演出することで、風景に深みが生まれます。
遠近法を取り入れると、鉛筆画で表現する風景に立体感と奥行きが加わります。モノトーンで描くからこそ、遠近法の効果がより際立ち、視覚的に引き込まれる作品を仕上げることができます。筆者の次の作品を参照してください。
国画会展 入選作品 誕生2015-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治
構図の工夫で風景画にリアリティーを与える方法
駅 2021 F6 鉛筆画 中山眞治
モノトーンの鉛筆画で風景をリアルに表現するには、構図の工夫が重要です。構図を意識することで、画面に奥行きや立体感が生まれ、風景がよりリアルに感じられます。
本章では、鉛筆画で風景のリアリティーを高めるための構図のポイントを紹介します。
三分割法を使ってバランスを整える
風景画において、構図を整えるための基本的な一つのテクニックが「三分割法」です。画面を縦横を三分割し、交点や分割線に主要な要素を配置すると、自然で安定感のある構図が作れます。
たとえば、山や建物を画面の左右三分割の位置に置き、水平線を三分割の線上に配置することで、バランスがよくリアリティーを感じさせる風景が生まれます。三分割法を意識すると、画面に視覚的なリズムが生まれ、見やすい構図が完成します。
具体的には、次の筆者の作品は風景画ではありませんが、三分割の構図基本線を描いて、その基本線を使いながら画面上に3つのモチーフで三角形を構成しています。例えば、このように風景の中の主要なポイントを配置すれば、構成がまとまってくるということです。
- 黄色の線:3分割構図基本線
- 緑色の線:3分割線
- 青色の線:「抜け」に使うための線
- ピンク色の線:3つのモチーフで3角を構成する線
ミヒカリコオロギボラのある静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治
上の構図基本線を色別に説明している画像の中で、「抜け」を説明している部分がありますが、この「抜け」とは、観てくださる人に「息苦しさ」を与えないための工夫です。このように構図上の一部を使って、風景画の中に「一工夫」することもできます。
視線を誘導する線を活用する
リアルな風景画では、視線誘導も重要なポイントです。道や川、フェンスなど、画面に奥行きを生む「誘導線」を活用することで、視覚的に奥行きを感じさせられます。
視線が画面の奥へと自然に導かれると、観てくださる人は風景に没入しやすくなります。鉛筆で描く際には、線の太さや濃淡を調整し、手前から奥にかけて誘導線を薄くすることで、立体感を増し、構図に深みを持たせることができます。
筆者の次の作品を参照してください。この作品では、画面左下には、見えづらいですが、地表を割って目が発芽しようとしているモチーフを置いています。
そこから画面右上に向かって、観てくださる人の視線を誘導しています。画面右側にあるのは「タバコの吸い殻」ですが、このモチーフも手伝って、視線誘導を行っています。
そして、主役の背後にある「枯葉」は主役との強烈な「生と死の対比」を行い、また、「丸い地平線」は大地の広がりを表現し、「マッチ棒」は画面を鎮める働きをしています。
国画会展 入選作品 誕生2001-Ⅱ F80 鉛筆画 中山眞治
さまざまな要素を使って、画面構成を考えながら、観てくださる人を引き込む制作を心がけましょう。
前景、中景、遠景を意識して配置する
風景画にリアリティーを与えるためには、前景、中景、遠景の三層構造を意識することが効果的です。前景には手前にある樹や草など、細部を描き込むことで存在感を強調し、中景には主要なモチーフを配置して風景の中心となるポイントを作ります。
後景には山や空などの背景を描き、淡い線で輪郭をぼかすことで、画面全体に奥行きが生まれます。この三層構造を取り入れることで、モノトーンの鉛筆画に深みとリアリティーが加わります。
構図の工夫によって、鉛筆画で描く風景はさらに魅力的でリアルなものになります。三分割法や視線誘導、三層構造を意識することで、観てくださる人を引き込むような奥行きとバランスのある作品が完成できます。
尚、画面深度を深める方法をお教えします。それは、前景を薄暗く、中景を暗く、遠景を明るくすることで、圧倒的に画面深度を高められます。筆者の次の作品を参照してください。
国画会展 会友賞 誕生2013-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治
鉛筆で質感をリアルに表現するテクニックと練習法
モノトーンの鉛筆画でリアルな質感を表現することは、風景画をより魅力的にするために欠かせない要素です。異なるモチーフの質感を再現することで、作品に深みとリアリティーが生まれます。
本章では、鉛筆で質感をリアルに表現するための基本的なテクニックと、練習法を紹介します。
ハッチングとクロスハッチングで質感を表現する
ハッチングは、同じ方向からの線を重ねることで、影や質感を表現するテクニックです。樹の幹や岩肌のような粗い質感にはハッチングが効果的です。
一方で、クロスハッチングは縦横斜めの4方向からの線を重ねる方法で、より複雑な質感を表現できます。例えば、布や草むらのように繊細な質感を表現する際に有効です。
この方法で描きにくい方向の線は、スケッチブックや紙を90°回転させれば無理なく描くことができます。
ハッチングやクロスハッチングの角度や間隔を工夫しながら、リアルな質感を作り上げていくことで、モノトーンでも豊かな表現が可能になります。
淡い色は淡い色なりに、濃い色は濃い色なりに、クロスハッチングを施すことによって、満足のいく色面を得られます。
例えば筆者の次の作品を参照してください。前景の一番濃いトーンのところには8Bを使い、その部分の左上には6Bで、さらにその上の部分には4Bを使い、それぞれにクロスハッチングを行うことで均一なトーンを得られています。
遠景は、前述していますが、距離が離れるに従って、徐々にトーンを明るくしていくことによって、遠近感が増していることが確認できる良い見本でもあります。
第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
ぼかしを使って滑らかな質感を再現する
柔らかな質感や滑らかな面を表現する際には、鉛筆のぼかし技法が有効です。特に水面や空など、自然なグラデーションが求められる部分で使われます。擦筆(さっぴつ)を使って鉛筆の線のエッジ(縁)を軽くぼかすことで、滑らかな質感が生まれます。
擦筆の画像です
あるいは、ティッシュペーパーを小さくたたんでもの及び綿棒や指で擦って代用もできます。
また、ぼかし加減を調整することで、柔らかさや透明感を自由にコントロールできるため、リアルな描写には欠かせない技法です。練習として、異なる濃さの鉛筆を使い分けながらぼかし方を試してみましょう。
特にぼかし技法は、風景の中の雲や樹の曲面のあるモチーフの制作には欠かせませんし、人物の顔・肩・腕などでも必ず必要になる技法です。
細部を描き込みリアリティーを追求する
質感をリアルに表現するには、細部を丁寧に描き込むことも重要です。例えば、葉や石の表面の細かい凹凸、木の年輪など、対象物の特徴を忠実に再現することで、質感が活き活きと表れます。
細かいディテールを入れすぎず、全体のバランスを見ながら描くと、観やすくリアルな仕上がりになります。ディテール(詳細)の練習として、小さな物体やパターンを繰り返し描くことで、質感表現のスキルを磨きましょう。
鉛筆でリアルな質感を表現するためには、ハッチングやぼかし、細密描写のテクニックが必要です。これらを練習することで、風景画にリアリティーが加わり、モノトーンの鉛筆画でも豊かな質感を表現できます。
尚、風景を描いて行くうえでは前述していますように、画面に収めるすべての対象物を細密描写してしまうと、「焦点ボケ」してしまい、「何を言っているのか分からない作品」と言われかねません。
そこで、あなたが画面に収めようとしている各種対象物の中で、あなたがその観えている各種物体の中で、一番気に入った物体や一番感動した物体を主役として、描いてみましょう。
その主役や準主役となる対象物を細密描写して、それ以外の物体には、「それとなくわかる程度」の描き込みにしてみましょう。そうすることで、あなたの感動や主張が強調された作品にできるはずです。
あるいは、細かく全体を描いて行きたいとおっしゃる場合には、全体を描いて、主役と準主役には「ハイライト」をしっかりつけて、それ以外の物体には「ハイライトを抑えて描く」ことで、主役や準主役を引き立てることもできます。
たとえ毎日10分間でも集中して練習すれば上達できる
鉛筆デッサンという動作は、あなたが目で観た光景を脳で理解して、手を動かす作業と言っても良いでしょう。つまり、観たものを手の動作に連動できるように「脳と手をトレーニング」するということです。
そのためにも、たとえ毎日10分間であっても「集中して取り組む」ことで、上達していくことは可能です。
そして、この場合には一切のことを頭の中から追い払って、あなたが「楽しんで集中できるようにする」ことが重要です。しかし、1週間に1度くらいは、「たっぷりと時間を取って」描くことも必要です。
筆者の場合には、最初から鉛筆画にはまってしまい、平日には毎日2時間、土日祝祭日盆暮れ正月には、「描きたくて目が覚めてしまい」早朝から夕方まで、家事をはさんで描いていましたので、3年半で最初の個展までたどり着けました。
あなたも、そこまでやってはどうかとは申しませんが、「楽しんで取り組めた」ことがその原点だと筆者は思います。まずは、あなたも冒頭のくりかえしになりますが、楽しんで描くことを再優先しましょう。
楽しんで描いて行くにはどうしたらよいのかといえば、さまざまな構図にさまざまなモチーフをどのように組み合わせるかを考えたり、人物・静物(花を含む)・風景・心象風景・動物など、すべてのジャンルに順番に取り組むことでモチベーションを高められます。
まとめ
国画会展 入選作品 誕生2002-Ⅱ F100 鉛筆画 中山眞治
モノトーンの鉛筆画でリアリティーのある風景を描くには、技法と構図の工夫が欠かせません。以下では、初心者の人が押さえておくべきポイントをまとめました。
描き始める際の最重要事項
- 余計なことは考えずとにかく楽しんで描くことに集中する。
- 5作品ほど描いてみる。
- 描くことに慣れてきた際には構図の研究を始める。
基本技法のポイント
光と影の使い方
- 光源を確認して影を意識しながら立体感を出す。
- 影の濃さを調整して奥行きを表現する。
- ぼかしで光と影の境界を滑らかにする。
遠近法
- 一点透視図法で自然な奥行きを強調する。
- 遠くの物体は小さく薄く描き、距離感を出す。
- 前後の重ね描きで遠近感を明確にする。
リアリティーを高める構図の工夫
- 一例として三分割法で画面を安定させ、自然なバランスを作る。
- 誘導線(道や川など)を活用して視線を奥へ誘導する。
- 前景・中景・後景の三層構造で風景に深みを加える。
質感を表現するテクニック
- ハッチングとクロスハッチングで樹や岩などの質感を描写。
- ぼかし技法で水面や空の滑らかな質感を再現。
- 主役や準主役へ細部の描き込みでディテールを強調し、リアリティーを追求。
効果的な練習法
- さまざまな鉛筆の濃さを試し、質感と陰影を描き分ける練習をする。
- 小さなモチーフを描くことで、ハッチングやぼかしのスキルを向上。
- 自然な遠近感と奥行きのある構図を意識した風景スケッチを繰り返す。
鉛筆だけでリアルな風景を描くためには、光と影、遠近法、構図、質感表現を理解し、練習を重ねることが大切です。これらのポイントを押さえ、豊かな奥行きとリアリティーを備えた鉛筆画に挑戦しましょう。
ではまた!あなたの未来を応援しています。
筆者の場合には、絵画教室で習い始めましたが、並行して自宅でも好きなものを好きなように描いていました。一番最初の風景画は、近所の公園の色々な場所をデジカメで撮ってきて描きました。