こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

筆者近影 作品「月のあかりに濡れた夜Ⅱ」と共に
さて、鉛筆画でリアルな質感を表現するには、素材ごとの特性を理解し、適切なデッサン技法を使い分けることが重要です。
この記事では、木のざらつき、石の硬さ、水の透明感、金属の光沢、毛皮の柔らかさなど、質感の異なる対象を鉛筆だけで描き分ける方法や、質感をリアルに表現するための、基本技法や応用テクニックを紹介して行きます。
光と影の使い方、線のタッチ、ぼかしの活用法など、上達のポイントをご説明しますので、質感表現を極めて、よりリアルで魅力的な鉛筆画を描けるようになりましょう。
それでは、早速どうぞ!
鉛筆画の質感表現の基本:線・陰影・テクスチャーの使い方

午後のくつろぎ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画でリアルな質感を表現するためには、「線の種類」「陰影の付け方」「テクスチャー(質感)の描き分け」の3つの要素を適切に使いこなすことが重要です。
これらの要素を理解し、効果的に組み合わせることで、木のざらつき、金属の光沢、水の透明感など、異なる質感をリアルに描写できるようになれるのです。
本章では、それぞれの要素を具体的に解説し、鉛筆だけで質感を高めるコツを紹介します。
線の種類と使い分け方

椿Ⅱ 2024 SM 鉛筆画 中山眞治
線の描き方ひとつで、質感の印象は大きく変わります。例えば、木の質感を表現するには、短くランダムな線を重ねて描くとリアルに見えます。
しかし、筆者の場合には、風景の中の木には細密描写はほとんどしません。その理由は、主役がより一層引き立つように、「意図的に」何となく木とわかる程度にしか描き込まないからです。筆者の次の作品を参照してください。

国画会展 入選作品 誕生2007-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治
この作品の主役は、画面上の水滴を蓄えた植物の芽です。準主役はその左下の同じく植物の芽です。さらにその左下の画面下左角にある植物の芽の3つで、成長していく「リズム」を表しています。3つの動きで「リズム」を表現できることも記憶しておきましょう。
そして、木を主役として描く場合には、樹皮などもしっかり描く必要があります。つまり、主役や準主役には細密な描写を施しても、それ以外の脇役などには、主役や準主役を引き立てるために、細密描写はしないということです。
我々人間の目は、細かい模様や柄に注目してしまう習性があるので、主役や準主役と、観てくださる人の目を意図する方向へ誘導するためにも、余計なところで注意を奪われないようにする必要があるのです。
一方、金属のような滑らかな質感を表現するには、長く均一な線を丁寧に描くことで光沢感を生み出せます。モチーフ(対象物)の素材感に応じて、線の太さ・密度・方向を調整することがポイントです。

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇 氏
陰影の付け方と質感の関係

陰影のつけ方によって、立体感だけでなく質感の違いも表現できます。
例えば、土や石のようなマット(艶消し)な素材には、短いランダムな線や点描なども効果的に使いましょう。
また、ハッチング(一定方向からの線を重ねて塗る技法)やクロスハッチング(縦横斜めの4方向からの線によって面を埋める技法)も補助的に使ってざらつきを出します。

一方で、ガラスや金属など光を反射する素材は、明暗の境界をぼかしながらグラデーションを作り、自然なハイライトを加えることで質感を強調できます。

家族の肖像Ⅲ 2024 F6 鉛筆画 中山眞治
筆者のガラス製品の描き方は、例えば、一つのビンを描く場合には、全体をHB等の鉛筆で優しく軽い縦横斜めの4方向からの線(クロスハッチング)で、ビン全体を埋めます。
そして、光っている部分を「練り消しゴム」で「拭き(抜き)」取り、その後はそれぞれの必要となるトーンを入れていけば完成へ近づけます。
その際の注意事項は、ガラス製品には「真っ黒でピシッとした」線が入っていることに注意して、思い切って濃いトーンを入れましょう。これがないと、ビンなどはそれらしく見えなくなってしまいます。筆者の次の作品を参照してください。

モアイのある静物 2000 F50 鉛筆画 中山眞治
尚、金属製品も濃い影が入るところがありますが、ハイライトは一番明るいスケッチブックや紙の地肌の色を使いましょう。また、モチーフの映り込みを入れることで、リアリティー(現実性)が増します。筆者の上の作品を参照してください。
陰影のコントラスト(明暗差)を調整することで、モチーフ(対象物)の硬さや柔らかさも表現が可能になります。
テクスチャーの描き分けのコツ

質感をリアルに描くには、表面の細かい凹凸や模様を意識することが大切です。例えば、野菜や果物の質感は、微細な点描や擦筆(さっぴつ)を活用することで、滑らかさやツヤを表現できます。
また、人の肌のように繊細な質感を描く場合は、強い線を避け、ティッシュペーパー及び綿棒や擦筆を使って自然なぼかしを入れると滑らかさが増します。
描く対象によってテクスチャー(質感)を工夫することで、よりリアルな鉛筆画に仕上げられます。尚、擦筆とは「ぼかし」専用のツールですが、ティッシュペーパー及び綿棒で充分に代用できます。

擦筆の画像です
木や石の質感をリアルに描く方法:硬さと質感の違いを表現

坂のある風景Ⅰ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画で木や石の質感をリアルに表現するには、それぞれの「硬さ」と「表面の特徴」を適切に捉えることが重要です。
木は、表面や内部にも特徴的な模様がであり、柔らかい質感のものから硬いものまで種類が豊富です。一方、石はザラザラとした凹凸があり、光の当たり方によって質感が変わります。
本章では、木と石の異なる質感を鉛筆で描き分ける具体的なテクニックを解説します。
木の質感を描くための線の使い方

木の表面(樹皮)には、特徴的な模様があります。これらを表現するためには、長いストロークで直線を描き、ランダムな濃淡を加えることが大切です。
硬い木材はシャープな線を活かし、木の表面を細かく描くことで硬質感を出せます。逆に柔らかい木材の場合は、筆圧を弱め、滑らかなタッチで描くと自然な質感になります。
また、節の部分は影を強調し、立体感を出すとよりリアルに見えます。
石の硬さを表現する陰影の付け方

石の質感をリアルに描くには、陰影のコントラスト(明暗差)を強調することがポイントです。ランダムな濃淡をつけることで、石の凹凸感を表現できます。
例えば、表面が荒い石は、短く不規則なハッチング(一定方向からの線の重ね塗り)を重ねて描くと効果的です。滑らかな石の場合は、鉛筆を軽く動かし、綿棒や指でぼかして自然なグラデーション(階調)を作ります。
光の当たる部分を明るく、影を深くすることで、石の硬さを際立たせることができます。
木と石の質感を描き分けるタッチの工夫

木と石はどちらも自然物ですが、その描き方には大きな違いがあります。
木には、縦に通った直線や、上の画像にもありますように、横に回り込む模様や筋目があります。木目を描く際は、鉛筆の芯を尖らせて細かい線を描き、影を柔らかくつけるとリアルに仕上がります。
一方、石は不規則な形を捉えることが重要です。断片的な線とランダムな影を組み合わせることで、独特の質感を表現できます。
木と石の質感を適切に捉え、それぞれの特徴に合った技法を使うことで、よりリアルな鉛筆画が描けるようになります。練習を重ねながら、最適なタッチや陰影の付け方を試してみましょう。
水や金属の質感を鉛筆で描き分ける!透明感と光沢の表現テクニック

水滴Ⅴ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画で水や金属をリアルに描くには、それぞれの質感の違いを意識して、光の反射や透明感を適切に表現することが重要です。水は透き通る性質を持ち、光を柔らかく拡散します。
一方、金属は光を強く反射し、硬質な輝きを持ちます。
本章では、鉛筆だけで水の透明感や、金属の光沢を表現するためのテクニックを解説します。
水の透明感を表現する陰影の使い方

水の描写では、輪郭線をできるだけ排除し、陰影のグラデーション(階調)を活用することがポイントです。水面には波紋が生じるため、柔らかな曲線を入れながら、光が当たる部分を白く残します。
また、鉛筆を軽く動かし、ティッシュペーパー及び綿棒や擦筆でぼかすことで、滑らかな質感を作り出せます。
特に、水滴や水たまりを描く際は、周囲の光や反射を意識するとリアリティー(現実性)が増します。

水滴Ⅵ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
金属の光沢を強調するコントラストの付け方

第1回個展出品作品 反射 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
金属の表現では、光の反射を正確に捉えることが重要です。光が当たる部分は白く残し、影の部分を濃い鉛筆でしっかり塗ることで、金属特有の強いコントラスト(明暗差)を作り出せます。
あるいは、制作するモチーフ全体にHB等の鉛筆で軽く優しく面全体を縦横斜めの4方向からの線によって埋め、その後、光っている部分を練り消しゴムで「抜く」ことによって、描き進めることもできます。筆者はこの手法が多いです。^^
また、エッジ部分をシャープに描くことで、硬質な質感を強調できます。さらに、細かいハイライトを入れることで、磨かれた金属の光沢を表現できます。
水と金属の違いを描き分けるポイント

第1回個展出品作品 昼下がりの桟橋 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
水と金属の大きな違いは、「光の拡散」と「表面の滑らかさ」にあります。
水は光を柔らかく拡散させるため、ぼかしやグラデーションを多用し、滑らかな表現を心がけます。
一方、金属は光を鋭く反射するため、コントラスト(明暗差)をはっきりとつけ、シャープな線を活用することが求められます。これらの特徴を意識して描き分けることで、よりリアルな質感を表現できます。次の作品を参照してください。

第1回個展出品作品 休日 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
水と金属の異なる性質を理解し、それぞれに適した陰影の付け方やタッチを使い分けることで、鉛筆画における質感表現の幅が広がります。

実際にさまざまな描き方を試しながら、透明感や光沢をリアルに描く技術を習得しましょう。
毛皮や布の柔らかさを表現するデッサン技法とは?

第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅡ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画で毛皮や布の柔らかさを表現するには、「線のタッチ」「陰影の付け方」「ぼかしの活用」が重要になります。毛皮は細かい毛束の流れを意識しながら描くことで、ふんわりとした質感を再現できます。
一方、布は折り目やシワの表現を通じて、その柔らかさや厚みを表すことができます。本章では、毛皮と布、それぞれの特徴を生かしたデッサン技法を解説します。
毛皮のふんわり感を出す線の描き方
毛皮をリアルに描くには、毛の流れを意識しながら、短いストロークを重ねることがポイントです。最初に薄い線で毛の方向を決め、少しずつ濃淡を加えながら毛束感を作ります。
そして、鉛筆を軽く動かし、強弱をつけながら描くことで、毛の自然な流れが表現できます。毛束の無い、全体的に「ふんわり」とした毛皮の描き方では、このように描いて行くことができます。
一方、「毛束感」のあるモチーフの場合、筆者の場合には、先ほどの「ビンの描き方」でも解説しましたように、ここでも「練り消しゴム」を使って簡単に描くことができます。
例えば、次の画像を見てください。毛の束を表現する際にも、毛並みを描くところへ、HB等の鉛筆の軽く優しいタッチで面を埋めて、「練り消しゴム」を練って、細くて鋭いプラスやマイナスのドライバーのような形状にしましょう。
そして、毛束の部分に「毛束の方向」を拭き取りましょう。その後は、必用となるそれぞれの部分へトーンを入れていけば、それらしく見えるようになります。次の作品を参照してください。

第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅠ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
布の質感を表現する陰影の付け方
布を描く際は、折り目やシワの形状を意識しながら、柔らかなグラデーションを作ることが重要です。光が当たる部分は薄く、影になる部分は濃く描くことで、布の立体感を引き出せます。次の作品を参照してください。

第1回個展出品作品 デコイのある静物 1998 F10 鉛筆画 中山眞治
特に、布の質感はシワの描き方で大きく変わるため、しっかりと観察しながら細部を調整しましょう。
また、布の種類によっては、陰影のぼかし方を変えることで、シルクのような滑らかな質感や、ウールのような厚みのある質感も表現できます。

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏
毛皮と布の違いを描き分けるためのぼかし技法

第1回個展出品作品 休日 1998 F10 鉛筆画 中山眞治
毛皮と布の違いを明確に描き分けるには、「ぼかし」の使い方が鍵となります。
毛皮の場合、ぼかしを入れすぎると質感が失われるため、あくまで毛束の流れを残しながら軽くなじませる程度にします。
一方、布は影の部分をしっかりぼかすことで、なめらかな曲線を作り出し、柔らかい印象を与えることができます。次の作品を参照してください。

第2回個展出品作品 灯の点る窓辺の静物 2000 F100 鉛筆画 中山眞治
鉛筆のタッチを使い分けることで、毛皮と布、それぞれの質感をリアルに表現できるようになります。
毛皮や布の質感を描き分ける技法を身につけることで、鉛筆画の表現力が格段に向上します。素材ごとの特徴を理解し、それに適した描き方を工夫しながら練習することが大切です。
質感を高めるための陰影とハイライトの使い方

第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画でリアルな質感を表現するには、陰影とハイライトの使い方が重要です。陰影は立体感や奥行きを生み出し、ハイライトは質感や光の影響を強調します。
金属の光沢、水の透明感、布の柔らかさなど、異なる質感をリアルに表現するためには、陰影とハイライトを適切に配置することが不可欠です。
本章では、モノトーンの鉛筆画における陰影とハイライトの基本的な使い方を解説します。
陰影を使って立体感と質感を引き出す

第1回個展出品作品 静物Ⅱ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
陰影の付け方ひとつで、モチーフの立体感や質感は大きく変わります。
例えば、金属のように硬いものは、陰影の境界をはっきりさせてコントラスト(明暗差)を強調することで、硬質な質感を表現できます。
一方、肌や布のような柔らかいものは、陰影をぼかしてグラデーション(階調)を作ることで、なめらかさを演出できます。次の作品を参照してください。

つかの間の休日 2023 F10 鉛筆画 中山眞治
影の濃さやエッジの強さを調整することで、質感の違いを表現しましょう。
ハイライトで光の反射と素材の特性を表現

第1回個展出品作品 静物Ⅰ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
ハイライトは光の反射を示すため、素材ごとに適切な配置が求められます。
金属やガラスのような光を強く反射する素材では、シャープで明るいハイライトを入れることでリアリティー(現実性)が増します。
一方、水や肌などの柔らかい質感では、ハイライトをぼかしながら広く配置することで、自然な光沢を表現できます。
ハイライト部分を練り消しゴムで調整し、メリハリをつけることがポイントです。
陰影とハイライトを組み合わせた質感表現のテクニック

蕨市教育委員会教育長賞 灯(あかり)の点(とも)る静物 2000 F30 鉛筆画 中山眞治
陰影とハイライトを組み合わせることで、よりリアルな質感を作り出すことができます。
例えば、石や土のようなザラザラした表面は、細かい影を点描のように配置し、明るい部分を強調することで質感を引き立てられます。
反対に、滑らかなものは影の境界を丁寧にぼかし、ハイライトと自然に馴染ませることで、よりリアルな質感を表現できます。
モチーフの特徴を観察しながら、陰影とハイライトを適切に調整しましょう。

陰影とハイライトの使い方を工夫することで、鉛筆画の表現力は飛躍的に向上します。光の当たり方や素材の特性を意識しながら、質感をよりリアルに描く技術を磨いていきましょう。
ガラス・野菜・果物・土・人の肌の質感を描き分けるポイント

第1回個展出品作品 家族の肖像 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画で異なる質感をリアルに表現するには、それぞれの素材の特徴を適切に捉え、タッチや陰影の付け方を使い分けることが重要です。
ガラスの透明感、野菜や果物の滑らかさや凹凸、土のざらつき、人の肌の柔らかさなど、各質感に合った描き方を工夫することで、リアルな表現が可能になります。
本章では、ガラス・野菜・果物・土・人の肌の質感を鉛筆画で描き分けるポイントを解説します。
ガラスの透明感と光の屈折を表現するテクニック

第1回個展出品作品 胡桃のある静物 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
ガラスをリアルに描くには、透明感を意識しながら光の屈折や映り込みを表現することが重要です。輪郭線を濃く描かず、背景の陰影で形を浮かび上がらせることで、透明感を演出できます。
また、光の反射を明確にするために、練り消しゴムを使ってハイライト部分を強調すると、よりリアルな質感が生まれます。
濃いトーンの背景を描き込むことで、ガラスの透明性やハイライトをより際立たせることも効果的です。
野菜・果物の質感をリアルに描く陰影の使い方

第1回個展出品作品 葡萄 1996 F6 鉛筆画 中山眞治
野菜や果物は、表面が滑らかなものとザラついたものがあり、それぞれ異なる描き方が必要です。
リンゴやナスなどのツルツルした表面は、滑らかなグラデーションで陰影をつけ、光沢を表現するとリアルになります。

林檎 2019 F3 鉛筆画 中山眞治
一方、イチゴやゴツゴツした野菜のように表面に細かな凹凸があるものは、短いストロークや点描を使い、テクスチャー(質感)を強調すると自然な質感が生まれます。
土や人の肌の質感を描き分けるポイント
土の質感は、ランダムな線や細かな点描を使い、影を散らしながら描くことで表現できます。固まった土は濃淡の差をつけることで重厚感を出し、乾いた土は線を軽くしながら柔らかい雰囲気を作ります。次の作品を参照してください。

国画会展 入選作品 誕生2001-Ⅱ F80 鉛筆画 中山眞治
一方、人の肌は滑らかな陰影を意識し、強い線を使わずに優しくグラデーション(階調)を描くことがポイントです。次の作品を参照してください。

第1回個展出品作品 人物Ⅳ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
ティッシュペーパー及び綿棒や擦筆でぼかしながら、柔らかさを際立たせることで、よりリアルな肌の表現が可能になります。
しかし、無理にぼかすことは必要ありません。上の作品では、「ぼかし」は使わずに、2Hの鉛筆の軽く優しいタッチの塗り重ねだけで、肌の質感を描いています。
それぞれの素材の特徴を理解し、適切な描き方を工夫することで、鉛筆画における質感表現の幅を広げることができます。質感を適切に描き分ける練習を重ね、リアルな表現を目指しましょう。
まとめ

青木繁記念大賞展 奨励賞 郷愁2001 F100 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画でリアルな質感を表現するには、素材ごとの特性を理解し、線・陰影・ハイライトを適切に使い分けることが重要です。
本章では、木、石、水、金属、毛皮、布、ガラス、野菜、果物、土、人の肌など、異なる質感をリアルに描くためのポイントを総まとめしました。
鉛筆画の質感表現の基本
- 線の使い分け:長短・太細・方向を調整し、素材の特徴を表現。
- 陰影の付け方:硬いものはシャープに、柔らかいものはグラデーション(階調)で描写。
- テクスチャー(質感)の表現:擦筆・ハッチング(一定方向の線の描き重ねの技法)・点描などを活用。
素材ごとの質感表現のポイント
- 木・石:木は直線と曲線の重なり、石はランダムな濃淡でザラつきを再現。
- 水・金属:水は輪郭をぼかし透明感を演出、金属はコントラスト(明暗差)を強調。
- 毛皮・布:毛皮は短いストローク(鉛筆の運び)や、練り消しゴムを使った手法も使う、布は柔らかな陰影でシワを表現。
ガラス・野菜・果物・土・人の肌:
- ガラス:輪郭を描かずに背景に濃いトーンを配置し、光の屈折と映り込みを強調。濃いトーンを入れることで適切に表現。
- 野菜・果物:滑らかなものはグラデーション(階調)、ザラついたものは点描。
- 土:細かい線と濃淡で質感を出す。
- 人の肌:H系統の鉛筆を使い、滑らかに陰影をぼかし、柔らかさを強調。
陰影とハイライトの使い方
- 陰影は素材の立体感と硬さを表現するために適切な濃淡をつける。
- ハイライトは光の反射を表すため、素材ごとに配置や強弱を工夫。
- 陰影とハイライトのバランスを調整し、リアルな質感を追求。
鉛筆の使い方を工夫し、素材ごとの特徴を活かすことで、よりリアルな質感表現が可能になります。
練習を重ね、繊細なタッチと陰影の使い方を習得し、モノトーンの鉛筆画で圧倒的なリアリティー(現実性)を追求しましょう。
ではまた!あなたの未来を応援しています。
鉛筆の使い方を工夫することで、質感表現の幅は大きく広がります。基本技法を習得し、さまざまな素材の特徴に合わせた描き方を試すことで、リアルなモノトーンの鉛筆画を制作できるようになれるでしょう。