こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅱ」と共に
さて、「バラを鉛筆画で描きたいけれど難しそう…。」と感じていませんか?初心者の人でも簡単にバラを描ける方法は、基本のコツを押さえることから始まります。
この記事では、鉛筆画初心者の人が迷わず取り組めるように、バラを簡単に美しく仕上げるための5つのポイントをご紹介します。
構図の取り方及び花びらの描き方や、立体感を出すための影の付け方まで、すぐに実践できる内容をまとめました。初めてでも安心して取り組めるコツばかりなので、ぜひ参考にしてください。
それでは、早速見ていきましょう!
バラを簡単に描くために初心者が押さえるべき基本とは?

バラを鉛筆画で簡単に描くためには、いきなり細部にまで描き込んでいくのではなく、全体の流れを捉えることが重要です。
初心者の人は、まず形をシンプルに捉え、バランスよく配置することから始めましょう。つまり、あなたの描こうとしているバラの花を描き始める場合には、当初は円や楕円のような大まかな形からスタートするべきです。
そして、外側から内側の花びらをざっくりと描いて行きます。モノトーンで描く場合、線の強弱と影の使い方が絵の完成度を左右します。
本章では、初心者の人が最初に押さえておきたい基本を紹介します。
大まかな輪郭を捉えるラフデッサンを行う
最初にバラの中心を決め、そこから花びらが渦を巻くように広がるイメージを持ってラフに描きます。

この段階では、細かい描き込みを意識せず、バランスよく大きさと形を配置することがポイントです。
描き方としては、大雑把な輪郭を捉えた後で、徐々に中心へ向かって描いて行くようにしましょう。中心から外側に向かって描いていくとすれば、当初描いた輪郭線をはみ出てしまうことにもなるからです。
花びらの重なりを意識して線を整理する

大まかな形ができましたら、花びら同士の重なり方に注目して線を整理します。
線は、重なりや奥行きを感じさせる部分を中心に描いて行きましょう。
モノトーンの鉛筆画では、線の太さで前後関係を表すと自然な印象になります。つまり、手前の輪郭を割とはっきりと、奥の輪郭には薄目・弱い目の線で描くということです。
濃淡で立体感を表現するための基本を押さえる

花びらの奥行きや立体感は、鉛筆の濃淡によって表現します。
光が当たる部分を薄く、影になる部分を濃く描くことで、バラの ふんわりとした質感が生まれます。
また、バラの花全体をしっかりと際立たせるためには、背景に濃いトーンを配置すれば、バラが浮き上がって見えてきます。いわゆる「ばえる」描写になります。
鉛筆画でバラを描く構図作りのコツ

バラを魅力的に見せるためには、デッサンの段階で構図をしっかり作ることが欠かせません。
特に鉛筆画では色がない分、配置とバランスが作品全体の印象を大きく左右します。
本章では、初心者の人でも取り込みやすい構図作りの基本を押さえて、バラをより引き立てる鉛筆画を目指すためのノウハウを提供します。
構図を研究すべき理由
あなたが初めて鉛筆画に取り組んだ場合には、最初に取り組む5作品ほどは、構図や色々な面倒なことは一切考えないで、楽しんで制作することが極めて重要です。
その理由は、最初からいろいろなことを考えてしまうと、手が止まってしまい挫折の原因になるからです。そのようなことよりも、あなたが楽しんで鉛筆画を描くことに慣れることが重要なのです。^^
そして、あなたが5作品ほど描いて「ある程度描くことに慣れて」来られましたら、構図についても研究を始めましょう。
その理由は、構図を使うことによって、作品をより見映えのする、まとまりのある作品にすることができるからです。^^
構図とは、先人の築き上げてきた美の構成に裏打ちされた、バランス・緊張感・力強さ・躍動感などを伝えることができる技術です。
構図は、作者とすれば「作品の魅力をより一層引き出せる技術」である反面、観てくださる人からすれば「見映えのする作品」に仕上げるための、重要なノウハウと言えます。
構図については、この記事の最終部分に関連記事「初心者でも簡単!プロが教える鉛筆画の構図の取り方やコツとポイント」を掲載していますので、関心のある人は参照してください。
主役のバラを画面の中心からずらして配置する
バラを画面の中央に置くと単調になりがちです。
少し中心を外し、観てくださる人の視線が、自然に作品内を回遊できるように配置することで、作品に動きと余白の美しさを作り出せます。次の画像を参照してください。

特に鉛筆画では、空間の取り方が作品に深みを与える要素にもなります。
花びらの向きと角度でリズムをつける

すべての花びらを正面から描くと平坦な印象になります。
いくつかの花びらを斜めに向けたり、ひねった形にすることでリズムが生まれ、自然な雰囲気になります。
あるいは、例えば花瓶に活けた花を描くのであれば、一輪だけは正面を向いていて、残りの花はそれぞれが別方向を向いているように描くと、正面を向いている花の視線さえ感じられるようになります。次の作品を参照してください。

第1回個展出品作品 トルコ桔梗 1996 F6 鉛筆画 中山眞治
モノトーン表現では、線の流れを意識して動きをつけることがポイントです。
茎や葉を加えて視線の流れを作る
バラ単体だけでなく、茎や葉を加えることで、視線を下から上へ、または横へと誘導できます。次の画像を参照してください。

構図全体の流れが整うことで、バラが一層引き立ち、まとまりのある作品に仕上がります。
花びらを自然に見せるための簡単な線の描き方

鉛筆画でバラの花びらを描くときには、線の扱い方一つで自然さが大きく変わります。
特に、モノトーンの鉛筆画では、線の流れと強弱が花びらの柔らかさや重なりを表現する重要な要素です。
本章では、初心者の人でもすぐに取り入れられる、自然な花びらに仕上げる線の描き方を紹介します。
線の始まりと終わりを軽くぼかす

花びらの輪郭線を強く描きすぎると、固い印象になってしまいます。
鉛筆を軽く持ち、線の始まりと終わりをややぼかすように描くと、柔らかさが出て自然な仕上がりになります。
特に、外側に向かう花びらほど、線をあいまいにするのがポイントです。
花びらのカーブに沿って緩やかに線を描く

花びらは平面的ではなく、緩やかにカーブしています。
この曲線を意識して、手首を柔らかく使いながら線を描くと、自然な動きが生まれます。
特に、中心から外側に向かうほど、曲線を少し大きく取ると、立体感を自然に演出できます。
強弱をつけて線にリズムを持たせる

常に同じ強さの線で描くと、単調に見えがちです。
花びらの影になる部分では少し濃く、光が当たる部分では薄く線を描くことで、自然なリズムが生まれます。

モノトーン鉛筆画では、この微妙な強弱が花びらのリアルな表現につながります。
鉛筆の濃淡でバラに立体感を与える方法

鉛筆画でバラに立体感を持たせるには、濃淡の使い分けがカギです。
モノトーンの表現では、光と影を意識して筆圧や、塗り重ね方を工夫することで、花びら一枚一枚に自然な奥行きが生まれます。
本章では、初心者の人が実践しやすい濃淡の基本テクニックを紹介します。
バラを描く際の簡単な手法
筆者の場合には、バラの輪郭が描けた時点で、まず、HBの鉛筆を優しく軽く持ち、輪郭全体に縦横斜めの4方向からの線で面を埋めます。
そこへ、「練り消しゴム」を練って、先端を鋭いプラスドライバーのような形状にして、モチーフをよく観察しながら、光っている部分や白い部分を練り消しゴムで拭き取ります。
その後は、それぞれに必要なトーンを入れていくことで、簡単に完成へ向かうことができます。次の画像は、バラではありませが参考にしてみてください。
次に続く画像は、バラの描きかたではありませんが、練り消しゴムを使った、簡単で描きやすい手法を具体的に解説します。さまざまな構図については、上述していますが、この記事の最終部分の関連記事を参照してください。
まずは、構図を決めていきます。制作画面の構図分割基本線は√2分割構図基本線とします。
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そこへ、縦の二分割線をわずかに左へ傾けて、画面上に動きを出します。

左右の画面上の「抜け」は斜線を暗示させながら、√2のライン(⑥)上に抜けのラインをかぶせます。もう片方の√2のライン上には、モチーフを中心に配置します。
また、モチーフ3点を使って「逆三角形」の構図も形成して、輪郭のデッサンを完成させましたら、画面左上から右下に通っている斜線の位置を暗示するために、球体も配置します。

次に、このように、モチーフ全体にHBの鉛筆を優しく軽く持ち、縦横斜めの4方向からの線(クロスハッチング)で、モチーフ全体にトーンを施します。

続いて、モチーフをよく観察しながら、光っている所を「練り消しゴム」で拭き取ります。

その後は、モチーフをよく観察しながら、それぞれの部位へ必要なトーンを施していけば、簡単に完成の方向へ向かえます。

家族の肖像Ⅱ 2024 F4 鉛筆画 中山眞治
バラを描く際であっても同じことです。輪郭を取り、充分な修整を加えながら、「これで良し」となるまで輪郭を整えましょう。
そして、バラ全体へHBの鉛筆の優しく軽い、縦横斜めの線(クロスハッチング)で輪郭全体を埋めて、白い・光っている部分を練り消しゴムで拭き取ればよいのです。
勿論、下地の紙の、白い・光っている部分を残して描いて行くこともできますが、前者の方が、筆者は描きやすいので、静物・風景・人物・動物・心象風景すべてにおいてこの手法を使っています。
光源を確認して明るい部分と暗い部分を明確にする

まず、どこから光がきて、バラの花にどのような角度で当たっているのかを確認することが必要です。また、影の長さや濃さの確認もしましょう。
光が当たる花びらの表面は明るく、重なった影になる部分は濃く描き分けます。
この光源の、明確な確認を最初におこなうことで、濃淡の位置がブレず、自然な立体感が表現できます。
濃淡を滑らかにつなげて自然なグラデーションを作る

花びらのトーンは、急に暗くっていくのではなく、滑らかに影の濃さは変化しています。
筆圧を調整しながら、徐々にトーンを変えるように塗ると自然なグラデーションが作れます。この場合には、優しいタッチで縦横斜めの4方向の線を使うことで、トーンを塗り重ねていくことができます。
力を抜いた塗り重ねを意識することで、モノトーンでも豊かな表現が可能になります。
影の濃さでバラの奥行きを強調する

バラの中心や、花びらの重なりが深い部分は、やや筆圧を強めた塗り重ねで、影を濃くします。
逆に、外側に向かうほど影を軽くすると、自然な奥行きが生まれます。
この濃淡差をはっきりつけることで、単調にならずに立体感のあるバラに仕上がります。
初心者がバラを描くときによくある失敗とその対処法

バラは美しい反面、鉛筆画初心者の人にとって形や立体感を捉えるのが難しいモチーフでもあります。
特に、モノトーンの鉛筆画では、線と濃淡の扱い方で作品の完成度が大きく左右されるのです。
本章では、初心者の人が陥りやすい失敗例と、それを防ぐための対処法を紹介します。
花びらの形を正確に捉えられない

バラの花びらは複雑に見えますが、基本は中心から外に向かって広がる螺旋構造です。
細部にこだわりすぎず、まず大まかな流れをシンプルな線で捉えることを意識しましょう。
下描き段階で、全体のバランスを整えることが失敗防止のカギになります。
線が濃すぎて花びらが固く見える

初心者の人は輪郭をはっきりさせようとして線を強く描きがちです。
鉛筆を柔らかく持ち、必要以上に線を強調しないように心がけましょう。また、花の輪郭線には、Hなどの鉛筆で優しく描き進むことで、自然な描写になります。
自然な花びらを表現するためには、線を軽く、必要な部分だけにとどめる工夫も必要です。
濃淡が足りずに立体感が出ない

全体を均一な明るさで描いてしまうと、バラが平面的に見えてしまいます。
光と影を意識し、重なりの奥にいくほど濃く、光の当たる部分は薄くすることで立体感を出せます。次の作品もバラではありませんが、参照してください。

一輪挿しと花 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
最初は、大胆に明暗差をつける練習がオススメです。
バラを描く際のモチーフの選び方は完成度を左右する
バラを描く際には、「光と影」の状態をはっきりと確認できる、白い花がオススメです。
また、鉛筆画で、特に初心者の人が描く際には時間を多く必要とするものです。生花ではすぐにしおれてしまうので、「造花の白いバラ」で練習すると、花の状態を気にせずにゆったり・のんびり楽しんで描けます。
何作品か、この「造花」で練習できれば、花びらの状態などは、大雑把にどの花でも同じようなものなので、練習に向いているのです。

同じ「造花の白いバラ」で描くのであれば、室内の明かりを消して、デスクライトの角度を変えるだけでも全く別の印象になりますし、一輪挿しなどに活ければ、全く違ったイメージで制作できます。
まとめ:鉛筆画初心者でも簡単にバラを描くために押さえたいポイント

鉛筆画初心者の人でも、基本をしっかり押さえればバラを簡単に美しく描くことができます。
モノトーンの表現ならではの線と濃淡の工夫で、作品の完成度を大きく高められます。
最後に、押さえておくべきポイントを整理しておきましょう。
- ラフデッサンで大まかな輪郭を捉え、花びらの流れを意識する。
- バラを画面中央から少しずらして、自然な構図を作る。
- 花びらの線はカーブを意識して柔らかく描く。
- 光源を確認し、濃淡で立体感を自然に表現する。
- 線を強く描きすぎず、重なりや影で自然な奥行きを出す。
- 練り消しゴムを有効活用して光っている所や白い部分を拭きとる方法が描きやすい。
- 描き始めには「造花の白いバラ」を使うと安心してゆったりと取り組める。
バラのデッサンは、細かい描き込みよりも、全体のバランスと自然なリズムを意識することが大切です。
初心者の人でも基本を押さえれば、モノトーンの鉛筆だけで豊かな表現が可能になります。練習を重ねながら、自分らしいバラのデッサンを目指していきましょう。
ではまた!あなたの未来を応援しています。
初心者の人はまず、全体の明暗のバランスを意識して軽く塗る練習から始めましょう。