構図はどう選ぶ?伝えたいことから考える構図の比較と修正【鉛筆画・デッサン】

 どうも。プロ鉛筆画家の中山眞治です。

           筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅳ」と共に

 さて、鉛筆画やデッサンで構図を学んでも、実際に描く場面では「どの配置にすればよいのか」、と迷うことはありませんか?

 構図の種類を知っていることと、自分の作品に合う構図を選べることには違いがあります。

 大切なのは、作品で何を伝えたいかを決め、その目的に合わせて主役の位置や大きさ、余白、観てくださる人の視線の動きを考えることです。同じモチーフでも、配置によって存在感や空間の印象は変わるのです。

 この記事では、表現したいことを出発点に、複数の構図案をエスキース(下絵)で比較して、本制作前と制作初期にも必要な修正を判断する方法を解説します。

 構図選びの迷いを整理して、納得して制作を進められるように役立ててください。本制作する以前のエスキースの扱いを、この記事のポイントに沿った思考で繰り返すことによって、あなたの作品は進化します。

 それでは、早速見ていきましょう!

Table of Contents

構図を選ぶ前に、作品で伝えたいことを決める

 構図を考えるときには、最初から「3分割構図にしよう」「主役を左側へ置こう」、と配置を決めてしまうことがありませんか?

 もちろん、使ってみたい構図から発想を広げることもできます。しかし、複数の案から一つを選ぶ場面では、配置の形だけを見比べても判断が難しくなるでしょう。

 そこで、先に整理したいのが、「この作品で何を伝えるか」、という目的です。目的があれば、配置を変えたときでも、その変更が作品の魅力を支えられているかを確かめられます。

 本章では、描きたいモチーフから、表現したいことを整理して、構図を選ぶための判断基準をつくる方法について解説しましょう。

鉛筆画やデッサンを、自分らしい作品へ育てたいあなたへ

構図や光と影、作品づくりのヒントを、無料メルマガでお届けします。楽しみながら、表現の幅を広げてみませんか。

無料登録

メールアドレスだけで無料登録できます
いつでも解除できます

描きたいモチーフと、伝えたいことを分けて考える

 「古い陶器の器を描きたい」、というような思いは、制作の大切な出発点です。

 ただし、それだけでは、器を大きく見せるのか、周囲の空間まで描くのかは決まりません。モチーフのどこに魅力を感じたのかを、もう一度考えてみましょう。

 たとえば、器の厚みや使い込まれた表面に惹かれたのであれば、形や質感が観える大きさを確保したくなります。

 一方、広いテーブルに、器が一つ置かれている様子に惹かれたのであれば、器だけではなく周囲の空間も必要です。

 同じ器を描く場合でも、前者は「器そのものの存在感」、後者は「器のある空間の静けさ」が構図を選ぶ手掛かりになります。

 まずは、「何を描くか」と「そのモチーフの何を見せたいのか」、を別々のメモに書いてみてください。 難しい言葉で説明する必要はありません。

 「丸い形が面白い」「小さな器が広い場所にある感じが好き」といった、自分自身の実感に近い言葉で充分です。その言葉が、配置を比較するときの出発点になります。

作品の中で最も観てほしい部分を一つ決める

 描きたいものが複数あると、それぞれを丁寧に見せたくなります。しかし、器の質感、果物の丸み、布の模様、背景の陰影を同じ強さで扱ってしまうと、作品の中心(主役)が分かりにくくなることがあります。

 構図を選ぶ前に、「最も観てほしいのはどこか」、を一つ決めましょう。それは、必ずしも一つのモチーフとは限りません。

 器の縁に当たる光や、二つのモチーフの間にできる空間など、モチーフの一部分や関係を中心にすることもできます。

 たとえば、器の縁に当たる光を見せたいのであれば、その部分が他のモチーフに隠れない配置を考えることが必要です。

 二つの器の間隔を見せたいのであれば、個々の器を大きく描くことよりも、その間にある空間を保つことが優先されます。この段階では、細部の描き方まで決めなくても構いません。

 最も観てほしい部分と、それを支える部分を分けておけば、後で案を比較するときに、「この配置では大切な部分が弱くなっている」、と気づきやすくなれるのです。

静けさ・存在感・動きのどれを優先するか

 作品に求める印象を整理する際には、「静けさ」「存在感」「動き」、のような言葉が役立ちます。ただし、これらを特定の構図と結びつける必要はありません。

 中央配置でも、周囲の形によっては緊張感が生まれますし、片寄せでも穏やかな印象をつくれます。大切なのは、今回制作する作品で何を優先したいのかです。

 静けさを伝えたいのであれば、モチーフを増やしたり、強い斜めの線を加えたりしたときに、求める落ち着きが保たれているかを確認します。 存在感を重視するならば、主役の形が読み取れる大きさや、周囲との関係を検討します。

 ただし、大きくすることで窮屈になったり、見せたかった空間が失われたりする場合もあるため、拡大だけで解決しようとしないことが大切です。

 動きを求める場合にも、斜めに並べれば充分というわけではありません。モチーフの向きや重なりが、意図する方向へのつながりを感じさせるかを観比べます。

 複数の印象を組み合わせる場合には、「静けさを中心に、少し緊張感を加える」など、優先順位を決めておきましょう。

構図を選ぶための判断基準を短い言葉にする

 ここまで整理した内容は、一文にまとめておくと比較に使いやすくなれます。

 たとえば、「古い器の存在感を、周囲にゆとりを残して見せる」、という形です。モチーフ、見せたい魅力、空間の扱いが含まれていれば、構図を選ぶ際の基準になるのです。

 この一文から、「器が小さすぎないか」「形が他の物に隠れていないか」「周囲に必要なゆとりがあるか」、という確認項目をつくれます。

 候補の構図を並べたときにも、漠然とした好みだけでなく、目的に合っているかを考えられるようになれるのです。

 ただし、最初の言葉に制作を縛られることはありません。案を試すうちに、器の表面よりも、器と影の関係に魅力を感じることもあります。

 その場合には、表現したいことを見直してから、同じ基準で各案を比較し直してください。 避けたいのは、案を見るたびに判断基準を変え、どれも選べなくなることです。

 新しい発見があったときは目的を更新し、単に迷ったときには一度元の一文へ戻る。この区別を意識すると、構図の検討を進めやすくなれます。

 構図を選ぶための準備は、モチーフを決めるだけでは終わりません。その対象の何を見せたいか、どの部分を中心にするのか、どのような印象を優先するかを整理することが必要です。

なかやま

表現したいことを短い言葉にしておけば、配置の変更にも理由を持てます。次の章では、この判断基準を使い、条件をそろえた複数の構図案を比較していきます。

 自分が何を表現したいのかを見つめることは、構図を選ぶ基準になるとともに、自分らしい作風を育てる出発点にもなります。作品の個性については、次の記事も参考にしてください。LS316「オリジナリティーはどう生まれる?自分だけの作品を育てる7つの考え方」

同じモチーフで複数の構図案を比較する

 作品で伝えたいことが決まりましたら、その目的に合う配置を探します。最初に思いついた案にも良さはありますが、別の案と並べることで、主役の観え方や空間の使い方を判断しやすくなれます。

 ただし、比較するたびにモチーフや光の条件まで変えてしまうと、何によって印象が変わったのか分かりにくくなります。比較の目的は、案を増やし続けることではなく、違いを確かめて採用する構図を絞ることです。

 本章では、同じモチーフで比較条件を揃えて、配置の違いを見極めながら採用案を決める方法について解説します。

モチーフと光の条件を揃えて比較する

 構図案を比較するときには、まず共通する条件を決めます。

 たとえば、器一つと果物一つを使い、光は左上から当たる設定にします。この条件を保ちながら配置を変えれば、モチーフ同士の関係や余白の違いに集中できるのです。

 一方の案だけに布を加えたり、背景を暗くしたりすると、その案が魅力的に観えた理由が配置にあるのか、追加した要素にあるのか判断しにくくなります。新しい要素を試す場合には、配置の比較とは分けて検討しましょう。

 また、エスキース(下絵)の枠は本制作と同じ縦横比に揃えて、描き込みの程度も統一します。一案だけ細部まで描いてしまうと、構図ではなく描写の完成度も評価してしまうからです。

 この段階では、モチーフの輪郭と大まかな明暗が分かれば充分です。質感や模様の描写を控えることで、画面全体の違いを見比べやすくなれます。

主役の位置・大きさ・切り取り方を一つずつ変える

 比較の最初は、変更する条件を一つに絞ります。たとえば、器の大きさを揃えたまま、中央、左寄り、右寄りの3案をつくります。これなら、位置の違いによる余白の変化を確認できます。

 次に、選んだ位置を保ちながら器を少し大きくした案と、小さくした案を比較します。位置と大きさを同時に変えるよりも、存在感や窮屈さが生じた理由をつかみやすくなるのです。

 切り取り方も同様です。器全体を画面に収める案と、一部を画面外へ出す案では、形の伝わり方や迫力が変わります。ただし、切り取ること自体を目的にせず、見せたい部分が保たれているかを確かめてください。

 一つずつの比較は、違いを理解するための手順です。各変更の効果が分かりましたら、それらを組み合わせた候補をつくり、作品全体として目的に合うかを見直します。

各案で伝わることと弱くなることを見比べる

 候補を比較するときには、良いところだけでなく、その配置によって弱くなるところも確認します。

 「器が大きく見えて存在感がある。ただし、周囲の静かな空間は減る」といった具合に、両方を言葉にしてみましょう。

 主役を片側へ寄せた案では、広い余白が魅力になる一方、脇役との関係によっては左右が分断されて観えることもあります。

 中央の案では、主役の形が読み取りやすい反面、求めていた広がりが弱くなる場合があります。

 ここで使うのが、前章で決めた表現の目的です。「器の存在感を、周囲にゆとりを残して見せる」のであれば、器の大きさだけで選ばず、存在感とゆとりの両方を確認します。

 すべての長所を一案に集めようとすると、判断が難しくなります。今回優先する魅力が伝わり、弱点がその目的を大きく損なっていない案を候補に残してください。

描き込みの完成度に惑わされず採用案を決める

 時間をかけた案には愛着が生まれます。しかし、「よく描けたエスキース(下絵)」と「今回の目的に合う構図」は、分けて判断する必要があります。採用するときには、細部ではなく画面全体を見直しましょう。

 各案を少し離して眺め、主役が当初の予定通りに感じられるか、必要な余白があるか、見せたい関係が保たれているかを確認します。一案だけ描き込みが進んでいる場合には、簡単な輪郭と明暗に描き直して比べる方法もあります。

 採用案が決まりましたら、「主役の形が観え、右側の余白も保てるため」など、選んだ理由を短くメモに残します。同時に、「脇役が少し近いので調整する」、といった修正点も記録しておくと、本制作前の検討につながるのです。

 選ばなかった案も失敗ではありません。別の表現意図には合う可能性があります。採用案と一緒に残しておけば、次の作品で構図を考える際の参考になります。

 複数の構図案を比較する際には、条件を揃えて、変更点も絞り、各案の長所と弱点を確認することが大切です。描き込みの巧みさよりも、表現したいことに合っているかを基準に選びましょう。

採用する理由が明確になれば、次に調整すべき点も見えてきます。次の章では、選んだ案の主役の位置と大きさを、さらに具体的に確かめていきます。

 比較する構図案を実際に描くときには、小さなエスキースが役立ちます。用紙の準備から、構想の練り直し、本制作画面への割り戻しまでの手順は、次の記事で詳しく解説しています。LS317「いきなり本制作していませんか?作品の完成度を高めるエスキース7つの活用法」

主役の位置と大きさが表現意図に合っているか確かめる

 構図の候補を絞りましたら、主役の位置と大きさを詳しく確かめましょう。

 ここでは、主役が目立つかだけではなく、見せたい魅力が伝わる配置になっているかを確認することが大切です。 主役を大きくしたり、中央へ移したりすると存在感が増す場合があります。

 しかし、それによって周囲の空間や脇役との関係が弱くなることもあります。配置のよしあしは、作品で何を優先するかによっても変わるのです。

 本章では、目が向く場所、主役の大きさ、中央配置と片寄せ、脇役との関係から、採用案を調整する方法について解説します。

最初に目が向く場所と、見せたい場所を照らし合わせる

 主役を決めて描いていても、画面の中では別の場所が強く観えることがあります。たとえば、器を主役にしたつもりでも、脇に置いた果物の輪郭や背景の明暗差が強いと、そちらに注意が向きやすくなります。

 エスキース(下絵)から一度目を離し、改めて画面全体を眺めてください。そのとき気になる場所と、自分が見せたい場所を照らし合わせましょう。

 作家は主役の位置を知っているため、意識してそこを観てしまう点にも注意が必要です。 可能であれば、他の人にエスキースを観てもらい、「どこが気になったか」、を尋ねる方法もあります。

 先に、主役を説明せずに聞くと、自分自身では気づけなかった強い部分を発見できることがあります。ただし、一人の反応だけで配置を決めるべきではありません。

 また、最初に目が向く場所と、主役が必ず一致する必要もありません。脇役を入口として主役へ注意がつながる構成なら、その関係が保たれているかを確かめましょう。

主役を大きくしたときに、失われる空間も確認する

 主役の印象が弱いと感じると、まず大きくしたくなります。形や質感を見せたい作品では有効ですが、拡大によって何が画面から失われるかも確認してください。

 たとえば、古い器を大きく描けば、縁の厚みや表面の変化が伝わりやすくなります。一方、器の周囲にあった余白が減ると、広い場所に静かに置かれている印象は弱くなるかもしれません。

 大きさを検討するときには、主役だけを観ずに、画面の端との距離、脇役が収まる場所、影の広がりも見比べます。

 器は収まっていても、見せたかった影が窮屈そうになれば、作品の目的に合わない場合もあります。拡大しなければ存在感を出せないとは限らないのです。

 主役の周囲を整理したり、競合する形を減らしたりすることで、同じ大きさでも観え方は変わります。必要な空間を残しながら、主役の魅力が読み取れる大きさを探しましょう。

中央配置と片寄せを、表現したい印象で選ぶ

 構図を学ぶと、「中央を避けた方がよい」、と考えがちです。しかし、中央配置にも片寄せにも、それぞれ使いどころがあります。位置だけで正解を決めず、見せたい印象に合うかを判断してください。

 中央配置は、主役と正面から向き合うような構成に使えます。器の左右の形や、人物の表情などを落ち着いて見せたい場合には、中央に置いた案を検討する価値もあります。

 一方、片寄せは、主役の隣にまとまった空間を確保したいときに役立ちます。ただし、その空間が作品の魅力につながっているかが重要です。

 何となく中央からずらしただけでは、余白の意味が曖昧になることもあります。たとえば、器の取っ手や注ぎ口が右を向いているなら、右側に空間を残した案と、あえて狭くした案を比べてみます。

 広がりを感じさせたいのか、近く迫る存在感を求めるのかによっても、選ぶ配置は変わるのです。

脇役との距離と重なりを調整して主役を支える

 主役の位置が適切でも、脇役が近すぎたり、輪郭が不自然につながったりすると、形が読み取りにくくなることがあります。主役と脇役の間隔や重なりは、両者の関係を伝えるために調整しましょう。

 たとえば、器の前に果物を置く場合には、果物が器の特徴的な形を隠していないかを確認します。縁の曲線を見せたいのに、その部分へ果物が重なっていれば、少し横へ移すだけでも観え方は変わります。

 反対に、離しすぎると、二つのモチーフが別々に置かれた印象になることもあります。関係性を持たせたい場合には、適度な重なりや共通する影によって、同じ空間にあることを示せるのです。

 輪郭同士が、一点だけで触れるような配置にも注意してください。重なっているのか、離れているのかが曖昧になりやすいためです。意図した接触でなければ、隙間をつくるか、重なりを明確にして形を読み取りやすくしましょう。

 主役の配置を整えるときには、目立たせることと、作品の目的に合うことを合わせて考えます。大きさや位置を変更しましたら、周囲の空間と脇役との関係も確認してください。

なかやま

主役の魅力を支える配置が決まりましたら、次は余白と、鑑賞者の視線の動きを見直します。画面に残した空間が、表現したい印象にどう関わっているかを確かめていきましょう。

余白と視線の動きを、作品の目的に合わせて整える

 主役の位置と大きさが決まりましたら、その周囲の空間を観直します。

 モチーフを配置した後に残った周辺の場所も、作品の印象をつくる大切な部分です。余白の広さや位置によって、同じ主役でも、静かに観えたり、窮屈に観えたりするのです。

 また、線や形、明暗の配置によって、注意が向きやすい場所も変わります。視線の動きを完全に決めることはできませんが、主役を観やすくする工夫はできます。

 本章では、余白とモチーフの関係を確認して、視線の動きを作品の目的に合わせて整える方法について解説しましょう。

余白が主役の存在感を支えているか見極める

 余白を考えるときには、広さだけでなく、その形と位置を確認します。主役の周囲に空間があっても、細く不規則な隙間ばかりでは、ゆとりを感じにくい場合があります。

 たとえば、器の存在感を静かに見せたいのならば、周囲の空間が細かく分断されていないかを見直します。脇役を少し移動し、まとまった空間をつくることで、器の輪郭が読み取りやすくなることもあるのです。

 ただし、余白を広げれば必ず良くなるわけではありません。器と画面の端との距離が大きすぎると、見せたい形が小さく感じられたり、空間の方が強く印象に残ったりする場合もあります。

 エスキース(下絵)では、モチーフの間と画面の端にできる空間を、それぞれ一つの形として眺めてみましょう。

 なお、余白は白い部分だけを指しません。暗く描いた背景でも、モチーフを置かない空間として構図を支えられるのです。

モチーフの向きと、余白の位置を照らし合わせる

 モチーフには、形によって感じられる方向があります。器の注ぎ口、花の茎、人物の顔の向きなどは、周囲の空間との関係を考える手掛かりになります。

 たとえば、右を向いた注ぎ口の先に余白を残すと、その方向へ広がる空間を感じさせやすくなれます。一方、注ぎ口が画面の端に近ければ、限られた場所に収まっているような閉塞感が生まれることもあるのです。

 どちらを選ぶかは、作品の目的によります。穏やかな広がりを見せたいのに、向いている先が窮屈であれば、主役を少し移動するか、周囲の配置を調整します。閉塞感や緊張感を求めるのなら、その狭さを残す選択もできます。

 向いている先に必ず広い余白を設ける、と決めつけないことが大切です。向きと空間の組み合わせを比較して、当初の狙いに合う印象になっているかを確かめてください。

線・形・明暗が主役に対する注意を削いでいないか確認する

 主役の位置が決まっていても、周囲に強い線や明暗差があると、別の場所へ注意が向きやすくなります。構図案を観るときには、主役以外に目立つ部分がないかも確認しましょう。

 たとえば、背景の境界線が主役の縁と重なっていると、主役の形が分かりにくくなることがあります。また、脇役の小さな光が強すぎると、その部分が主役よりも気になる場合もあります。

 修正するときには、主役を濃く描くことばかりに集中せずに、競合する要素を整理する方法も考えます。

 背景の線を短くする、脇役の明暗差を弱める、形の重なりを変えるなど、配置と強弱の両面から検討してください。

 ただし、写真や実物を参考にする場合には、光の方向や形のつながりも保つ必要があります。主役を強調するための変更が、空間の不自然さにつながっていないかを合わせて見直しましょう。

画面内に視線を留めるか、外への広がりを残すかを選ぶ

 作品には、画面の中で主役をじっくり見せたい場合と、画面の外にも空間が続くように感じさせたい場合があります。どちらを目指すかによって、端に向かう形や線の扱いが変わります。

 主役へ注意を留めたいのであれば、周囲のモチーフの向きや影が、主役との関係を保っているかを確認します。長く強い線が画面の端へ伸びていると、そちらが目立ち、主役の印象が弱くなることがあるのです。

 一方、外への広がりを見せたい作品では、モチーフの一部を画面外へ続けたり、背景に抜け(※)を残したりする方法が使えます。ただし、広がりを加えたことで、主役の位置や役割が曖昧になっていないかも確かめます。

 どの作品でも、視線を画面内に閉じ込めようとする必要はありません。主役に向き合う時間をつくりたいのか、その先の空間まで想像してもらいたいのかを整理して、端の形や余白を選びましょう。

 余白と視線の動きを整える際には、空間の広さだけではなく、形、位置、モチーフの向き、周囲の明暗を合わせて確認します。それぞれの変更が、作品で伝えたいことを支えているかが判断の基準です。

次の章では、見つかった違和感から修正する項目を絞り、本制作へ進むための判断を整理します。

※ 「抜け」とは、制作画面上に外部へ続く(例えば窓のような)部分があると、観てくださる人の「画面上の息苦しさ」を解消できる効果があるのです。

構図の修正を絞り込み、本制作へ進む判断をする

 構図を検討していると、「もう少し変えた方がよいのでは」、と迷うことがあります。しかし、違和感の理由が曖昧なまま修正を重ねると、よかった部分まで失ってしまう場合もあります。

 必要なのは、気になる点を整理して、作品の目的に関わる問題から直すことです。また、本制作へ進んだ後も、薄く描いている段階で採用案との違いを確認すれば、配置のずれに対応しやすくなれるのです。

 本章では、修正する項目の絞り方、変更前後の比較、制作初期の見直し、構図の検討を終える判断について解説します。

違和感を、位置・大きさ・余白・明暗に分ける

 「何となくまとまらない」と感じたときは、その印象を具体的な問題に分けます。

 主役の位置が片寄りすぎているのか、寸法の調整が足りていないのか、余白が窮屈なのか、周囲の明暗が強すぎるのかを確認してください。たとえば、器の存在感が弱い場合でも、原因は大きさとは限りません。

 隣の果物が目立っていたり、器の輪郭が背景と重なっていたりする可能性もあります。原因を確かめずに器を大きくすると、必要な余白まで減らしてしまいます。

 気になる点は、「主役が弱い」から「右側の果物の明暗差が強く、器より目立つ」のように、修正できる言葉へ置き換えます。こうすると、変更する場所と内容を絞れるのです。

 問題が複数ある場合には、表現したいことを最も妨げている項目から取り組みましょう。細かな形の調整よりも、主役の主張を弱めている配置を先に直すなど、画面全体への影響を基準に順序を決めます。

一度に一つだけ変えて、修正の前後を比較する

 修正の際には、変更前の案を残しておきます。別の紙へ描き直したり、エスキースを撮影したりしておけば、変更によって何がよくなったのかを確認できます。

 たとえば、果物が器に近すぎると感じた場合には、まず果物の位置だけを変えます。同時に器を大きくして、背景まで暗くすると、どの変更が効果を生んだのか分からなくなるからです。

 修正の前後を並べましたら、問題が解消されたかどうかに加え、別の長所を失っていないかも確認します。

 器の輪郭は見やすくなっても、果物が離れすぎて両者の関係が弱くなったのであれば、移動量を少なくした案を試すのです。

 変更後の方が、必ずよいとは限りません。改善が見られなければ元の案へ戻して構いません。一つずつの修正で効果を確かめた後に、必要な変更を組み合わせ、全体として目的に合うかを見直しましょう。

制作初期に構図が崩れたときは採用案へ立ち戻る

 小さなエスキース(下絵)ではまとまって見えていても、本制作の画面へ移すと、主役の位置や大きさが少しずれることがあります。個々のモチーフを描くことに集中して、予定していた間隔が狭くなる場合もあります。

 薄い輪郭と大まかな明暗を置いた段階で、採用案と画面全体を観比べましょう。主役と画面の端との距離、脇役との間隔、余白の形を確認すると、配置のずれを見つけやすくなれるのです。

 違いを見つけても、エスキースに完全に合わせることが目的ではありません。本制作で生まれた変化が、表現意図を支えているのならば、残す選択もできます。

 判断に迷いましたら、採用理由を記した一文へ戻ってください。配置を直す必要がある場合は、濃く描き込む前に調整します。

 本制作の、スケッチブックや紙の表面を傷めるほど消し直しを重ねず、問題が大きければ別紙で案を検討してから修正するなど、本制作の描画面への負担も考えましょう。

修正を終える条件と、次の作品へ残す課題を決める

 構図の検討を終えるには、「もっとよくできそう」、という感覚だけではなく、本制作へ進める条件を決めておくと役立ちます。条件は、その作品の目的に合わせて設定します。

 たとえば、「器の形が当初のイメージ通りに観えている」「周囲に必要なゆとりがある」「脇役が器の魅力を妨げていない」、の3点です。これらが満たされ、採用する理由を説明できれば、制作を進める根拠になるのです。

 すべての迷いを解消しようとすると、案の検討だけで時間が過ぎてしまいます。作品の中心に関わる問題は修正して、どちらでも目的を保てる小さな違いは、現時点で選んだ案に沿って進めましょう。

 試したかった別の配置や、まだ判断できない点は記録しておきます。今回の作品にすべてを盛り込まず、次の制作で確かめる課題として残せば、比較の経験を積み重ねられます。

 構図の修正は、変更を重ねることではなく、必要な問題を見極めて整える作業です。違和感を具体的な言葉にして、一つずつ変更し、表現したいことが保たれているかを確認しましょう。

なかやま

エスキースでの、構図の採用理由と制作へ進む条件が明確になれば、迷いが生じたときにも立ち戻れます。構図を選ぶ判断を、これから紹介する3つの練習課題で実際に確かめてみてください。

 本制作へ進んだ後も、完成時には作品全体を改めて点検しましょう。描き終えた作品の完成度を高めるための確認事項は、次の記事にまとめています。                          LS320「鉛筆画は描き終えてからが大切!作品の完成度を高める最終点検7つのポイント」

練習課題3つ

 本章では、あなたが実際に手を動かして練習できる課題を用意しました。鉛筆画やデッサンは練習しただけ上達できますので、早速試してみてください。

同じモチーフから、異なる表現意図で構図を選ぶ

 目的

 同じモチーフでも、伝えたいことによって、適切な配置が変わることを確かめます。

 用意するもの

 陶器の器一つ、果物一つ、鉛筆、スケッチブックや紙。スケッチブックや紙には、同じ大きさの正方形の枠を二つ描きます。

 手順

 最初の枠では、「器そのものの存在感を見せる」、を目的にします。器の形が読み取りやすい大きさと位置を考え、果物はその魅力を支える場所へ配置してください。

 二つ目の枠では、「器のある空間の静けさを見せる」、を目的にします。器と果物だけでなく、周囲の空間が感じられる配置を考えます。光の方向とモチーフの種類は、最初の案と揃えましょう。

 両案とも、輪郭と大まかな明暗まで描きます。細かな質感や模様は描き込まず、画面全体を比較してください。

 確認ポイント

 器の大きさや位置、余白はどう変わりましたか?それぞれの案について、「この配置を選んだ理由」、を一文にします。

 目的を変えても、配置が同じだった場合は、両方の意図が伝わるかを改めて確かめましょう。

 得られる効果

 構図を形だけで選ばず、表現したいことから配置を考える習慣が身につきます。

一つの条件だけを変えた3案から採用案を決める

 目的

 比較条件を揃え、主役の位置による印象の違いを見極めます。

 用意するもの

 陶器の器一つ、鉛筆、スケッチブックや紙。スケッチブックや紙には、同じ大きさの正方形の枠を三つ描きます。

 手順

 表現の目的は、「器の存在感を、周囲にゆとりを残して見せる」、と決めます。器の大きさ、向き、光の方向、明暗の強さを揃え、中央、左寄り、右寄りの3案を描いてください。

 位置は左右だけを変え、器の高さや背景の条件は保ちます。片寄せた案でも器が画面の端に接しないよう、最初に大きさを決めておきましょう。

 3案を並べ、それぞれの長所と弱点を一つずつ書きます。そのうえで、今回の目的に最も合う一案を選びます。

 確認ポイント

 左右の余白の違いは、器の観え方にどう影響しましたか?「中央だから避ける」「片寄せだからよい」と決めず、存在感とゆとりの両方が保たれているかを確認してください。

 得られる効果

 一つの変更による違いを捉え、採用する理由を言葉にできるようになれます。

採用案の違和感を一つ修正して比較する

 目的

 違和感の原因を絞り、一つの修正による効果を確かめます。

 用意するもの

 陶器の器一つ、果物一つ、鉛筆、スケッチブックや紙。スケッチブックや紙には、同じ大きさの正方形の枠を二つ描きます。

 手順

 最初の枠では、主役である器の手前に果物を置き、器の底の輪郭が果物に隠れる配置を描きます。表現の目的は、「器の丸い形と安定した存在感を見せる」とします。

 二つ目の枠では、器の位置と大きさ、光の方向、描き込みの程度を保ち、果物だけを横へ移します。器の形が見えやすくなり、果物との関係も残る位置を探してください。

 修正前後を並べ、「変えたこと」「改善したこと」「残った問題」、を短く記録します。

 確認ポイント

 器の形は読み取りやすくなりましたか?果物を離しすぎて、二つのモチーフのまとまりが弱くなっていませんか。修正後の方が目的に合わなければ、移動量を減らして試しましょう。

 得られる効果

 何となく描き直すのではなく、原因に合わせて修正して、その結果を判断する力が育ちます。

まとめ|伝えたいことを基準に、納得できる構図を選ぶ

    第1回個展出品作品 胡桃のある静物 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画やデッサンの構図を考える際には、種類や基本を知ることに加え、自分自身の作品に合う配置を選ぶ判断が必要になります。

 よく知られた構図を使っていても、見せたい魅力と配置が合っていなければ、作家の意図は伝わりにくくなります。そのため、最初に整理したいのは、「何を描くか」と「その対象の何を見せたいか」です。

 同じ器でも、形や質感を見せたい場合と、器が置かれた空間の静けさを見せたい場合では、必要な大きさや余白が変わります。表現したいことを短い言葉にすると、構図案を比較する際の基準になります。

 複数の案をつくるときには、モチーフや光の方向、エスキースの縦横比、描き込みの程度を揃えます。そのうえで、主役の位置や大きさなどを一つずつ変えると、印象が変わった理由を確かめやすくなるのです。

 比較では、それぞれの長所と弱点を確認してください。主役を大きくすれば形が見えやすくなる一方、周囲の空間が減る場合があります。

 片側へ寄せればまとまった余白をつくれますが、脇役とのつながりが弱くなることもあります。これから制作する作品では、優先したい魅力を基準に、採用する案を選びましょう。

 主役の配置を確かめる際にも、目立たせることだけを目標にしないことが大切です。位置、大きさ、脇役との距離や重なりも併せて見直し、主役のどの部分を見せたいのかが保たれているかを確認します。

 中央配置と片寄せも、それぞれの効果を作品の目的に照らして選べます。また、余白は、モチーフを配置した後の残りではありません。

 その形や位置が、主役の存在感や空間の印象を支えます。白く残した部分だけでなく、暗い背景もモチーフを置かない空間として働きます。

 向いている先に広がりを残すのか、狭さによる閉塞感や緊張感をつくるのかも、表現したいことから判断してください。

 線や形、明暗については、主役以外に強く注意を引く場所がないかを確認します。主役をさらに強調する前に、競合する要素を整理する方法を先に考えましょう。

 視線の動きには個人差があるため、特定の順番で必ず観てもらえるとは考えず、見せたい部分に気づきやすい構成を目指します。

 最後に、本記事で取り上げた判断のポイントを振り返りましょう。

  • 描きたいモチーフと、そのモチーフの見せたい魅力を分けて考える。
  • 最も観てほしい部分と、優先する印象を決める。
  • 条件を揃え、変更点を絞って構図案を比較する。
  • 各案の長所と弱点を確認し、採用理由を言葉にする。
  • 主役の位置と大きさを、余白や脇役との関係から確かめる。
  • 線・形・明暗が、表現したいことを支えているか見直す。
  • 修正を一つずつ比較して、本制作へ進む条件を決める。

 構図に違和感を覚えましたら、「何となくまとまらない」という感覚を、位置、大きさ、余白、明暗などの具体的な問題へ置き換えましょう。

 修正前の案を残し、一つずつ変えて比較すれば、改善した点と失われた点を確認できます。本制作でも、薄く描いている段階で採用案と見比べることが役立ちます。

 すべての迷いがなくなるまで、構図を検討し続ける必要はありません。作品の中心となる魅力が伝わり、採用する理由を説明できましたら、その案に沿って制作を進めましょう。

 残った疑問や別の配置は、次の作品で試す課題として記録できます。構図を選ぶ力は、比較と制作を重ねながら育ちます。

 3つの練習課題を通して、自分が何を伝えたいのか、そのためにどの配置が合うのかを確かめてみてください。理由を持って構図を選べるようになると、制作中の迷いにも立ち戻る場所が生まれるのです。

鉛筆画やデッサンを、自分らしい作品へ育てたいあなたへ

構図や光と影、作品づくりのヒントを、無料メルマガでお届けします。楽しみながら、表現の幅を広げてみませんか。

無料登録

メールアドレスだけで無料登録できます
いつでも解除できます

 鉛筆画やデッサンで「何を大切に描きたいか」を考える時間は、これからの暮らしで大切にしたいことを見つめる機会にもなります。

 趣味や生きがいを含め、人生の後半を自分らしく整えるヒントは、次の姉妹サイトでもご紹介しています。

 40代からの人生の整え方

 ではまた!あなたの未来を応援しています。