どうも。プロ鉛筆画家の中山眞治です。

筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅳ」と共に
さて、鉛筆画やデッサンが完成しましたら、次は誰かに見てもらう準備に入りましょう。
せっかく丁寧に描いた作品でも、写真に影が入ったり、額のガラスに周囲の景色が映り込んだりすると、原画の魅力が伝わりにくくなります。
鉛筆画やデッサンは、淡いグラデーション(階調)から深い黒までの変化や、スケッチブックや紙の上に残る繊細なタッチが見どころです。
撮影する光、額とマットの選び方、展示する高さを少し工夫するだけでも、鑑賞者が作品に向き合いやすくなります。
この記事では、完成した鉛筆画やデッサンをより魅力的に見せるための、撮影・額装・展示の工夫を7つ紹介します。特別な機材を揃える前に、手元の作品で試せることから始めましょう。
それでは、早速どうぞ!
撮影する光を選び、鉛筆のグラデーション(階調)を自然に写す

完成しました、鉛筆画やデッサンを写真に撮ると、「原画では観えている淡い影が消えた」「黒い部分が一つの塊に見える」、と感じることもあります。
鉛筆画やデッサンは色彩に頼らないので、明暗のわずかな変化が作品の印象を左右します。撮影では、まず作品に当たる光を確かめることが大切です。
本章では、鉛筆の階調を自然に写すための光の選び方を見ていきます。
完成した鉛筆画を、もっと魅力的に届けてみませんか?
無料メルマガでは、構図や光と影、質感表現をはじめ、作品づくりに役立つ工夫をお届けしています。プロの鉛筆画家として制作を続ける中で学んだことを、初めての方にも分かりやすくお伝えします。
一枚を描く楽しさを深め、完成した作品を自分らしく見せていきたい方は、ぜひご登録ください。
無料メルマガに登録するメールアドレスだけで無料登録できます
いつでも解除できます
直射日光を避け、明るい日陰で撮る
晴れた日の直射日光は明るく、撮影に向いているように思えませんか?
しかし、光が強すぎると、スケッチブックや紙の白い部分がまぶしく写り、淡い鉛筆の線や影が見えにくくなることがあります。手やカメラの影が作品に落ちることもあります。
まずは、窓から自然光が入る部屋で、日差しが直接当たらない場所を探してください。曇りの日の窓際や、明るい日陰も試しやすい場所です。
光が穏やかに広がると、白い部分から濃い部分までの陰影の変化を、写真に残しやすくなれます。窓際で撮るときには、作品のどこに光が当たっているかを観てください。
窓に近い側だけが明るい場合には、作品の位置や向きを少し変えます。一度撮影して画面を確認し、四隅までほぼ同じ明るさになっているか確かめましょう。
複数の照明を混ぜず、色と明るさを揃える
部屋の照明をつけたまま、窓からの光で撮ると、場所によってはスケッチブックや紙の色が違って観えることがあります。
窓側は青白く、室内側は黄色っぽく写るような場合です。作品はモノトーンでも、スケッチブックや紙の色が不均一になると、作品そのものの印象も変わってしまうのです。
自然光で撮るなら、室内の照明を消してみてください。反対に、照明を使うならば、窓から入る光の影響が少ない場所を選びます。
最初から機材を増やす必要はありません。今ある光の中で、条件を一つに揃えるだけでも、撮影結果を比べやすくなるのです。
スケッチブックや紙の白さと濃い部分の両方を確認する
撮影した直後は、作品全体が明るくきれいに観えるかもしれません。ただ、画面を拡大すると、淡い描き込みが消えていたり、濃い部分の中の線が見えなくなっていたりします。
撮影後は、スケッチブックや紙の余白、最も淡い部分、最も濃い部分を順に観比べてください。余白が不自然に白く光っていないか。薄い線が原画と同じように観えるか。
暗い部分にも、描き分けた形や質感が残っているか。この三つを確認すると、写真の明るさを判断しやすくなれるのです。
スマートフォンの画面だけで、判断しにくいときには、原画を横に置いて観比べましょう。写真を原画そっくりにすることは難しくても、どの表現を優先して残したいかが明確になります。
とくに、鉛筆を重ねて濃く描き込んだ部分は、観る角度によって「照り」が出ます。撮影画面で黒い部分が銀色や白っぽく光って観える場合には、原画のトーンが正しく写っていません。
作品に対する光の向きや、作品を置く位置を少し変えて撮り直しましょう。照りを消そうとして写真全体を暗くすると、淡い部分まで観えなくなってしまいます。
まず撮影時の反射を減らし、そのうえで原画と写真を観比べることが大切です。
時間や場所を少し変えて撮り比べる
一枚撮って思うように写らなくても、すぐに作品のせいだと考えることはありません。同じ場所でも、時間帯によって窓から入る光は変わります。
作品を置く位置を少し動かすだけで、スケッチブックや紙の反射や影が落ち着くこともあります。まずは、条件を一つずつ変えて、数枚撮ってみてください。
たとえば、窓から少し離れる、作品の向きを変える、撮影する時間を変える、といった方法です。一度にすべて変えると、何が良かったのか分からなくなるため、一つずつ試すのがコツです。
良く撮れた場所や時間帯が見つかりましたら、覚えておきましょう。次の作品でも同じ条件から始められます。
撮影の目的は、写真を必要以上に華やかにすることではありません。原画で大切にしていた光と影を、観てくださる人にも感じてもらうことです。
カメラの位置と構図を整え、作品の形を正確に伝える

写真に写った作品の、上辺と下辺の長さが違って観えたり、スケッチブックや紙の四角形が台形になったりした経験はないでしょうか。
これは、カメラが作品に対して、斜めになっているときに起こりやすい問題です。鉛筆画やデッサンを紹介する写真では、明暗だけでなく、作品の形や構図もできるだけ正確に伝えたいものです。
本章では、撮影する位置と写真の範囲を整える方法を紹介します。
カメラを作品の正面に置く
壁に掛けた作品を撮る場合には、カメラのレンズを作品の中央付近の高さに合わせます。
立ったまま低い位置の作品を見下ろしたり、高い位置の作品を見上げたりすると、四角い紙や額が台形に写ります。床や机の上に作品を置く場合も、作品の中央の正面から撮ることを意識してください。
スマートフォンを手に持つときには、画面内で作品の上下左右の辺を見比べます。向かい合う辺がほぼ平行に見えれば、撮影位置を整える目安になるのです。
一度撮ってみて形がゆがんでいましたら、写真の編集で大きく直す前に、カメラの位置を調整して撮り直しましょう。撮影時に形を整えておくほど、完成後の確認も簡単になります。
作品の四辺を確認して、余白を残して撮る
作品を画面いっぱいに収めようとすると、スケッチブックや紙の端や額の一部が切れやすいものです。
まずは、作品の四辺がすべて写る位置から撮り、周囲に少し余白を残してください。必要な範囲は、撮影後に切り取れます。
このとき、スケッチブックや紙の端が丸まっていたり、机の上に置いた小物が写り込んだりしていないかも確認しましょう。
原画を紹介するための写真ならば、観てくださる人の目が作品へ向かうように、周囲をすっきり整えるとよいです。
一方、制作中の机や画材も含めて見せたい写真では、それらを意図して画面に入れます。「作品全体を正確に見せる写真」と「制作の雰囲気を伝える写真」、を分けて撮ると、用途に応じて使い分けられます。
スマートフォンの広角によるゆがみに気を付ける
作品に近づきすぎて撮ると、スマートフォンのレンズの特性によって、画面の端にある線が曲がったり、作品の一部が大きく観えたりすることがあります。
とくに、大きな作品を狭い場所で撮るときには注意が必要です。 撮影できる距離があるならば、作品から少し離れて、画面の中央に収めてみてください。
無理に近づいて四隅まで入れるより、少し離れた位置から余裕を持って撮るほうが、形を自然に見せやすくなれます。ただし、撮影距離を変えた後は、第一章で確認しました光の当たり方も見直しましょう。
カメラや撮影者の影が作品に入っていないか、濃いトーンの部分に照りが出ていないかも、撮影画面で確かめてください。
全体写真と細部写真を撮り分ける
作品全体を写した一枚は、構図や主題を伝えるために役立ちます。
しかし、細い線や描き込んだ質感まで、小さな画面で見せるのは難しい部分でもあります。全体の写真を撮った後に、観てほしい部分の写真も数枚撮っておきましょう。
たとえば、光と影を丁寧に描き分けた部分や、質感の違いを表現した部分です。細部を撮るときも、カメラを必要以上に斜めにしないことが大切です。
また、濃く描いた部分を近くから撮ると、照りが目立つ場合があります。画面で確認しながら、光の位置を調整してください。
SNSやブログで紹介するときには、最初に全体写真を見せて、続けて細部写真を載せると、作品全体の印象と描写の工夫の両方が伝わります。
カメラを作品の正面に置き、四辺を確認してから撮影しましょう。全体と細部を撮り分けると、構図も描写の工夫も伝えやすくなるのです。
写真を調整するときには、原画の明暗と質感を基準にする

撮影した写真を観て、「スケッチブックや紙が暗く写った」「鉛筆の線が薄く見える」、と感じることもあるでしょう。
明るさなどを調整すれば、観やすくできますが、調整しすぎると原画とは違う作品に観えてしまいます。とくに鉛筆画やデッサンでは、淡い階調と濃いトーンの両方を残すことが大切です。
本章では、撮影後の写真を原画に近づけるための確認点を紹介します。
最初に原画と写真を並べて観比べる
写真を調整する前に、原画を明るい場所に置き、スマートフォンやパソコンに表示した写真と観比べてください。
「何となく暗い」、という印象だけで操作するよりも、違いを具体的に見つけやすくなれます。確認したいのは、スケッチブックや紙の白さ、淡い線、中間のトーン、最も濃い部分です。
たとえば、スケッチブックや紙は、原画より灰色に観えるのに、黒い部分は充分に濃く写っている場合があります。このとき写真全体を明るくすると、淡い線がさらに観えにくくなるかもしれません。
画面の明るさによっても、写真の観え方は変わります。編集を始める前に、画面が極端に明るく、または暗く設定されていないか確かめましょう。調整の基準は、画面上で目立つことよりも、手元の原画に近く観えることです。
明るさとコントラストは少しずつ調整する
写真全体が暗く写った場合には、明るさを少し上げてみます。ただし、スケッチブックや紙の白い部分が光って観えるほど明るさを上げると、薄い鉛筆の線まで消えてしまうのです。
変更するたびに、淡い部分が残っているか確認してください。コントラストを強くすると、白と黒の差がはっきりし、写真は一見力強くなります。
その一方で、丁寧に作った中間のトーンが失われることもあります。薄い影から濃い影へ移る部分を拡大して、階調の変化が原画と同じように観えるか確かめましょう。
作品全体を一度に大きく変えるのではなく、少し調整しては原画と観比べる。この繰り返しが、描いた表現を写真にも残すための近道です。
「照り」を編集だけで消そうとしない
濃く鉛筆を重ねた部分が光を反射して、写真の中で白っぽく写ることがあります。この照りは、明るさやコントラストの調整だけでは、自然に直せない場合があります。
無理に暗くすると、周囲のトーンまでつぶれてしまうからです。照りが目立つ写真は、まず原画の同じ部分を確認してください。
原画には、深い黒と細かな描写があるのに、写真では銀色に光っているなら、撮影時の反射が原因と考えられます。光の向きや作品を置く位置を変え、撮り直してみましょう。
編集で補える範囲と、撮影から直したほうがよい範囲を分けて考えることが大切です。濃い部分の線や形が写っていない写真を、編集だけで元どおりにすることはできないからです。
掲載前に写真全体と細部を確認する
調整を終えましたら、最後に写真を小さく表示して、作品全体の印象を確認しましょう。
構図が伝わるか、明るさに偏りがないか、スケッチブックや紙の四辺が自然に観えるかを観てください。次に画面を拡大して、淡い線と濃い描写を確認します。
全体ではきれいに観えても、拡大すると輪郭が不自然に強調されていたり、細かなトーンが消えていたりすることがあります。作品の題名や制作年などを添えて公開する前に、この確認を習慣にすると安心です。
SNSに載せる写真も、展示の案内に使う写真も、原画を観ていない人にとっては作品に出会う最初の一枚です。描いた内容が伝わる写真を選びましょう。

写真の調整は、原画との観比べを基準にして、明るさを少しずつ整えます。濃い部分の照りが強いときには、編集よりも撮り直しを優先すべきです。
公募展で作品を見せることも考えている方は、審査員に伝わる作品づくりを扱いましたLS315「公募展で評価される作品とは?審査員の心を動かす7つのポイント」も参考にしてください。
作品に合う額とマットを選び、絵を引き立てる

写真を整えましたら、次は原画をどのように見せるかを考えます。
額に入れると作品の輪郭がはっきりして、展示する場所にもなじませやすくなります。
ただし、額やマットの印象が強すぎると、観てくださる人の目が作品よりも、周囲へ向かうことがあるのです。
本章では、鉛筆画やデッサンを引き立てる額とマットの選び方を紹介します。
まず作品の大きさと見せたい範囲を確認する
額を選ぶ前に、スケッチブックや紙全体を見せたいのか、描いた部分を中心に見せたいのかを決めましょう。スケッチブックや紙の端まで含めて見せると、作品を描いた面として伝えられます。
一方、マットの窓から描画部分を見せると、作品に視線を集めやすくなります。鉛筆画やデッサンでは、余白も構図の一部になることがあるのです。
描いた部分だけを残そうとして周囲を狭く見せると、原画で意図した静けさや広がりが変わるかもしれません。額に入れる前に、スケッチブックや紙の周囲を別の紙で少しずつ覆い、観え方を試してみてください。
作品の寸法を測る際には、スケッチブックや紙全体の大きさと、実際に見せたい範囲の両方を記録します。額やマットを選ぶときに、この二つを区別しておくと迷いにくくなります。
額の色と幅を作品の印象に合わせる
鉛筆画やデッサンはモノトーンですが、どの額を合わせても同じ印象になるわけではありません。
細い黒の額は輪郭を引き締め、明るい木目の額は柔らかい雰囲気を添えます。幅のある額は存在感が増すため、作品との釣り合いを見て選びましょう。
選ぶときには、額だけを観て決めず、作品と並べて確かめることが大切です。作品の黒より額の黒が強く感じられるか、木目に目が向きすぎないかなど、少し離れた位置から観てください。
「立派な額ほど作品が良く見える」、と考えるべきではありません。作品の主題や明暗が自然に目に入り、額がそれを支えていると感じられる組み合わせを探しましょう。
筆者の場合には、F10までの商品には、黒く細いアルミの額を使うことが多い時期もありました。次の画像を参照してください。

それ以上のF30・50・80・100では、黒いデッサン額の内側に「細い金色の入れ子(正面から見える細いフレームのようなもの)」を使っていました。黒と金色の組み合わせなので、割と上品に見えました。次の画像を参照してください。

第2回個展出品作品 灯(あかり)の点(とも)る窓辺の静物 2000 F100 鉛筆画 中山眞治
F130では、作品の四辺へ水で濡らすと貼れる、黒いテープを貼り付けて公募展へ出品していました。
マットの色と幅で余白の観え方を整える
マットは作品と額の間に入る余白です。同じ作品でも、マットの色や幅によって、鑑賞者が受ける印象は変わります。
白に近い色なら画面が明るく観え、落ち着いた色なら作品全体が引き締まって観えることがあるのです。
ただし、「白」と呼ばれる色にも違いがあります。スケッチブックや紙よりも、真っ白なマットを合わせると、作品のスケッチブックや紙が黄ばんで見える場合があります。
可能であれば、作品のスケッチブックや紙と、マットを実際に並べて確認してください。マットの幅も、一つに決めつけずに試しましょう。
狭い幅では、絵が額に近く感じられ、広い幅では作品の周囲にゆとりが生まれます。余白を大切にした作品ならば、その空気感が残る幅を選ぶことが大切です。
展示場所を思い浮かべて組み合わせる
額装した作品は、展示する場所の壁や照明と一緒に観られます。机の上で気に入った組み合わせでも、壁に掛けて離れて観ると、額だけが目立つこともあるのです。
額とマットを仮に合わせたら、作品を立てかけて、数歩離れて観てください。まず作品の主題に目が向かうか、鉛筆の濃淡が観やすいかを確認します。
複数の作品を並べる予定があるならば、一点だけではなく、隣に置く作品との釣り合いも観ておくとよいでしょう。額装は、作品を別のものに変える作業ではありません。
描いた内容を、観てくださる人が、落ち着いて受け取れる形に整える作業です。迷ったときには、額やマットを外した原画にも立ち返り、自分が最も見せたい表現を確かめます。
額とマットは、作品の大きさや余白を確認してから選びます。組み合わせた状態を少し離れて観て、絵に自然と目が向かうか確かめましょう。
額のアクリルへの映り込みと作品の保護を考える

突然ですが、東日本大震災以降、額にはガラスではなく、アクリル板(※)を使うことがほとんどのメーカーの商品で実行されています。つまり、大地震などが起こって落下しても、割れない配慮が最近の額には施されているということです。
額に入れた鉛筆画やデッサンを、撮影したり展示したりすると、アクリルに窓や照明、観てくださる人の姿が映り込むことがあります。
また、額装するときには、作品をどのように収めるかも確認しておきたいところです。
完成した作品を観やすく保つために、本章では映り込みへの対処と、額装時の基本的な確認点を紹介します。
※ アクリルは静電気によって、ホコリを吸着しやすい性質がありますので、展示の際にはアクリル表面に細かい傷がつかないように、柔らかい布(ガーゼなど)で拭き取り、「静電防止スプレー」も適度に使いましょう。
映り込みが起きる場所を先に確かめる
額を壁に掛ける前に、予定している場所へ持っていき、少し離れて表面を観てください。
正面からは気にならなくても、立つ位置を変えると、向かい側の窓や天井の照明が大きく映り込む場合もあります。観てくださる人が、作品の前に立つ位置を想像してみましょう。
主題の上に照明が映り込むと、せっかく描いた部分が観えにくくなってしまいます。額を掛ける場所を少し動かす、向きを変える、照明の当たり方を調整するなど、小さな変更で改善することもあります。
作品を展示する際には、設置した直後だけでなく、実際に鑑賞される位置からもう一度確かめてください。作者が近くで観るときと、初めて作品を観る人の位置では、映り込み方が違うこともあるのです。
額装した作品の撮影では角度を慎重に決める
額装後の作品を正面から撮ると、撮影者やカメラがアクリルに映ることがあります。映り込みを避けようとして、斜めから撮ると、今度は額や作品が台形に写ってしまうのです。
まず、窓や照明が直接ガラスに映りにくい場所へ、作品を移してみましょう。撮影する位置を少しずつ変えながら、作品の形と映り込みの両方を確認します。
作品を紹介するための写真ならば、額装前に原画の全体写真を撮っておく方法もあります。原画の描写を伝えたい写真と、額に入れた状態を見せたい写真は、役割が異なるのです。
両方を残しておけば、ブログでは原画の階調を、展示案内では額装後の雰囲気を紹介できます。
作品がアクリルに触れていないか確認する
作品を額に収める際には、スケッチブックや紙が、額装の内側で、表面のアクリルに直接押し付けられていないか確認してください。
マットなどを使って作品と表面との間に空間を設けると、紙がどのように収まっているかも確認しやすくなるのです。
また、額の中で作品がずれていないか、端が折れたり、強く押さえられたりしていないかも観ておきます。
外から観た仕上がりが整っていても、中で紙に負担がかかっていては、落ち着いて展示できません。額装の方法に迷う場合や、長く大切に残したい作品は、額装店に作品を見せて相談するのも一つの方法です。
どの範囲を見せたいか、展示後も作品を取り出せるようにしたいかなど、希望を具体的に伝えましょう。
展示前後に表面と額の状態を点検する
展示前には、額の表面に指紋やほこりが付いていないか確認します。
室内では気付かなくても、展示場所の照明を受けると汚れが目立つことがあります。作品を掛けた後も、鑑賞する位置から観てみましょう。
あわせて、額の角に緩みがないか、裏側がしっかり閉じているか、作品が傾いていないかを確かめます。
展示が終わって額を移動する際にも、表面や作品の状態を一度観ておくと、次に飾るときの準備がしやすくなるのです。
額は作品を引き立てるだけでなく、作品を収めて持ち運ぶためのものでもあります。観た目と収まり方の両方に目を向けておきます。

額装後は、鑑賞する位置から映り込みを確認します。作品の収まり方と額の状態も点検し、絵を観やすく展示できるよう整えましょう。
展示する高さと照明を整え、観やすい場所をつくる

額装した作品を壁に掛けると、自宅で観ていたときとは印象が変わります。作品を観る距離が広がり、周囲の壁や照明も一緒に視界に入るためです。
展示場所を決めるときには、作者の立つ位置からだけでなく、初めて作品を観る人がどこから近づき、どの位置で足を止めるかも考えてみましょう。
本章では、作品を観やすく展示するための高さと照明を確認します。
鑑賞者の目線を想像して高さを決める
作品を高く掛けすぎると、細部を観るために観上げることになります。反対に低すぎると、作品全体を観渡しにくくなる場合があるのです。
まずは壁の前に立ち、自然な姿勢で作品の中心付近を観られる位置を探してください。複数の作品を並べる場合には、それぞれの額の上端を揃える方法がありますし、作品の中心の高さを揃える方法もあります。
額の大きさが異なると観え方も変わるため、掛ける前に壁際の床へ作品を並べて、全体の釣り合いを確認するとよいでしょう。
自宅で飾るときには、椅子に座って観る状態が長い場合もあるでしょう。その場合には、立ったときだけでなく、普段作品を観る姿勢から高さを確かめてください。展示する人の都合だけで決めず、実際の観え方を基準にします。
少し離れた位置から作品全体を確認する
鉛筆画やデッサンは、近づくほど細かな線や質感が観えますが、最初に受け取るのは作品全体の印象です。作品を掛けたら数歩離れ、構図や光と影の流れが自然に伝わるか確認しましょう。
周囲に物が多いと、作品に目が向きにくくなることもあります。壁に並ぶ他の作品や、近くにある掲示物との間隔も検討してください。余白を広めに取ることで、鑑賞者が一枚ずつ足を止めやすくなる場合もあります。
次に作品へ近づき、細部を観てください。近づいたときに照明の影が落ちていないか、額の表面へ自分の姿が映り込まないかも確認します。離れた位置と近い位置の両方で観やすいかを確かめることが大切です。
照明の明るさだけではなく反射を観る
展示場所を明るくすれば、作品が必ず観やすくなるわけではありません。額の表面に照明が映れば絵が隠れますし、光の当たり方によっては濃く描いた鉛筆の部分に照りが出ます。
照明を調整できる場所ならば、作品の正面に強い光を当てる前に、観る位置から反射を確認しましょう。
額の中で、最も見せたい部分が光っていないか、淡い階調と濃いトーンの両方が観えるかを確かめます。光が片側から当たり、光りから遠い作品の端が暗く観える場合もあります。
照明を動かせないときには、展示する位置を変えることで観やすくなるか試してみてください。撮影と同じく、原画の表現が伝わる光を探すことが基本です。
展示する時間帯や周囲の環境も確かめる
窓のある部屋では、時間帯によっては、作品への光の当たり方が変わります。
準備したときには観やすくても、午後には窓が額に映り込むこともります。可能であれば、作品を観てもらう時間帯にも、展示場所を確認しましょう。
会場で複数の作品を展示する場合には、一枚だけを観て決めず、並んだ状態で確かめます。ある作品を照らす光が、隣の額に映っていないか、歩きながら観たときに目線が大きく上下しないかも確認してください。
展示を終えましたら、実際にその場を歩いてみましょう。最初にどの作品が観えて、どこで立ち止まり、近づくと何が観えるのか。鑑賞者の動きに沿って確認すると、展示場所の小さな問題に気付きやすくなれます。
展示の高さと照明は、作品の前に立つ人の目線で決めます。離れて観た印象と、近づいたときの反射や照りを確かめましょう。
写真と作品情報を組み合わせ、SNSや展示で伝える

作品を見せる準備が整いましたら、写真と一緒に何を伝えるかを考えます。
鑑賞者は、作品の題名や制作年を知ることで、描かれた場面に興味を持つかもしれません。一方、説明が長すぎると、絵を観る前に受け取る情報が多くなるのです。
本章では、作品を主役にしながら、SNSや展示で情報を添える方法を紹介します。
題名と基本情報を正確に記載する
作品を紹介するときには、まず題名、制作年、画材、サイズなどの基本情報を揃えます。展示用の作品カードでも、ブログやSNSの投稿でも、同じ情報を確認できるようにしておくと便利です。
とくに、作品の題名は表記を統一しましょう。展示では「静かな夜Ⅷ」、SNSでは「静かな夜8」のように変わると、同じ作品かどうか分かりにくくなってしまいます。次の画像を参照してください。

日本の自然を描く展 自由課題部門 優秀賞 静かな夜Ⅷ 2026 F10 鉛筆画 中山眞治
制作年やサイズも、過去の投稿を観ながら記憶で書くより、作品ごとの記録を確認してから載せると安心です。
情報の量は掲載する場所に合わせます。展示の作品カードなら簡潔に、ブログなら制作時の工夫を詳しく書くなど、観てくださる人がその場で読みやすい長さを選びましょう。
作品名をこれから決める場合は、 LS319「作品のタイトルで印象は変わる?心に残るネーミングの考え方7選」で、題名の考え方も紹介しています。
全体写真を先に見せ、細部へ案内する
SNSやブログで、複数の写真を載せられる場合には、最初に作品全体を見せると、観てくださる人が構図をつかみやすくなります。その後に、鉛筆の線や質感が分かる細部写真を続けましょう。
たとえば、一枚目で額装前の作品全体、二枚目で特に観てほしい描写、三枚目で額装した様子を紹介する方法もあります。原画の表現と、展示されたときの雰囲気を順に伝えられます。
細部の写真だけを、最初に見せたい場合には、投稿文や続く写真で、作品全体へ案内してください。どの部分を切り取った写真なのかが分かると、観てくださる人も描写の工夫に気付きやすくなれるのです。
制作意図は、観てくださる人が想像できる余地を残して書く
作品に込めた思いを文章にすることは、鑑賞の入り口になります。
ただし、画面に描かれたものの意味を、すべて説明する必要はありません。作者が何を表現したかったかに加え、観てくださる人が、自由にイメージできる余地も大切にしたいところです。
文章に迷うことがあれば、「何を描いたか」「どこを工夫したか」「観てくださる人に問いかけたいこと」の中から、一つか二つを選んでみてください。
たとえば、光と影を描き分けるために苦労した部分を短く紹介し、最後に「この作品から、どのような物語を想像されますか」、と尋ねる方法があります。
展示では作品カードを短くまとめ、詳しい制作過程はブログで紹介するなど、場所によって文章を使い分けられます。作品そのものを観る時間を大切にしながら、言葉を添えましょう。
公開前に写真と文章を一緒に見直す
投稿や展示案内を完成させられましたら、写真だけ、文章だけで確認を終えず、両方を並べて観直しましょう。
文章では、「淡い光」を観どころとしているのに、写真ではその部分が白く飛んでいないでしょうか?濃いトーンを紹介しているなら、照りによって銀色に写っていないかも確かめます。
題名や制作年、展示日時などの情報も、この段階で確認します。写真の順番が分かりやすいか、最初の一枚で作品全体が伝わるかを、初めて作品を観る人のつもりで観てください。
作品を撮影し、額装し、展示するまでの工夫は、最後に観てくださる人へ届いてこそ生きます。写真と文章が、同じ作品の魅力を伝えているかを確かめてから、公開します。

作品の情報は、正確かつ簡潔に添え、写真では全体から細部へ案内します。公開前に写真と文章を一緒に確認しましょう。
練習課題(3つ)
本章では、あなたが実際に手を動かして練習できる課題を用意しました。
鉛筆画やデッサンは、モノトーンでの表現であるだけに、展示する場所の光りの当て方や、映り込みなどをよく確認することが大切であり、細かな注意点について解説します。
光の向きを変え、鉛筆の「照り」を撮り比べる

目的:淡い階調と濃いトーンが、どの光で自然に写るかを確かめます。
内容:完成した鉛筆画やデッサンを、直射日光の当たらない明るい場所に置きます。作品の位置や向きを少しずつ変え、スマートフォンで3枚撮影してください。
撮るたびに、濃く描き込んだ部分が、銀色や白っぽく光っていないか確認します。最後に3枚を原画と観比べて、最も階調が伝わる写真を選びましょう。
ポイント:照りが出たときには、写真全体を暗く編集する前に、光の向きや作品の位置を変えます。一度に変える条件は一つにすると、違いが分かりやすくなります。
効果:自分自身の作品で、撮影しやすい場所や光の条件を見つけられます。
マットと額の組み合わせを仮置きで比べる

目的:額装によって、作品の印象や余白の観え方がどう変わるかを確かめます。
内容:作品の周囲に、白い紙と落ち着いた色の紙を順に置き、マットに見立ててください。見せる余白の幅も変えてみます。
額をお持ちなら、作品の周囲に仮置きし、それぞれの組み合わせを同じ位置から撮影しましょう。
ポイント:机の上で近くから観るだけでなく、作品を立てかけて数歩離れます。
額や周囲の色よりも、作品の主題へ先に目が向かうか確認してください。紙を作品の上に直接固定する必要はありません。
効果:額やマットを購入する前に、作品に合う色と余白の幅を考えられます。
観てくださる人の位置から展示を点検する

目的:展示する高さ、周囲との間隔、映り込みを実際の観え方で確認します。
内容:作品を安全な場所に立てかけるか、展示する予定の位置に掛けます。数歩離れた位置、作品の正面、少し左右に移動した位置から順に観てください。
作品全体が観やすいか、額に窓や照明が映らないか、濃いトーンに照りが出ないかを記録します。
ポイント:近くからの観え方だけで判断せず、最初に部屋へ入って作品に気付く位置からも確認します。照明や作品の位置を変えましたら、同じ場所に戻って観比べましょう。
効果:観てくださる人が立つ場所を想像しながら、作品を観やすく展示する習慣が身に付きます。
まとめ|完成した作品を、観てくださる人に伝わる形へ整えよう

第3回個展出品作品 灯の点る窓辺の静物 2022 F10 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画やデッサンが完成した後には、作品を撮影し、額に収め、展示するという工程があります。
どれも絵を描き直す作業ではありません。原画で大切にした表現を、鑑賞者が受け取りやすい形に整える作業です。
今回紹介しました、7つの工夫を振り返ります。
- 直射日光を避け、淡い線から深い黒まで自然に写る光を探す。
- 写真は、原画と観比べながら調整し、グラデーション(階調)や質感を残す。
- カメラを作品の正面に置き、四辺や構図がゆがまないように撮る。
- 額とマットは作品と並べて選び、絵に目が向かう組み合わせにする。
- 額の表面への映り込みと、作品の収まり方を確認する。
- 観てくださる人の目線で、展示の高さや照明を確かめる。
- 全体の写真と細部の写真に、正確な作品情報と短い言葉を添える。
撮影や額装へ進む前に原画そのものを見直したい方は、 LS320「鉛筆画は描き終えてからが大切!作品の完成度を高める最終点検7つのポイント」をご覧ください。
とくに鉛筆画やデッサンでは、濃く丹念に描き込んだ部分の「照り」に注意が必要です。原画では深い黒に観えても、光を反射すると、写真や展示では銀色や白っぽく観えることがあります。
写真全体を暗くして隠そうとする前に、光の向き、作品を置く位置、観てくださる人の立つ位置を変えて確かめましょう。淡い階調を残しながら、濃い部分の描写も伝えることが大切です。
また、写真の編集や額装では、「もっと目立たせたい」、という気持ちが先に立つこともあります。そんなときには、一度、何も加えていない原画を観てからにしてください。
描いた余白、明暗のつながり、視線を集めたい部分が、写真や額装後にも伝わっているでしょうか?原画と観比べることが、選択に迷ったときの基準になります。
最初から、撮影機材や額を全て揃える必要はありません。まずは一枚の作品で、光の方向を変えて撮り比べることから始めてみてください。
次に、周囲の余白を変えて、少し離れた位置から眺めます。一つずつ試せば、自分の作品に合う見せ方が分かってきます。
作品を見せる準備まで丁寧に行うことは、描き終えた作品を改めて見つめる機会にもなります。写真でも、額の中でも、展示する場所でも、あなたが描いた光と影が観てくださる人に届くように整えていきましょう。
完成した鉛筆画を、もっと魅力的に届けてみませんか?
無料メルマガでは、構図や光と影、質感表現をはじめ、作品づくりに役立つ工夫をお届けしています。プロの鉛筆画家として制作を続ける中で学んだことを、初めての方にも分かりやすくお伝えします。
一枚を描く楽しさを深め、完成した作品を自分らしく見せていきたい方は、ぜひご登録ください。
無料メルマガに登録するメールアドレスだけで無料登録できます
いつでも解除できます
作品を描き、人に見てもらう楽しみは、日々の暮らしの張り合いにもつながります。
鉛筆画に限らず、人生後半に打ち込める趣味を見つけたい方は、 JT54「定年後に生きがいを失わないために|人生後半を楽しむ趣味の見つけ方」もご覧ください。
ではまた!あなたの未来を応援しています。











撮影では、穏やかな光を作品全体に当てて、原画と観比べながら淡い線と深い黒の両方が写っているか確認しましょう。