どうも。プロ鉛筆画家の中山眞治です。

筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅳ」と共に
さて、あなたは描きたいモチーフが決まると、すぐに本制作へ取りかかっていませんか?
しかし、頭の中にあるイメージだけを頼りに描き始めると、途中で主役の位置や大きさ、余白の取り方などに違和感が生じて、大幅な修正が必要になることがあります。
そこで役立つのが、作品の設計図となる「エスキース(下絵)」です。
A4用紙を正確に半分にして小さな画面を作り、「描いては消し・描いては消し」、を繰り返しながら、構図・四隅・主役・脇役・余白・視線誘導などを検討しましょう。
本制作前に内容を充分に練り上げておけば、描き進める途中で迷うことも少なくなります。また、出来上がったエスキースに基づいて、本制作画面へ主要な位置を割り戻すこともできるので、便利に活用できます。^^
この記事では、完成度の高い作品へつなげるための、エスキースの7つの活用法について詳しく解説しましょう。
なぜ本制作の前にエスキースが必要なのか

描きたいモチーフが決まると、すぐに本制作へ進みたくなるものです。しかし、頭の中のイメージと、実際に画面へ配置したときの観え方は必ずしも一致しません。
本制作画面にいきなり描き進んでしまうと、主役の位置や大きさ、余白、四隅などの問題に、描き込んでから気づくことがあります。そこで必要になるのが、本制作前に作品全体を検討するエスキースです。
本制作画面へいきなり描き込んでしまうと、修整が多くなり、練り消しゴムやプラスチック消しゴムを使った部分には、「鉛筆の乗り」が若干異なってきます。
つまり、何度となく修正を加えることによって、完成したエスキースに基づいて制作することにより、本制作画面では修整することが少なくなるので、きれいに仕上げることにも役立つのです。^^
本章では、エスキースが単なる下描きではなく、作品の完成度を支える設計図である理由について見ていきましょう。
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いきなり本制作すると修正の自由が失われやすい
本制作画面では、描き進めるほど大きな修正が難しくなります。
最初の段階であれば、主役の位置や大きさを変えられますが、細部や陰影まで描いたあとでは、それまでの作業を惜しく感じ修正もためらいがちです。
その結果、「少し気になるけれど、このまま進めよう」、と違和感を残したまま制作することもあるのではないでしょうか。
しかし、小さな違和感であっても、そのまま描き進んでしまえば、最後まで画面全体のまとまりを損なってしまう原因にもなりかねません。
エスキースであれば、主役を動かしたり、余白を広げたり、不要な要素を消したりできます。自由に試せる段階で問題を見つけることが、本制作画面での大きな修正を減らしてくれます。
エスキースは単なる下描きではなく作品の設計図である
エスキースは、モチーフの形を簡単に写すだけの下描きではありません。
何を主役にするのか。どこへ配置し、どの程度の大きさで見せるのか。脇役や余白にどのような役割を持たせ、視線をどう導くのか。このような作品全体の仕組みを考えるための設計図です。
エスキースで練り上げた構想を、下絵から仕上げまで一貫して生かすための描画技術については、LS238「下絵から仕上げへ!完成度を引き上げる鉛筆画・デッサンの練習法とコツ」で詳しく解説しています。
一方、本記事では、描写を始める前に作品の内容を組み立てることへ重点を置きます。「どのように描くか」、だけではなく、「何を、どのように見せたいのか」、を明確にすることが、エスキース本来の目的なのです。
小さな画面だからこそ作品全体を見渡せる
大きな画面で制作していると、主役の表情や質感など、目の前の細部へ意識が向きやすくなります。そのため、画面全体のバランスを見失うこともあります。
A4用紙を半分にした小さなエスキースなら、画面全体を一度に見渡せます。主役と脇役の大きさ、上下左右の余白、四隅の状態、明暗のまとまりなどを、ひとつの画面として確認できるのです。
作品は、細部を丁寧に描くだけでは完成しません。小さな画面で全体を、何度となく描いては消しを繰り返して、本制作前に整えておけば、本制作では方向性を見失わず、細部の描写へ進めます。
次の画像では、黄金分割と4分割を主体とした構図に、モチーフをレイアウトしています。こんな感じで考えていきましょう。
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黄金分割とは、制作画面の上下左右の寸法に対して、÷1.618で得られた寸法で上下左右から分割線を使います。また、上下左右の2分割線と、2本の対角線もあわせて、使うことで全体のバランスを取りやすくなれます。


- 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦の2分割線は4分割線と重複する)
- 青色線:黄金分割線(上下左右の各2本)
- 黄緑色線:4分割線(縦方向に対して3本)
- ピンク色の線:画面の中で視線を囲み、鑑賞者の視線を導く方向を示す線

国画会展 入選作品 誕生2001-Ⅰ F80 鉛筆画 中山眞治
描き始める前の充分な検討が作品の完成度を左右する
作品づくりは、本制作画面へ描き始める前から始まっています。
主役を少し動かしたらどう見えるか。余白を広げると静けさが生まれるか。脇役を減らせば主役が引き立つか。こうした問いを重ねながら、作品の内容を深めていくのです。
エスキースの制作に時間をかけると、本制作の開始が遅くなると感じられるかもしれません。しかし、本制作画面で構図や配置に迷いながら描き続けるよりも、結果として修正が少なくなります。
エスキースで構想を練る時間も、完成度を高めるために欠かせない制作時間なのです。
A4用紙を正確に半分にしてエスキースを作る

エスキースは、身近にある紙へ自由に描くことができます。しかし、本制作へ割り戻すことまで考えるのであれば、用紙の大きさや縦横比を曖昧にしてはいけません。
A4用紙を正確に半分にすれば、扱いやすい大きさの画面を2枚用意できます。複数の案も比較しやすく、本制作画面へ位置を移す際の基準にもなります。
本章では、エスキースを作品の設計図として活用するための、用紙の準備と画面設定について解説しましょう。
A4用紙を正確に半分にする理由
A4用紙は210mm×297mmです。297mmの長辺の中央となる148.5mmの位置で切り分けると、ほぼA5サイズの用紙を2枚作れます。
ここで大切なのは、目分量で半分にしないことです。わずかな違いに見えても、片側へ傾いた用紙や縦横比の異なる画面を基準にすると、本制作へ割り戻した際に、主役や余白の位置にずれが生じるのです。
正確に切り分けた用紙であれば、2枚を同じ条件で比較できます。一方には主役を中央寄りに置き、もう一方には少し左右へ動かすなど、構図の違いも判断しやすくなれます。
用紙を正確に準備することは、単なる事前作業ではありません。エスキースを信頼できる設計図にするための第一歩なのです。
定規とカッターを使ってA5サイズに切り分ける
用紙を半分にするときには、折り目をつけて手で破るのではなく、定規とカッターを使います。
まず、A4用紙の長辺の両側で148.5mmの位置を測り、小さな印をつけます。2つの印へ定規を合わせ、ずれないように押さえながらカッターで切り分けましょう。
一度に強く切ろうとせず、軽い力で数回に分けて刃を通すと、紙の端を傷めず直線に切れます。机を傷つけないように、カッティングマットなどを敷いて作業してください。
用紙の端が曲がっていると、本制作へ割り戻す際の基準線も不安定になります。定規で測り、直線に切るという小さな手間が、その後の構図の検討を正確にしてくれます。
あるいは、A4の紙の端をきれいに合わせて半分に折り、その折り曲げた用紙の内側にカッターの刃を通して、2等分に切り分けるのでも良いでしょう。
本制作画面と同じ縦横比を意識して枠を取る
A4用紙を半分にすれば、エスキースに適した大きさになります。ただし、用紙全体をそのまま画面として使えるのは、本制作画面と縦横比が同じ場合です。
本制作に使うスケッチブック及び画用紙やパネルの縦横比が異なる場合には、その比率に合わせた枠をエスキース用紙の中へ取ります。
縦長の作品であれば縦位置、横長の作品であれば横位置に置き、本制作画面の縦と横を同じ割合で縮小します。枠の外側は、構図の候補や修正点を書き留める場所としても活用できるのです。
縦横比を揃えておかないと、エスキースでは充分に見えていた余白が、本制作では狭くなることもあります。完成した構図を保ったまま拡大するためにも、最初の段階で画面の比率を一致させておくことが重要になります。
具体的に、あなたが本制作に入る画面の大きさを、F10のスケッチブックのサイズで取り組むものと仮定したとすると、そのエスキースをA4の紙を正確に2つに切ったもので制作する際には、次のようになります。
F10の長辺は530mm・短辺が455mmであり、あなたが手元に用意したエスキース(A4の紙を正確に2分割した紙)は、その短辺のサイズは148mmなので、F10の短辺のサイズ455mmで割ると、0.3252という数値が出ます。
そして、F10の長辺は530mmなので、この長さに上記の縮尺値(0.3252)をかければ、172.35となりますので、あなたのエスキースの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができるということです。
この場合の、エスキースの長辺は210mmなので、その長辺を38mm短くすれば、F10の制作画面の正確な縮尺画面を得られます。
つまり、エスキースの短辺寸法÷制作する画面の短辺寸法の正確な縮尺を取り、その縮尺値を制作画面の長辺の寸法に掛ければ、エスキースの長辺のサイズへ特定できて、エスキース上に本制作画面の正確な縮尺画面を得られます。
この手法であれば、本制作画面がどのような大きさであっても、A4サイズを正確に半分に分割した紙上に、本制作画面の正確な縮尺画面のエスキースを得られるのです。重要なのは、本制作画面の寸法を正確に測ることです。
複数枚を用意して一つの案に固執しない
A4用紙を半分にすると、同じ大きさのエスキース用紙が2枚できます。この2枚を使い、最初から複数の構図を検討しましょう。
一枚目には最初に思い浮かんだ構図を描き、二枚目では主役の位置や大きさ、余白の取り方を変えてみます。必要であれば、さらに用紙を用意して別の案も試します。
同じモチーフでも、主役を少し移動させるだけで、安定感や緊張感、視線の動きは変わります。複数案を並べて観ることで、一枚だけを観ていたときには気づかなかった問題も見つけられるのです。
このように、最初の案をすぐに本制作へ移すのではなく、異なる可能性を試してから選ぶことが、作品の構想を深く練り上げることにつながります。
尚、2分割したエスキースに、きちんと測って構図分割基本線を入れるならば、その線をボールペンで描いておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。
用紙を正確に切り、本制作画面と縦横比を揃えることで、エスキースを信頼できる設計図として活用できます。また、複数の案を同じ条件で比較することも大切です。
「描いては消し」を繰り返して作品の内容を深める

エスキースは、最初から整った線で完成させるものではありません。描いてみて違和感があれば消し、別の位置や形を試しながら、作品の内容を少しずつ深めていくためのものです。
大切なのは、一度描いた線へ執着しないことです。最初の案を出発点として、「本当にこの配置でよいのか」「もっと伝わる見せ方はないか」、と自身に問い直します。
本章では、「描いては消し・描いては消し」を繰り返すことで、最初の着想を密度のある作品へ育てる方法について解説しましょう。
一度描いた線を完成形だと思わない
エスキースへ最初に描いた線は、完成形ではありません。頭の中にあるイメージを、ひとまず目に見える状態へ置き換えたものにすぎません。
実際に描いてみると、主役が大きすぎたり、配置が中央に寄りすぎたり、余白が単調に観えたりすることがあります。それは失敗ではなく、頭の中だけでは分からなかった問題点を発見できたということです。
最初に描いたモチーフの線を残そうとしてしまうと、その線に合わせて他の要素を配置することになり、構図を大きく変えにくくなってしまいます。
エスキースの段階では、上手に描くことよりも、より良い可能性を探すことが目的です。一度描いた線を仮の案として受け止めれば、消したり動かしたりすることへの抵抗感も少なくなるのです。
違和感のある部分を消して何度でも描き直す
エスキースを眺めて、「何か落ち着かない」と感じましたら、その違和感を見過ごさないようにしましょう。
まず、どこに問題があるのかを考えます。主役の位置なのか、大きさなのか、脇役との距離なのか、あるいは余白の形なのかを見極めるのです。
原因が分かりましたら、必要な部分を消して描き直します。一度の修正で決まらなければ、さらに消して別の案を試します。
この繰り返しによって、画面から不要なものが減り、本当に必要な要素が残っていきます。消し跡のないきれいなエスキースを作ることが目的ではありません。
むしろ、何度も修正されたエスキースには、作品と向き合い、考え抜いた過程が残されていきます。
一部分ではなく画面全体を見ながら修正する
主役の形だけを観ながら修正すると、その部分は整っても、画面全体のバランスが崩れることもあるのです。
主役を大きくすれば存在感は増しますが、余白が狭くなり、窮屈な印象になるかもしれません。脇役を加えれば物語性は生まれますが、主役へ向かう視線が分散する可能性もあります。
修正したあとは、エスキースを少し離して眺め、画面全体への影響を確認します。主役・脇役・余白・四隅を別々に見るのではなく、互いに関係するものとして判断することが重要です。
一部分を動かしたら全体を見直す。この往復を繰り返すことで、特定の場所だけが目立つのではなく、画面全体がひとつにつながった構成へ近づいていけます。
修正の跡が作品を考え抜いた証しになる
描いては消すことを繰り返すと、エスキースの用紙には薄い線や消し跡が残ります。しかし、それを悪いことだと考えることはありません。
その跡には、「主役をどこへ置くか」「何を省くか」「どの余白を残すか」、と検討した過程が表れています。
一度で決めた構図よりも、複数の可能性を比較して選び取った構図のほうが、完成度も高くなり、作品の意図も明確になるのです。
ただし、エスキースの細部まで描き込む必要はありません。作品全体の方向が決まり、主役・脇役・余白・視線の流れに納得できたところで、本制作へ進む判断をします。
修正を重ねるのは迷っているからではなく、作品の構想を深めているからです。その積み重ねが、本制作へ進む際の確かな根拠になるのです。

エスキースでは、最初に描いたモチーフの線に固執せず、違和感のある部分を何度でも描き直します。一部分と画面全体を往復しながら検討することで、作品の意図が明確になります。
構図・四隅・視線誘導をエスキースで検討する

エスキースでは、主役をどのように描くかだけでなく、画面全体がどのように観えるかを検討します。
主役が魅力的に描かれていても、構図が安定していなかったり、四隅が無関係な空間になっていたりすると、作品としてのまとまりは弱くなるのです。
また、観てくださる人の視線が主役へ向かわず、画面の外へ逃げてしまうこともあります。
本章では、構図・四隅・視線誘導を互いに関連づけながら、エスキース上で確認する方法について解説しましょう。
主役だけではなく画面全体の構図を確認する
描きたいモチーフへの思いが強いほど、そのモチーフ(主役)だけに意識が集中しやすくなります。しかし、作品の印象は、主役の描写だけで決まるものではありません。
主役を中央へ置くのか、左右のどちらかへ少し寄せるのかによっても、画面から受ける印象は変わります。安定感を出したいのか、動きや緊張感を生みたいのかによっても、適切な配置は異なります。
エスキースでは、主役の位置だけを観るのではなく、周囲の形や余白を含めた画面全体を確認します。大きな形のまとまりや、縦・横・斜めの方向性も観ていきましょう。
構図の技法へ無理に当てはめるのではなく、自分が表現したい感情や物語性に、その配置が合っているかを判断することが大切です。
ただし、たとえば風景を描く場合などでは、あなたが選ぶ構図に「ピッタリはまる」景色などはありません。つまり、選ぶ構図に、あなたの描きたい主役を構図上の中心へ据えて、描くということになります。
その際には、構図上の主要な分割線に合う脇役も、「あなたの都合の良いように」、配置して描けばよいのです。その際には「デフォルメ」を使うことを忘れないようにしましょう。
デフォルメは、簡略・削除・拡大・縮小・付けたし等、あなたの思い通りに使えます。具体的には、実際の風景には電柱や電線があっても、それらを省略して描くことなどは、どのプロ画家も行っているのです。^^
構図については、主役や脇役をどのように配置すればよいか迷う場合には、 LS165「構図で差がつく!表現力を引き出す鉛筆画の構図アイデア5選とは?」も参考にしてください。
四隅が空白や無関係な形になっていないか観る
画面の中央付近は注意深く検討していても、四隅は見落とされやすい場所です。
四隅に中途半端な形が入り込んでいたり、意味のない空白が残っていたりすると、観てくださる人の視線がそこで止まり、作品全体を巡ることができずにさまよってしまい、印象が弱くなることがあります。
エスキースを描きましたら、左上・右上・左下・右下を順番に確認します。それぞれの隅が主役や構図とどのようにつながっているか、画面全体の安定に役立っているかを見てください。
四隅を必ず何かで埋める必要はありません。余白として残す場合にも、その空間に静けさや広がりなどの役割があれば、作品の一部として成立します。
大切なのは、偶然できた隅ではなく、意図して整えられた四隅にすることです。エスキースの段階で四隅まで意識して画面を整える方法については、 LS301[構図だけでは足りない?鉛筆画の“4隅”で作品性を高める視線誘導テクニック7選]で、詳しく解説しています。
観てくださる人の視線がどこからどこへ動くか考える
作品を観る人の視線は、一か所だけにとどまるとは限りません。明るい部分や暗い部分、強い輪郭、人物の向き、物の重なりなどを手がかりに、画面の中を移動します。
エスキースでは、最初にどこへ目が向き、その後どこへ移るのかを確認します。主役へ自然に導かれ、脇役や周囲を巡ったあと、再び主役へ戻る流れが作られているかも観てみましょう。
人物の視線や体の向き、建物や道の方向、明暗の境界なども、視線を導く働きを持ちます。
視線誘導は、観てくださる人を無理に操作するものではありません。作品の中を自然に観てもらい、伝えたい内容へ気づいていただくための道筋を整えることです。
もっと分かりやすく言えば、たとえば同じ種類のモチーフを、対角線を使って、近景は大きめに背景を薄暗く・中景は背景を暗く中くらいの大きさで・遠景では明るく小さく薄く描く、といったように、遠近法を用いると奥行きを強調できます。
次の作品も参照してください。

国画会展 会友賞 誕生2013-Ⅰ F130 鉛筆画 中山眞治
画面の外へ視線が逃げる原因を修正する
エスキースを観たときに、視線がすぐに画面の外へ向かってしまう場合には、その原因を探しましょう。
強い斜線が外側へ伸びていたり、人物の顔や体が画面の外へ向いていたりすると、視線もその方向へ導かれるのです。
また、端に置かれた強い明暗及び目立つ形や細かい柄や模様のあるモチーフが、主役より先に注目を集めることもあります。
原因が見つかりましたら、線の向きや形の位置、明暗の強さなどを調整します。すべての線を内側へ向ける必要はありませんが、画面の外へ向かう動きには、視線を戻す要素を用意することも重要です。
エスキースを上下逆さまにしたり、鏡に映したりすると、描いている間には気づかなかった偏りを発見しやすくなれます。見慣れた画面を異なる状態で確認することも、構図を客観的に判断する方法の一つになります。
先ほども掲載していますが、次の画像では画面左下から対角線を使って、観てくださる人の視線を画面右上の方向へ導いているのです。

構図・四隅・視線誘導を一体として検討すると、画面全体にまとまりが生まれます。主役だけに集中せず、観てくださる人の視線の動きまで確認することが大切になります。
主役・脇役・余白の関係を何度も組み替える

作品の印象は、主役をどこへ置くかだけではなく、脇役との関係や周囲に残す余白によっても大きく変わります。
主役を目立たせようとして大きく描きすぎると、画面が窮屈になることがあります。反対に、余白を広く取りすぎると、主役の存在感が弱くなるかもしれません。
エスキースでは、それぞれを別々に考えるのではなく、画面を構成する一つの関係として捉えます。
本章では、主役・脇役・余白を組み替えながら、最も伝わる配置を探す方法について解説しましょう。
主役の位置と大きさが作品の印象を決める
同じ主役を描いても、画面のどこへ、どの程度の大きさで配置するかによって、作品の印象は変わります。
中央へ大きく置けば、強い存在感や安定感が生まれますが、動きは止まってしまいます。一方、左右のどちらかへ少し寄せれば、主役が向いている方向や余白との関係から、動きや物語性を感じさせることもできるのです。
ただし、「目立たせたいから大きくする」、とは限りません。小さく配置した主役が、広い空間の中で孤独や静けさを伝える場合もあります。
エスキースでは、主役の位置と大きさを少しずつ変え、どの案が作品の主題に合っているかを比較します。主役そのものの描きやすさではなくて、画面全体からどのような印象を受けるかで判断しましょう。
脇役は主役を支える位置と強さに整える
脇役には、主役の存在を引き立てたり、場面の状況を伝えたり、視線を導いたりする役割があるのです。
しかし、形が大きすぎたり、輪郭や明暗が強すぎたり、細かい柄や模様があったりすると、主役よりも先に目立ってしまいます。反対に、弱くしすぎれば、画面へ置いた意味がなくなります。
エスキースでは、脇役を加えた場合と省いた場合の両方を試してみます。なくても作品の意味が変わらないのであれば、省くことも選択肢です。
必要な場合には、主役との距離、大きさ、重なり方などを調整します。脇役を単独で魅力的に見せるのではなく、主役とどのような関係を作っているかを観ることが重要になります。
脇役が適切に働けば、主役を過度に強調しなくても、観てくださる人の視線は自然に主役へ向かうのです。また、私たち人間は、「細かい柄や模様」に注意を奪われる習性があります。
つまり、主役に「細かい柄や模様」がある場合には、しっかりと描き込めばそれでよいのですが、問題は脇役のモチーフに「細かい柄や模様」があるときです。
そのような場合には、「細かい柄や模様」を簡略・省略して描くことで、主役を引き立てられます。
しかし、全体に「細かい柄や模様」、も描き込む必要がある場合には、主役へはハイライトをしっかりと効かせて、脇役にはハイライトを抑えて描くことで、主役を引き立てられるのです。
余白を「何もない場所」ではなく表現として扱う
余白は、モチーフを描かなかった残りの場所ではありません。作品の静けさや広がり、緊張感、孤独なども表現できる大切な空間です。
主役の向いている方向に余白を作れば、その先にある見えないものを想像させられます。主役の背後を狭くすれば、追い詰められたような印象を生むこともできます。
重要なのは、余白の広さだけでなく、その形です。細く途切れた余白よりも、まとまりのある余白のほうが、画面に呼吸や奥行きを与えやすくなるのです。
エスキースでは、主役や脇役を動かしながら、余白の形がどのように変化するかを確認します。主役を中心に考えるだけでなく、余白そのものを一つの形として観ることが、構図を深めることにつながります。
尚、構図分割基本線の中の部分を「抜け(※)」として、大胆に扱うこともできます。次の作品を参照してください。B⑥F⑦の分部を活用しています。
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√3分割とは、制作画面の上下左右の寸法に対して、÷1.732で得られた寸法で上下左右から分割線を使います。また、上下左右の2分割線と、2本の対角線もあわせて、使うことで全体のバランスを取りやすくなれます。

第3回個展出品作品 遠い約束Ⅰ F1 2023 鉛筆画 中山眞治
※ 「抜け」とは、制作画面上に外部へ続く部分があると、観てくださる人の「画面上の息苦しさ」、を解消できる効果があります。
複数案を比較して最も伝わる配置を選ぶ
一枚のエスキースだけを見ていると、その構図が最善のように感じることがあります。しかし、別の案も並べることで、初めて長所や問題点が見えてきます。
主役を中央に置いた案、左右へ少し寄せた案、大きさを変えた案など、少なくとも二つ以上の配置を試してみましょう。
比較するときには、単に「きれいに見えるか」、だけで判断しません。自分が作品で伝えたい感情や物語性に、どの案が最も合っているかを考えます。
必要であれば、それぞれの案の優れた部分を組み合わせて、新しいエスキースを作ります。最初の着想に固執せず、複数の可能性から選び取ることで、意図の明確な内容の濃い構成へ近づいていけるのです。

主役・脇役・余白は、互いに支え合う関係にあります。位置や大きさを変えた複数案を比較して、作品の主題が最も伝わる構成を選びましょう。
完成したエスキースを本制作画面へ割り戻す

エスキースが完成しましたら、そこで決めた構図を本制作画面へ移しましょう。
このとき、目分量だけで描き写すと、主役の位置や大きさ、余白の広さなどが少しずつ変わり、練り上げた構想を再現できないことがあります。
そこで役立つのが、エスキース上の位置を比率によって、本制作画面へ割り戻す方法です。
本章では、本制作画面を決めて、エスキースを造った際に得られた縮尺値を基準にして、エスキース上のサイズをほぼ正確な位置に、本制作画面へ再現する方法について解説します。
F10の本制作画面をエスキースへ縮尺した際の数値を逆算利用する方法
割り戻しを行うには、「試行錯誤」して完成したエスキースの、それぞれデッサンしたモチーフの主要な寸法を測って、先ほどF10用のエスキースを作った際の縮尺を逆算利用して、モチーフの輪郭の主要な位置を本制作画面(F10)に再現します。
つまり、エスキース上のモチーフの寸法を測って、たとえば、縦横から測って、その寸法÷0.3252で得られた値が、あなたが制作するF10画面上の寸法になります。
ですから、エスキースは、造って何となく全体のバランスを観たりするだけにとどまらずに、あなたが苦心して制作したエスキースの主要な位置を、特定できるという利点がある事を忘れないでください。
この部分では、先ほどの第二章「A4用紙を正確に半分にしてエスキースを作る」の中の「本制作画面と同じ縦横比を意識して枠を取る」で、詳細を再確認してください。
F4の本制作画面をエスキースへ縮尺した際の数値を逆算利用する方法
あなたの制作する、スケッチブックや紙のサイズが、仮にF4の場合には、次のようになるのです。
F4の長辺は333mm・短辺が242mmであり、あなたが手元に用意したエスキース(A4の紙を正確に2分割した物)は、その短辺のサイズは148mmなので、F4の短辺のサイズ242mmで割ると、0.6115という数値が出ます。
そして、F4の長辺は333mmなので、この長さに上記の縮尺(0.6115)をかければ、203.62となりますので、あなたのエスキースの長辺を204mmにすれば、あなたが本制作に入るF4を正確に縮尺したエスキースの土台ができるということです。
この場合には、出来上がったエスキースのモチーフの実寸を測り、÷0.6115で得られた寸法が、F4の本制作画面に反映できる寸法になります。
最終的に、あなたの気に入ったモチーフを、あなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは作品によっては、構図上の不足する部分に他のモチーフも加えて補うことにより、エスキースを完成させることができます。
そして、本制作画面がF4の場合の完成しているエスキースで、主役などの主要なモチーフの重要な位置は、エスキース上の寸法÷0.6115(先ほどの縮尺値)で、F4画面上の位置を再現できます。
主役や重要な形の位置を比率で割り戻す
あなたが実際に本制作する画面をまず決めてから、エスキースの作成を行いますが、その際の縮尺値は必ずわかるところへメモしておきましょう。
そして、完成したエスキースの主要なモチーフの高さや幅などを、エスキース上の寸法÷縮尺値の逆算によって、制作する画面上の位置を計算して、点を打っていきます。
ここで注意が必要なのは、2Bなどの柔らかい鉛筆で、優しく軽く打ちましょう。強く点を打ってしまうと、「跡」がなかなか消えにくいこともあるので注意してください。
主要なモチーフのサイズを再現する点を打ちましたら、その点を結んでいき、全体を再現していきます。
割り戻した位置を本制作画面で微調整する
割り戻しは、エスキースを機械的にそのまま転写するためのものではありません。構図の骨格を保ちながら、本制作画面に適した位置を見つけるための基準です。
主要な位置を移しましたら、少し離れて画面全体を確認します。大きな画面では、エスキースより主役の圧迫感が強く見えたり、余白が広く感じられたりすることもあります。
違和感があれば、細部を描き始める前に位置や大きさを微調整します。ただし、修正する際には、なぜ変更するのかを明確にしましょう。理由なく動かし続けると、エスキースで練り上げた最終的な構想へ戻れなくなるからです。
割り戻した位置を土台として、大きな画面での観え方を確認して整えることで、エスキースの意図を生かした本制作へ進めます。
まず、本制作画面を決めて、それに基づいたエスキースを造る際の縮尺値を忘れずに、出来上がったエスキースの寸法÷縮尺値で、本制作画面へ正確に割り戻せます。主要な位置を移してから、全体を観て微調整することが大切です。
エスキースを作品の設計図として残し次の制作へ生かす

エスキースは、本制作画面へ構図を移した時点で、役目を終えるものではありません。制作の途中で方向性を確認したり、完成後に作品との違いを振り返ったりするための、大切な資料になります。
また、制作のたびに保存していけば、自分が選びやすい構図や余白、主役の見せ方なども観えてくるのです。
本章では、エスキースを一度限りの下描きにせず、現在の作品と次の制作へ生かす方法について解説します。
本制作中もエスキースへ戻って全体を確認する
本制作へ入ると、細部の形や陰影、質感などへ意識が集中しやすくなります。描き込みに夢中になるほど、作品全体の構図や当初の意図を見失うこともあります。
そのようなときは、完成したエスキースを本制作画面の近くへ置き、定期的に観比べましょう。
主役の位置や大きさは変わっていないか。脇役が強くなりすぎていないか。必要な余白を描き込みで埋めていないか。こうした点を確認することで、作品の方向が少しずつずれていくのを防げます。
エスキースは、本制作を縛る決まりではありません。しかし、迷ったときに出発点へ戻り、「この作品で何を伝えたかったのか」、を思い出させてくれる設計図になるのです。
本制作で変更した点と理由を記録する
エスキースで充分に検討しても、本制作画面へ移したあとに変更が必要になる場合もあります。
大きな画面で観ると主役が強すぎたり、エスキースでは気にならなかった余白が広く感じられたりすることもあります。その場合には、エスキースに固執せず、本制作に適した状態へ調整しましょう。
ただし、どこを、なぜ変更したのかを記録しておきましょう。エスキースの余白や裏面へ、「主役を少し小さくした」「右側の余白を少し広げた」「脇役を一つ減らした」など、短い言葉で書き残します。
変更の理由まで記録すると、感覚だけで修正したのか、作品の意図に基づいて判断したのかを、あとから確認できます。この記録が、次の作品で構図を考える際の参考にもなるのです。
完成作品とエスキースを比較して課題を見つける
作品が完成しましたら、エスキースと並べて見比べてみましょう。
エスキースで計画した構図や視線の動きが、本制作でも保たれているかを確認します。予定どおりにできた部分だけでなく、途中で変わった部分にも注目してください。
変更によって作品がよくなったのであれば、その判断は次の制作でも生かせます。反対に、描き進めるうちに主役が大きくなりすぎた、余白を狭めてしまったなどの問題があれば、それが今後の課題になるのです。
完成作品だけを観ても、制作前に何を考えていたのかは思い出しにくいものです。エスキースと比較することで、計画と結果の違いが明確になり、自分自身の制作上の傾向を客観的に確認できます。
蓄積したエスキースが自分だけの作風を育てる
エスキースを作品ごとに保存すると、自分がどのように作品を考えてきたのかが分かる記録になります。
複数枚を並べて観ると、主役を配置しやすい位置、好んで使う余白の広さ、繰り返し選んでいる視線の動きなどに気づくことがあるのです。
無意識に選んでいた構図や形の中には、自分らしい表現につながるものが含まれています。一方、同じ構図へ偏りすぎていることに気づけば、次の作品では異なる配置を試すきっかけにもなります。
自分だけの作風は、形だけをまねて作るものではありません。作品ごとに考え、選び、修正してきた積み重ねから少しずつ育っていくのです。
エスキースを保存することは、完成作品だけでは観えない思考の過程を残し、自分の表現を深めることにつながります。

エスキースは、本制作中の確認や完成後の振り返りにも役立ちます。制作ごとに記録して保存すれば、自分の課題や表現の傾向が観え、次の作品や作風づくりへ生かせるのです。
練習課題(3つ)
本章では、あなたが実際に手を動かして練習できる課題を用意しました。鉛筆画やデッサンは、練習しただけ上達できますので、早速試してみてください。
同じモチーフで3種類の構図を作る

目的
一つの構図へすぐに決めず、主役の位置や大きさを変えながら、複数の可能性を比較する習慣を身につけます。
内容
A4用紙を正確に半分に切り、本制作画面と同じ縦横比の枠を取ります。同じモチーフを使い、次の3種類のエスキースを作ってください。
1枚目は主役を中央付近、2枚目は左右のどちらか、3枚目は主役の大きさを変えて配置します。細部は描き込まず、主役・脇役・余白の大きな関係が分かる程度にとどめます。
3枚が完成しましたら並べて眺め、作品で伝えたい感情や物語性に最も合う構図を選びましょう。
ポイント
単に整って観える構図を選ぶのではなく、主役の存在感、余白から受ける印象、視線の動きなどを比較します。最初に描いた案へ固執せず、異なる配置を試すことが大切です。
効果
同じモチーフでも、配置や大きさによって、作品の印象が変わることを実感できます。複数案を比較してから構図を決める習慣が身につき、最初の思いつきだけで本制作へ進むことを防げます。
「描いては消し」を繰り返す

目的
一度描いた線へ執着せず、修正を繰り返しながら、作品の内容を深める感覚を身につけます。
内容
練習課題1で選んだエスキースを使い、違和感のある部分を一つずつ修正します。
主役の位置や大きさ、脇役との距離、余白の形、四隅、視線の動きなどを確認し、「描いては消す」作業を繰り返してください。
一度に、画面全体を描き直す必要はありません。主役を少し動かす、脇役を小さくする、不要な形を省くなど、一回につき一つの変更を加えます。
ポイント
修正する前に、「どこに違和感があるのか」「なぜ変更するのか」、を考えます。修正後はエスキースを少し離して眺め、変更した部分だけではなく、画面全体への影響を確認してください。
効果
エスキースをきれいに仕上げることよりも、考えながら修正することの重要性を理解できます。違和感の原因を探し、自分の判断で構図を整える力が身につきます。
完成したエスキースを大きな画面へ割り戻す

目的
エスキースで決めた構図を崩さず、主役や重要な形のおおよその位置を、本制作画面へ正確に移す方法を身につけます。
内容
制作する本制作画面の短辺をエスキースの短辺と合わせて縮尺値を見ます。つまり、エスキースの短辺は148mmなので、あなたが扱うスケッチブックの短辺サイズで割りましょう。
そこで得られた縮尺値を、あなたが制作するスケッチブックの長辺サイズへかけてみましょう。そうすると、エスキースの長辺の値が得られます。
エスキースが完成しましたら、エスキース上の主要なサイズを今使った縮尺値で割れば、あなたが制作する本制作画面上に再現できます。
主役の頭頂部・顔の左右の位置・あごなど、形を決める重要な位置が、画面全体のどの位置にあるかを確認してください。その位置を練習用画面へ割り戻し、主要な点を結びながら大きな形を描きます。
ポイント
細かな輪郭から描き始めず、主役の上下左右、脇役との距離、余白の広さなど、大きな位置関係から移します。描き終えましたらエスキースと見比べ、構図の印象が保たれているかを確認してください。
効果
目分量だけに頼らず、比率を基準にして、構図を拡大できるようになれます。本制作画面で主役の位置や大きさがずれることを防ぎ、エスキースを作品の設計図として生かす力が身につきます。
まとめ
本記事では、いきなり本制作へ進まず、エスキースを作品の設計図として活用するための7つの方法について解説してきました。
描きたいモチーフや場面が思い浮かぶと、すぐに大きな画面へ描き始めたくなるものです。しかし、頭の中にあるイメージと、実際に画面へ配置したときの観え方は必ずしも一致しません。
主役の位置や大きさ、脇役との関係、余白の形、四隅、視線の動きなどは、実際に小さな画面へ描いてみることで初めて観えてきます。
エスキースは、きれいに仕上げるための小作品ではありません。「描いては消し・描いては消し」を繰り返しながら、最初の思いつきを、内容の濃い作品へ育てるための検討の場です。
今回ご紹介しました7つの活用法を、もう一度振り返ってみましょう。
- 本制作画面を決めて、本制作へ入る前にエスキースを作り、作品全体の方向性を決める。
- A4用紙を正確に半分にし、本制作画面と同じ縦横比の枠を取る。
- 最初に描いたモチーフの線へ固執せず、「描いては消し」、を繰り返して内容を深める。
- 主役だけでなく、構図・四隅・視線誘導を一体として検討する。
- 主役・脇役・余白を何度も組み替え、複数案を比較する。
- 本制作画面を基準にして制作したエスキースに基づき、完成したエスキースを本制作画面へ割り戻す。
- エスキースを保存し、本制作中の確認や次の作品づくりへ生かす。
LS238で扱ったのは、下絵から仕上げへ進むための描画技術や練習法でした。一方、本記事で取り上げたエスキースは、本制作を始める前に「何を、どこへ、どのように配置するのか」、を考え抜くための設計図です。
エスキースを描く時間は、本制作を遅らせるものではありません。構図の迷いや大きな描き直しを減らし、作品で伝えたい内容を明確にするための、重要な制作時間になります。
最初から、完成したエスキースを目指す必要はありません。線を描き、違和感を見つけ、消して描き直す。その繰り返しによって、不要な要素が取り除かれ、作品に本当に必要なものが残っていくのです。
そして、充分に構想を練り上げたエスキースから、本制作画面へ正確に割り戻せば、小さな画面で決めた主役・脇役・余白の関係を保ったまま、本制作へ進めるようになれます。
いきなり本制作へ入る前に、まずはA4用紙を正確に半分にして、作品の設計図を作ってみてください。
エスキースで考え抜いた時間の積み重ねが、作品の完成度を高め、観てくださる人の心に残る一枚へとつながっていくでしょう。
一つの作品とじっくり向き合う時間は、技術を高めるだけでなく、毎日の張り合いや生きがいにもつながります。
趣味を人生の後半の楽しみへ育てたい方は、 JT54「定年後に生きがいを失わないために|人生後半を楽しむ趣味の見つけ方」もあわせてご覧ください。
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エスキースとは、作品全体を検討するための設計図です。本制作前に自由な修正を重ねることで、迷いや大きな描き直しを減らせます。