こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

筆者近影 作品「静物2025-Ⅲ」と共に
さて、鉛筆画や鉛筆デッサンにおいて、人物デッサンを始めたものの、「何から練習すればよいのか分からない」、「描いても上達している実感がない」と感じることはありませんか?
人物は、形・比率・線・陰影・全身バランスなど、同時に意識すべき要素が多く、鉛筆画や鉛筆デッサン初心者の人ほど練習の順番を間違えがちです。
この記事では、鉛筆画や鉛筆デッサンにおける、人物デッサン初心者の人が最初にやるべき練習を5つに絞り、それぞれの目的と取り組み方を整理して解説します。
闇雲に描くのではなく、「今は何を身につけているのか」を意識しながら進めることで、練習効率は大きく変わります。基礎を適切な順序で積み上げたい人は、ぜひ参考にしてください。
この記事は、鉛筆画や鉛筆デッサンの入り口部分として、鉛筆による人物画のデッサンについて解説します。
それでは、早速見ていきましょう!
形を適切に捉えるための基本形トレーニング

第1回個展出品作品 人物Ⅳ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
人物デッサン初心者の人が、最初につまずきやすいのは、「人を人として描こうとする意識」が先行しすぎる点ではないでしょうか。
鉛筆デッサンでは、いきなり顔や体の細部を描こうとせず、まず形を適切に捉える力を養うことが重要になります。そのために有効なのが、人物を基本形の集合体として整理する練習です。
本章では、完成度よりも、形の把握を優先して進めていく点について解説します。
人物を球体・箱・円柱として捉える意識

人物デッサンでは、頭部を球体、胴体を箱、腕や脚を円柱として捉える考え方が基本になります。
鉛筆で描く際も、輪郭線から入るのではなく、まずこれらの立体を組み合わせるように配置するのです。次の画像も参照してください。

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏
形を単純化することで、複雑な人体も整理して観察できて、鉛筆デッサン全体の安定感が生まれます。人物を「単純な形の集合体」として見る視点を身につけることが、この練習の目的です。
輪郭ではなく立体の向きを描く

初心者の人の人物デッサンでは、輪郭線をなぞるような描き方になりがちです。
しかし、鉛筆デッサンでは、立体がどの方向を向いているかを線で示すことが重要になります。球体なら中心線、箱なら奥行きの線を入れ、形の向きを意識して描きます。
これにより、平面的な人物ではなく、空間の中に存在する立体として表現できるようになるのです。
細部を描かず大きな形だけで止める

この段階の練習では、目や指などの細部は一切描き込みません。
鉛筆でデッサンする際も、大きな形が適切に取れているかだけを確認します。途中で描き込みたくなっても、あえて止めることで、形の狂いに気づきやすくなれます。
細部は、後の練習で充分に扱えるため、まずは全体の形を崩さない感覚を養うことが大切です。
短時間で繰り返すことが形の感覚を定着させる

基本形トレーニングは、1枚を丁寧に仕上げるよりも、短時間で何枚も描く方が効果的です。
鉛筆デッサンで、1枚の制作に5〜10分程度を目安にして、同じポーズを複数枚描いてみましょう。繰り返すことで、人物の形の傾向やバランスが自然と身についてきます。
完成度を求めず、形の確認を目的に取り組むことが上達への近道です。人物デッサン初心者の人が、最初に身につけるべきなのは、人物を適切な形として捉える力です。
鉛筆デッサンでは、当初の描き始めにおいて、輪郭や細部にとらわれず、球体や箱といった基本形で全体を構成する意識が重要になります。
顔が似ない原因を断つ比率・アタリ練習

第1回個展出品作品 少年 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
人物デッサン初心者の人が、最も強く感じる壁の一つが、「顔が似ない」「別人になってしまう」という悩みです。
しかし、この問題の多くは観察力や表現力の不足ではなく、描き始める前段階である比率設定とアタリ(※)の精度に原因があります。
鉛筆デッサンでは、最初の構造が不安定なまま描き進めると、後から修整しようとしても全体が崩れてしまうのです。
本章の練習では、顔の比率を整理して、安定したデッサンにつなげる基礎力を養う点について解説します。
※ アタリとは、デッサンにおいてモチーフの形を把握し、配置を決めることを目的とした補助線や大まかな図形のことです。
顔全体を縦横の基準線で整理する

人物の顔を描く際は、いきなり輪郭を取るのではなく、まず鉛筆で縦と横の基準線を入れます。縦の中心線は顔の向きや傾きを示し、横の基準線は目・鼻・口の配置を整理するためのものです。
鉛筆デッサン初心者は、感覚だけで位置を決めがちですが、基準線を引くことで、比率のズレを客観的に確認できるようになれます。
顔全体を構造として捉える意識が、この段階では重要になるのです。
目・鼻・口を形ではなく位置関係で決める

顔が似なくなる大きな原因の一つは、目や鼻を最初から形として描こうとすることです。
鉛筆デッサンでは、まず各パーツの位置を点や短い線で示し、配置のバランスを確認します。位置関係が正しければ、多少形が簡略でも人物としての印象は崩れません。次の画像も参照してください。

鉛筆デッサンでは、「形は後、位置が先」という順序を守ることが、安定した顔につながります。
アタリは修整前提で軽く何度も描く

アタリは完成線ではなく、あくまで目印や確認用の線となります。
そのため、鉛筆は軽く使い、消すことを前提に描きます。強く描いてしまうと修整をためらい、比率が狂ったまま進めてしまいがちになるのです。
鉛筆デッサンでは、アタリを何度も描き直すことで、少しずつ適切な比率に近づけていきます。この「直しながら探る」姿勢が、顔の安定感を生み出します。
角度を変えて比率の理解を立体化する

正面顔だけを練習していると、比率の理解が平面的になりやすくなります。
鉛筆デッサンでは、斜め向きや俯き、見上げる角度なども取り入れることで、顔の立体構造がより明確になるのです。
どの角度でも、基準線を描く習慣をつけることで、位置関係の把握が安定し、人物デッサン全体の再現性が高まります。
人物デッサンで顔が似ない原因の多くは、描き込み不足ではなく、比率とアタリの不安定さにあります。鉛筆デッサンでは、基準線を使って顔全体を整理し、位置関係を確認してから形に入ることが重要です。
筆者の場合には、顔の輪郭を取ったところで、縦横に眉毛・目・鼻・口の位置を示す線を入れて、まずはざっくりと目から描き始めています。次の画像を参照してください。

その目の位置や大きさと幅などを大まかに入れて、改めて顔の輪郭や鼻の大きさや位置などを描き込んでいます。
この補助線を入れて、全体のバランスや比率を確認しながら進めていくことで、複数枚描き進むうちに、顔を描くことに慣れてくるのです。
安心してください。筆者も最初の内は「福笑い」のような作品を描きていましたが、この記事の順序で描くことに慣れていけば、必ず上達できます。^^

福笑いの画像です
この練習を繰り返すことで、顔の印象が安定し、人物デッサン全体の完成度も確実に向上していけるでしょう。
線の安定感を作る描線コントロールの練習
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第1回個展出品作品 ノーマ・ジーン 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
人物デッサン初心者の人が、次に直面しやすいのは、「線が不安定」「描線が震える」「人物が弱々しく見える」といった問題ではないでしょうか。
これは才能や経験不足というより、鉛筆の動かし方が整理されておらず、線の役割が曖昧なまま描いていることが原因となりやすいです。
デッサンにおいて線は、形を支える骨格であり、観察した情報を画面に定着させるための記録でもあります。
線が安定すると、輪郭だけでなく姿勢や量感まで伝わりやすくなり、人物デッサンの説得力が一段上がるのです。
本章の練習では、鉛筆の動きと判断の手順を整え、安定した描線を身につけることを目的とします。
尚、制作にあたっては、イーゼルや机に向き合う際には、足を組まずにイスに深く座ることで、安定した線を描けるようになれると同時に、疲れにくい体勢を維持できます。^^
また、制作時のポイントでは、あなたの制作する画面のすぐ脇に、モチーフが見えていて、頭を動かさずに視線の移動だけで、制作画面とモチーフを行き来できるようにすることです。
手首ではなく肩及び腕や肘全体で鉛筆を動かす

線が震える原因の多くは、本章の冒頭でも記述していますが、姿勢が安定していないことが原因として挙げられます。まずは、イスに足を組まずに深く腰掛けましょう。
そして、手首だけで鉛筆を動かしている点などがあります。人物デッサンでは、肩及び腕や肘も使いながら、腕全体で大きく線を描くイメージが重要となります。
とくに、長い輪郭線や胴体のラインでは、手首主導だと線が分断されやすく、同じ場所を何度もなぞってしまいがちです。
落ちついた精神状態で、直線でも曲線でも、一定の速度で線を描く練習を行い、線の始まりから終わりまでを一息でつなぐ感覚をつくります。
鉛筆の先だけで描くのではなく、肩及び腕や肘の動きで、線を大きく捉える動きで運ぶ意識が、安定の土台になるのです。
線の強弱を使い分けて形を支える

人物デッサンでは、すべての線を同じ強さで描く必要はありません。
鉛筆の筆圧を調整し、制作画面上における、前後の形の手前側や重なり部分、接地部などはやや強く、奥や補助的な線は弱く描くことで、立体感と空間の前後が生まれます。
鉛筆デッサン初心者の人は、「線を濃くする=上手い」と思いがちですが、重要なのは強弱の理由づけです。
どこが手前で、どこが境界で、どこが構造線なのかを意識して線を置くと、人物の存在感が格段に安定します。
迷い線を減らして決断のある線を描く

同じ場所を何度もなぞる迷い線は、人物デッサンを弱く見せる大きな原因です。鉛筆デッサンでは、多少ズレても一度で線を描く決断が必要になります。
線を描く前に、「この線は何を示すのか」を一瞬で決め、描いた後に「長さ・角度・位置」を確認して修整する、という順番に切り替えるのがコツです。
最初から正解を出そうとすると、手が止まって線が震えます。まず線を置き、必要なら描き直す。こうした手順を徹底すると、線の質が安定し、人物の輪郭が締まって見えます。
大きな輪郭を捉える際の描き方では、2Bなどの鉛筆を人指し指・中指・親指で優しく軽く持ち、腕及び肩やひじを使って大きく描いて行くイメージで進んでいきましょう。
また、いちいち「描いては消し・描いては消し」をするのではなく、複数の線を使って描きながら、やがて「この線だ」という場面に出会えますので、その調子で全体を描いて行きます。
その後、不要な線は練り消しゴムで整理するという描き方がオススメです。^^
短い線と長い線を描き分けてリズムを作る

人物描写の細部では、短い線で胴体や脚など、大きな形では長い線を使い分けることが、安定したデッサンにつながります。
同じ長さ・同じリズムの線ばかりの場合には、画面が単調になり、構造が伝わりにくくなります。大きな形は長い線で方向と勢いを示し、細部は短い線で情報量を増やすことが必要です。
この切り替えを意識するだけで、人物の構造が明確になり、描写にメリハリが生まれます。鉛筆の筆運びを変えることで、描線の表情も自然に変化していきます。
人物デッサンにおける線の不安定さは、観察力の不足ではなく、鉛筆の動かし方と描線への判断が未整理なことから生じるのです。
鉛筆デッサンでは、肩及び腕や肘全体を使った描線、線の強弱、決断のある線、線の長短の使い分けを意識することで、人物の形が明確に表現できます。
線が安定しない、描いても上達している実感が持てない場合には、人物デッサンに限らず、練習方法そのものを見直すことが大切です。基礎練習の考え方を整理した、次の記事もあわせて参考にしてみてください。

練習の合言葉は「確認して直す」です。この描線コントロールの練習を重ねるほど、人物デッサン全体の説得力と安定感が確実に向上するのです。
陰影で立体を理解するトーンの分解練習

第1回個展出品作品 兄妹 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
人物デッサン初心者の人にとって、形や比率がある程度取れるようになった次の壁が、「立体感が出ない」「のっぺりして見える」という問題です。
この原因の多くは、陰影を感覚的に塗ってしまい、明暗の役割を整理できていない点にあります。
鉛筆デッサンにおける陰影は、雰囲気づくりではなく、立体を理解するための構造情報です。
本章の練習では、トーンは分解して考え、人物を立体として把握する力を養うことを目的としている点について解説します。
光源を一つに固定して考える

人物デッサンで、陰影が混乱する最大の原因は、光の方向が曖昧なまま描き始めてしまうことです。
鉛筆デッサンでは、まず光源を一つに固定し、「どこから光が来て、人物のどこに光が当たり、どこが影になっているのか」を明確にします。
光源が定まれば、明るい面・中間の面・影の面という3つの領域が自然に分かれます。陰影は感覚ではなく、光に対する面の向きで決まるという意識を持つことが重要です。
そのためにも、複数の方向からの照明を避けて、できれば1つの方向からの照明で描くことが描きやすさを増してくれます。とくに、斜め上からの光は「光と影の効果」をしっかり確認できます。^^
トーンを3段階に分けて整理する

いきなり、滑らかなグラデーション(階調)を作ろうとすると、人物デッサンは失敗しやすくなります。
最初は鉛筆で、「明・中・暗」の3段階に分けてトーンを整理しましょう。明るい部分はスケッチブックや紙の白を残し、中間トーンで面の向きを示し、影の部分で立体の奥行きを表現しましょう。
トーンを分けて考えることで、陰影が整理されて、人物の量感が分かりやすくなります。
影の形で立体を説明する

鉛筆デッサンにおける影は、単なる黒い部分ではありません。影の形そのものが、立体の構造を説明しています。
鉛筆デッサンでは、影の輪郭がどのような形になっているかをよく観察し、その形を適切に写し取るのです。
影を塗りつぶす前に、まず影の境界線を意識することで、人物の凹凸や面の切り替わりが明確になります。
描き込みすぎずトーンの関係を見る

鉛筆デッサン初心者の人の人物デッサンでは、影を濃くしすぎたり、全体を塗り込みすぎたりする傾向があります。
しかし重要なのは、トーン同士の関係性です。鉛筆で描く際も、「一番暗い影」「それより少し明るい影」「中間トーン」の差が保たれているかを常に確認しましょう。
部分ではなく、全体の明暗バランスを見ることで、人物の立体感が自然に浮かび上がります。
人物デッサンで立体感を出すためには、陰影を感覚的に扱うのではなく、構造として理解することが欠かせません。
鉛筆デッサンでは、光源を固定し、トーンを分解し、影の形と関係性を整理することで、人物を立体として捉えられるようになれます。
このトーンの分解練習を重ねることで、顔や身体の奥行きが明確になり、人物デッサン全体の完成度が確実に底上げされていくのです。
全身を崩さないための簡易プロポーション練習

第1回個展出品作品 人物 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
人物デッサン初心者の人が、最後につまずきやすいのが、全身を描いたときに「どこか不自然」「バランスが崩れて見える」という問題です。
顔や上半身はそれなりに描けても、全身になると急に難しく感じるのは珍しくありません。その原因は、細部の描写力ではなく、全体のプロポーション(比率)を把握する視点が不足している点にあります。
鉛筆デッサンでは、全身を描く前に、「人体をどういう比率で捉えるか」を理解しておくことが不可欠です。
本章の練習では、複雑な人体解剖には踏み込まず、人物デッサン初心者の人でも安定して使える、簡易的なプロポーション感覚を身につけることを目的とした解説をします。
頭身で全身の比率を大まかに把握する

人物デッサンで全身を描く際は、まず頭の大きさを基準に体全体の比率を考えます。次の画像を参照してください。


出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏
一般的には、成人の立ち姿は頭を基準におよそ7〜8個分で構成されますが、人物デッサン初心者の段階では正確な数値にこだわる必要はありません。
鉛筆で頭の大きさを一つ決め、それを縦方向に繰り返して配置することで、全身の長さを大まかに把握します。
この工程を入れるだけで、脚が短くなりすぎたり、胴体が長くなりすぎたりする失敗を防ぎやすくなるのです。
骨格の流れを一本の線で捉える

全身デッサンでは、いきなり体の厚みや筋肉を描こうとすると、姿勢が崩れやすくなります。
鉛筆デッサンでは、まず頭から背骨、骨盤、脚へとつながる「体の軸」を一本の線で捉えることが重要です。
この軸線は、人物の重心や動きを示すガイドになります。軸が安定していれば、多少形が簡略でも、立っている、歩いているといった姿勢が自然に見えるようになれます。
左右の長さと位置を必ず比較する

人物デッサンで、全身が歪んで見える原因の一つに、左右の比較不足があります。
腕や脚を描く際に、片側だけを見て描いてしまうと、長さや位置がずれてしまいます。鉛筆でデッサンする際は、必ず左右を見比べ、「同じ高さか」「同じ長さか」を確認しましょう。
比較する習慣をつけることで、全身のバランスが崩れにくくなり、安定したプロポーションが保たれます。
細部を描く前に全体で止める

全身デッサンでは、顔や手足など描きやすい部分から描き込んでしまいがちではないでしょうか。
しかしこの段階では、あえて細部を描かず、全体の比率が適切かどうかだけを確認します。鉛筆デッサンでは、全身を簡略な形で一度止め、遠目で見直すことが非常に効果的です。
ここで違和感に気づければ、大きな修整も容易になります。
人物デッサン初心者の人が、全身を安定して描くためには、細かな描写力よりも、全体のプロポーション(比率)を把握する力が重要になるのです。
鉛筆デッサンでは、頭身による比率の整理、体の軸の確認、左右の比較、最初に全体の輪郭を取った際に、一旦止める判断を徹底することで、全身の崩れを防ぐことができます。
人物デッサンの基礎練習を一通り行った後は、練習全体の流れを整理することが重要です。
今後どの分野をどう進めていくか迷った場合には、次の記事を参照してください。
初心者から中級者へ進むための鉛筆画・デッサン練習ロードマップ完全版

この簡易プロポーション練習を繰り返すことで、全身デッサンに対する苦手意識が薄れ、人物表現の幅が大きく広がっていくでしょう。
練習課題(3つ)

本章では、あなたが実際に手を動かして練習できる課題を用意しました。鉛筆画やデッサンは練習しただけ上達できますので、早速試してみてください。
基本形で人物全体を捉える構造練習
内容
人物の写真または、鏡に映った自身の姿を参考に、人物全体を「頭=球体」「胴体=箱」「腕・脚=円柱」といった基本形のみで構成した鉛筆デッサンを行います。
条件
・輪郭線や細部(顔・手・服のしわ)は描かない。
・立体の向きが分かる中心線・奥行き線は入れる。
・1枚10分以内で2〜3枚描く。
目的
人物を「人」ではなく「形の集合」として捉える力を養い、形を正確に配置する基礎感覚を身につける。

参考画像です
顔の比率とアタリを確認する反復デッサン
内容
同じ人物の顔を、正面またはわずかに角度を変えて、アタリのみで3枚描きます。
条件
・縦の中心線、目・鼻・口の位置線を必ず入れる。
・目や鼻の形は描かず、位置関係だけで止める。
・1枚あたり5〜7分程度。
目的
顔が似ない原因を「描き込み不足」ではなく、「比率と位置のズレ」として認識し、鉛筆デッサンにおける準備段階の重要性を理解する。



参考画像です
線とトーンで立体を支える人物デッサン
内容
胸から上の人物をモチーフに、線の安定感と陰影の整理を意識した鉛筆デッサンを行います。
条件
・光源は一方向に固定。
・線の強弱を意識して輪郭を整理。
・トーンは「明・中・暗」の3段階まで。
・描き込みすぎず、構造が伝わるところで止める。
目的
描線の安定とトーンの関係によって、人物の立体感と存在感がどのように生まれるかを体感する。

参考画像です
まとめ:人物デッサン初心者が最初にやるべき練習の全体像

第1回個展出品作品 人物Ⅲ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
人物デッサン初心者の人が、上達を実感できない原因の多くは、才能や観察力ではなく、練習の順番を誤っている点にあります。
人物は情報量が多いため、いきなり完成を目指すと混乱しやすく、結果として「描いても上達しない」状態に陥りがちです。
この記事で紹介しました5つの練習は、人物デッサンに必要な要素を段階的に分解し、無理なく積み上げるための順序として構成されています。
まず重要なのは、人物を人として見る前に、形として捉える力を養うことです。基本形トレーニングによって、頭部や胴体、手足を立体として整理できるようになると、全体の構成が安定するのです。
次に、顔の比率とアタリを徹底することで、「似ない」という悩みの根本原因が描写力ではなく準備不足にあることが理解できるようになれます。
その土台の上で、描線コントロールの練習を行うことで、鉛筆デッサンにおける線の役割が明確になります。描線が安定すると、人物の形や姿勢が自然に伝わり、画面全体の説得力が増すのです。
さらに、トーンの分解による陰影の整理を通して、人物を平面ではなく立体として理解できるようになれます。陰影を構造情報として扱う意識が、人物デッサンの完成度を大きく引き上げてくれます。
最後に、全身を対象とした簡易プロポーション練習を行うことで、部分に引きずられず全体を見渡す視点が身につくのです。
ここまでの練習を順に積み重ねることで、人物デッサンは「難しいもの」から「整理して描けるもの」へと変わっていきます。
この記事で押さえるべきポイントは次の通りです。
- 人物は最初から細部を描き込まず、形と構造で捉える。
- 顔が似ない原因は、比率とアタリの不安定さにある。
- 鉛筆デッサンでは、線は形を支える骨格として扱う。
- 陰影は感覚ではなく、光と面の関係で整理する。
- 全身デッサンでは、細部よりプロポーション(比率)を優先する。
- 練習は完成を目指さず、目的ごとに区切って行う。
人物デッサン初心者の人にとって、最も大切なのは、「今どの力を鍛えているのか」を自覚しながら練習することです。
この記事の、5つの練習を順番に繰り返すことで、鉛筆デッサンに必要な基礎が自然と身につき、人物表現への苦手意識も確実に薄れていきます。焦らず、一つずつ積み上げていきましょう。
ではまた!あなたの未来を応援しています。


この練習を繰り返すことで、後の比率や陰影の練習が格段に理解しやすくなります。まずは形を崩さず描く手法を、確実に感覚に吸収させましょう、