こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
筆者近影 作品「遠い約束Ⅱ」と共に
さて、動物の鉛筆画は、初心者の人から上級者の人まで多くのアーティストに愛されています。その魅力は、毛並みや質感、独特の形を鉛筆だけで表現できる点にあります。
この記事では、動物を鉛筆で描く基本ステップと、人気の動物モチーフ10選をガイドします。さらに、リアリティーを追求するためのコツや光と影の使い方、質感の表現方法についても解説していきます。
初心者の人でも分かりやすいようにポイントを押さえた内容ですので、これらを参考にぜひ動物の鉛筆画に挑戦してみてください。
それでは、早速見ていきましょう!
動物の鉛筆画を始める前に知っておきたい基本ステップ
第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅢ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
動物の鉛筆画は、その繊細な表現と独特の美しさから、多くのアーティストが好んで制作します。特にモノトーンの鉛筆を使うことで、光と影のコントラスト(明暗差)や毛並みの質感を際立たせることもできます。
本章では、初心者の人が動物の鉛筆画を始める際に、押さえておきたい基本ステップを紹介します。
モチーフ選びの重要性
動物の鉛筆画を始める第一歩は、描くモチーフを選ぶことです。初心者の人にはシンプルな姿の動物を選ぶことをオススメします。例えば、猫や犬の顔、または鳥の横顔など、複雑な背景を省いたものが最適です。
動物の写真を参考にする場合には、光の当たり方が明確で、陰影がはっきりしているものを選ぶと描きやすくなります。
アウトラインの描き方及び構図を検討するタイミングと内容
モチーフが決まりましたら、動物が画面のどの位置に配置されるとバランスが良いのかを確認し、軽いタッチで輪郭を描きます。
当初のデッサンでは、形を大まかに捉えることがポイントであり、最初から細部にこだわらずに大きく輪郭を捉えていきましょう。この時のコツは、Bや2Bの鉛筆を人指し指・中指・親指で優しく・軽くつまむように持ち、肩と腕を使って描くイメージで描き進みましょう。
そして、あなたが5作品ほど描いて「制作に慣れて」こられましたら、作品をより見映えのする構成を考えて行きましょう。つまり、構図の検討を始めるタイミングということです。
構図は簡単なものもたくさんありますので、その簡単な構図を順番に取り扱いながら、その構図に当てはめる動物や、それ以外のモチーフの組み合わせを考えることで、あなたの楽しみは無限大に広がり、モチベーションもマックスに達することでしょう。
具体的な一例では、黄金分割を活用する場合であれば、あなたの制作する画面の縦横それぞれのサイズを測り、そのサイズに対して÷1.618で得られた寸法を画面の左右から測って、2つの黄金分割点(線)を得ることができます。
画面の縦についても同じことが言えます、採寸して、そのサイズに対して÷1.618で得られた寸法を画面の上下から測って、2つの黄金分割点(線)を得ることができます。
それらの線と、画面の縦横の2分割線及び左右からの対角線2本を描いて、出来上がる黄金分割構図基本線は次の通りです。横向きであれば向きを変えるだけです。これらの構図の導入によって、あなたの公募展への出品も現実的になってきます。
モアイのある静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治
陰影を施す際のポイント
鉛筆画で動物の立体感を表現するには、陰影が欠かせません。まずは光源を確認及び意識して、どの部分に影ができているのかを観察します。
影の部分には、縦横斜めの4方向からの線による「クロスハッチング」によって面を埋めていきましょう。そして、光が当たる部分は白い紙をそのまま残すようにすると自然な立体感が生まれます。
あるいは、陰影を必要とする面を全体に、HB等の鉛筆で優しく軽くクロスハッチングを行って面を埋め、そこへ光っている部分を「練り消しゴム」で「抜く」という方法もあります。
そして、それ以降はそれぞれの部分へ、必要な陰影を施していけば仕上へと向かえます。
毛並みを描く際には、短い線を重ねて質感を出すようにしましょう。動物の鉛筆画は練習を重ねることでスキルが確実に向上します。この基本ステップをしっかり押さえて、あなただけのオリジナルな動物画を楽しんでください!
人気の動物モチーフとその特徴的な描き方
モノトーンの鉛筆画では、動物のモチーフを選ぶことで作品の魅力が大きく変わります。描く対象の特徴を正確に捉え、毛並みや陰影を活かした描き方をマスターすることで、リアリティーと個性が生まれます。
本章では、特に人気の動物を取り上げ、それぞれの特徴的な描き方について解説します。尚、「人気の動物モチーフ10選ガイド」は、「まとめ」のところで紹介します。
猫の描き方:しなやかな毛並みと大きな目を表現
猫は、動物の鉛筆画の中でも非常に人気のあるモチーフです。その理由は、しなやかな毛並みと大きな瞳の美しさにあります。
毛並みを描く際は、短いストロークを重ねることで柔らかい質感を表現しましょう。また、目の光を強調することで、猫の活き活きとした表情を引き出すことができます。
犬の描き方:個性豊かな表情と耳の質感
犬は表情が豊かで、飼い主との親密な感情を反映させることができるモチーフです。耳の部分は毛の流れが異なるため、鉛筆の角度や圧力を調整して異なる質感を出すのがポイントです。
ビーグルの画像です
また、鼻の濡れたような質感を描くには、光沢部分を白く残し、周囲に柔らかい陰影を加えるとリアルさが増します。
鳥の描き方:羽の細かいディテールと構図の工夫
鳥を描く際には、羽の細かいディテール(詳細)をどれだけ表現できるかがポイントです。鉛筆の尖った先を使って、羽の重なりや質感を描き分けましょう。
また、鳥が枝に止まっている姿など、自然な構図を取り入れることで全体的な完成度が高まります。目の周囲の陰影やくちばしの光沢感も忘れずに。
シマエナガの画像です
つまり、一例として、前述している黄金分割構図基本線の縦横の黄金分割の交点である、EFIJなどに主役となる鳥を置くということです。
動物の鉛筆画は、それぞれの動物の特徴を捉えた描き方が鍵となります。今回紹介しました猫、犬、鳥の描き方を参考にしながら、モチーフに合わせたテクニックを磨いてみてください。
毛並みや質感を鉛筆で表現するためのテクニック
動物の鉛筆画において、毛並みや質感をリアルに表現することは非常に重要です。モノトーンの鉛筆を使ったデッサンでは、光と影、線の方向性、トーンの変化を駆使することで、毛並みや質感の立体感を表現できます。
本章では、そのための具体的なテクニックを解説します。
毛の流れを観察して線を描く方向を決める
毛並みをリアルに描くためには、毛の流れを正確に捉えることが大切です。動物の毛は体の曲線に沿って自然に流れているため、観察を怠らずに描き始めましょう。線を描く際は、鉛筆を優しく軽く持ち、短いストロークを重ねて毛の質感を出します。
また、光が当たる部分では筆圧を弱め、影の部分では少し強くすることで毛の濃淡を表現します。
柔らかい毛と硬い毛を描き分ける
動物によって毛の質感は異なります。柔らかい毛(猫やウサギなど)を描く場合は、鉛筆の芯を寝かせて滑らかなトーンを作りつつ、毛先だけを軽く描き足す方法がオススメです。
兎の上り坂 2022 F4 鉛筆画 中山眞治
一方、硬い毛(犬や馬など)を描く場合は、芯を立てて細い線を重ね、一本一本の毛を際立たせるように描くとリアルさが増します。
質感を強調するためのぼかしとハイライト
毛並みの質感を引き立てるには、ぼかしとハイライトを効果的に使いましょう。影の部分をティッシュペーパー及び綿棒や指でぼかすと、柔らかい質感を強調できます。
また、ハイライトを表現するには、光っている部分を白く残すか、一旦、HB等の鉛筆を優しく軽いタッチのトーンで埋めた面を「練り消しゴム」で拭き取って、光の当たり具合を調整します。これにより、毛並みが立体的に見えます。
毛並みや質感の表現は、動物の特徴を引き立てる重要な要素です。これらのテクニックを実践し、動物画にリアリティーを加えていきましょう。練習を重ねることで、自身の作品が驚くほど進化するはずです!
光と影を使って動物画にリアリティーを加える方法
心地よい場所 2023 F4 鉛筆画 中山眞治
動物の鉛筆画でリアリティーを追求するためには、光と影を効果的に活用することが重要です。光と影のコントラストを適切に描くことで、平面的なスケッチに立体感を与えることができます。
モノトーンの鉛筆を使用する場合、このスキルは特に重要です。本章では、光と影を使って動物画をよりリアルにする具体的な方法を解説します。
光源を意識した陰影の配置
動物画を描く前に、光源がどこにあるのかを確認して、常に意識してください。光源の位置によって、影の位置・角度・長さ・濃さが変わります。例えば、左上から光が当たっている場合、右下が自然に影になります。
影は、毛並みや動物の体の形状を強調する重要な要素なので、観察を怠らず正確に描くようにしましょう。薄い影から描き始め、徐々に濃くしていくとバランスの取れた陰影が表現できます。
トーンの変化で立体感を出す
光と影を描く際には、トーン(濃淡)の変化が鍵となります。毛並みや体の丸みを表現するために、影の部分を滑らかに濃くし、光の当たる部分を白く残すと立体感が強調できます。
また、光が反射している部分には柔らかいトーンを追加することで、リアリティーを増すこともできます。鉛筆の芯を寝かせ気味にしたり、立てたりして、トーンの調整を行いましょう。
影のディテールと柔らかさの表現
影の中にもディテール(詳細)を加えることで、動物画全体に深みが増します。毛並みが影の中でどのように消えたり現れたりするのかを観察し、細かい線を重ねて描きます。
また、影のエッジを柔らかくぼかすことで自然な印象を与えられます。ぼかしにはティッシュペーパー及び綿棒や指を使い、境界が不自然にならないよう注意しましょう。ぼかし専門の擦筆(さっぴつ)という道具もあります。
擦筆の画像です
光と影を効果的に使うことで、動物画に命を吹き込むことができます。これらのテクニックを実践しながら、作品のリアリティーを一段階引き上げてみてください。視覚的なインパクトが格段に向上するはずです!
初心者が押さえておきたい練習法とよくある間違い
第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅠ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
モノトーンの鉛筆画は、初心者の人でも始めやすいアート形式ですが、練習を重ねる際に注意すべきポイントがあります。
適切な方法を知ることで上達が早まり、よくある間違いを避けることで失敗から学ぶ時間を短縮できます。本章では、初心者の人が押さえておきたい練習法とよくある間違いを解説します。
シンプルなモチーフから始めることの重要性
初心者の人が最初に直面する間違いのひとつは、複雑なモチーフに挑戦しすぎることです。例えば、毛の細かい動物や背景の複雑なシーンは、難易度が高く挫折の原因になります。
最初は、輪郭がはっきりした動物の顔やシルエットを描く練習をすることがオススメです。シンプルなモチーフに集中することで、陰影や質感に意識を向けられるようになります。筆者の次の作品は、比較的描きやすい部類に入ります。
第1回個展出品作品 ノスリ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
適切な筆圧と線の使い分けを練習する
初心者の人に多いもうひとつのミスは、筆圧を強くかけすぎてしまうことです。強い線は修整が難しく、全体的に硬い印象の絵になりがちです。筆圧をコントロールし、柔らかい線で描き始めることが大切です。
特に毛並みを描く際には、短い線を軽く重ねることで自然な質感を表現できます。練習として、同じモチーフを異なる筆圧で描き比べるのも効果的です。
光と影の観察を怠らない
動物の鉛筆画で立体感を生むには、光と影を正確に捉えることが重要です。初心者の人のミスとして多いのは、光源を意識せず均一なトーンで描いてしまうことです。これにより、絵が平面的に見えてしまいます。
光に近い影は「濃くはっきり」とした境界線になりますが、光から遠くなっていくにしたがって、影は淡くなっていきますし、境界線も少しづつ「ぼんやり」としたものになって行きます。この変化を忠実に再現できればリアルな描写につながります。
練習では光源を一つに定め、光が当たる部分と、影になる部分を明確に分けることを心がけましょう。また、影の濃淡を少しずつ変えることで立体感が向上します。
どんなものにできている影でも良いので、あなたの身の回りの影を観察してみましょう。
初心者の段階では、適切な練習法を取り入れ、間違いから学ぶ姿勢が大切です。シンプルなモチーフ、適切な筆圧、そして光と影の観察を徹底することで、上達のスピードが加速します。
まとめ(人気の動物モチーフ10選とその描き方)
第1回個展出品作品 ペンギン 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
モノトーンの鉛筆画で動物を描く際、モチーフ選びと描き方のポイントを押さえることが重要です。以下に、猫・犬・鳥も含めた10種類のモチーフについて、それぞれの特徴と描き方のコツを解説します。
人気の動物モチーフ10選
- 猫:短いストロークで毛並みを描き、大きな目にハイライトを入れて表情を際立たせます。
- 犬:耳や鼻の質感を丁寧に描き分けることで個性を表現します。
- 鳥:羽の重なりや光沢感を細かく描写し、自然な構図を心がけます。
- ウサギ:柔らかい毛並みを表現するために、鉛筆を寝かせ気味にしてトーンを作りましょう。耳の内側の影を薄く描くとリアリティーが増します。
- 馬:筋肉の流れを意識しながら毛並みを描くことで、力強さと動きを表現できます。たてがみは細い線を重ねて質感を出します。
- キツネ:ふわふわした尾を描く際は、短い線を重ねて動きを表現します。顔の鋭い輪郭を意識して、目元を引き締めましょう。
- シカ:角の形状と質感が特徴的です。木のような硬さを感じさせる描き方で、影を強調して立体感を出します。
- リス:尾の毛並みを描く際に柔らかさとボリューム感を意識します。小さな目と手足を丁寧に描くことでかわいらしさを強調しましょう。
- ゾウ:肌の質感を再現するには、鉛筆を寝かせ気味にして濃淡を作りつつ、シワの部分をしっかり描き込みます。
- ライオン:たてがみの重厚感を表現するために、濃淡を強調した線を重ねて描きます。目の力強い表情がリアリティーを引き立てます。
動物鉛筆画の描き方まとめ
- モチーフ選び: 初心者の人はシンプルな動物から始め、慣れてこられたら複雑なモチーフに挑戦。
- 基本ステップ:制作当初は、とにかく楽しんで描き、5作品ほど描いて慣れてこられたら構図の学習を始める。簡単な構図から取り組み、輪郭及び毛並みや質感を段階的に描写。
- 光と影の活用: 光源を確認及び意識して、立体感を強調し陰影で質感を引き立てる。
- よくある間違いを避ける: 筆圧が強すぎる、トーンが均一すぎるなどの問題を意識的に改善。
これらのポイントを参考に、人気の動物モチーフ10選を使った鉛筆画に挑戦してみましょう。練習を積み重ねることで、リアルな動物画が描けるようになります!
ではまた!あなたの未来を応援しています。
あなたの身近なペットや、お気に入りの画像で描き始めましょう。