こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
筆者近影 作品「パーティーの後で」と共に
さて、モノトーンの鉛筆デッサンは、シンプルな道具を使いながらも、繊細で奥深い表現が可能なアートです。
特に人物デッサンでは、輪郭の取り方、光と影の使い方、陰影の調整など、バランスの取れた美しい仕上がりが求められます。
この記事では、モノトーンの鉛筆を使って人物をリアルに描くための基本的なテクニックから、プロが実践する描き方のコツまでをご紹介します。
初心者の人でも簡単に始められて、上達のステップを踏むためのヒントが満載です。あなたもこの魅力的な世界に足を踏み入れてみませんか?
それでは、早速見ていきましょう!
人物を美しく描くための基本ステップ
鉛筆デッサンで人物を美しく描くには、基本的なステップの順を追って練習することが重要です。適切なプロセスに従うことで、誰でもリアルでバランスの良い人物を描くことができます。
初めて描く場合には楽しんで描くことが一番重要な理由
鉛筆デッサンを描き初めた最初には、「構図」や「構想を練る」などの余計なことは考えないで、あなたが楽しんで描くことが極めて重要です。最初からいろいろ考えてしまうと、手が止まってしまい、結果的に挫折してしまう可能性が高まるからです。^^
あなたの感じたままを、あなたの描きたいように描いて楽しみましょう。うまく描けなかろうが、形がいびつであろうが一向にかまいません。
そして、あなたが楽しんで5作品ほど描いてある程度慣れて来られましたら、作品をもっと見映えのする内容の構成を目指しましょう。そのためには、「構図」が必要になってきます。
構図と聞くと、難しく聞こえるかもしれませんが、実は簡単な構図もたくさんあるので、何も問題ありません。例えば画面上に、あなたの描きたいと思った人物を画面の黄金分割の位置に置くだけでも良いのです。
この黄金分割とは、具体的には画面の寸法に対して、÷1.618で得られた寸法の位置に置くだけです。尚、黄金分割点(線)は、画面上下左右から測って合計4つあるので、あなたが描きたい他のモチーフを別の黄金分割点(線)に置くことで画面構成がまとまってきます。
上下の黄金分割線は、水平線や地平線として使うこともできますし、画面縦横の2分割線や2つの対角線も使えば、観てくださる人の視線も誘導できます。どうです?そんなに難しくないでしょう?^^
どんなレイアウトなのかは次の画像を参照してください。今申し上げました4つの黄金分割点(線)は、⑤⑥⑦⑧です。③と④は縦横の2分割線であり、①と②は対角線です。これらの構図基本線を使ってモチーフを配置することで画面がまとまってきます。
モアイのある窓辺の静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治
構図を導入することができるようになれましたら、市及び県や全国公募展への入選もできる可能性が高まります。逆に言えば、構図を導入していない作品では、どんなにモチーフが上手に描けていても公募展には入選できないでしょう。
ラフな輪郭を描く
まず、描き始めの段階では、描く対象人物の全体的なラフな輪郭を軽いタッチで描きます。ここで重要なのは、ディテール(詳細)にこだわらず、大まかな形やポーズを捉えることです。
特に、手や足など、体のパーツごとにシンプルな円や楕円を使い、正確なバランスを確保しましょう。
つまり、手や足はざっくりとした筒のような形状で捉えたり、上半身などでは、少し反った厚めの板のように描き始めるということです。
顔や体のプロポーションを調整する
次に、顔や体のプロポーション(比率)を調整します。頭部の大きさに対して、胴体や手足の長さがバランスよく配置されているかを確認しましょう。
人の身体の比率は、おおむね7頭身半から8頭身と言われています。
この時点で適切に描けていないと、全体的な人物像が不自然に見えるため、慎重に行う必要があります。顔の輪郭や目、鼻、口の位置も基準線でおおよそ決めておけると、後で細部の描写がスムーズになります。
初めて人物を描く場合には、身近な人を描かずに、ネットで無料ダウンロードした画像などから試してみましょう。有名人の画像もやめておいた方が無難かもしれません。それは、似ていないと落ち込むからです。^^
何枚か描いていく内に、だんだん上達していけるものです。ただし、毎日少しづつでも取り組み続けることが前提条件です。
輪郭線とバランスを確認できた後の重要なひと手間
制作時には、当然画面に接近して描いていますので、勢いづいてそのまま描き進んでしまうと、後から大きな修整が必要になることがあります。
そこで、大雑把な輪郭線を描き、バランスなどを点検した後には、一旦休憩を入れて、少し離れた位置から作品と対象人物を比較して眺めてみましょう。
筆写の場合には、現在でもこのひと手間を必ず加えています。休憩をはさんで、改めて画面を点検すると、必ず2~3ヶ所の修整点が見つかるからです。
勢いづいて、描き進んでしまうと大きな修整が必要になる場合には、深く食い込んだ鉛筆の線などはプラスチック消しゴムで、それ以外は練り消しゴムで消していきますが、どうしても画面が少し汚れてしまうので、初期の段階での修整は重要なのです。
このひと手間は、のちに大きく修整をしないで済む重要な作業と位置付けてください。一旦休憩をはさんで、しかも、少し離れて観てみると、デッサンに違和感を発見できるものです。
光の方向を意識しながら陰影をつける
輪郭とプロポーション(比率)が整いましたら、次に光源を意識して陰影を加えます。光の方向を確認し理解することで、影の落ちる位置及び長さや濃さを適切に表現でき、人物に立体感が生まれます。
この時、力強く線を引くのではなく、軽く繊細なタッチで陰影を徐々に濃くしていくことがポイントです。
部分的にしっかり描くのではなくて、全体的に少しづつ陰影も入れていきましょう。特に一番濃いところから描き始めて、徐々に明るいところを描くようにすると描きやすくなります。
細部を描き込む(注意事項あり)
陰影が完成しましたら、顔の表情や服のシワなど、細部を丁寧に描き込んでいきます。
目や髪の質感、口元の表情など、小さな部分にも注意を払うことで、人物の個性が浮かび上がります。この段階では、緻密さと集中力が求められます。
特に、顔の描き方では、額・頬・鼻・顎などのハイライトを含む微妙な陰影は、2HやHの鉛筆を優しい軽いタッチで、まるで化粧を施すイメージで描いて行きます。
曲線に入っている陰影は、曲線に沿った陰影のつけ方が必要です。下の筆者の作品を参照してください。
第1回個展出品作品 人物Ⅳ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
尚、鉛筆デッサンの重要な点として、あなたが人物画を描いていく際には、当然人物が主題です。
そこで、人物の輪郭や顔や全身の陰影などは、意識して細密に描く必要がありますが、人物の着ている服などに細かい模様などがあった場合でも、人物の表情や全体の輪郭に観てくださる人の視線が及ぶようにすることが大切です。
何が言いたいのかと言いますと、我々人間の目は「細かい柄や模様」があるとそこに視線を向けてしまう習性があるので、あなたが見てほしい部分以外には、分かりやすく言えば「意識的に手を抜く」ことも必要だということです。
何もかも、克明に描くことが必ずしも良いことではありません。あなたの感動や強調したい部分を、観てくださる人へ分かりやすく主張することも大切なのです。
作品全部のモチーフへ克明に描き込まれた作品は、「何が言いたいのか分からない作品」などと言われてしまうこともあります。
作者の意図する、目立たせたいところをハッキリさせる修整は、どの作家でも当たり前におこなっています。これを「デフォルメ」と呼びます。
あなたが、注目して欲しい部分に視線が瞬間的に及ぶように、それ以外の要素はできるだけ簡素化した方が、観てくださる人へはっきり強調できます。
最後の仕上げ:全体のバランスを確認
最後に、全体のバランスを再度確認しましょう。描き上げた人物が自然なポーズであるか、各パーツの大きさが調和しているかをチェックし、不足している陰影やラインを加えていきます。
ここで、完成度を高めるための微調整を行います。具体的には、瞳の黒さをもう一段濃くしたり、眉を少し濃くしてみたり、唇の輝きを強調できるように周囲にもう少しトーンを入れたりします。
また、先ほど触れました、額・頬・鼻・顎や体の曲面部分などのハイライトの仕上げとして、練り消しゴムで慎重に拭き取り、状況によってはティッシュペーパーを小さくたたんで、淡く入っているトーンを擦って馴染ませたりします。
仕上げの段階では最終的に、濃いところをもう一段濃くできないかを検討したり、あるいは明るいところを再度丹念に、練り消しゴムで拭き取るなどの作業が必要です。
光と影でリアリティーを出すモノトーンの技法
第1回個展出品作品 人物Ⅱ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
モノトーンの鉛筆デッサンにおいて、光と影の使い方は、作品にリアリティー(現実性)を与えるための最も重要な要素です。
適切に光と影を使いこなすことで、平面的な作品が立体的に見え、描かれた人物やモチーフに深みが加わります。
光源を意識して制作を始める
まず、デッサンを始める前に光源の位置を確認しましょう。光がどこから来て、人物のどこに当たっているのかを明確にすることで、自然な陰影を入れられます。
光源が強い場合、影は濃くなり、柔らかい光では影も淡くなります。描く対象がどのような光に照らされているかを理解し、それに基づいて構図を考えます。
具体的には、真夏の昼下がりの太陽光を思い浮かべてください。街路樹にできている影は濃くて、はっきりとしています。一方、同じ真夏の光線でも、窓から部屋へ入っていく光線の縁は、奥に入っていくにしたがって淡くなっていきます。
人物画を描く場合においても、窓からの光も併せて描く場合などには、その状況も含めて描いていくようにしましょう。光の状態では、筆者の次の作品を参照してください。
国画会展 入選作品 誕生2006-Ⅱ F100 鉛筆画 中山眞治
グラデーションを使い分けて陰影をつける
リアリティーのある陰影を表現するためには、鉛筆の濃さを使い分けてグラデーション(階調)を表現することも大切です。例えば、光が強く当たっている部分には、明るいトーンで描き、影の部分には濃いトーンを使います。
中間のトーンを巧みに組み合わせることで、立体感と深みが増します。筆圧を調整し、滑らかなグラデーション(階調)を意識しましょう。次の筆者の作品でも、それぞれの人物の陰影をさまざまに使い分けています。参照してください。
第1回個展出品作品 兄弟 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
境界線をぼかしてリアルな質感を作る
光と影の境界線はくっきり描くのではなく、ぼかすことでより自然な表現が可能になります。特に、光から影へと移り変わる部分(ハーフトーン)は、滑らかに描くことでリアリティーを強調できます。
ティッシュペーパー及び綿棒や指を使って鉛筆の線をぼかし、陰影の境界を柔らかくすると、制作対象がリアルに浮かび上がります。人物ではありませんが、筆者の次の作品を参照してください。
第1回個展出品作品 金剛力士像(阿形) 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
光の反射を取り入れる
リアリティーをさらに高めるためには、光の反射も考慮しましょう。影の中にも、光が反射して生まれる微妙な明るさが存在します。
特に、物体の下部や背景からの反射光は、完全に影にならずに少し明るい部分を作り出します。この微妙な光の反射を描き込むことで、奥行きと立体感が強調できます。具体的には、次の球体の反射光を参照してください。
制作対象(今回は人物)にあたる、床面からの反射や、周囲のモチーフからの「反射光」も制作画面に入れることでリアリティーが増します。
質感を表現するための陰影の使い方
描く対象によって異なる質感を表現するためにも、光と影の使い方は重要です。例えば、肌や布の質感を表現する際には、柔らかい陰影で滑らかさを強調します。
一方で、硬い質感の物体(髪や金属など)は、より強い光と影のコントラストを使って、質感を際立たせます。髪の質感では、次の筆者の作品を参照してください。
第1回個展出品作品 少年 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
光と影を上手に活用することで、モノトーンの鉛筆デッサンにリアルな立体感と奥行きを与えることができます。これらの技法を練習して、作品に深みを加えていきましょう。
鉛筆デッサンでは、光と影のコントラスト(明暗差)が重要です。その表現方法については、制作数をこなしていくことで自然と身に着けられます。
輪郭とバランスの取り方:プロが教える秘訣
第1回個展出品作品 人物Ⅲ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
鉛筆デッサンでリアルな人物を描くためには、輪郭とバランスを正確に捉えることが不可欠です。プロのアーティストが使う秘訣を知ることで、より自然でバランスの取れた人物デッサンを描くことが可能になります。
顔の輪郭をシンプルな形に分けて捉える
a. 楕円を描く
まず、顔全体のアウトラインを表すために、大きな楕円を描きます。この楕円は顔全体の形を示し、全体のバランスを取るための基準となります。楕円の縦の長さと横の比率を意識して描くことがポイントです。
b. 中心線を引く
楕円の中央に垂直線を描き、その線を中心として顔の左右対称な配置を描き、また、鼻の位置はその垂直線を中心として定め、両目の位置を決めるための水平線や、その下には口の位置をおおよそ決めるための水平線も基準線として描きます。
これらの線は顔のプロポーション(比率)を正確に取るために重要であり、この基準線がバランスを取るための重要な指針となります。特に初心者の人は、ディテール(詳細)に入る以前に、大まかな形を確実に捉えることが成功の鍵です。
黄金比を意識してバランスを取る
人物の顔や体には、自然に美しいと感じられる比率、いわゆる「黄金比」(※)が存在します。プロのアーティストはこの比率を意識して描くことで、バランスの取れた人物像を作り上げています。
例えば、目と目の間の距離や鼻と口の位置関係などは、正しい比率で描くと一層リアルになります。これを理解し、練習することで鉛筆デッサンが飛躍的に上達します。
※ レオナルド・ダ・ヴィンチの有名な作品である「モナ・リザ」は、髪の生え際から顎の先までの顔の輪郭が「1:1.618」と、黄金比に忠実に描かれていると言われます。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 1503ー1519頃 ルーヴル美術館蔵
体全体のプロポーションを意識する
顔だけでなく、体全体のプロポーション(比率)もバランスを取る上で重要です。頭を基準にして、首、肩、胴体、手足の長さや位置を決めます。通常、頭の高さを基準に体の大きさを測り、これによって全体のバランスを取ります。
例えば、体の寸法は、頭の寸法(長さ)の7.5〜8倍程度になることが一般的です。これに従いながら、姿勢やポーズを調整します。
輪郭を滑らかに描くための練習
輪郭を描く際には、直線的に描いてしまうと硬く不自然な印象になってしまいます。滑らかな線で輪郭を描くためには、軽いタッチで描き始め、徐々に強調したい部分を濃くしていく方法が効果的です。
練習として、最初は一度に完成させようとせず、その都度練り消しゴムで頻繁に消さずに、何度もラインを上から描き重ねながら、自然なカーブを作り出すことがポイントです。
やがて、この線だと思える線に出会えますので、そうしましたら、その時点で不要な線は練り消しゴムで整理しましょう。
描き始めの大きな輪郭を捉える描き方は、鉛筆を人指し指・中指・親指で優しくつまむように持ちリラックスして、肩と腕を振るい自由に描くことがコツです。
バランスを確認するための反転テクニック
プロのアーティストは、鉛筆デッサンのバランスを確認するために、絵から少し距離を取った場所で改めて作品を観たり、時折絵を反転させて見直すテクニックを使います。これにより、バランスの崩れた部分や歪んだラインが見えやすくなり、修整がしやすくなります。
反転の確認をする際にはスケッチブックや紙を鏡に映す、またはデジタルツールを使って反転する方法が便利です。輪郭とバランスを正確に捉えることができれば、鉛筆デッサンのクオリティーは格段に向上します。
このような秘訣を意識して練習を重ねることで、自然で美しい人物デッサンを描けるようになれるでしょう。
バランスを確認するための手法としては、デッサンしているのが顔だとした場合には、顔に垂直に中心線を引いてあれば、その中心線から顔の幅や顔を構成している眉・目・鼻・口の幅を定規で測って、調整する方法もあります。
顔の表情を魅力的に描くためのコツ
第1回個展出品作品 人物Ⅴ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
鉛筆デッサンにおいて、顔の表情を魅力的に描くことは、人物デッサンの中でも特に難易度の高い技術です。
表情を的確に捉えることで、作品に命を吹き込むことができます。ここでは、プロが使う顔の表情を魅力的に描くためのコツを紹介します。
感情を伝える目の描き方
顔の表情を決定づける最も重要な要素は目です。目の形や位置、角度を変えることで、感情を強調することができます。
例えば、目をわずかに細めることで怒りや集中を表現でき、逆に大きく見開くことで驚きや喜びを表現できます。瞳孔の大きさや位置にも注意を払うことで、感情のニュアンスをより豊かにすることが可能になります。
口元で表情を強調する
口元もまた、感情を表現する大切な要素です。口角のわずかな動きが表情に大きな影響を与えます。例えば、口角を軽く上げることで微笑みを、下げることで悲しみや不満を表現できます。
また、唇の輪郭を描く際に、硬く描きすぎないことが自然な表情を描くためのコツです。軽い線で唇のカーブを表現し、陰影を加えて立体感を出しましょう。
額や眉の動きに注目する
眉毛や額の動きも、感情を表現する上で重要です。驚いたり困惑した表情では眉が上がり、怒りや集中を表すときは眉が寄ります。
眉毛の形や角度を強調することで、感情をより効果的に伝えることができます。額にできる微妙なシワも、表情をリアルに表現するための鍵となります。
頬や顎のラインで柔らかさを出す
頬や顎のラインは、顔全体の柔らかさや優しさを表現する重要な部分です。特に女性や子どもの顔を描く際には、これらの部分を滑らかに描くことで、より魅力的で優しい表情を作り出すことができます。
頬骨の陰影を丁寧に描き、顎のラインを柔らかくカーブさせることで、自然な表情を描くことができます。次の筆者の作品を参照してください。
第1回個展出品作品 人物Ⅵ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
微妙な陰影で表情に深みを加える
光と影を活用して、表情に深みを加えることは重要です。顔の骨格に沿った自然な陰影をつけることで、表情の立体感を高められます。
特に、目元や口元の周りの陰影は、感情を強調するための重要な要素です。影を強くつけすぎず、微妙なグラデーションを使うことで、表情にリアリティーと繊細さを与えることができます。
これらのコツを活用して顔の表情を魅力的に描くことで、鉛筆デッサンに感情と深みが生まれます。練習を重ねることで、表情豊かな人物デッサンを描けるようになり、作品の魅力がさらに引き立つでしょう。
願い 2024 F6 鉛筆画 中山眞治
初心者が陥りやすいミスとその対策
新しい未来Ⅳ 2024 SM 鉛筆画 中山眞治
鉛筆デッサンを始めたばかりの初心者の人にとって、陥りやすいミスがいくつか存在します。これらのミスを理解し、適切な対策を講じることで、デッサン技術は飛躍的に向上します。
ここでは、初心者が陥りやすいミスとその解決策を紹介します。
線を強く描きすぎる
初心者の人が最も陥りやすいミスのひとつは、線を強く描きすぎることです。強い線は後から修整しにくく、作品全体が硬く見える原因になります。
対策としては、最初は軽いタッチで描き始め、必要に応じて徐々に濃さを加えるようにしましょう。柔らかいBや2Bの鉛筆で弱い筆圧を使う練習を積むことにより、繊細な表現も可能になります。
初心者の人は特に、人物画を描く際に輪郭を強く濃い線で描き込む傾向がありますが、できればHやHB程度の鉛筆で、それほど力を入れずに輪郭を取り、背景に濃い色を持ってくることで輪郭は取れるものと認識してください。次の筆者の作品を参照してください。
バカンス 2023 F10 鉛筆画 中山眞治
バランスが取れていない
人物やモチーフのプロポーション(比率)が不自然でバランスが悪いと、鉛筆デッサン全体のクオリティーが下がってしまいます。初心者の人は細部に集中しすぎるあまり、全体のバランスを見失うことがあります。
対策としては、最初に全体の輪郭やプロポーションを軽く描き、全体のバランスを確認してから細部に移るようにすることが大切です。
光源の意識不足
陰影を描く際には、光源を意識していないと、立体感のない平面的な作品になりがちです。光源がどこにあるのかを意識せずに描くと、影が不自然な場所にできてしまい、リアリティーを欠いてしまいます。
解決策としては、光の方向をしっかり決め、それに従って陰影を描き分ける練習をすることです。
ディテールに集中しすぎる
細部ばかりに集中しすぎて、全体の構成が疎かになることも初心者の人の典型的なミスです。
対策として、デッサンの初期段階では大まかな形や構図に集中し、細部の描写は後回しにすることが効果的です。全体がしっかりとまとまってから、ディテール(詳細)に移るように心がけましょう。
グラデーションが不自然
陰影のグラデーションが不自然で、境界線がくっきりしすぎることもよく見られるミスです。滑らかな陰影が表現できないと、立体感に欠ける仕上がりになります。
解決策としては、鉛筆の持ち方や圧力を調整し、滑らかにグラデーションをつける練習を繰り返すことです。ティッシュペーパーや綿棒を使ってぼかす技法も効果的です。
初心者が陥りやすいミスを理解し、対策を実践することで、デッサンの技術は確実に向上します。焦らずに練習を重ねることで、リアルでバランスの取れた作品を描けるようになれるでしょう。
初心者の人が、最初に取り組む際にはこれらのことを実践することで、遠回りをしないで済みます。最初の5作品は楽しむことに集中し、その後は簡単な「構図」に取り組むことで、モチベーションも保てます。
まとめ
新しい未来Ⅱ 2024 F4 鉛筆画 中山眞治
鉛筆デッサンは、シンプルな道具でリアルな表現を追求できる魅力的なアートですが、初心者の人が直面する課題も多くあります。以下のポイントを押さえることで、デッサン技術を効果的に向上させることができます。
基本的なテクニック
- 輪郭の描き方:顔や体の輪郭をシンプルな形で捉えることが、リアルな鉛筆デッサンへの第一歩。特に顔の輪郭は、卵型や楕円で表現し、目や鼻、口の位置をバランスよく配置する。
- 光と影の活用:光源を意識して陰影をつけることで、立体感とリアリティーが生まれる。
- 光が当たる部分を明るく、影になる部分を濃く描き、滑らかなグラデーションを心がける。
陥りやすいミスとその対策
- 線が強すぎる: 柔らかいタッチで描く練習をする。
- バランスが崩れている: 一旦休憩をはさむ、少し遠くから眺めてみる、鏡を使って反転させる、画像にして反転させる、などで点検し、全体のプロポーションを先に決めてから細部に移る。
- 光源の意識不足: 光源を明確にして、光の来る方向と人物にあたっている光と影を認識してから陰影を描き始める。
- ディテールに集中しすぎる: 最初に全体を描き、その後細部を描く。
- 不自然なグラデーション: 滑らかなグラデーションを意識して、境界線をぼかす。
顔の表情を魅力的に描くコツ
- 目と口で感情を表現する: 目の形や口角の微妙な動きで、感情をリアルに表現する。
- 眉や額のシワを活かす: 感情による顔の変化を強調し、リアリティーを加える。
- 微妙な陰影で深みを出す: 光と影を活かして、顔全体に立体感を持たせることで表情に深みが生まれる。
これらの基本テクニックと対策を実践すれば、初心者の人でも鉛筆デッサンでリアルな人物画の制作が可能になります。練習を重ね、これらのポイントを一つずつ習得することで、デッサンのクオリティーは飛躍的に向上するでしょう。
ではまた!あなたの未来を応援しています。
心配は要りませんよ!筆者が最初に描いた似顔絵は、まるで「福笑い」で、大変ショックを受けました。必死になって描いたんですけどね。^^