鉛筆画初心者必見!公募展で入選するための必勝テクニックとは?

 こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

      筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅰ」と共に

 さて、鉛筆画の公募展に挑戦したいけれど、どのような作品が評価されるのか分からない…。そんな初心者の人に向けて、公募展で入選するためのテクニックを解説します。

 公募展で審査員が注目する作品には、独創性があり、構図や陰影の効果的な使い方ができていて、細部の仕上げ方に至るまで、あらゆる部分での充実が欠かせません。

 これらのポイントを押さえられれば、あなたの鉛筆画はレベルアップできると同時に、公募展でも入選できる可能性を高められます。

 成功するための具体的な練習方法も、合わせてご紹介しますので、公募展に向けた準備を今から楽しみながら、しっかり整えていきましょう。

 それでは、早速どうぞ!

Table of Contents

公募展の審査基準とは?評価される鉛筆画の特徴

     国画会展 会友賞 誕生2013-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画の公募展で入選するには、審査員がどのようなポイントを評価するのかを理解することが重要です。

 単にリアルや細密に描けばよいわけではなく、独自の表現力や構図、陰影の活用なども用いて、画面全体を使い切れているかどうかの、多角的な視点で作品が審査されます。

 本章では、公募展で評価される鉛筆画の特徴について解説します。

独自性と表現力が求められる

    第1回個展出品作品 昼下がりの桟橋 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 公募展では、技術的な完成度だけではなく、作家の個性や独自の視点が反映された作品が高く評価されます。

 特に、モノトーンの鉛筆画の場合、限られた色の中でどのように感情や物語を表現するかが重要です。

 単に、写真のように描くだけでは入選できません。構図や質感を工夫して、観てくださる人の心を動かせる作品作りを意識しましょう。

構図の完成度と視線誘導の工夫

     第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 公募展の審査員は、作品の第一印象を構図から判断します。公募展で評価される鉛筆画は、構図が緻密に計算され、視線誘導が明確であることが特徴です。

 例えば、中心となるモチーフを適切な位置に配置し、明暗のコントラスト(明暗差)を活かして視線を誘導することで、作品に観てくださる人を引き込む力が生まれます。

 空間の使い方にも気を配り、余白を活かした構成を意識すると、より完成度の高い作品になります。

陰影の使い方と立体感の演出

   第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅡ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治 

 モノトーンの鉛筆画では、陰影をどのように使うかが作品の印象を大きく左右します。光の当たり方を的確に捉え、グラデーションを丁寧に描くことで、立体感のある表現が可能になります。

 また、質感を適切に描き分けることで、作品のリアリティー(現実性)が増します。たとえば、柔らかい布と硬い金属では、陰影のタッチや筆圧を変えることで質感の違いを表現できます。

 これにより、作品全体に深みが生まれ、より印象的な仕上がりになります。

 公募展で入選を目指すには、単なる技術力だけでなく、独創性や構図、陰影の使い方を総合的に高めることが重要です。

なかやま

審査員が何を観て評価するのかを理解し、戦略的に作品を仕上げることで、入選の可能性を高めることができるでしょう。

入選を狙うなら押さえるべき!構図とバランスの基本

    青木繫記念大賞展 奨励賞 郷愁 2001 F100 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画の公募展では、作品の構図とバランスが重要な評価基準となります。

 モチーフの配置や空間の使い方が適切でないと、どんなに技術的に優れた描写をしても、作品全体の印象が弱くなってしまいます。

 特にモノトーンの鉛筆画では、コントラスト(明暗差)や視線誘導の工夫が求められます。本章では、公募展で評価される構図とバランスの基本を解説します。

画面全体のバランスを整える「黄金分割法」と「三分割法」

 構図の基本としてよく用いられるのが「黄金比」と「三分割法」です。その内容を個々に解説します。

黄金分割法

 黄金比(1:1.618) は、自然界や芸術作品に多く見られる、美しい見映えを強調できる比率で、モチーフをこの比率に沿って配置すると、調和の取れた構図になります。

 つまり、実際に制作する画面の寸法を測り、その上下左右の寸法に対して÷1.618で得られた値を、画面の上下左右から測って分割するということです。

 そして、縦横にはそれぞれ二つづつの分割線を得られます(⑦⑧⑤⑥次の画像の中で確認してください)。また、画面の縦横の二分割線(④③)と左右からの対角線(①②)を入れて、黄金分割構図基本線が出来上がります。

 この作品では、背景の窓を模した「抜け(※)」の左右の角が対角線にかかるように配置しています。これは、画面上の対角線を暗示するための配置にしています。

 そして、主役のモアイは、黄金分割線⑥上に配置する一方で、斜線を導くように、手前に転がって来る球体のすぐ脇をかすめる位置に設定しています。

 また、画面左上部の角には、壁掛け時計を模したモチーフを配置して、その中心が画面左角になるようにしています。つまり、「画面の左上の角はここだよ」と言っているのです。^^

 尚、「画面の奥から手前に迫ってくる」モチーフの配置は、観てくださる人へ「緊張感」を与えることができますので、あなたも何かのモチーフを使って試行錯誤してみましょう。これも、審査に大きな影響を与える要因です。

 さらに、この作品の転がって来るモチーフは全部で三個ですが、この三という個数には「リズムを出す」意味があります。他のモチーフを使った動きを表現する場合にも、三個使って「リズム」を出すことを考えてみましょう。

※「抜け」とは、観てくださる人の意識が、画面上の外部へ開いた空間が「画面上の息苦しさ」を解消してくれる効果があります。

モアイのある窓辺の静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治

三分割法

 三分割法 では、画面を縦横3分割し、その交点に主題を配置すると、安定感と視線の流れが生まれます。

 尚、次の作品では、三つのモチーフを使って、画面上で三角形を構成しています。正三角形や、菱形や、逆三角形など、さまざまな構成に使える要素ですので、記憶しておきましょう。

  • 黄色の線:3分割構図基本線
  • 緑色の線:3分割線
  • 青色の線:「抜け」に使うための線
  • ピンク色の線:3つのモチーフで3角を構成する線

    ミヒカリコオロギボラのある静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治

 これらの構図を活用すると、作品が自然にまとまり、全体の完成度を高めることができます。

余白の使い方で空間の広がりを演出する

灯(あかり)の点(とも)る窓辺の静物 2022 F10 鉛筆画 中山眞治

 初心者の人の多くが陥りがちなのは、画面を埋め尽くそうとしすぎることです。

 しかし、余白を上手く活用することで、作品に「間」が生まれ、より洗練された印象を与えられます。

 特に、モノトーンの鉛筆画では、白と黒の対比が重要になりますので、その空間へ外部へ抜ける部分があると、外部へ続くイメージも表現できます。上の作品を参照してください。

 余白を使って視線を誘導し、モチーフの印象を際立たせることで、より印象的な作品に仕上げることもできます。

視線誘導の工夫で作品のストーリーを伝える

     第1回個展出品作品 人物Ⅰ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 優れた構図には、観てくださる人の視線を自然に導く力があります。例えば、

  • 斜めのラインを意識すると、動きや流れを感じさせる構図になる。
  • 円を描くような構成にすると、視線が画面内を巡りやすくなる。
  • 手前から奥に続く線を意識すると、奥行きが生まれ、リアルな空間表現が可能になる。

 視線の流れを計算し、主題を強調することで、より完成度の高い作品になります。

公募展で入選するためには、ただ細部を描き込むだけでなく、構図とバランスを意識して作品を構築することが大切です。計算された構図を活かし、より魅力的な作品を生み出しましょう。

リアルな陰影の描き方:光と影で作品の魅力を引き出す

蕨市教育委員会教育長賞 灯(あかり)の点(とも)る静物 2000 F30 鉛筆画 中山眞治

 モノトーンの鉛筆画では、陰影の描き方が作品の印象を大きく左右します。

 光の方向や強さを意識しながら陰影を描き分けることで、立体感や質感がよりリアルに表現できます。

 単調にならない陰影の描き方をマスターして、作品に深みを与えましょう。

 本章では、これらの内容について解説します。

光源の方向を意識した陰影の配置

    第1回個展出品作品 人物Ⅳ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 リアルな陰影を描くためには、光源の位置を明確にすることが重要です。

  • 単一光源(例: 太陽やスポットライト)は、影の方向や形がはっきりしやすく、強いコントラスト(明暗差)が生まれる。
  • 複数光源(例: 室内の照明)は、影が柔らかくなり、グラデーションを活かした陰影を表現できる。

 特に、光源の方向を一定に保ち、影の位置を統一することで、画面全体の統一感が生まれます。また、描きやすさも増します。

グラデーションを使った滑らかな陰影の表現

      第1回個展出品作品 人物Ⅲ 1997 鉛筆画 中山眞治

 光と影の境界が急すぎると、立体感が不自然に見えてしまいます。リアルな鉛筆画にするためには、なめらかなグラデーション(階調)を意識しましょう。

  • 筆圧を調整して、薄い影から濃い影へと段階的に変化させる。
  • ティッシュペーパー及び綿棒や擦筆(さっぴつ)でぼかすことで、自然な陰影を作る。
  • 線の重ね方(※)を工夫し、柔らかい影とシャープな影を描き分ける。

 これにより、リアリティー(現実性)のある質感や奥行きを演出できます。

※ 線の重ね方には、大きく分けて二種類あります。一つは、ハッチングと言って、一定方向の線を重ねる方法と、縦横斜めの四方向からの線によるクロスハッチングがあります。

 クロスハッチングで描きにくい方向の線は、スケッチブックや紙を90°回転させれば無理なく描くことができます。

環境光と反射光を活かした影のリアリティー

     第1回個展出品作品 人物Ⅴ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 リアルな陰影には「環境光」と「反射光」の考慮が不可欠です。

  • 環境光は、周囲の光が影の中にもわずかに入り込むことで、単一な黒ではなく微妙な濃淡が生まれる。
  • 反射光は、光が反射して影の一部が明るくなる現象で、特に金属やガラスなどの硬い質感を表現する際に重要(次の画像を参照してください)。
  • 影の中にわずかな光のニュアンスを加えることで、モノトーンの鉛筆画でも奥行きのある表現が可能。
なかやま

鉛筆画の公募展で評価されるには、構図以外にも光と影の扱い方が鍵となります。単一に暗く塗るのではなく、光源や反射を意識して、陰影を細かく描き分けることで、作品のリアリティーを高めていきましょう。

細部の仕上げで差がつく!公募展向けの完成度アップ術

   第2回個展出品作品 ランプの点る静物 2000 F30 鉛筆画 中山眞治

 公募展で評価される鉛筆画は、全体の構図や陰影だけでなく、細部の仕上げが非常に重要です。

 微妙なタッチの違いが作品の完成度を左右し、審査員の目を引くポイントにもなります。

 本章では、鉛筆画の公募展で差をつけるための仕上げ技術を紹介します。

質感を意識したディテールの描き込み

     第1回個展出品作品 人物Ⅱ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 モノトーンの鉛筆画では、対象の質感を的確に描き分けることで、作品のリアリティー(現実性)が格段に向上します。例えば、

  • 金属の光沢は、シャープなハイライトと深い影のコントラスト(明暗差)で表現。
  • 布や紙の柔らかさは、細かい陰影のグラデーション(階調)を活用。
  • 樹や石の粗さは、ランダム(無作為)な線や点描を加えて質感を強調。

 質感を丁寧に描き分けることで、作品の奥行きやリアリティーが増し、公募展での評価が高まります。

 ただし、あなたが制作する画面上のすべてのモチーフに、細密な描き込みをしてはいけません。それは、あなたの画面上の主役や準主役が目立たなくなってしまうからです。

 全体を詳細に描き込み過ぎた作品は、「何が言いたいのかよく分からない作品」と言われてしまうことがあります。あなたの感動や強調を、どのように表現するかということをよく考えることが重要です。

 つまり、あなたが制作する主役や準主役を目立たせるために細密な描写を施し、それ以外のモチーフには「何となくわかる」程度の描き込みにするということです。そうすることによって、主役や準主役が引き立つのです。

 しかし、全体を詳細に描き込みたいという場合には、主役や準主役にはしっかりと「ハイライト」を施し、それ以外のモチーフには「ハイライトを抑えて」描き込むことで、主役や準主役が引き立ちます。

 我々人間は、細かい模様や柄に注意を奪われる習性があるので、そのことも考え合わせて作品は制作することが重要です。

 例えば、次の作品を観てください。画面右側のカーブして登り切った道路の交差点あたりに視線を導きたいのに、画面左側当たりの樹木を細密に描きこんでしまったとします。

 そのようにしてしまうと、観てくださる人の視線を、その細かく描き込まれている部分に導いてしまうので、その観点からも、細密に描く部分とザックリと描く部分の描き分けが必要なのです。

境界線の処理で立体感を強調する

     第1回個展出品作品 静物Ⅰ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 細部の仕上げでは、境界線の処理は非常に重要です。

  • 硬いもの(ガラス・金属) → シャープな輪郭を意識し、エッジを明確にする。
  • 柔らかいもの(布・皮膚) → ややぼかしてなじませ、自然な質感を演出。
  • 遠近感を強調する → 近くの輪郭はくっきり、遠くはぼかして奥行きを演出。

出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇 氏

 境界の描き方ひとつで、作品全体の立体感が大きく変わるため、仕上げの段階で意識的に調整しましょう。

作品全体の統一感を最終チェック

     第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 仕上げの最後には、全体のバランスを整えることが重要です。

  • コントラスト(明暗差)の最終調整 → 主題が際立つように明暗のバランスを調整。
  • 余分な線やムラの修整 → 不要な線を消し、ムラを防ぐ。
  • 視線誘導の確認 → どこに目が行くかをチェックし、必要であれば微調整。

最終的な微調整を行うことで、作品の完成度が大幅にアップし、公募展での入選確率が高まります。細部にこだわり、完成度の高い鉛筆画を目指しましょう。

構図を用いた実際の制作例(着想から完成まで)

第2回個展出品作品 ランプの点(とも)る静物 2000 F50 鉛筆画 中山眞治

 例えば、今回の制作例は2001年に、筆者が国展で初入選した時の作品を事例としてあげます。具体的な説明をしていきますので、しっかりついてきてください。^^

自身のテーマを見つけよう

  第1回個展出品作品 デコイのある静物 1998 F10 鉛筆画 中山眞治

 まず、今回の制作例でのテーマは誕生です。この作品を制作するに至った背景は、ある時自宅近くの公園で、雑草の芽が、今まさに土の中から誕生しようとしている光景を目撃したことに始まります。

 小さな、何の変哲もない、見向きもされないような雑草の芽でした。

 しかし、しゃがみ込んでじっくりと見てみると、小さいながらも、これから土の中から頭を出し、双葉を広げようとしている、その力強さや、無限の可能性を感じました。

 そこで、それから何をしたかというと、その誕生を描く際の制作要素を、ホームセンターの種苗売り場へ探しに行ったところ、ふと目に留まった「グリンピースの種」で制作することに決めました。

自身のテーマの構想を練る作業は特に重要

第1回個展出品作品 休日 1998 F10 鉛筆画 中山眞治

 その「グリンピースの種」を購入してきて、自宅でそれを実際に「バット(四角い樹脂製の容器)」に植えて、毎日水をやりながら発芽のタイミングを待ちました。

 そして、やがて発芽した時点で、「土の中から地面を割って出てくる瞬間」「土の中から少し体が露出した状態」「土の中から頭は出たもののまだ葉を広げていない状態」を順次連続撮影しました。

 その3つの画像を選んで「リズム」を作り、主役のグリンピースの芽の背景には、死の象徴として「枯葉」を置いて「生と死の対比」を行い、地平線は丸い形を使って「大地の広がり」をあらわすことにしたのです。

 地平線とは、マクロでみた場合には、丸いからです。そして、全体の動きを「マッチの燃えカス」の水平部分を使って鎮めます。また、「タバコの吸い殻」も使って、観てくださる人の視線を画面右上の方向へ誘導することにしました。

本制作の前のエスキース(下絵)が必要な理由

水滴 Ⅵ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治

 尚、今回使う構図には、黄金分割を用います。下に、制作順序を画像で展開していきますが、その前に、あなたが制作に向かう際には、小さな下絵(エスキースと言います)を制作しましょう。

 その理由は、いきなり本制作する画面に描いてしまうと、大きな修整などが必要になると、画面が汚れたり、修整しきれないことや、自由に試行錯誤ができないからです。

エスキースの造り方

第1回個展出品作品 静物Ⅲ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 そこで、まずエスキースの作り方から始めます。あなたが本制作に入る画面(スケッチブックや紙)の大きさを、F6だとした場合の説明をしますが、下絵の大きさは、あなたの身の回りのA4の紙であれば何でも良いので用意しましょう。

 そして、A4の紙を正確に半分に切り、サイズを測ると短辺は148mmで長辺は210mmであるはずです。一方、F6のスケッチブックの大きさは、短辺が318mmで長辺は410mmです。

 何がしたいのかというと、F6のスケッチブックの正確な縮尺をかけたエスキースを作りたいので、短辺同士を合わせて、F6の縮尺をかけた寸法をエスキースに投影します。

 つまり、エスキースの短辺148mm÷F6の短辺318mm=0.4654となります。この数値をF6の長辺410mmにかけると、190.81≒191mmという数値が出ますので、エスキースの長辺を191mmにしたところを線で分割します。

エスキースへ黄金分割構図基本線を導入

 黄金分割構図基本線を導入するためにも、エスキースへ画面の縦横の2分割線(④③)と左右の対角線(②①)を入れます。

 そして、黄金分割線は画面の縦横に対して、1.618で割った値が分割点(線)となり、上下左右それぞれに2つの黄金分割点(線⑦⑧⑤⑥)を見出すことができます。

エスキースでの展開の仕方

 黄金分割構図基本線上のこの作品の主役は、画面上の黄金分割線⑥の位置のグリンピースの芽です。そして、準主役は黄金分割線⑤の位置のグリンピースの芽です。

 また、画面右上から画面左下へ向かう斜線を使って、植物の芽を配置しますが、その斜線を暗示するように各モチーフには水滴を付けました。また枯葉の軸も使って斜線を暗示しています。

 間面左上から画面右下へ向かう斜線でも、草の穂の先端から、枯葉の虫食い、主役の芽の小さな水滴、タバコの吸い殻の折れ曲がった部分、画面右下の地表部分へ導いています。

 また、地平線の位置は画面縦の4分割線を使い、画面全体を鎮める「マッチの軸」は、画面縦の2分割線を活用することにしました。そして、地平線は完成時には丸い形状へと変更していきます。

  • 黄色線:構図基本線(対角線・画面縦の2分割線は4分割線と重複する)
  • 青色線:黄金分割線(上下左右の各2本)
  • 黄緑色線:4分割線(縦方向に対して3本)
  • ピンク色の線:画面の中で視線を囲み、鑑賞者の視線を導く方向を示す線

国画会展 初入選作品 誕生2001-Ⅱ F80 鉛筆画 中山眞治

 構図とはこんな風にして、使うんですね。^^ 因みに、この作品のジャンルは「心象風景(心の中に思い描いた景色やイメージ、像、姿)」という部類に入ります。

 あるいは、あなたに今回提案しました「心象風景」ではなくて、静物画であなたの「心象静物」というジャンルを築き上げることもできるはずです。参考作品は次の通りです。

     第1回個展出品作品 男と女 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

        暮らし 2020 F6 鉛筆画 中山眞治

 さらに、エスキースを作ることによって、得られる大きなメリットを紹介しておきます。今回のF6での制作を前提としたエスキースの縮尺は、0.4654でした。

 あなたが、エスキースで「試行錯誤」して、納得のいく構図や構成を完了できましたら、その寸法÷0.4654で得られた寸法をF6のスケッチブック上、おおよその位置を再現できるということです。

 このような使い方は、どんな構図基本線の使用においても応用が利きます。あなたの描きたい構図やモチーフを見つけ、あなたの「創作」のイメージの幅を広げて、是非公募展で入選してください。 

 尚、構図に関して興味のある人は、このブログの最終部分に「初心者でも簡単!プロが教える鉛筆画の構図の取り方やコツとポイント」という関連記事を掲載していますので参照してください。

 また、エスキースの作り方では、あなたが制作する画面の大きさによって、エスキース上での縮尺は変化しますので、その都度正確に測ってから、同じ要領でエスキースを制作しましょう。

公募展に向けた効果的な練習法と作品のブラッシュアップ

第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅠ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 公募展で入選を狙うには、ただ描くだけでなく、計画的な練習と作品のブラッシュアップが必要です。

 完成度を高めるためには、どのような練習をすべきか、また作品をどのように仕上げるべきかを理解することは重要です。

 本章では、公募展に向けた効果的な練習方法と、作品をさらに洗練させるポイントを紹介します。

客観的な視点を持つためのデッサンの反復練習

第1回個展出品作品 家族の肖像 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画の完成度を上げるには、単なる模写ではなく、客観的な視点で描く力を鍛えることが大切です。

  • 時間を区切って短時間(5~10分程度)のデッサンを繰り返す → 瞬時に構図やバランスを判断する力がつく。
  • ミラーや写真で作品を逆さにして確認 → バランスの崩れや形の違和感を発見しやすい。
  • 過去の作品を見直し、改善点を書き出す → 成長のポイントを明確にする。

 こうした練習を継続することで、作品の完成度が飛躍的に向上します。

光と影のコントロール練習

水滴Ⅶ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治

 モノトーンの鉛筆画では、光と影のコントラスト(明暗差)が作品の印象を大きく左右します。効果的な陰影表現を身につけるためには、次の練習が有効です。

  • 異なる光源の条件で同じモチーフを描く → 光の方向による影の変化を理解する。太陽光を頼りに制作する場合には、太陽は動くので印象が大きく変わることに注意する。
  • グラデーションの練習を繰り返す → なめらかな陰影を作り、質感を高める。
  • 光の強弱を変えて陰影の強調を試す → 表現の幅を広げる。

 影の描き方を磨くことで、立体感のあるリアルな鉛筆画が描けるようになれます。

作品の仕上げ前に行う「修整&ブラッシュアップ」

第2回個展出品作品 一輪挿しと花 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 公募展に出品する作品は、完成させた後のブラッシュアップが重要です。細かい修整を加えることで、作品の質を格段に向上させることができます。

  • コントラストの最終調整 → 作品の主題がはっきりと際立つように調整。それまで扱ってきた一番濃い陰影をもう一段濃くすることはできないか検討する。それがハイライトをより一層引き立てることにつながる。並行してハイライト部分を「練り消しゴム」で丹念に拭き取る。
  • 不要な線やムラの除去 → 余計な線を消し、画面の統一感を持たせる。
  • 細部の描き込みを強化 → 質感をさらに引き立て、リアリティー(現実性)を増す。

公募展で入選率を高める出品戦略とは

 あなたが公募展へ出品する際には、ここまでの内容すべてにおいて、しっかりと作品の制作内容に自信を持てるようになれましたら、次には出品戦略を考えてみましょう。

 どういうことかといえば、出品しようとしている公募展の「出品規定」をよく読んで、その規定の中の「最大の大きさ」と「最多の作品点数」で描いて行くことによって、入選どころか「入賞」の確率まで高められます。

 考えてみればそうですよね、「一番大きいサイズ」で「選りすぐりの作品」を「最多で出品」してくる作家の作品は、大きな評価を受けられるはずですよね。^^

 ここも重要な点なので、しっかりと記憶にとどめましょう。いくら素晴らしい作品であっても、規定より小さくて、作品点数も少ない場合には、「入選」すら難しくなってしまいます。

 因みに、市展(市の公募展)の規定は、大雑把にF6~F60号くらいまで、県展(県の公募展)では、F10~F80号(F100号のところもあります)くらいまで、全国公募展は、その公募展によって変わりますが、F100~F130くらい。

 ただ、全国公募展でも、小さな作品で展開しているところもありますので、あなたが出品したいと思う公募展の、出品規定をまず確認することから始めましょう。これらの公募展を探すには、「公募ガイド」のサイトで確認できます。

 筆者はかつて、とある絵画団体に所属していましたが、素晴らしい作品でありながらも、出品規定には最低限の作品サイズが書かれていなかったので、F30~F50号くらいの作品1点を持ち込む作家をたくさん見てきました。

 しかし、残念ながらそれらの作品が入選することはありませんでした。私の所属していた絵画団体への出品は、F100~F130号の大きさが必要だったのです。

 小さいながらも作品を制作する労力や費用、当日持ち込むための車の手配や時間と労力、入選できなかった場合の、再度車による引き取りなど、出品規定を確認しなかったり、知らなかった場合などには、大きな「ロス」が生じてしまうのです。

 筆者の初めての国展への出品は、先ほどのF80号(誕生2001-Ⅱ)だったのですが、その時はどうゆうわけか入選できたのでラッキーだったのですが、あなたには空振りに終わるような悔しさを味わってほしくないのです。

 また、公募展は、市の展覧会・県の展覧会でも基本的には「公募展」なので、誤解のないようにしてください。どの公募展であっても、「最大の大きさ」「最多他の点数」で出品することによって、大きな結果を得る可能性が高まります。

 ただし、最初から一番大きな作品・最多の制作点数と言われても戸惑うでしょうから、本当の一番最初の公募展への出品は、あなたの地元の「市の展覧会」へ、出品規定の中で一番小さな作品を2~3点で申し込むことから始めるのでもOKですよ。

 その際には、繰り返しになりますが必ず、出品規定をネットで見るか、郵送で取り寄せて確認してからにしましょう。折角制作しても、出品できないのではもったいないですからね。

なかやま

せっかく公募展へ出品するのであれば、入選どころか「入賞」を狙って準備していきましょう。それくらいの意気込みで制作できれば「当たり前」に「入選」も掴み取れます。

まとめ

第1回個展出品作品 ノスリ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画の公募展で入選するためには、単なる技術力だけでなく、構図や陰影、細部の仕上げ、作品のブラッシュアップ(磨きをかける)が求められます。

 以下では、これまでのポイントを踏まえ、入選に近づくための総まとめを紹介します。

公募展の審査基準を理解する

  • 審査員は独創性や表現力を重視する。
  • 構図の完成度と視線誘導の工夫が重要。
  • 陰影の使い方で立体感やリアリティー(現実性)を演出。

構図とバランスを整える

  • 黄金分割法や三分割法を活用し、美しい配置を意識。
  • 余白や「抜け」の活用で空間の広がりと洗練された印象を作る。
  • 視線誘導を意識して、観てくださる人を引き込む構成にする。

リアルな陰影を描く技術を磨く

  • 光源の方向を意識し、統一感のある影を描く。
  • グラデーション(階調)を活用し、なめらかな陰影表現を作る。
  • 環境光と反射光を取り入れて、よりリアルな表現を実現。

細部の仕上げで作品の完成度をアップ

  • 質感の描き分け(金属・布・木など)を意識。
  • 境界線の処理で立体感を強調。
  • 作品全体の統一感をチェックし、コントラスト(明暗差)や余計な線を調整。

効果的な練習法とブラッシュアップのコツ

  • 短時間のデッサンや反転チェックで客観的な視点を持つ。
  • 光と影のコントロールの練習で奥行きのある表現を磨く。
  • 仕上げの最終調整で作品の完成度を高める。

 公募展で評価される鉛筆画には、独創性・構図・陰影・技術力・細部の完成度が不可欠です。単に上手に描くだけでなく、表現力や視線誘導を意識することで、より印象的な作品を生み出せます。

 尚、今後のあなたの公募展などへの進出やその先に見え始めている「プロ鉛筆画家」に到達するためにも、あなた自身の感性による作風を開発しましょう。

 他人のまねではなく、「この作風はあの鉛筆画家の作品だ!」と言われるようになりましょう。それが、プロ鉛筆画家の第一歩にもなります。^^

 計画的な練習を重ね、最後まで丁寧に仕上げることで、公募展での入選に近づくことができるでしょう。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。