こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
筆者近影 作品「人物Ⅶ」と共に
さて、鉛筆画で犬を描くのは難しそうに思えるかもしれませんが、コツさえ掴めば初心者の人でも簡単にリアルな犬の質感と表情を表現できます。
この記事では、犬の毛並みや目の輝き、表情豊かな特徴を鉛筆だけで描くための基本テクニックを解説します。また、初心者の人でも挑戦しやすいステップバイステップの練習方法や描きやすいモチーフの選び方もご紹介して行きます。
愛犬を描きたい人や、鉛筆画を始めたい人にぴったりの内容です。楽しく学びながら、あなただけの特別な作品を作り上げましょう。
それでは早速どうぞ!
犬の鉛筆画を描く前に準備すること:構成とモチーフの選び方
シェットランドシープドッグの画像です
犬の鉛筆画を描く際には、最初に重要なのは構成とモチーフの選び方です。どのようなポーズや角度で描くかによって、作品全体の印象が大きく変わります。
本章では、モノトーンの鉛筆画に適した構成の考え方や、初心者の人にオススメなモチーフ選びについて解説します。
犬の魅力を引き出す構成の基本ポイント
構成を決める際には、犬の特徴や魅力を最大限に引き出せる位置や角度を選びましょう。例えば、正面から見ると表情が強調され、横顔や斜めの角度では犬らしいシルエットを描けます。つまり、見映えのする位置と角度を考えるということです。
視線の高さも重要で、人間の目線から見るか、犬の目線で描くかによっても作品の雰囲気が大きく変わります。背景をシンプルにすることで、犬そのものを際立たせる効果も期待できます。
尚、それ以外にも、制作する画面上で最も見映えをよくする演出として、「構図」を考えるということも必要になってきますが、 構図については、あなたが楽しんで5作品ほど描き進み、「ある程度描くことに慣れて」こられましたら、研究を始めましょう。
その理由は、最初からいろいろなことを考えこんでしまうと、挫折の原因になってしまうからです。また、構図と聞くと、何やら小難しいように聞こえるかもしれませんが、簡単な構図もたくさんありますので安心してください。^^
構図は、作品をより見映えのする、あなたの感動や強調したい点を表現する際には極めて重要なポイントになります。公募展などへもやがて出品したいという希望のある人には、なおさら必要不可欠な要素です。
関心のある人は、この記事の最終部分に「鉛筆デッサンで初心者が風景を簡単に描くための基本構図やテクニック!」という、簡単な構図の関連記事を掲載してありますので参照してください。また、次の筆者の作品は狼ですが、参考にしてください。
第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅡ 1998 F10 鉛筆画 中山眞治
初心者におすすめな犬のポーズとモチーフ
初めて犬の鉛筆画に挑戦する場合には、複雑な動きのあるポーズよりも、座っているポーズや伏せているポーズのような安定した状態がオススメです。
また、短毛種と長毛種では毛並みの描き方が異なるため、最初は短毛種を選ぶと描きやすいでしょう。
初心者の人向けのモチーフとして、フレンチブルドッグや柴犬のような表情が特徴的な犬種が人気です。
フレンチブルドッグの子犬の画像です
柴犬の画像です
構成とモチーフ選びで注意すべきポイント
構成やモチーフを選ぶ際、光の方向や影の付き方にも注意を払いましょう。逆光で撮影された犬の写真を参考にすると、毛並みの立体感や影の深みも描きやすくなります。
また、モチーフの写真を使用する場合は、解像度が高くディテール(詳細)がはっきり見えるものを選びましょう。明暗のコントラスト(明暗差)が強い写真は、モノトーンの鉛筆画に特に適しています。
毛並みをリアルに描くための鉛筆の使い方とテクニック
マルチーズの画像です
犬の鉛筆画でリアルな毛並みを表現するには、鉛筆の使い方とテクニックが重要です。毛並みは犬種によって異なり、その質感や流れを再現するには、細部に注意を払いながら描く必要があります。
本章では、モノトーン鉛筆画に特化した毛並み表現のポイントをご紹介します。
毛の方向と流れを把握するための観察力
リアルな毛並みを描くには、まず犬の毛の生え方や流れをしっかり観察しましょう。頭部、胴体、四肢などの部位ごとに毛の方向が異なります。
例えば、頭部は放射状に広がり、胴体や尾は一定の流れを持つ場合が多いです。観察した方向性を下描きで軽く示すことで、毛並みを自然に描ける下地が整います。
毛並みの質感を描き分ける鉛筆の使い方
短毛種と長毛種では、鉛筆のタッチを使い分ける必要があります。短毛種の場合は、HBやBの鉛筆を使い、短い線を重ねることで滑らかな質感を表現します。
一方、長毛種では、柔らかい鉛筆(2B~4B)で長い線を描き、毛の流れを強調することが重要です。描き始めは軽い力で、毛先に向かって細く消えるようなタッチを心がけると、自然な仕上がりになります。
因みに、筆者の次の作品では毛並みを描く方法として、まず毛並みを描く場所全体に「HB等の鉛筆で優しく軽いタッチのクロスハッチング(縦横斜めの4方向からの線)で面を埋めます。
そして、そこへ「練り消しゴム」を練って先端を鋭いマイナスドライバーのような形状にして「毛並みを描く」のです。この方法の便利な点は、簡単であるということです。その後、濃い部分にはそれなりのトーンを入れていけば仕上げられます。
第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅠ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
レイヤリングで奥行きと立体感を出す
毛並みのリアルさを追求するには、レイヤリング(層を重ねる描き方)が効果的です。最初に薄くベースの毛の流れを描き、その上に細かい毛を描き足していきます。
最終的に、影になる部分を濃く描き込むことで、毛並みに奥行きと立体感が生まれます。このとき、鉛筆を鋭く削ることで、細部まで精密に描写できるので、こまめに鉛筆の状態を整えることが大切です。
毛並みをリアルに描くためには、観察力、鉛筆の使い方、そしてレイヤリングの技術が欠かせません。これらのテクニックを活用して、犬らしい生命感あふれる毛並みを描き上げてください。
表情を豊かに表現するコツ:目、鼻、口の描き方
犬の鉛筆画で表情を豊かに描くことは、その絵に生命感を与える重要なポイントです。特に目、鼻、口の描写が完成度を左右します。
そして、動物全般の顔の描き方としては、よく観察して顔の輪郭を描き、その次に目の位置を決めていくと顔全体のバランスがとりやすくなります。
この場合、輪郭を取った後で、「一旦休憩」を入れましょう。休憩を入れ終わった後で作品を少し離れたところから点検してみましょう。画面に接近して制作していると、全体のバランスを掴みにくいからです。
筆者も、いまだにこのようにして全体を点検していますが、必ずと言っていいほど修整すべき点が2~3ヶ所見つかります。
本章では、モノトーンの鉛筆画で表情をリアルに表現するための具体的な描き方とコツを紹介します。
目に輝きを与えるリアルな描き方
第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅢ 1998 F10 鉛筆画 中山眞治
犬の目を描く際は、目の形と光の反射を正確に捉えることが重要です。
まず、虹彩と瞳孔を描く前に、目の位置と大きさを正確に下描きします。その後、目の輝きを表現するために、光が当たる部分をあえて白く残します。
次に、周囲の濃い部分を2Bや4Bの鉛筆で丁寧に塗りつぶし、明暗のコントラスト(明暗差)をつけることで立体感が増します。また、目頭やまつげの細部を描き込むことで、リアルさが一層引き立ちます。
鼻の質感を表現するためのポイント
犬の鼻は滑らかで湿っているような質感が特徴的です。そのため、微細な質感を表現するために、細かい点描や短い線を重ねる技法が効果的です。
鼻の中央の溝や穴の部分は濃く描き、表面のハイライト部分を意識的に残すことで、光沢感が再現できます。あるいは、「練り消しゴム」を小さな「しゃもじ」のような形状にして、ハイライト部分にそっと押し当てて、光沢を表現することもできます。
また、鼻の輪郭を強調しすぎないように注意し、周囲の毛並みとのつながりを意識した描き方を心がけましょう。
口元に生命感を宿す描写テクニック
犬の口元は感情を表現する重要な部位です。口の開閉や角度によって表情が変化するため、参考となる写真やモデルをよく観察しましょう。特に口角や歯の描き方は丁寧に行う必要があります。
口の内側は濃い影で表現し、歯は周囲よりも少し明るいトーンで描くとリアルに見えます。また、口周りの毛が動きによって乱れることもあるので、その表現を取り入れると活き活きとした印象を与えられます。
目、鼻、口の描写を丁寧に行うことで、犬の表情を豊かに描くことができます。これらのポイントを意識しながら、鉛筆画に感情を宿した犬の姿を完成させてみてください。
初心者向け!ステップバイステップで描く犬の基本ポーズ
ラブラドールレトリバーの画像です
犬の鉛筆画を始める初心者の人にとって、基本ポーズを描くことは絵の完成度を高める第一歩です。
本章では、モノトーンの鉛筆画において、犬の基本的なポーズをステップバイステップで描く方法を解説します。シンプルな手法でありながら、リアルさを追求するコツも併せて紹介します。
ステップ1:全体のシルエットを捉える
最初に行うべきは、犬の全体のシルエットを大まかに捉えることです。円や楕円を使いながら、頭、胴体、脚、尾などの各部位を配置します。この段階では細部を気にせず、ポーズ全体のバランスに注目しましょう。
例えば、座っている犬を描く場合は、頭を少し前方に傾けたり、脚の角度を自然に描くことで安定感が生まれます。
ステップ2:骨格と筋肉の基礎を描き込む
次に、犬の骨格と筋肉の構造を軽く描き込みましょう。これにより、ポーズにリアリティーが加わります。肩甲骨や後ろ脚の関節部分を意識することで、犬の体勢や動きが自然に見えるようになります。
筋肉の線は濃く描きすぎず、軽くデッサンする程度で充分です。この基礎作業を丁寧に行うと、仕上げの段階でリアルな表現も可能になります。
ステップ3:ディテールと毛並みを描き込む
最後に、シルエットと骨格を基に細部を描き込みます。頭部の目、鼻、耳の位置を確認しながら、顔の特徴を明確にします。体全体の毛並みは、毛の流れに沿って細い線を重ねるように描きます。
短毛種の場合は密なタッチで滑らかさを出し、長毛種では毛先を柔らかく描いて動きを表現しましょう。また、影を適切に加えることで、ポーズ全体に立体感が生まれます。
これらのステップを順に行うことで、初心者の人でもリアルな犬の基本ポーズを描けるようになれます。最初はシンプルなポーズから挑戦し、徐々に難易度を上げていくことでスキルを磨いていきましょう。
鉛筆画の仕上げでリアルさを高める方法:光と影の効果
チワワの画像です
鉛筆画でリアルさを表現する鍵は、光と影の使い方にあります。特に仕上げの段階で適切な光と影を加えることで、作品に奥行きと立体感が生まれ、観てくださる人の目を引く仕上がりになります。
本章では、モノトーンの鉛筆画における光と影の効果的な使い方を解説します。
光の方向を確認してリアルな陰影を描く
まずは、光源の方向を確認することが重要です。光源がどの位置にあるかを明確に確認し、光が来る方向・位置・角度・長さ・濃さを描き分けます。
影を描く際は、単に濃くするだけでなく、グラデーション(階調)を意識して徐々に明るくすることで、自然な陰影を作り出せます。特に、犬の顔や身体の曲線部分では、このグラデーションがリアルさを大きく左右します。
反射光を取り入れて立体感を強調する
反射光とは、物体に直接当たる光とは別に、周囲の環境から反射して戻ってくる光のことです。これを適切に表現することで、鉛筆画に奥行きと深みを加えられます。次の画像で確認してください。
たとえば、犬の毛並みの影の中に微妙な明るい部分を残すことで、毛の質感や立体感が際立ちます。反射光の描写には、薄いH系統の鉛筆を使うと繊細な調整がしやすくなります。
ハイライトで輝きを加える仕上げの技術
ハイライトは、光が最も強く当たる部分に使われる明るいポイントです。モノトーンの鉛筆画では、練りゴムを使って紙の白を活かし、ハイライトを際立たせます。
犬の目の輝きや鼻の光沢感を描く際に、この技法が特に効果的です。また、全体のバランスを確認しながら、必要な箇所に細かいハイライトを追加すると、作品全体が一層リアルに仕上がります。
光と影の効果を活用することで、モノトーンの鉛筆画でもリアルな表現が可能です。これらのテクニックを取り入れて、作品に深みと魅力を与えましょう。
まとめ
ビーグルの画像です
鉛筆画で犬を描く際、初心者の人から上級者の人まで参考になるポイントを以下にまとめました。光と影、毛並み、表情など、作品のリアルさを高めるためのコツを総合的に紹介します。
構図とモチーフ選びのポイント
- シンプルなポーズを選ぶ:座っている犬や伏せている犬が初心者の人には描きやすい。
- 毛の流れを観察:モチーフの写真を用意し、毛並みや表情の特徴を詳しく確認。
- 光源を確認及び意識:影をつけやすい構図を選ぶと立体感が出る。
毛並みと表情のリアルな描き方
- 短毛種と長毛種を使い分け:短毛は短い線で滑らかに、長毛は柔らかい長い線で描写。
- 目に輝きを加える:光の反射を意識し、瞳のハイライト部分を白く残す。あるいは、練り消しゴムで抜く。
- 鼻の湿った質感:点描や短い線で滑らかさと立体感を表現。あるいは、練り消しゴムを優しく押し当て、トーンを弱めて微妙なハイライトを作る。
光と影の効果を活用するテクニック
- グラデーション(階調)を意識:影は濃淡をつけて自然に仕上げる。
- 反射光を取り入れる:影の中にわずかな明るい部分を残し奥行きを表現。
- ハイライトで強調:練り消しゴムを使い、光沢感やリアルな質感を追加。
初心者が取り入れるべき練習法
- シルエットを捉える練習:描き始めの当初は、円や楕円で全体の形を簡単にデッサン。
- 骨格を描く:肩や脚の位置を意識して、自然なポーズを作る。
- 細部の描き込み:顔の特徴や毛並みを段階的に仕上げる。
これらのポイントを押さえれば、鉛筆画で描く犬のリアルさを大幅に向上させることができます。基礎から応用までのテクニックを活用し、魅力的な作品作りに挑戦してみてください!
ではまた!あなたの未来を応援しています。
構成とモチーフの選び方を工夫するだけで、作品の完成度が大きく向上します。これらの準備をしっかり行い、あなたの鉛筆画に魅力的な犬の姿を描き出してください。