こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅳ」と共に
さて、鉛筆画がある程度描けるようになると、次に求められるのは構成力と表現の深さです。その力を確実に伸ばすために欠かせないのが「エスキース」の活用です。
単なる下絵ではなく、思考と試行を繰り返すこの工程こそが、鉛筆画中級者の人にとって作品の質を一段階上げる鍵になります。
この記事では、鉛筆画中級者の人が、エスキース(下絵)を効果的に活用するための考え方や実践方法を、構成・描写・省略・修整といった観点から解説していきます。
尚、あなたが既にたくさんの作品を制作していて、「そろそろ個展を開催したい」とお考えの場合には、この記事の最終部分に、有益な関連記事を掲載してありますのでご覧ください。
それでは、早速見ていきましょう!
エスキース(下絵)とは?鉛筆画における本質的な役割を知る

第3回個展出品作品 駅 2021 F6 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画の中級者になると、表面的な描写だけでは物、足りなさを感じることが増えてくるはずです。
そこで、作品の深みや完成度を高めるために重要なのが「エスキース」の活用です。ただの下描きではなく、構図や構成、光と影など、あらゆる要素を整理・検証する役割を果たしてくれます。
本章では、鉛筆画におけるエスキースの本質的な意味と、重要性を確認していきましょう。
エスキース(下絵)とは「思考の可視化」である

第3回個展出品作品 暮らし 2021 F6 鉛筆画 中山眞治
エスキースとは、本制作作品を描く前に、構成やイメージを練るための試し描きです。
ラフスケッチと混同されがちですが、ラフが「思いつきの記録」だとすれば、エスキースは「意図ある検討と構築の場」と言えます。
鉛筆画では特に、画面のバランス、視線誘導、空間構成などを試すために有効であり、最終的にどこを省略し、どこを描き込むかといった判断にも大きな影響を与える工程なのです。
鉛筆画中級者にとってのエスキース(下絵)の意義

路傍の花Ⅲ 2021 F6 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画初級者の人は、目の前のモチーフを写し取ることで満足できますが、中級者の人は作品としての完成度を高めたい欲求が出てくることでしょう。
その際、いきなり本制作画面に描き始めるのではなく、エスキースによって複数の構成案を比較検討することが重要です。
構図の強さ、モチーフ及び光と影の配置、余白の取り方、視点の位置など、短時間で試すことができるのがエスキースの利点です。実験的に描くことで、失敗を恐れずに表現の幅を広げることも可能になります。
エスキース(下絵)が生む構成力と判断力
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ドルトレヒトの風車(ゴッホによる) 2019 F6 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画中級者の人が伸び悩む要因の一つは、全体の構成に対する意識の希薄さです。
エスキース造りを繰り返すことで、画面全体を設計する目を養うことができます。また、複数の案を比較する中で、自身が何を描きたいのか、どこに焦点を当てるべきかを明確にできるようになれます。
このようなプロセスが、単なる模写から一歩進んだ表現へとつながり、判断力を鍛える訓練にもなるため、描く前の準備段階として極めて有効です。
エスキースは思考の整理と可視化の場であり、構成を組み立てるための土台でもあります。鉛筆画中級者の人が作品の質を上げるためには、制作前に時間をかけてエスキースを重ねることが大きな差を生み出します。
鉛筆画のエスキースの造り方
本章では、あなたが実際に本制作するスケッチブックや紙において、どのようにエスキースを制作するのかを解説します。
具体的なエスキースの造り方
まず最初に、あなたの身の回りにあるA4サイズの紙を用意して、それを半分に切り、今回のあなたの作品のエスキースを作ります。
実際に測って、構図分割基本線を入れます。きちんと測って構図分割基本線を入れるならば、その線はボールペンで描いておくと、そこへ鉛筆で描き込んでいけば何度でも試行錯誤できます。
あなたが、本制作に入る画面の大きさは、F10のスケッチブックのサイズで取り組むものとして、そのエスキースをA4の紙の正確に2つに切ったもので制作する場合には、次のようになります。
F10の長辺は530mm・短辺が455mmであり、あなたが手元に用意したエスキース(A4の紙を正確に2分割した物)は、その短辺のサイズは148mmなので、F10の短辺のサイズ455mmで割ると、0.3252という数値が出ます。
そして、F10の長辺は530mmなので、この長さに上記の縮尺(0.3252)をかければ、172.35となりますので、あなたのエスキースの長辺を172mmにすれば、あなたが本制作に入るF10を正確に縮尺したエスキースの土台ができるということです。
鉛筆画のエスキースに構図基本線を描く(3分割構図基本線の例)
次は、あなたが取り組む本制作に入る画面の縮尺をかけたエスキースの画面に、次の画像のように構図分割基本線を描きます。
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また、上の画像のように、長辺短辺の2分割線(③④)及び各対角線(①②)を描きます。これでエスキースの土台が完成しました。
この3分割構図基本線の⑦を地平線に据えれば大地の広さを、⑧にすれば空の広がりを表現できます。
そして、主役や準主役を⑤や⑥に配置しますが、例えばモチーフがリンゴだとすれば、交点EFIJを中心にして描くということです。
このエスキースへ、「描いては消し・描いては消し」を繰り返して、より完成度の高い本制作を目指します。
また、斜線の②や①も活用して、モチーフの配置を考えます。次の作品を参照してください。タンポポの種→カエル、双葉の方向→シジミチョウといった具合にします。画面上にクロスした対角線を暗示できていますよね。

国画会展 入選作品 誕生2002-Ⅰ F100 鉛筆画 中山眞治
因みに、この作品の主役である双葉の配置には、黄金分割という構図(※)を使っています。具体的には、画面の横の寸法に対して÷1.618で得られた寸法で分割しています。
※ 構図については、この記事の最終部分に「初心者でも簡単!プロが教える鉛筆画の構図の取り方やコツとポイント」という関連記事を掲載しています。複数の構図を解説していますので参照してください。
出来上がったエスキースを本制作画面に反映する方法
「試行錯誤」してできあがったエスキースの、それぞれデッサンしたモチーフの主要な寸法を測って、その寸法÷0.3252で得られた値が、あなたが制作するF10画面上の寸法になります。
ですから、エスキースは、造って何となく全体のバランスを観たりするだけにとどまらずに、あなたが苦心して制作したエスキースの主要な位置を、ほぼ特定できるという利点がある事を忘れないでください。
あなたの制作するスケッチブックや紙のサイズが、仮にF4の場合には、次のようになるのです。
F4の長辺は333mm・短辺が242mmであり、あなたが手元に用意したエスキース(A4の紙を正確に2分割した物)は、その短辺のサイズは148mmなので、F4の短辺のサイズ242mmで割ると、0.6115という数値が出ます。
そして、F4の長辺は333mmなので、この長さに上記の縮尺(0.6115)をかければ、203.62となりますので、あなたのエスキースの長辺を204mmにすれば、あなたが本制作に入るF4を正確に縮尺したエスキースの土台ができるということです。
この場合には、出来上がったエスキースの実寸を測り、÷0.6115で得られた寸法が、F4の本制作画面に反映できる寸法になります。
最終的に、あなたの気に入ったモチーフを、あなたの気に入ったレイアウトに据えて、あるいは作品によっては構図上の不足する部分に他のモチーフも加えて補うことにより、エスキースを完成させることができます。
尚、このA4の紙を正確に半分に切ったエスキースを使って、F10以上の大型の画面にでも対応できることを記憶しておきましょう。その場合には、制作する画面を正確に寸法を測ることが必要です。
実践的なエスキースの描き方と手順を押さえる
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種まく人 (ミレーによる) 2019 F6 鉛筆画 中山眞治
エスキースの概念を理解できましたら、次は実際にどのように描くかという具体的な手順が重要です。
思いつきで描くのではなく、一定のプロセスに沿って行うことで、表現の質が安定し、作品の完成度が格段に向上します。
本章では、鉛筆画に特化したエスキースの描き方とそのステップを解説します。
ステップ1:構図と視点のバリエーションを出す

フォックスフェイスのある静物 2019 F6 鉛筆画 中山眞治
まずは、同じモチーフでも、異なる視点や構図でいくつかの小さなスケッチを描いてみましょう。
画面の3分割構図や3角構成、対角線構図などを意識しながら配置を検討します。次の作品を参照してください。
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- 黄色の線:3分割構図基本線
- 緑色の線:3分割線
- 青色の線:「抜け(※)」に使うための線
- ピンク色の線:モチーフで3角を構成する線

ミヒカリコオロギボラのある静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治
この段階では、1枚にこだわらず3〜5案ほど描き出して比較するのが理想です。どの構成がもっとも主題を引き立てるかを、見極める力が養われます。
※ 「抜け」とは、画面上に外部へつながる部分があると、観てくださる人の画面上の「息苦しさ」を解消できる効果があります。
ステップ2:明暗や光の方向をしっかりと確認して描く
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第1回個展出品作品 夜の屋根 F10 鉛筆画 中山眞治
構図が決まりましたら、次は光源の方向と明暗の分布を確認します。
鉛筆のトーンで、どこに最も濃い影を置くのか、どこに明るさを残すのかをよく確認しながら、試し塗りをするイメージで描き進めます。
光と影の計画が定まると、主役や準主役の立体感や奥行きがより明確になります。仕上がりの印象を左右するため、この工程も省略しないようにしましょう。
ステップ3:ディテール(詳細)の描写と省略のバランスを確認

誕生2020-Ⅰ 2021 F4 鉛筆画 中山眞治
最後に、どの部分を描き込み、どこをあえて省略するかを検討します。
すべてを同じ密度で描くと、画面が重たくなってしまうため、視線の誘導やリズムを意識して強弱をつけましょう。
この作業により、完成作の「緩急ある描写」の基盤が整います。また、全体の制作計画も立てやすくなります。
エスキースは闇雲に描くのではなく、構図の検討、光の確認、描写の取捨選択という流れで順序立てて行うことが大切です。
鉛筆画中級者の人にとって、この一連の作業は作品を計画的に構築する訓練であり、完成度を安定させるための実践的な設計図となります。繰り返し実施することで、確かな構成力が身についていくでしょう。
エスキースを活用して構成力を磨く実践

第3回個展出品作品 誕生2020-Ⅲ F4 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画中級者の人にとって、大きな壁となるのが「構成力」です。
どれだけ丁寧に描けても、構図や画面の設計が弱ければ、作品としての魅力は半減してしまいます。
本章では、エスキースを通じて構成力を磨くための、実践的な方法を紹介します。完成を前提とせず、あえて実験的に構成を試みることが上達への近道となります。
多視点・多構図でスケッチの反復

水滴Ⅷ 2020 F4 鉛筆画 中山眞治
同じモチーフで、複数の視点や構図を描き分ける練習は、構成力を鍛えるための基本になります。
たとえば花瓶なら、正面・俯瞰・斜め下からなどの視点で、画面の配置を変えて描いてみるとよいです。
対角線を意識した構図や、余白の使い方、背景との関係性を試すことで、画面の印象がどう変わるかを体感できます。このように描き比べをすることで、構図の選択に自信が持てるようになれるでしょう。
間の取り方と空間の演出を探る

水滴Ⅸ 2020 F4 鉛筆画 中山眞治
エスキースの段階で、画面にどれだけ「間」を持たせられるかを意識することも、完成作に静けさや余韻をもたらせられます。
全体を描き込むのではなく、主役や準主役、背景との距離や空間の密度を調整し、視線がどう移動するかを確認する練習です。
これによって「描かない空間」の価値を理解し、余白を活かす構成ができるようになれます。
視線誘導の流れを設計する

旅立ちの詩Ⅰ 2020 F4 鉛筆画 中山眞治
構図の中に、意図的な視線の流れを組み込むことで、観てくださる人の視線を誘導し、作品の中に引き込む効果が生まれます。
Z字(ジグザグ)構成や、3角構成などのガイドラインをエスキースに描き込み、視線のルートを確認します。次の画像は、Z事項図の参考画像です。平面上のZ字構図と、立体のZ字構図があります。

視線が、主役や準主役から背景、または空間へと自然に移動するかどうかを意識しながら調整することで、構成の設計力が格段に向上します。
構成力は、描きながらでは育ちにくく、描く前のエスキースでこそ磨かれる要素です。さまざまな視点や構図を試すことで、自然な空間構成と視線誘導の設計が可能になるのです。

鉛筆画中級者の人が表現の幅を広げるためには、完成に至る前段階の構成実験を積極的に行うことが最も効果的な訓練になります。
描き込みの質を高めるためのエスキース再活用術

あのね…。 2020 F4 鉛筆画 中山眞治
エスキースは構成を決めるだけでなく、描き込みの密度や質を高めるための参考資料としても役立ちます。
鉛筆画中級者の人が、本制作画面の描写で安定した表現を実現するには、描き始める前にどこまで検証できているかが重要です。
本章では、一度描いたエスキースを再活用する具体的な方法を紹介します。
質感の描き分け練習に活かす

第3回個展出品作品 憤怒の猛牛 2020 F4 鉛筆画 中山眞治
エスキースを使って、制作対象物の質感をどのように表現するかを、事前に試すこともできます。
たとえばガラスの透明感、木の肌のざらつき、布の柔らかさなどを簡略化した形で描き分けておくことで、本番時の迷いを減らせるのです。
筆圧やストロークの方向性を調整しながら、濃淡の幅を把握しておくと、主役や準主役の印象が明確になります。これは単なる練習ではなく、最終仕上げへの準備として非常に効果的な手法になります。
主役や準主役の焦点と描写の強弱を試す

旅立ちの詩Ⅱ 2021 F4 鉛筆画 中山眞治
どこに焦点を造り、どこを省略するかを見極めることは、鉛筆画中級者の人にとって描写の質を高める鍵です。
エスキースの段階で、主役や準主役を強調するための描写方法や、周辺部のぼかし加減を試しておくことで、事前に画面のリズム感を把握できます。
描きすぎを防ぎ、観てくださる人の目を自然に主役や準主役へと導く効果が出せるようになります。視線誘導の設計とあわせて、描写のバランスもあらかじめ調整することも重要です。
仕上がりを想定した陰影の配置を確認する

境内にてⅠ 2021 F4 鉛筆画 中山眞治
陰影の配置は、描写の説得力を左右する重要な要素です。
どの面を最も暗くするのか、どのエリアを白く残すのかをエスキースで確認しておくことで、明暗のリズムとコントラスト(明暗差)が明快になります。
こうした事前の検討があることで、仕上げの段階で無駄な修整を減らし、迷いなく描き進めることが可能になります。陰影の重心がぶれない、安定した作品創りにつながるのです。
エスキースは一度描いたら終わりではなく、描き込みの方向性を決める重要な資料として再活用することができます。
質感や陰影の試行、主題の焦点設定までを事前に把握しておくことで、完成作に対する精度と自信が大きく向上します。準備の段階でこそ、最終成果の成否が決まるのです。
鉛筆画中級者が陥りやすいエスキースの落とし穴と改善法

境内にてⅡ 2021 F4 鉛筆画 中山眞治
エスキースは、便利なツールである一方で、使い方を誤ると逆に制作の質を下げてしまうことがあります。
鉛筆画中級者の人が、よく陥る落とし穴をあらかじめ知っておくことで、より効果的なエスキースの活用が可能になるのです。
本章では、よくある失敗例とその改善方法を具体的に解説していきます。
緻密すぎて本番との差が出る

境内にてⅢ 2021 F4 鉛筆画 中山眞治
エスキースを丁寧に描きすぎてしまい、本番の制作でエネルギーが尽きたり、勢いが失われるケースがあります。
エスキースを、あまりにも完成に近づけすぎると、本番での修整や表現の自由度が損なわれてしまうのです。
改善法としては、本番と同じ密度で描くのではなく、あくまで構成と描写の方向性を確認するためのラフな段階として位置づけ、描き込みすぎを避けることが必要になります。
モチーフの検討不足による迷い

旅立ちの詩Ⅲ 2021 F4 鉛筆画 中山眞治
エスキースを描き始める前に、モチーフ選びが曖昧なまま進めると、何を描くべきかが途中でぶれてしまいます。
これは構成や描写も不安定にし、仕上がりに影響します。改善のためには、モチーフを描く目的や伝えたい印象を、あらかじめ明確にしておくことが必要です。
主役や準主役を明確にすることで、エスキースの方向性も定まり、迷いの少ない制作が可能になります。
エスキースを「正解」として固めすぎる

ノーマ・ジーンⅢ 2021 F4 鉛筆画 中山眞治
エスキースを描いた段階で、構成や光の位置を完全に固定してしまうと、本番での微調整や創造的な変更に対応できなくなります。
制作中に生まれる偶然や、直感を取り込む余地がなくなり、硬直した表現になってしまうこともあるのです。
あくまでもエスキースは「参考」であり、「設計図」ではないという認識を持ち、柔軟な姿勢で本番に臨む心がけが必要になります。
エスキースは制作を助ける反面、扱い方によっては表現の自由を狭めてしまうリスクもあります。鉛筆画中級者の人にとって大切なのは、描きすぎず、迷わず、固めすぎないことです。

適切な距離感でエスキースを活用することで、本番での表現力が最大限に発揮され、より完成度の高い作品へとつながっていきます。
練習課題(3つ)

ノーマ・ジーンⅡ 2021 F4 鉛筆画 中山眞治
本章では、あなたが実際に手を動かして練習することによって、着実に画力を高められる課題を用意しました、早速試してみてください。
練習課題①:同じモチーフを3つの構図で描くエスキース練習
目的
構図力の向上と視点の選択力を養う。
内容
シンプルな静物(例:コップ・リンゴ・本など)を用意し、以下の3パターンでエスキースを描いてみましょう。
- 画面中央構図。
- 画面右下に主題を置く3分割構図。
- 対角線構成を意識した配置構図。
それぞれの構図で、視線の流れや余白の印象、主題の存在感がどう変化するかを比較・考察します。



練習課題②:光源の違いによるエスキースの比較スケッチ
目的
明暗設計と立体感の計画力を身につける。
内容
同じモチーフを使い、光源を3方向(左斜め上・正面・右下)から当てた場合のエスキースを描いてみましょう。
- それぞれの影の落ち方。
- 明暗のバランス。
- 主題の立体感や存在感の違い。
を視覚的に確認することで、光の位置が構成全体に与える影響を学べます。
練習課題③:描き込みと省略の差を試すエスキース制作
目的
描写の密度配分と主題の引き立て方を訓練する。
内容
人物や植物などをテーマにして、次の2種のエスキースを制作します。
- 全体を均一に描き込んだもの。
- 主題のみを丁寧に描写し、他は省略やぼかしで処理したもの。
その違いから、画面の緩急・視線誘導・印象の変化を考察し、どの程度の省略が効果的かを自分なりに検証できます。
まとめ:中級者の鉛筆画で差をつける、エスキースの真価とは

第3回個展出品作品 パーティーの後で 2021 F4 鉛筆画 中山眞治
鉛筆画中級者の人にとって、エスキースは単なる下絵ではなく、作品の完成度と構成力を劇的に高めるための「思考と構築のプロセス」です。
感覚だけに頼らず、視覚的・論理的に構成を組み立てていくことで、自信をもって制作に臨めるようになれます。
この記事で解説しました内容を振り返りながら、エスキースの活用によって得られる実践的なメリットを整理してみましょう。
- エスキースは「思考を可視化」する場であり、構図や明暗、空間設計を本制作前に検証できる工程。
- 描きすぎを避け、迷いを減らし、仕上がりの精度を安定させるためのシミュレーションとして機能する。
- ラフスケッチとの違いを理解し、構成を意識した試行錯誤を繰り返すことで、構成力が養われる。
- 光源の違いや視点の選択、主役及び準主役と背景の関係性など、複数の要素をエスキース内で検証できる。
- 仕上げにおける、描き込みの優先順位や省略の判断を事前に決めておくことで、制作中の迷いを排除。
- 描いたエスキースは「設計図」ではなく「参考資料」として柔軟に扱うことで、創造的な修整もできる。
- 鉛筆画中級者の人が陥りやすい、描き込みすぎや構成の固定化といった落とし穴にも、事前対応がしやすくなる。
- 同じモチーフでも、構図や陰影の選び方で、印象が大きく変わることを比較しながら体感できる。
- 練習としてのエスキースは、短時間で多くのパターンを検討できる、効率的なトレーニング方法になる。
- 最終的には、作品の説得力と一貫性が増し、観てくださる人に印象を残す完成度の高い鉛筆画へとつながる。
エスキースは「描き始める前の準備」ではなく、「作品を構成するための実践」であり、そこには感覚ではなく戦略があります。
描きながら考えるのではなく、描く前に考え、検証し、選択することが、作品を一段階上のレベルへと引き上げる鍵になるのです。
これからの鉛筆画制作に、ぜひエスキースの作成という習慣を取り入れてください。それは間違いなく、あなたの表現を強くし、安定させてくれる武器になります。
ではまた!あなたの未来を応援しています。
描き込み前の検証と比較の積み重ねが、完成時の説得力を支えることになるのです。