初心者でも簡単!鉛筆画で動物の毛並みを描くコツとテクニックとは?

 こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

         筆者近影 作品「呼んだ?-Ⅲ」と共に

 さて、鉛筆画で動物の毛並みをリアルに描くのは難しそうに感じるかもしれませんが、実は基本的なテクニックを押さえれば初心者の人でも簡単に描けるようになれます。

 この記事では、毛並みの質感を出すためのストロークの使い方や、短毛・長毛の違いを表現する方法も解説します。

 さらに、陰影を活かした奥行きの出し方や、メリハリをつけるためのハイライトの入れ方まで紹介します。鉛筆だけでリアルな毛並みを描けるようになれれば、動物の表情や個性をより豊かに表現できます。

 それでは、早速見ていきましょう!

鉛筆画でリアルな動物の毛並みを描くための基本ポイント

    第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅠ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 動物の毛並みをリアルに表現するには、毛の流れや質感を適切に描き分けることが重要です。

 モノトーンの鉛筆だけで毛並みを描く場合には、陰影の強弱やストロークの方向を工夫することで、立体感とリアリティー(現実性)を引き出せます。

 本章では、初心者の人でも取り組みやすい基本ポイントを解説します。

毛の流れを意識したストロークの使い方

 毛並みをリアルに描くには、まず毛の流れを適切に捉えることが重要です。

 動物の毛は一定の方向に生えており、顔や体の部位によって流れが異なります。

 鉛筆のストロークを毛の流れに沿って描くことで、より自然な仕上がりになります。特に、筆圧を調整しながら短い毛と長い毛を描き分けることで、毛の質感を再現できます。

濃淡を使って毛並みに立体感を出す

 鉛筆画では、濃淡のコントラスト(明暗差)をつけることで毛並みの奥行きを表現できます。光が当たる部分は薄く、影になる部分は濃く描くことで、毛束感が強調できます。

 例えば、目の周りや耳の付け根などは細かい陰影をつけると、よりリアルな印象になります。

 そして、ぼかしを使いすぎると毛の質感が失われるため、細かい線を重ねて密度を調整するのがポイントです。

ハイライトを活かした質感表現

第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅡ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 リアルな毛並みを描くには、ハイライトの使い方も重要です。毛の流れに沿って練り消しゴムを使って一部の線を抜いたり、毛先を際立たせることで、柔らかさやツヤを表現できます。

 特に、光を受けやすい額や鼻先、耳の縁などは明るさを意識して仕上げると、毛並みのリアリティーが増します。

なかやま

これらの基本ポイントを意識しながら描くことで、鉛筆画ならではの繊細な毛並み表現が可能になります。まずはシンプルなモチーフから練習し、徐々に細かい質感を描き込んでいきましょう。

短毛と長毛の違いを鉛筆で表現する方法

 動物の毛並みを鉛筆で描く際、短毛と長毛を適切に描き分けることで、リアリティーが大きく増します。

心地よい場所 2023 F4 鉛筆画 中山眞治 

 短毛は滑らかで密度が高く、長毛はふんわりとした柔らかさが特徴です。モノトーンの鉛筆のみでこれらの違いを表現するためには、線の使い方や筆圧の調整が重要になります。

 本章では、短毛と長毛を描き分けるための具体的な方法を解説します。

短毛を描くための細かいストロークと密度の調整

 短毛の動物を描く場合には、短く細かいストロークを重ねることで、密度の高い毛並みを表現できます。特に、顔や体に沿った毛の流れを意識し、同じ方向に細い線を描くことが重要です。また、点描も交えると効果的です。

 また、筆圧を均等に保ちつつ、部分的に濃淡をつけることで毛の光沢を表現できます。短毛はぼかしを多用せず、シャープな線を活かすことで、リアルな質感を再現できます。

 短毛の動物を描く際には、一旦下地としてHB等の鉛筆で軽く優しい縦横斜めの4通りの方向からの線で埋めて(クロスハッチングと言います)、そこへ「練り消しゴム」を練って先端を鋭くした状態で、毛並みをざっくりと描きます。

 そして、短毛種には、細かく短いW字型やV字型の線を入れていきましょう。基本的に、毛並みを描く場合には、「練り消しゴム」で消しては描き、消しては描きの繰り返しと考えてください。

長毛をふんわりと見せるための線のリズムと変化

 長毛の動物を描く際は、毛先が自然に流れるように、リズムのあるストローク(※)を意識しましょう。長い毛は一本一本の動きが見えやすいため、線の太さや方向を少しずつ変えることで、自然な毛並みになります。

 さらに、長毛の根元は暗く、毛先に向かって明るくなることが多いため、濃淡を調整して立体感を出すのがポイントです。「練り消しゴム」を使って毛先を柔らかく抜くことで、よりリアルな仕上がりになります。

 長毛の動物の毛の描き方では、先ほども紹介していますが再度狼の作品を掲載します。この描き方では、「練り消しゴム」を練って、先端を細く鋭いプラスドライバーや千枚通しのような形状にして、毛並みを「抜いて」います。

 分かりやすいのは、あごの下あたりですが、一旦HBの優しく軽い縦横斜めの4方向のタッチ(クロスハッチング)で毛並みを描くところをトーンで埋めて、練り消しゴムで毛並みを「描いて」います。

 さらに毛並にリアリティーを出したい場合には、白く抜いた毛並みのわきに濃いトーンを造れば、より一層毛並みに深みを出せます。

 しかし、この記事での要点としては、あなたが初心者ということで描き進んでいますので、それ以上のリアリティーは、あなたが鉛筆画を描くことにもっと慣れて来てからにしましょう。挫折の原因になってしまうからです。^^

 当初は、この描きやすい「練り消しゴム」で描くことで、それらしく見えますので安心してください。^^

 また、猫の「ヒゲ」も「練り消しゴム」を「細く鋭いマイナスドライバー」の形状にして、ヒゲを描く方向に対して、薄い部分で横に引くようにすれば描くことができます。

 この場合には、練り消しゴムを何度となく練り直して、同じ形状を繰り返すことで描くことができます。ここでも、毛並みを描く場合には、「練り消しゴム」で消しては描き、消しては描きの繰り返しと考えてください。

※ ストロークとは、大きく肩や腕を振るって筆を動かすような運動感のある動作を指します。

短毛と長毛を組み合わせた表現の工夫

 多くの動物は、体の部位によって短毛と長毛が混在しています。例えば、犬や猫の顔の周りは短毛ですが、首元や尻尾は長毛になることが一般的です。

 そのため、部位ごとの毛の質感を適切に表現することが重要になります。短毛と長毛の境界は、急に変化するのではなく、自然に移行するように描くと、違和感なく仕上がります。

 筆圧を徐々に変えながら、短いストローク(※)と長いストロークを組み合わせることで、よりリアルな毛並みを描くことができます。

短毛と長毛の特徴を理解し、適切な筆使いをすることで、よりリアルな動物の毛並みが鉛筆画で表現できます。最初はシンプルなモチーフから練習し、毛の質感を描き分ける技術を磨いていきましょう。

陰影とハイライトを活かして毛並みに立体感を出すコツ

 鉛筆画で動物の毛並みをリアルに描くには、陰影とハイライトを適切に活用することが重要です。

 毛の流れや密度を表現するだけではなく、光の当たり方や影の入り方を工夫することで、毛並みに奥行きが生まれます。

兎の上り坂 2022 F4 鉛筆画 中山眞治

 特に、モノトーンの鉛筆のみを使用する場合には、コントラスト(明暗差)のつけ方が作品の完成度を大きく左右します。本章では、立体感を強調するための具体的なコツを解説します。

光源を意識した陰影のつけ方

 陰影をつける際には、まず光の方向を明確にすることが大切です。

 光源が左上にある場合、光が当たる部分は明るく、逆側には自然な影が生まれます。毛並みの中でも影が深くなるのは、毛の根元や重なりがある部分です。

 こうした箇所を意識して、細かく濃淡をつけることで、より自然な毛の流れが表現できます。また、影の部分は均一に塗るのではなく、毛の流れを考慮しながらストロークを重ねることが重要です。

ハイライトで毛並みのツヤを表現する

 リアルな毛並みを描くためには、ハイライトの入れ方が鍵を握ります。ハイライトは、光が直接当たる部分や、毛の先端が光を反射する部分に入れると効果的です。

 具体的には、練り消しゴムを練って鋭いドライバーのような形状にして、毛の流れに沿った細いラインを抜くことで、自然なツヤが生まれます。

 また、光沢の強い動物(例えば馬や短毛の犬)の場合は、明暗の差を大きくしてコントラスト(明暗差)を強調すると、よりリアルな表現ができます。

コントラストの調整で奥行きを出す

 毛並みの立体感を強調するには、陰影とハイライトのコントラスト(明暗差)を適切に調整することが大切です。

 特に、背景と毛並みの明暗を比較しながら描くことで、被写体の輪郭がはっきりし、浮き上がるような効果を得られます。

 また、毛並み全体を同じ濃さで描くのではなく、奥行きのある部分はやや濃く、光が強く当たる部分は明るめに仕上げることで、よりリアルな質感が生まれます。

 陰影とハイライトを活かすことで、単なる線の積み重ねではなく、より立体感のある毛並みを表現できます。

なかやま

まずは、光源を確認及び意識しながら練習を重ね、鉛筆の濃淡を自在にコントロールできるようにしていきましょう。

動物の毛並みを滑らかに描くストロークの使い方

 動物の毛並みをリアルに表現するためには、適切なストローク(大きく腕を振るって筆を動かすような運動感のある動作)の使い方が不可欠です。毛の流れや質感を鉛筆で滑らかに描くには、線の長さ、方向、強弱を細かく調整することが重要です。

     第1回個展出品作品 ペンギン 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 モノトーンの鉛筆のみを使用する場合でも、ストロークを工夫することで、ふわふわとした柔らかい毛や、滑らかで光沢のある毛を描き分けることができます。

 本章では、リアルな毛並みを描くためのストロークの基本テクニックを紹介します。

毛の流れに沿ったストロークの方向と長さ

 毛並みを滑らかに描くには、毛の生えている方向を正確に捉え、それに沿ってストロークを描くことが重要です。

 例えば、犬や猫の顔の毛は放射状に広がり、体の毛は一定の方向に流れることが多いものです。毛の流れを観察しながら、適切な長さのストロークを使い分けることで、自然な毛並みを再現できます。また、顔の毛は短毛なので、点描も交えると効果的です。

 短い毛は細かく短いストローク、長い毛はなめらかに長いストロークを使うと、よりリアルな質感になります。

筆圧の調整で毛の柔らかさを表現する

 鉛筆の筆圧を変えることで、毛の硬さや柔らかさを表現できます。柔らかい毛を描くときは、軽い筆圧で細く薄い線を重ね、硬い毛を描くときは少し強めの筆圧でメリハリのある線を描くのが効果的です。

 特に、同じ毛並みでも根元は濃く、毛先は薄くすることで、より自然な立体感が生まれます。筆圧を均一にせず、微妙に強弱をつけながら描くことを意識しましょう。

ストロークの重ね方とぼかしの活用

 毛並みを滑らかに見せるためには、ストロークの重ね方も重要です。単純に線を並べるのではなく、少しずつ方向を変えながら重ねることで、自然な毛の質感を作り出せます。

 また、部分的にぼかしを使うことで、毛の柔らかさや奥行きを表現できます。

 ただし、ぼかしを多用しすぎると毛のディテールが失われるため、ストロークの流れを意識しながら適度に取り入れることが大切です。

ストロークの方向や筆圧、重ね方を工夫することで、滑らかでリアルな毛並みを描くことができます。まずは短いストロークから練習し、徐々に長い毛や複雑な毛の流れの表現に挑戦していきましょう。

初心者でもできる!毛並みをリアルにする練習方法

第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅢ 1998 F10 鉛筆画 中山眞治

 動物の毛並みをリアルに描くためには、基本的なテクニックを繰り返し練習し、鉛筆の使い方をマスターすることが重要です。

 初心者の人でも、効果的な練習方法を取り入れることで、毛の流れや質感を自然に表現できるようになれます。

 本章では、モノトーンの鉛筆画において、毛並みをリアルに描くための具体的な練習方法を紹介します。

基本のストローク練習で毛の流れを掴む

 まずは、毛の流れを自然に描くためのストロークの練習から始めましょう。鉛筆を軽く持ち、短い線や長い線を均一に描く練習を繰り返します。

 毛の流れに沿った線をスムーズに描くことができるようになれば、実際の動物の毛並みを描く際に違和感のない仕上がりになります。

 また、筆圧を調整しながら、濃淡の違う線を描く練習をすることで、毛の柔らかさや立体感を表現しやすくなれます。

短毛・長毛の違いを描き分ける練習

 動物の毛並みをリアルに描くためには、短毛と長毛を適切に描き分けることが重要です。短毛はW字型やV字型の細かく短いストロークを重ね、密度の高い描き方を意識します。また、点描も交えると効果的です。

 一方で、長毛は毛の流れを意識しながら、しなやかで柔らかいストロークを使うことで、自然な動きを表現できます。

 まずは、短毛・長毛それぞれの特徴を意識した練習を行い、徐々に実際の動物の毛並みに近づけていきましょう。

参考写真を使った模写の練習

 リアルな毛並みを描くためには、実際の動物の写真を参考にしながら模写の練習を行うことが効果的です。

 最初はシンプルな毛並みの動物から始め、徐々に複雑な毛質や陰影のある被写体へとレベルアップしていきましょう。

 模写をする際には、毛の流れや光の当たり方をしっかり観察し、それを鉛筆の濃淡やストロークで表現することが大切です。

 これらの練習を継続することで、初心者の人でも動物の毛並みをリアルに描く技術を身につけることができます。

なかやま

基本を押さえたうえで、さまざまな毛質に挑戦し、自分の表現力を高めていきましょう。

まとめ

 動物の毛並みをリアルに描くには、鉛筆のストローク(大きく腕を振るって筆を動かすような運動感のある動作)や陰影のコントロールを適切に行うことが重要です。

         憤怒の猛牛 2020 F4 鉛筆画 中山眞治

 この記事で紹介したテクニックを活用すれば、初心者の人でも滑らかで立体感のある毛並みを表現できます。以下のポイントを押さえながら練習を重ねましょう。

毛並みをリアルに描くための基本テクニック

  • 毛の流れを意識し、ストロークの方向を揃える。
  • 短毛は細かく密度のあるW字型やV字型のストロークや点描も使う、長毛はしなやかな線を描く。
  • 筆圧を調整し、毛の根元は濃く、毛先は軽く仕上げる。

陰影とハイライトを活用して立体感を出す

  • 光源の方向を確認及び意識して、光の当たる部分と影を明確にする。
  • 練り消しゴムを使って、毛先にハイライトを入れてツヤを出す。
  • 背景の明暗を調整し、毛並みを際立たせる。

毛並みを滑らかにするストロークの使い方

  • 短いストロークと長いストロークを組み合わせる。
  • 筆圧を変えながら線を重ね、毛の流れに自然なリズムを作る。
  • ぼかしを適度に取り入れ、滑らかな質感を表現する。

初心者でもできる練習方法

  • 基本のストローク練習を繰り返し、線をコントロールできるようにする。
  • 短毛と長毛の描き分けを意識しながら練習する。
  • 参考写真を模写し、毛並みの観察力と描写力を高める。

 リアルな毛並みを描くためには、基本技術を理解し、実践を繰り返すことが大切です。鉛筆と練り消しゴムだけで動物の質感を表現できるようになれれば、作品の完成度は飛躍的に向上します。

 まずは簡単なモチーフから練習し、少しずつ複雑な毛並みに挑戦していきましょう。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。