鉛筆デッサンで初心者が風景を簡単に描くための基本構図やテクニック!

 こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

          筆者近影 作品「遠い約束Ⅱ」と共に

 さて、初心者の人向けに、鉛筆デッサンで風景を簡単に描くための、基本構図やテクニックを解説します。自然の美しさをリアルに表現するコツを吸収してください。

 鉛筆デッサンで風景を描くことは、初心者の人にとって最初のステップとしてオススメです。しかし、どのように始めればよいか、分からない人も多いのではないでしょうか。

 この記事では、風景デッサンを簡単に描くための基本構図や実用的なテクニックもわかりやすく解説します。自然の美しさや奥行きを、鉛筆で表現するためのポイントを具体例とともに紹介しますので、初心者の人でも無理なく取り組める内容となっています。

 これから風景デッサンを始めたい人はもちろん、スキルを高めたい人にも役立つ情報が満載です。

 それでは、早速見ていきましょう!

Table of Contents

初心者が鉛筆デッサンで風景を描く際に一番最初に取り組むべきこととは?

 初心者の人が、鉛筆デッサンの風景に取り組む際には、最初から色々なことを考えないことが極めて重要です。 本章では、初心者の人が最初に取り組むべき心づもりについて解説します。

最初は楽しんで描くことに集中することが極めて重要な理由

 どなたでも、最初に描いた作品は、うまく描けないことが当たり前です。そのようなことよりも、あなたが描いてみたいと思える風景に、楽しんで取り組むことが最も重要です。

 多少歪んでいようが、いびつになっていようが構いません。あなたが描きたい作品を描きたいように取り組みましょう。最初から「構図及び構成や構想を練るなど」を考えてしまうと、挫折してしまうからです。^^

なかやま

筆者の場合には、絵画教室で習い始めましたが、併行して自宅でも好きなものを好きなように描いていました。

5作品ほど楽しんで描いてみる

 まずは、描くことに慣れることが重要なのですが、ここでいきなり戸外へスケッチへ行くことはやめましょう。その理由は、慣れていない状態で描き始めても、天候がいつも良好である保証はありませんし、気象条件は刻々と変化するからです。

 そこで、初心者の人に最適なのは、いままでに撮りためた画像及びネットからのダウンロードやスクリーンショット」で描き始めることです。

 想像してみてください。天気のあまりよくない日や、風のある日に戸外でスケッチができますか?当初から戸外でのスケッチは、初心者の人には向いていないのです。筆者も避けて通ってきました。^^ 

 あなたにオススメなのは、前述のような方法の中で「良い画像」で描き始めるということです。天候や時間帯に左右されませんし、通行人に「ジロジロ」みられることもありませんよね。^^

描き進んでいくに従って、徐々に鉛筆の握り方や鉛筆の削り具合分かってくるものです。また、練り消しゴムを練って、いろいろな形状に変化させて使えることや、「消しカス」が出ない便利さにも気づけるでしょう。

描くことに慣れてこられましたら構図を研究しよう

 シンプルな制作対象を選び、あなたの気に入った位置に制作対象を据えて、陰影の工夫を取り入れることで、初心者の人でもリアルな鉛筆デッサンの風景を描くことが可能になります。

 あなたの自宅近くの公園及び駅や街並みなど、描きやすいモチーフから挑戦して、徐々に描くことに慣れながら技術を磨いていきましょう。

 そして、モチーフとしての最適な風景は、あなたが手掛けやすくて、取り組んでみたくなるモチーフですよね。

 また、鉛筆でデッサンを描くことは初めてでしょうが、特別なことをしているわけではないので、それほど違和感もないはずです。

 難しいことではないですよね。今まで学生時代からお馴染みの筆記用具ですし、シャープペンも同じようなものですから。

 やがて、描き進んでいく内に、「何となくまとまりが悪い気がする」「どうすれば見映えが良くなるんだろう」「画面を引き立てる方法は何かないのだろうか」と、やがて気になってくるはずです。それを解決してくれるのが構図です。

構図を研究すべき理由

 構図とは、先人の築き上げてきた美の構成に裏打ちされた、バランス・緊張感・力強さ・躍動感などを伝えることができる技術です。

 構図は、作者とすれば作品の魅力をより一層引き出す技術である反面、鑑賞者から見ても「見映えのする」作品に仕上げるための重要なノウハウと言えます。

 構図と聞くと、何か難しいことのように聞こえるかもしれませんが、簡単なものもたくさんありますので、構図のたくさん載っている本を一冊購入しましょう。

 構図の選択は、鉛筆デッサンを成功させるためには重要な要素なので、各種構図の種類や技術を学び、継続的な練習と自身の感性を磨くことが重要になります。それは同時に、他の作家の構図の使い方を研究することにも通じてきます。

 このように構図を導入できることによって、あなたの作品には観てくださる人へ「あなたの感動や強調」を伝えられることにつながります。そして、そのような魅力的な構成の作品に仕上げることができるようになれば、「公募展への出品」も現実的になってきます。

 構図の導入は、簡単なものから順番にあなたの描きたいモチーフを組み合わせることで、次から次へとイメージが「汲めども尽きぬ泉のように」湧きあがり、モチベーションアップにもつながるでしょう。^^

名作と言われる作品には、必ずしっかりとした構図が構築されています。

初心者が知っておきたい風景デッサンの基本構図その①

 次の筆者の作品では、画面の横の黄金分割の位置に主役の「エンドウ豆の芽」を置き、もう一つの黄金分割線と画面縦の黄金分割線を使って「抜け」を作り、太陽光にも劇的な印象を得られるように斜線の効果も使っています。

     国画会展 入選作品 誕生2006-Ⅱ F100 鉛筆画 中山眞治

 この筆者の作品では、黄金分割の構図の位置の他にも、背景に枯葉を置くことによって「生と死の対比」や、画面全体での「明暗の対比」などもおこなっています。 

 具体的に、黄金分割とは、あなたが制作する画面の縦横のサイズを正確に測り、その寸法に対して÷1.618で得られた値を、画面の左右から測ってそれぞれ2本(⑤⑥)、画面上下から測ってそれぞれ2本(⑦⑧)の黄金分割点(線)が得られます。次の図を参照してください。

 そこへ、画面横の2分割線(③)と、画面縦の2分割線(④)及び、2つの対角線(①②)を入れて完成させたものが、上の黄金分割構図基本線(横向き)です。

 これらの線を使って、あなたの画面上の主役である花をその分割線上(⑤や⑥)に配置して、準主役ももう1つの黄金分割線上(⑤や⑥)に置きましょう。

 あとは、画面縦横の線を使って窓を造ったり、斜線は前述のように鳥の羽をその斜線上に描いてみたりすることで、全体がまとまってきます。実際に観ているモチーフの枝や葉の角度をあなたの都合の良いように、斜線上に乗せても一向にかまわないのです。

 上の筆者の作品の中の、画面右上の窓を模した「抜け」は、画面縦横の黄金分割で作ることのできる部分です。

 尚、「抜け」とは、観てくださる人が外部へ続くイメージを持てることによって、画面上の「息苦しさ」を解消できます。前述の「黄金分割構図基本線(横向き)」で説明すれば、画面右上のB⑥F⑦で区切られた四角部分です。

 また、前述のように、実際に観ている景色を変更することは、どの画家も普通に行っていることを記憶しておきましょう。具体的には、実際の風景には「電柱や電線」があるものを全部取り払って、「より見映え」のする作品に仕上げるということです。

 もっと言えば、構図分割基本線を有効に使うためと、作品全体の見映え及びバランスや緊張感などを盛り込むために、削除・修整・拡大・縮小・変形・つけたしなど、何でもありです。これを「デフォルメ」と呼びます。どうです楽になったでしょう?^^

なかやま

「抜け」と「デフォルメ」は、どのジャンルでも使える便利なツールになるはずです。しっかり覚えて実践していきましょう。

初心者が知っておきたい風景デッサンの基本構図その②

 風景デッサンにおいて、構図は作品の印象を大きく左右する重要な要素です。特に、鉛筆によるモノトーンの鉛筆デッサンでは、光と影及び線の強弱を活かして、奥行きやバランスを表現することが重要です。

 本章では、初心者の人が押さえておくべき風景デッサンの三分割法の基本構図と、それを活かした描き方について解説します。

三分割法でバランスの良い構図を作る

 三分割法とは、スケッチブックや紙を縦横それぞれ三分割し、交点や線上に描くモチーフを配置する構図です。例えば、地平線を下1/3に配置し、空を広く取ることで開放感を演出できます。

 また、主要な樹や建物を交点に置くことで、視線を誘導する効果が得られます。この方法は初心者の人でも取り入れやすく、安定感のある構図が作れるためオススメです。

 尚、三分割法では、次の筆者の作品は風景画ではありませんが、こんな感じで展開を考えてみるということです。

    ミヒカリコオロギボラのある静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治

  • 黄色の線:3分割構図基本線
  • 緑色の線:3分割線
  • 青色の線:「抜け」に使うための線
  • ピンク色の線:3つのモチーフで3角を構成する線

遠近感を出すための近景・中景・遠景の活用

 風景デッサンでは、近景、中景、遠景を意識して描くことで奥行きが生まれます。手前の樹や岩などを濃い鉛筆で強調し、遠くの山や雲を薄く描くことで、自然と遠近感が表現できます。

 近景のディテール(詳細)をしっかり描き込むと、遠景のぼんやりとした描写との対比が際立ち、作品全体が引き締まります。筆者の次の作品を参照してください。

       国画会展 会友賞 誕生2013-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治

中心を意識せず視線を動かす構図

 初心者の人は、中心となる主役のモチーフを画面の中央に配置しがちですが、これでは単調な印象になりがちです。中心を避けて、左寄りや右寄りに主要な要素を配置することで、視線が自然に画面内を動きます。

 例えば、川の流れを斜めに描いたり、道を画面の奥に続くように配置することで、動きのある構図が作れます。筆者の次の作品を参照してください。

         駅 2021 F6 鉛筆画 中山眞治

 基本構図を理解することで、風景デッサンの魅力はさらに広がります。鉛筆でのモノトーンの表現において、バランスや遠近感を意識した構図を取り入れることで、作品全体が活き活きとしたものになるでしょう。

 尚、構図で筆者が良く使う、主役のモチーフの位置が分かるものを用意しました。次の図の黒い線は画面横の中心線です。√3が赤い線、黄金分割はピンクの線、√2は青い線、となります。

 これらを画面左右から2本、画面上下から2本を描き、縦横の中心線と2本の対角線を作れば、それぞれの構図分割基本線が出来上がります。

 因みに、画面縦横のそれぞれのサイズを実際に測って、√3であれば、1.732、黄金分割であれば、1.618、√2であれば、1.414で割って得られた寸法で画面を分割すれば、構図分割基本線を得られます。

 これらの構図での、主役の位置はどのように使い分けるのかといえば、√3であれば縦向きにして人物をその構図基本線を中心に据えて描くことでバランスが取れます。この場合、人物の両肩までが、無理なく画面に納まるように描くべきです。

 また、√2を使うことによって、広い面積の部分を空などに充てるとか、狭い面積の部分を静物画のテーブルに充てるとか、色々考え方によって用途を広げられます。

 尚、これらの内、2つの構図を複合して使うこともできます。例えば、前述のように、水平線や地平線を√2で仕切り、主役のモチーフを黄金分割で描くとかです。その組み合わせはきりがないほどのバリエイションになります。

 ただし、構図の複合は2つまでにしておきましょう。それ以上の分割を入れてしまうと、何が何だか分からなくなってしまいます。^^

構図を考える際には、√3・黄金分割・√2をまず使うことを考えてみましょう。

鉛筆デッサンで奥行きを表現するコツとは?

 奥行きのあるデッサンを描くには、光と影、線の強弱、遠近法といった基本技術を効果的に活用することが重要です。モノトーンの鉛筆デッサンでは色彩に頼ることができないため、これらの要素を工夫して奥行きを表現する必要があります。

 本章では、初心者の人が取り入れやすい具体的な方法を解説します。

線の強弱で距離感を生み出す

 鉛筆の濃淡を使い分けることで、近景、中景、遠景に応じた距離感を表現できます。手前のモチーフは濃く、しっかりとした線で描くことで存在感を出し、背景に行くにつれて薄くぼやけた線で描くと遠くにある印象を与えられます。

 また、近景の細かなディテール(詳細)を強調し、遠景では線を省略することで視覚的な奥行きが強調できます。

         坂のある風景Ⅰ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

重なりを活かしたレイヤー表現

 モチーフを重ねて描くことで、視線の流れと奥行きを作り出すことができます。例えば、樹々を描く場合、手前の枝葉を細密に描き込み、背景の樹々はシルエットだけで表現するなど、レイヤー(重ね描き)を意識すると効果的です。

 この重なりを強調するために、手前のモチーフの輪郭を濃く描き、背景の輪郭は柔らかくすることで自然な奥行きが生まれます。

空間を広げるための消失点の活用

 消失点を取り入れると、画面に奥行きの効果が格段に増します。例えば、道路や川などのモチーフを描く際、消失点に向かって線を収束させることで遠近感を強調できます。

 消失点を画面の中央ではなく、左右にずらして配置すると、自然な広がりを感じさせる構図が完成します。また、消失点に向かう線は徐々に薄くなるよう調整すると、モノトーンの鉛筆デッサン特有の柔らかい奥行きが引き立ちます。

 次の筆者の作品を参照してください。この作品では、道路の突き当りの位置を√2の位置に据えています。具体的には、画面の縦の寸法に対して、÷1.414で得られた寸法を画面の下から測ったところへ設定しているのです。構図はこんな風にも使えます。^^

        坂のある風景Ⅱ F1 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆デッサンで奥行きを表現するコツを掴むことで、モチーフが画面内でより立体的に感じられるようになります。線の強弱や消失点の活用を通じて、シンプルなモノトーンでも奥行きと広がりのある風景を描くことができます。

遠近感、すなわち画面深度を出す方法のコツをお伝えします。近景を薄暗く・中景を暗く・遠景を明るく描くことで、圧倒的な画面深度を構成できます。試してみてください。前述の「誕生2013-Ⅱ」がそのサンプルになるはずです。

自然の魅力を鉛筆で引き出す描写テクニック

 モノトーンの鉛筆デッサンで自然の美しさを表現するには、細部の観察と描写技術の工夫が鍵となります。光と影を活用し、質感や立体感を際立たせることで、シンプルな鉛筆デッサンでも自然の魅力を引き出すことが可能です。

 本章では、初心者の人にも取り入れやすい具体的な描写テクニックを紹介します。

質感を描き分けるシャープな線と柔らかい線の使い方

 自然を描く際には、岩の硬い表面や木のざらざらした質感、葉の柔らかさなど、それぞれの質感を表現するには線の描き方を工夫する必要があります。

 岩や樹皮はシャープで硬い線を重ねることでその堅牢さを表現できます。一方、葉や草は柔らかい曲線や軽いタッチで描くことで、自然の柔らかさやしなやかさを際立てられます。

光と影で立体感を演出するテクニック

 自然の中には、多様な光と影のパターンがあります。木漏れ日が地面に落ちる様子や雲が作る陰影を鉛筆デッサンで表現するには、濃淡を使い分けることが鍵になります。

 たとえば、日光が当たる部分は白を残し、影になる部分は滑らかなグラデーションで濃く塗ると、立体感と奥行きが生まれます。影の境界をぼかすことで、自然な光の移り変わりを表現できます。

 次の筆者の作品は夜の作品ですが、こんな風にも光と影の強調をすることができます。

     第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

細部に生命を吹き込む細密な描写

 自然の魅力は細部に宿ります。例えば、葉脈の細かいラインや木の枝の不規則な曲がり方、岩の小さなひび割れを丁寧に描くことで、自然そのものの活き活きとした表情が伝わります。

 モチーフの特徴を観察し、細部を細密に描き込むことで、全体の鉛筆デッサンにリアリティーが加わります。ただし、すべてを描き込むのではなく、重要な部分に焦点を絞ることで、バランスの取れた作品が完成します。

なかやま

鉛筆デッサンで自然の魅力を表現するためには、質感、光と影、細部への注意が不可欠です。モノトーンの世界でも、これらのテクニックを使うことで自然の多様性や豊かさを引き出すことができます。

初心者でも取り組みやすい風景デッサンの練習方法

 風景デッサンは、鉛筆だけで自然の美しさや奥行きを表現できる魅力的なアートのひとつです。しかし、初心者の人にとっては「どこから始めればよいのか」と迷うことも多いでしょう。

 本章では、モノトーンの鉛筆デッサンを前提とした初心者向けの効果的な練習方法を紹介します。

シンプルなモチーフから始める

 初心者の人は、複雑な景色ではなくシンプルなモチーフから始めるのがオススメです。例えば、一本の樹、静かな湖、または平らな地平線など、描きやすい対象を選びましょう。

 最初から細部まで描こうとするのではなく、全体のバランスや形を捉える練習に集中することで、デッサンの基本が自然と身につきます。

光と影を観察する練習

 風景デッサンでリアリティーを出すには、光と影の表現が鍵となります。初心者の人は、時間帯による光の変化や影の濃淡を観察する練習から始めるとよいでしょう。

 たとえば、夕日の長い影や、曇りの日の柔らかい光を鉛筆で再現することで、モノトーンでも深みのある風景を描けるようになれます。影の境界線を滑らかにぼかす練習を繰り返すことがポイントです。

 具体的には、真夏の炎天下の樹の影は、濃くてはっきりとしています。また、窓から部屋の中に入り込んでいく光は、部屋の中に行くに従って、縁が徐々にぼんやりしたものになって行きます。これらの変化を制作に活かすということです。

デジカメやスマートホンを持ち歩きこれだと思える画像をたくさん撮る

 初心者の人には、外出時にデジカメやスマートホン持ち歩き、これだと思える画像をたくさん撮ることをオススメします。例えば、公園のベンチやカフェの窓から見える風景を撮影しましょう。構図を決めるスピードや観察力も養われます。

 風景デッサンの練習では、撮影してきたシンプルなモチーフを選び、光と影を観察し、あなたが描くことに慣れてこられましたら、前述の基本的な構図の√3・黄金分割・√2の中から、あなたの取り組みたい構図を決めて取り掛かってみましょう。

モノトーンの鉛筆画でも、これらのステップを丁寧に繰り返すことで、徐々に技術が向上します。そして、くれぐれも複雑な構造の物及び細かい柄や模様のモチーフには取り組まないようにしましょう。

リアルな風景デッサンを完成させるための仕上げのポイント

 モノトーンの鉛筆デッサンでリアルな風景を仕上げるには、描写の細部を調整し、全体のバランスを整えることが重要です。

 完成間近の鉛筆デッサンは、一見すると仕上がっているように見えますが、最後の仕上げ次第で作品のクオリティーは大きく変わります。本章では、初心者の人にも実践しやすい仕上げのポイントを紹介します。

光と影のバランスを再確認する

 仕上げの段階では、光と影のバランスを見直しましょう。特に、手前と奥行きの部分で濃淡が適切に表現されているかを確認することが大切です。

 影が薄すぎると立体感が失われるため、暗くするべき部分を濃い鉛筆で調整し、光が当たる部分は「練り消しゴム」で丹念に拭き取って明るさを引き立てます。バランスを整えることで、全体に自然な奥行きが生まれます。

 尚、明るくすべきところの背景や隣接する部分に濃いトーンを持ってくると、明るくすべきところが「輝いて見える」ほどの効果を出すこともできます。前掲の作品「夜の屋根」を参照してください。

細部を描き込みリアリティーを追加する

 鉛筆デッサンの完成度を上げるには、細部の描き込みが欠かせません。例えば、樹の幹のひび割れや葉の形状、岩の表面の質感を丁寧に描き込むことで、風景にリアリティーが加わります。

 ただし、全ての部分を詳細に描き込む必要はなく、重要な要素に焦点を絞ることでバランスの良い作品に仕上がります。

 具体的には、あなたが向き合っている画面上のすべての対象物を細密描写してしまうと、あなたが何に感動して何を強調したいのかが分からなくなってしまうからです。

 つまり、あなたが画面上で感動した、あるいは強調したい部分には、「細密描写」」を施して、それ以外の部分いは「何となくわかる程度の描写」にとどめることで、あなたの感動した、あるいは強調したい部分を引き立てられるということです。

 もしくは、全体を細密描写した場合であっても、あなたの感動した、あるいは強調したい部分にはしっかりと「ハイライト」を入れて、それ以外の部分には、「ハイライトを抑えて」制作することで、あなたの感動した、あるいは強調したい部分を引き立てられます。

 これらの配慮を怠ると、全体に細密描写を施した作品であっても、あなたの意図が観てくださる人には伝わりにくくなってしまいます。人によっては、このような作品を「何が言いたいのかよく分からない作品」と言われる場合があるので注意が必要です。

最終的な確認と微調整

 鉛筆デッサンを遠くから眺め、全体の再確認をしましょう。モチーフ同士のバランスや導線の流れが自然になされるかどうかをチェックし、必要に応じて調整します。

 例えば、空のトーンが単調であれば軽くトーンを重ねて変化をつけたり、地面のテクスチャー(質感)を追加することで作品が引き締まります。

 そして、画面の近景や中景のあたりにあなたの感動した・強調した制作対象を据えて、ハイライトを入れる場合には、遠景にたとえ「抜け」があったとしても、その「抜け」には、あなたの感動した・強調した制作対象を引き立てるために淡いトーンを入れましょう。

 リアルな風景デッサンを完成させるには、光と影のバランスを調整し、細部の描写を強化しながら最終的な微調整をすることが重要です。

なかやま

モノトーンの鉛筆デッサンであっても、仕上げの工夫次第で作品全体がプロフェッショナルな仕上がりになります。

まとめ

 鉛筆デッサンでリアルな風景を描くには、基本の構図や描写テクニック、仕上げのポイントを理解し、実践することが重要です。モノトーンで自然の魅力や奥行きを引き出すには、以下のような要素に注意してください。

基本構図を押さえる

  • 黄金分割法: 一番安定感があると言われる黄金分割の構図をまず最初に導入し、あなたの感動した・強調したい制作対象をその位置に配置する。
  • 三分割法: 安定感のある構図を作るため、画面を縦横三分割し、主要なモチーフを交点や線上に配置する。
  • 近景・中景・遠景の活用: 遠近感を出すために、濃淡やディテール(詳細)を使い分けて奥行きを表現する。
  • 中心を避けた配置: 視線が画面内を自然に動くように、主要な要素を左右に配置する。この場合、√3及び黄金分割や√2の位置への設定も検討する。

描写テクニックで自然の魅力を表現する

  • 線の強弱: 手前は濃く、遠景は薄く描くことで距離感を強調する。
  • 光と影: 濃淡を活用し、リアルな立体感を表現。影の境界を滑らかにぼかすことで自然な印象を作る。
  • 細部の描き込み: 樹の葉脈や岩のひび割れなど、自然の細部を細密に描き、リアリティーを高める。ただし、全部の制作対象にではなく、あなたの感動した・強調したい部分に重点的な細密描写を施す。

効果的な練習方法

  • シンプルなモチーフから始める: 一本の樹や水平線など、描きやすい対象で基本を練習する。
  • 素材の収集: 外出時にデジカメやスマートホンを持ち歩き、これだと思える風景や個別のモチーフを撮りためる。

仕上げのポイントで完成度を高める

  • 光と影の最終調整: 暗くするべき部分を濃く描き、練り消しゴムで明るさを引き立てる。光っている部分を引き立てるためには、背景や隣接部に濃いトーンが必要。
  • 重要な部分の細部を追加: モチーフ全体ではなく、注目させたい箇所に描き込みを集中させる。
  • 最終の微調整: 全体を遠くから眺めてバランスを確認し、不足しているトーンやテクスチャーを補う。

 鉛筆デッサンでリアルな風景を描くためには、基礎を押さえつつ、観察力と技術を組み合わせることが大切です。

 これらのテクニックを日々の練習に取り入れることで、モノトーンでも奥行きと魅力のある風景デッサンを描けるようになるでしょう。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。