鉛筆絵で劇的に上達できる!プロが教える初心者向け練習メニュー集

 こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

       筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅱ」と共に

 さて、鉛筆絵を始めたばかりの人にとって、どのように練習を重ねれば上達できるのかを考えることは、悩みのひとつにもなるでしょう。

 この記事では、プロの視点から、初心者の人でも無理なく取り組める練習メニューを厳選してご紹介し、線の描き方から陰影のつけ方、構図の取り方まで、ステップごとにわかりやすく解説します。

 日々の練習に取り入れるだけで、鉛筆絵の技術が着実にレベルアップできます。楽しく、確実にスキルを磨きたい人はぜひ参考にしてください。

 それでは、早速見ていきましょう!

鉛筆絵初心者がまず身につけるべき基本スキルとは?

誕生2022-Ⅱ F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆絵を始めたばかりの初心者の人が、効率よく上達するためには、まず基礎的なスキルを身につけることが重要です。

 本章では、鉛筆だけで表現力を高めるために、押さえておくべき3つの基本スキルを紹介します。

均一な線を描くためのコントロール力

          午後のくつろぎ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆絵では、線のコントロールが表現の幅を決めます。まずは力を入れすぎず、均一な太さと濃さで線を描く練習をしましょう。

 短い直線や円を繰り返し描くことで、手首や腕の動きを安定させることができます。この練習は、スケッチブックでなくても描けますよね。もったいないですから、身近で不要な紙などを使って練習しましょう。^^

 モノトーンの鉛筆絵の表現では、線の質感が作品全体の印象を左右します。

濃淡を使い分けるグラデーション技術

 鉛筆だけで立体感を生み出すためには、スムーズなグラデーション(階調)を作る技術が不可欠です。

 スケッチブックや紙に、軽く触れるように描き始め、徐々に力を強めることで自然な濃淡を表現できます。次の作品の、水滴の付いている部分(シンク)のトーンには、2Hの優しく軽いタッチで塗り重ねています。

        水滴Ⅴ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

 濃い部分から薄い部分へ移行する際には、ティッシュペーパー及び綿棒や擦筆(さっぴつ)を使った、ぼかしを取り入れるのも効果的です。

           擦筆の画像です

シンプルな形を正確に捉える観察力

         林檎 2019 F3 鉛筆画 中山眞治

 初心者の人はまず、リンゴやコップなどシンプルな形のモチーフを選びましょう。

 複雑なものに挑戦する前に、輪郭線を正確に捉える観察力を鍛えることが大切です。

なかやま

目で見た比率を意識しながら、モチーフ全体をざっくり捉える練習を重ねることで、デッサン力が自然に向上していきます。

毎日できる!鉛筆絵のためのシンプルな線の練習法

静かな夜Ⅰ 2023 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆絵で上達するためには、日々の積み重ねが不可欠です。

 特に、線を描く練習は鉛筆の扱いに慣れ、表現力を高めるための基本となります。

 本章では、初心者の人でも手軽に取り組めるシンプルな線の練習法を紹介します。

直線を正確に描く反復練習

         反射 2018 F1 鉛筆画 中山眞治

 スケッチブックや紙に、一定間隔で直線を描く練習は、手のブレを抑え、安定した線を描く力を養います。

 できるだけ力を抜き、スケッチブックや紙の表面を、滑らせるように肩や腕を使って描くことがポイントです。

 最初はゆっくりでも構いませんので、線がふらつかないように意識しましょう。

曲線を滑らかに描く練習法

         水滴Ⅵ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

 次に、なめらかな曲線を描く練習を取り入れます。

 円や楕円を繰り返し描くことで、柔らかい動きを身につけることができます。この練習も、あなたの身近で不要な紙でいいですよね。^^

 モノトーンの鉛筆絵では、自然なカーブが形の美しさを決めるため、曲線の練習は特に効果的です。

強弱をつけた線を描くトレーニング

       坂のある風景Ⅰ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

 線の太さや濃さに、強弱をつける練習も重要です。

 一本の線の中で、徐々に力を強めたり弱めたりしながら描くことで、表現の幅が広がります。

陰影表現に直結する技術なので、毎日のトレーニングにぜひ取り入れましょう。

リアルな陰影を作る鉛筆絵トレーニングメニュー

 鉛筆絵の魅力を引き立てるには、陰影をリアルに表現する力が欠かせません。

 単に濃淡をつけるだけでなく、自然な光の流れを意識することで、作品に深みが生まれます。次の作品を参照してください。

静かな夜Ⅱ 2023 F10 鉛筆画 中山眞治

 本章では、初心者の人でも取り組みやすい、リアルな陰影を作るためのトレーニングメニューを紹介します。

単一光源を意識したモチーフ練習

 まずは、光源を一方向に固定した簡単なモチーフを描く練習から始めましょう。

 例えば、机の上に置いた球体にライトを当て、光の当たる部分と影になる部分の差を観察します。

 次の作品では、晩秋の夕日を受けた街並みを描いていますが、この作品はデジカメに収めた景色を描いています。やはり一定方向からの光は、安定した作品創りにつながってきます。

       坂のある風景Ⅱ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

 光源を決めることで、自然な陰影がつけやすくなり、鉛筆でのトーン表現が身につきます。

濃淡を滑らかに繋ぐグラデーション練習

 スケッチブックや紙の端から端まで、濃いトーンから徐々に薄いトーンへと変化させるグラデーション(階調)練習は、陰影表現に直結する重要なトレーニングです。

 力を微妙に調整しながら鉛筆を動かし、色ムラを作らないように丁寧に仕上げましょう。次の作品では、窓から差し込む光を受けて、モチーフに微妙な陰影ができています。

       家族の肖像Ⅱ 2023 F1 鉛筆画 中山眞治

 モノトーンの作品において、グラデーションの技術はリアリティーを左右します。

影の中のトーンの変化を描くトレーニング

         秋 2021 F1 鉛筆画 中山眞治

 影の中にも、微妙なトーンの変化があることに注目しましょう。

 単純に「暗い」だけで塗りつぶすのではなく、影の中でも光の届き方による、濃淡を描き分ける練習を行います。

 尚、モチーフにできる影は、光源から遠ざかるに従って、影の縁が弱く・淡くなっていく点などもよく観察して、作品に描き込んでいきましょう。

なかやま

複雑なトーンを表現できるようになると、鉛筆絵の奥行きが一段と豊かになります。

構図力を高める!簡単モチーフを使った練習方法

      椿Ⅱ 2024 SM 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆絵の魅力を最大限に引き出すには、モチーフの選び方と配置に工夫を凝らすことは重要です。

 特別な素材を用意しなくても、身近にあるシンプルなモチーフで構図力を鍛えることができます。

 本章では、初心者にも実践しやすい練習方法を紹介します。

構図を研究すべき理由

     第1回個展出品作品 静物Ⅱ 1997 F10 鉛筆絵 中山眞治

 あなたが初めて鉛筆画に取り組んだ場合には、最初に取り組む5作品ほどは、構図や色々な面倒なことは一切考えないで、楽しんで制作することが極めて重要です。

 その理由は、最初からいろいろなことを考えてしまうと、手が止まってしまい挫折の原因になるからです。そのようなことよりも、あなたが楽しんで鉛筆画を描くことに慣れることが重要なのです。^^

 そして、あなたが5作品ほど描いて「ある程度描くことに慣れて」来られましたら、構図についても研究を始めましょう。

 その理由は、構図を使うことによって、作品をより見映えのする、まとまりのある作品にすることができるからです。

 構図とは、先人の築き上げてきた美の構成に裏打ちされた、バランス・緊張感・力強さ・躍動感などを伝えることができる技術です。

 構図は、作者とすれば「作品の魅力をより一層引き出せる技術」である反面、観てくださる人からすれば「見映えのする作品」に仕上げるための、重要なノウハウと言えます。

 構図については、この記事の最終部分に関連記事「初心者でも簡単!プロが教える鉛筆画の構図の取り方やコツとポイント」を掲載していますので、関心のある人は参照してください。

単品モチーフで空間を意識する練習

 まずは、リンゴやマグカップなど単純なモチーフをひとつだけ配置し、周囲の空間を意識しながら描く練習を行いましょう。

 モチーフを紙の中心から少しずらすことで、余白とのバランス感覚を自然に養うことができます。構図における「間」の大切さを体感できます。次の作品を参照してください。

     シャクヤク 2024 SM 鉛筆画 中山眞治

 構図については、先述していますが、この記事最終部分に掲載している関連記事を参照してください。

複数のモチーフで視線の流れを作る練習

 次に、簡単なモチーフを2〜3個組み合わせて配置し、視線の流れを意識した構図を作る練習をします。

 高さや大きさを変えることで、自然なリズムが生まれ、絵に動きが出ます。次の作品では、小さいながらも、黄金分割の構図基本線を使いながら、斜線も意識した構成になっています。

      水滴 2021 F1 鉛筆画 中山眞治

 モノトーン鉛筆絵では、視線誘導が絵の印象を大きく左右します。

枠内におさめるトリミング練習

 最後に、モチーフ全体を描くのではなく、一部を切り取るようなトリミング構図に挑戦しましょう。

 制作画面の中で、存在感のある大きさに配置することで、迫力のある表現が可能になります。ただし、画面が窮屈になるような大きさは避けましょう。次の作品を参照してください。

      椿Ⅰ 2024 SM 鉛筆画 中山眞治

大胆な構図を試すことで、表現の幅がぐっと広がります。

上達を実感するための鉛筆絵練習スケジュール例

        睡蓮 2024 SM 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆絵の上達には、計画的な練習が欠かせません。

 闇雲に描き続けるよりも、目的を持ったスケジュールを立てることで、効率よくスキルを伸ばすことができます。

 本章では、初心者の人でも続けやすい、1週間単位の練習例を紹介します。

1日目~3日目:線とグラデーションに集中する

       新しい未来Ⅳ 2024 SM 鉛筆画 中山眞治

 最初の3日間は、線を正確に引く練習と、スムーズなグラデーション(階調)作りに集中します。

 モノトーンの鉛筆絵では、基本の線と濃淡表現がすべての土台になります。

 短時間でも毎日行うことで、鉛筆のコントロール力が着実に向上します。

4日目~5日目:簡単なモチーフで構図と陰影を練習

 次の2日間は、身近なモチーフを選び、構図を意識しながら陰影をつける練習に取り組みます。

 複雑な対象は避け、コップや果物などシンプルな形を使うのが効果的です。次の作品で使っているような、身近なものでも充分モチーフになります。

     第1回個展出品作品 静物Ⅰ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 モチーフをスケッチブックや紙にどのように配置するかも意識しながら描きましょう。

6日目~7日目:小作品を仕上げて総合力を試す

 週の終わりには、これまでの練習成果を活かして小さな一枚絵を完成させます。

 線、濃淡、構図、陰影すべてを意識しながらまとめることで、実践力が一気に高まります。次のような果物でもいいですよね。^^

         葡萄 2019 F3 鉛筆画 中山眞治

なかやま

完成した作品は必ず見直し、次週に向けた課題を見つけることも大切です。

【まとめ】鉛筆絵で効率よく上達するために

    青木繫記念大賞展 奨励賞 郷愁 2001 F100 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆絵で上達するためには、ただ漠然と描き続けるだけでは不充分です。

 基本を押さえ、段階的に練習を重ねることで、確実に表現力を高めることができます。

 尚、制作するうえで、モチベーションを維持・向上させられる方法も紹介しておきます。それは、構図のたくさん載っている本を一冊購入して、簡単な構図がたくさんありますので、それらに順番で取り組むことです。

 簡単な一つの構図を使って、静物・風景・人物・動物・心象風景などへ取り組みましょう。いろいろな組み合わせを考えることで、楽しくて仕方がなくなるはずです。筆者は、夜も眠れなくなるほどでした。

 そして、ここが一番重要ですが、毎日少しづつでも続けることで、必ず上達できます。^^

この記事のポイント

  • 線のコントロール力を高める
     均一な直線や、滑らかな曲線を描く練習を積み重ねることで、安定した表現が可能になります。
  • 濃淡のグラデーション技術を習得する
     滑らかなトーン変化を描けるようになると、鉛筆絵に自然な立体感が生まれます。
  • 観察力を鍛えて構図力を伸ばす
     簡単なモチーフを使って、バランスや視線の流れを意識した練習を取り入れましょう。
  • リアルな陰影表現に挑戦する
     単一光源のモチーフを描くことで、自然な光と影の表現力が向上します。
  • 計画的な練習スケジュールを立てる
     1週間単位で目標を定め、小さな達成感を積み重ねながらスキルアップを目指しましょう。

 基礎を大切にした日々の練習は、確実にあなたの鉛筆絵を変えていきます。焦らず、一歩ずつ成長を楽しみながら取り組んでください。積み重ねた努力は、必ず自信となって表れます。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。