鉛筆デッサンで初心者が短時間で上達するための練習方法とコツとは?

 こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

         筆者近影 作品「パーティーの後で」と共に

 さて、鉛筆デッサンを始めたばかりの初心者の人にとって、上達するための練習方法や効率的なコツを見つけることは重要です。

 短時間で上達するためには、単に描き続けるだけではなく、適切な方法で練習し、基本テクニックを身につけることが大切です。この記事では、初心者の人でも取り組みやすい具体的な練習方法や効率的なコツを紹介します。

 影のつけ方や、ラインの使い方など、基本から応用までカバーし、どのように練習することでスキルが向上するかを解説します。

 それでは、早速見ていきましょう!

Table of Contents

短時間で上達するための鉛筆デッサン練習法の基本

 鉛筆デッサン初心者の人にとって、効率的に練習することで、短時間でも上達を実感できる方法を取り入れることは重要です。

 本章では、モノトーンの鉛筆を使用し、特に初心者の人に向けた基本的な練習法とアプローチについて紹介します。

練習の前に意識すべき3つのポイント

シンプルなモチーフから始める


 初心者の人が、最初に取り組む必要があるのは、シンプルで形状がわかりやすいモチーフです。例えば、球体や立方体、円柱など、基本的な形を描くことで鉛筆の動かし方に慣れ、影のつけ方を学ぶことができます。下の画像のような形状のモチーフです。

 形が複雑でないモチーフを選ぶことで、描写に集中できるため、短時間でデッサンの基礎を身につけやすくなります。

濃淡の変化を練習する


 モノトーンの鉛筆デッサンでは、濃淡が重要な役割を果たします。H系統からB系統までの、さまざまな鉛筆の硬さを使い分けながら、グラデーションを練習しましょう。

 鉛筆の筆圧や角度を変えることで、微妙な濃淡をつける練習ができます。特に初心者の人は、簡単な丸い物体に影をつけることで、立体感を表現する方法を学べます。下の画像のように、白い卵は一番最初のモチーフとしては最適です。

スケジュールを組んで毎日練習する


 鉛筆デッサンは、繰り返しの練習が重要です。1日10分から15分程度の短い時間でも、毎日デッサンする習慣をつけることで、驚くほど上達します。焦らず、一定の時間を確保してスケジュール化することで、無理なく継続的に上達できます。

手始めのモチーフは、シンプルな形で白いものがおススメです。絵画教室に行かない場合でも、白い卵・白いカップ&ソーサー・白いマグカップなど、身近なモチーフを使いましょう!

効率的にデッサン力を伸ばすためのステップ

線の練習から始める


 鉛筆デッサンの基本は、線のコントロールです。最初は、さまざまな太さや濃さの線を描く練習をしましょう。

 例えば、軽く描いて薄い線を作ったり、力を入れて濃い線を引いたりすることで、鉛筆の使い方に慣れます。この基本をマスターすると、スケッチの精度が格段に上がります。

 例えば、下の画像のような線を描いてみましょう。

 さまざまな方向の線を描いてみましょう。ジグザグや螺旋の線も試す価値があります。

 鉛筆を寝かせて使うことで、このような幅広な線も描けます。上の画像の右側の方は、6B以上の濃い鉛筆で描いています。

陰影のつけ方を重点的に練習する


 モノトーンの鉛筆デッサンにおいて、陰影の表現は非常に重要です。光の方向に注意を払いながら、影を描く練習をしましょう。

 まずは1つの光源を設定し、それに対してどこに影ができるのかを意識します。これを繰り返すことで、物体の立体感をよりリアルに表現できるようになれます。

 あなたの自宅のデスクの照明が、自在に動かせるのであれば、部屋の明かりを消してモチーフへ光を当ててみましょう。すばらしい光景が展開するはずです。

 下の筆者の作品では、巨峰を描きました。この葡萄は黒光りしているので大変描きやすく、室内の照明でも充分描けますのでおススメです。この場合のコツは、濃いところを思い切って濃く描くことで、ハイライトが活きてきます。

第1回個展出品作品 葡萄 1997 F6 鉛筆画 中山眞治

時間制限を設けて描く


 上達のためには、時間を制限して短時間で描くトレーニングも効果的です。例えば、1つのモチーフを5分以内で描くなど、時間を設定することで集中力が高まり、効率的にスキルを磨けます。

 特に、集中して短時間で描くことで、自然とデッサン力が上がっていくのを実感できるでしょう。

 鉛筆デッサン初心者の人が短期間で上達するためには、毎日の練習と基本を押さえたアプローチが必要です。モノトーンならではの魅力を活かしながら、シンプルな練習から始めて、確実にスキルを高めていきましょう。

なかやま

筆者の場合には、絵画教室で一番最初に鉛筆デッサンを1枚描いたところで、鉛筆デッサンにはまり込んでしまいましたので、絵画教室の他にも、自宅で毎日2時間と休日には、朝早くから取り組んできました。^^

初心者でも実践できる簡単なデッサンテクニック

 鉛筆デッサンは、基本的なテクニックを習得することで初心者の人でも、美しい作品を作り上げることができます。

 本章では、モノトーンの鉛筆だけでできる、簡単なテクニックを紹介します。これらを練習することで、短時間で見違えるほど上達できるでしょう。

線の強弱で表現するテクニック

線の太さと濃さをコントロールする


 鉛筆デッサンでよく使われるテクニックの1つが、線の強弱を活かすことです。鉛筆を人指し指・中指・親指で優しく軽く持ち、薄い線からスタートし、重要な部分では少し強めの線で描くことで、立体感と奥行きを表現できます。

 例えば、輪郭を薄く描いてモチーフの内側部分に濃いトーンを持ってくることで、自然なグラデーションができて、物体に存在感が出ます。

 つまり、下の画像のコアシャドウの部分を、モチーフをよく観察してグラデーションをつけながら濃くするということです。

 練習としては、最初は軽い線から始め、少しずつ強弱をつけることで鉛筆のコントロール力を養えます。

曲線と直線を使い分ける


 曲線は柔らかさや動きを表現しやすく、直線は安定感や連続性を示せます。モノトーンの鉛筆デッサンでは、線の種類を使い分けることで、より豊かな表現が可能になります。

 例えば、人物の髪の毛や動物の毛並みは柔らかく表現するために曲線を多用し、道路及び建物や機械などは直線をメインに使うとリアリティーが増します。

制作する画面上には、さまざまな要素を取り込めるようにしましょう。垂直線や水平線ばかりでは、変化の乏しい作品になりがちです。

ハッチングとクロスハッチングの基礎

ハッチングで立体感を演出する


 ハッチングとは、短い平行線を塗り重ねて濃淡を作るテクニックです。線を密に描けば濃い部分、間隔を広くすれば薄い部分が表現できます。

 この手法を使うと、モチーフの陰影を簡単に描くことができて、短時間でリアルな立体感を生み出せます。

 例えば、リンゴや球体の物体を描く際には、光が当たる側を薄く、影になる部分を濃くすることでリアルな質感が出せます。下のような画像の陰影も描写できます。

クロスハッチングで複雑な陰影を表現する


 クロスハッチングとは、縦横斜めなどの4種類の角度で線を交差させる方法です。この方法を使うと、さらに深い濃淡を作り出すことができて、複雑な陰影も簡単に表現が可能になります。

 この場合に、描きにくい方向の線は、スケッチブックの角度(90°)を変えることで問題なく描き込むことができます。

 特に、影が濃い部分や、物体の奥行きが必要な箇所にクロスハッチングを活用すると、リアリティーが増し、奥行き感のある作品になります。

なかやま

筆者の場合には、このクロスハッチングによって淡いトーンから濃いトーンまですべてに対応しています。繰り返し描き込んでいくことで、極めて濃いトーンも得られますよ!

ぼかし技法で柔らかい表現を作る

綿棒や指を使ってぼかす


 モノトーンの鉛筆デッサンでは、綿棒や指で鉛筆の線をぼかし、柔らかいグラデーションを作ることもできます。鉛筆で描いた部分を綿棒や指で軽く擦ることで、滑らかなぼかしが生まれ、自然な質感を作り出せます。

 特に、人物の肌や布の質感を表現する際に効果的です。実際に人物の肌のトーンや布の質感を再現する際には、ぼかし技法が役立ちます。

ティッシュペーパーや布でぼかす


 大きな面積をぼかす際には、ティッシュペーパーや布を使うと良いでしょう。そうすることで、均一にぼかしながら柔らかい印象を与えることができます。

 特に、背景や広い影の部分にこの方法を使うと、短時間で滑らかなグラデーションが仕上がります。

 このテクニックは、モノトーンの鉛筆デッサンで初心者の人でも簡単に取り組むことができて、短期間で上達が実感できます。

 たとえば、下の筆者の作品では、顔及び肩や胸などのトーンのぼかしを、小さく畳んだティッシュペーパーで優しく擦って仕上げています。

   第1回個展出品作品 マリリン・モンロー 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 まずはこれらをマスターすることで、デッサンの基本的な表現力を磨き、さらにスキルアップを目指していきましょう。

ティッシュペーパーを小さく畳んで、主に人物や静物の曲面にぼかしを使うことで、自然なグラデーションを作り出すことができます。ぼかしに特化した「擦筆(さっぴつ)」という道具も売られています。

効率よく上達するためのデッサンのコツとポイント

 鉛筆デッサンを始めたばかりの初心者の人でも、適切なコツをつかむことで効率よくスキルアップすることも可能です。

 本章では、モノトーンの鉛筆を使用したデッサンで、上達するために役立つポイントを紹介します。

素早く描く練習でデッサンスキルを向上

速写で素早く輪郭を捉える

 速写には、主にクロッキーとジェスチャードローイングの2通りの手法があります。

 この速写を行う際には、鉛筆の芯は鋭くない方が描きやすい場合が多いので、実際に芯先を鋭い状態から始めて様子をみましょう。芯先が鋭くない方が描きやすい人は、そのままあまり鋭くしないで描き進みましょう。

 クロッキーとは、短時間で全体を捉えながらも、モチーフを忠実にデッサンすることを目指します。一方、ジェスチャードローイングでは、同じく短時間でモチーフをデッサンしますが、印象を重要視して描き進める手法を指します。


 両者ともに、数分からせいぜい10分程度で、動きや形をとらえる練習方法です。初心者の人でもこの練習を行うことで、デッサンのスピードと正確さが向上しますが、実際のモチーフを忠実に描いていくクロッキーがオススメです。

 尚、長時間かけて細部を描く前には、最初に全体のシルエットや動きをじっくりと観察して印象や特徴を捉えることで、後から細かい部分を描く際にもブレが少なくなります。

タイマーを使って集中力を高める


 時間制限を設けることで、無駄な迷いを排除し、集中力を高めることができます。例えば、5分や10分といった短いタイマーを設定し、その間にできる限りの描写を行うことで、重要なポイントに集中しながら、速やかに形を捉える力が養われます。

 こうしたトレーニングを日常的に取り入れることで、鉛筆の扱い方にも慣れていきます。

なかやま

速写のコツは、肩や腕に力を入れず楽な姿勢で、鉛筆を人指し指・中指・親指で優しく軽く持ち描き進めましょう。この場合の鉛筆は、3Bや4Bの鉛筆で描くことがオススメです。軽く描いてもしっかり描画できるからです。

練習にバリエーションを持たせる

異なるモチーフを使って描く


 毎回同じモチーフではなく、異なる形状や質感を持つもを選ぶことで、幅広い技術を習得できます。たとえば、金属の反射や木の質感、布の柔らかさなど、モチーフによって求められる描き方が変わります。

 あるいは、下の画像のような形状のモチーフは、光と影の状態を把握する際には都合の良いモチーフと言えます。

 モノトーンでこれらを表現することに挑戦することで、鉛筆デッサンの表現力が自然と向上していきます。

視点を変えて描いてみる


 同じモチーフでも、異なる角度から観察しながら描くことで、新たな発見や挑戦が得られます。例えば、上から見下ろす視点や、逆光の影を活かした視点など、さまざまな視点で描いてみましょう。

 これにより、描きたい対象を立体的に把握する力が養われ、リアルな鉛筆デッサンができるようになれます。

同じモチーフでも、光源の位置を変えることで、イメージを全く変えた制作をすることもできます。

デッサン前に目を慣らすことの重要性

デッサン前に観察する習慣をつける


 制作に入る前にじっくりと対象を観察し、どの部分が重要かを考える習慣をつけることは大切です。光の当たり具合や影のついている方向や位置、形の歪みなどを観察することで、より正確なデッサンが可能になります。

 観察の時間を持つことで、描き始める前にモチーフの構造を理解し、より効率的に描けるようになれます。

 例えば、下の画像のように自身の手を描く場合でも、制作に入る前によく観察することで、仕上がりが大きく変わってくることを認識しておきましょう。

 全体を大づかみした形状及び、各指の長さやしわの寄り方や爪の形状など、普段はじっくりと見ることもない自身の手は、作品にするとなると、いろいろな要素を持っていることを実感できるはずです。

なかやま

このように、事前に描く対処であるモチーフをじっくりと観察することは非常に重要なことなのです。

細部よりも全体のバランスを意識する


 部分的な描写に集中しすぎると、全体のバランスを崩すことがあります。初心者の人が効率よく上達するためには、まず全体の輪郭や形のバランスを捉えることが優先事項です。

 細部はその後に整えていけばよいので、まずは全体を見渡す視点を持ちましょう。これらのコツを取り入れて、日々の鉛筆デッサンの練習に励むことで、モノトーンのデッサンの技術が向上していきます。上達には、繰り返しの練習と工夫が大切です。

 筆者が初心者の時には、描いていく順番が理解できていなかったので、全体のまとまりがしっくりこないことがよくありました。

 まずは、制作する画面の中の各種モチーフのバランスを考えたデッサンを行い、全体の輪郭を取ることができましたら、一旦休憩を入れましょう。休憩をはさんで改めて画面に向き合うことで、修整点が必ず見つかるはずです。

なかやま

筆者は、このひと手間を必ず行うことにしています。現在でも、休憩をはさんで改めて画面に向き合うと、必ず2~3ヶ所の手直し箇所が出てきます。^^

短時間で効果を実感!デッサン練習の具体例

 短時間でも効果を感じられるデッサンの練習を取り入れることで、初心者の人でもスキルの向上が期待できます。

 本章では、モノトーンの鉛筆を用いた、実際に取り組みやすい練習方法を紹介します。これらの練習は、毎日少しずつ続けることで着実にデッサン力がアップします。

3分デッサンで形状をつかむ

シンプルなモチーフを短時間で描く


 毎日3分程度でシンプルなモチーフを描く練習をしましょう。例えば、リンゴやコップといったシンプルな形状のものを用意し、限られた時間内で形状を捉えることを目指します。

 この練習では、細かい部分にこだわらず、モチーフの大まかな輪郭を捉えることに集中しましょう。短時間で形状を捉えるスキルが養われ、デッサンのスピードも向上します。

 あるいは、下の画像のようなモチーフも、簡単な形状ではありますが、短時間の鉛筆デッサンを行う際には、適しているモチーフと言えます。筆者の一番最初に描いた作品も、こんな形状のモチーフでした。

複数の角度から描く


 同じモチーフを異なる角度から描くことで、より立体的な視点を身につけることができます。例えば、3分以内にリンゴを上から見た視点、斜めから見た視点など異なる角度から描く練習をします。

 これにより、対象を多角的に観察し、どの角度でも自然な形状を描ける力が身につきます。

完全に集中することができれば、3分間のデッサンであっても練習になります。

影を用いた短時間トレーニング

シンプルな影のつけ方を練習する


 鉛筆デッサンにおいて、影の表現は非常に重要です。短時間で影を描く練習をするためには、物体にあたっている光の方向と強さを意識し、その影の位置と濃さを捉えます。

 1つの光源を設定し、光と影の関係を観察しながら、影のつけ方を短時間で練習することで、モチーフに立体感を出せるようになります。特に影が濃い部分を濃く、薄い部分を軽く描くことで、質感も表現できるようになれます。

クロスハッチングで深みを出す


 影をつける際にクロスハッチング技法を使うと、濃淡の調整が容易になり、陰影に深みを加えることができます。例えば、物体の暗い部分にクロスハッチングを施すことで深みが増し、よりリアルな影が完成します。

 例えば、筆者の次のような作品でも各種鉛筆の濃度は違っても、それぞれにクロスハッチングを使って、トーンの色面を作っています。

第2回個展出品作品 ランプの点(とも)る静物 2000 F30 鉛筆画 中山眞治

なかやま

2Dの平面作品である鉛筆デッサンでは、適切な輪郭を取ることは重要ですが、陰影を効果的に構成することも重要なテーマです。光源をよく確認して、モチーフにできている光と影の表現は大切ですよ!

集中力を高めるためのタイマートレーニング

10分間のデッサン


 10分タイマーをセットし、その間にできる限り描くという集中トレーニングも試みましょう。短時間で集中してデッサンを行うことで、自然と無駄な線が減り、効率的に描けるようになれます。

 このデッサンでは、毎日異なるモチーフによって行うことで、さまざまな形を素早く捉える練習になります。

 筆者もこの練習をしたことがありますが、その際のコツは、いちいち線を消しゴムで細かく消さずに描き進むことです。時間の制約もあるので、ざっくりと描いていき、最後に不要な線を練り消しゴムで拭き取るといった描き方が良いです

輪郭に照準を合わせて描く


 タイマートレーニングでは、細部を省いて輪郭のみを捉える練習が効果的です。まず、モチーフの輪郭や形の大まかな構成に集中して描き、残りの時間で影のつけ方や濃淡を加えます。

 このように輪郭に照準を合わせることで、モチーフの形状と全体のバランスを素早く捉える力が養われ、短時間でデッサン力が向上します。

 短時間で実践できるこれらのデッサンの練習法は、初心者の人でも取り組みやすく、毎日少しずつ行うことでも効果を感じやすいものです。鉛筆の濃淡とテクニックを活かして、短時間で上達を実感してみましょう。

短時間の練習では、いかに集中できるかが重要なポイントです。最初は難しくても、日課にすることで、日常の決められたタイミングで描くことができるようになれます。

鉛筆デッサンを続けるためのモチベーションを維持する方法

 鉛筆デッサンは、初心者にとっては特に継続が難しいかもしれません。しかし、日々の練習を続けることで上達していけます。

 本章では、モノトーンの鉛筆デッサンに取り組む上で、モチベーションを保ち続けるための具体的な方法を紹介します。

小さな目標を設定して達成感を得る

短期的な目標を設定する


 鉛筆デッサンで大きな目標を掲げると、途中で挫折しやすくなります。そこで、毎回の練習で達成可能な小さな目標を設定してみましょう。

 たとえば、「今日はリンゴの形を正確に捉える」といった具体的な目標を決めると、練習の成果が見えやすくなり、達成感を味わうことができます。これを繰り返すことで、自然とモチベーションが維持されます。

上達の進捗を記録する


 鉛筆デッサンの過程を写真やメモで記録することも、モチベーション維持には効果的です。最初に描いた作品と、継続して描いた作品を見比べることで、自身の成長を確認できます。 

 成長を実感できると、次への意欲が湧いてくるはずです。定期的に過去の作品を振り返り、自分自身がどれだけ上達したかを確認しましょう。

なかやま

最初に描いた作品と、ある程度描いた時点の作品を比較することで、自身の成長を確認できるので、その後の制作により一層熱が入ります。

新しいチャレンジを取り入れる

異なるテーマでデッサンする


 同じモチーフを描き続けると飽きてしまうこともあります。そのため、新しいテーマを定期的に取り入れることも大切です。

 たとえば、今回は静物を描き、次回は風景に挑戦するなど、異なるジャンルでのデッサンを行うことで新鮮さを保てます。モノトーンの鉛筆だけでも、異なる表現に挑戦することで、楽しさを見つけやすくなります。

 例えば、あなたの自宅でも下のような画像を撮影することができるはずです。この画像は、筆者の自宅のキッチンのシンク上の画像です。改めて観ることで、水滴さえもモチーフになります。

 尚、この作品は、3つの水滴を使ってリズムを作り、画面奥から手前に「迫ってくる」ように描くことで「緊張感」を高めています。

 こんな風にして、緊張感を作品に込めることも重要な要素です。画面奥から手前に転がって来る球体でも良いのです。試してみましょう。

水滴Ⅴ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

デッサンの時間を制限してみる

 前述のクロッキーやジェスチャードローイングとも重複しますが、簡単なモチーフの描写にとどめずに、あなたの選んだテーマの内容を、できるだけ10分の時間の中でまとめると考えて進んでいきましょう。


 短い時間で集中して描く、タイムトライアル形式のデッサンを取り入れるのもオススメです。

制限時間を設けることで、自然と集中力が高まり、効率的な練習が可能になります。このような新しいチャレンジを設けることで、飽きずに取り組むことができます。

インスピレーションを得るための方法

他のアーティストの作品を参考にする


 インターネットやSNSで、他の鉛筆アーティストの作品を見ることで、新たなインスピレーションが得られます。特に、モノトーンでの鉛筆デッサンに特化した作品を探し、自身の目標とするスタイルや技法を見つけてみましょう。

 さまざまな作品を観察することで、「自分もこんな作品を描いてみたい!」という気持ちが高まります。

 下の画像は、筆者のキッチンシリーズの中の作品の一例ですが、あなたの自宅のキッチンにあるナイフやフォーク及びケトルや片手鍋・両手鍋などでもモチーフになりますよ!

午後の寛ぎ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

スケッチブック及びデジカメやスマホを持ち歩く


 日常の中で、興味を惹かれるものを見つけられましたら、すぐにスケッチするかデジカメやスマホで画像として保管しておきましょう。

 筆者は、デジカメやスマホで撮影した画像を「合成」して作品にすることが良くあります。是非チャレンジしてみてください。

 具体的には、下の筆者の作品を参照してください。この作品の制作では、実際にグリンピースの種を購入して、「バット」にその種を蒔き、発芽の状態を段階を追って撮影し、それ以外に「枯葉」及び「タバコの吸い殻」や「マッチの軸」などで構成しています。

 構図上の黄金分割点に主役を置き、主役の背景には濃いトーンを伴った死のイメージの枯葉を置いて生死の対比を行い、この画像では見えていませんが、画面左下には発芽しようとしている芽もあります。

 この3つの発育の段階を追ったモチーフでリズムを作り、観てくださる人の視線を画面左下から右上の角へ導いています。また、このタバコの吸い殻は、観てくださる人の視線を導くための重要な要素にもなっています。

国画会展 入選作品 誕生2001-Ⅱ F80 鉛筆画 中山眞治

 あなたも合成して作品を制作する場合には、光の方向をよく考えて一貫性のある制作にする必要があります。光の方向に反した影のでき方のあるモチーフを一緒に描いてしまうと、作品が台無しになってしまうからです。

 日常の風景や身近なモチーフを気軽に描くことで、デッサンの習慣が根付くとともに、ちょっとしたスキマ時間にもモチベーションを保つことができます。

 鉛筆デッサンを長く続けるためには、モチベーションを維持しながら楽しむことが不可欠です。小さな目標を設定し、記録をつけ、新たな挑戦とインスピレーションを取り入れることで、デッサンの魅力を感じながら上達していけます。

なかやま

モチベーションの維持の方法は、特別なことをしなくても、改めて身近なモチーフに気づけることで取り組めますよ!

別視点のモチベーションを高める方法

第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 本章では、ただ単にうまく描くことを考えるのではなくて、「発表の場」を段階を追って進んでいくことで、モチベーションを維持するのではなくて、「モチベーションを高められる道筋」を見ていきます。

最初に取り組む際の注意点


 ここが一番重要なのですが、あなたが初めて制作を開始した当初は、「構図」及び「構成」や「構想を練る」と、色々考えないで「楽しんで描くことが一番重要」であることを記憶しておきましょう。

 そのためにも、あなたが楽しんで描くことに集中できて、5作品ほど制作して「描くことにある程度慣れる」ことが必要です。
 
 そして、この場合には、できるだけ「複雑な形及び模様や柄」のあるモチーフは選ばないことです。「修行状態」になってしまい、挫折してしまうからです。複雑な咲き姿の花もそうですよ。覚えておいてくださいね。^^

描き始めでは、できるだけ簡単な構造で白いモチーフを選びましょう!光と影をハッキリと認識できるからです。

最初に学ぶべきは光と影の状態を観察すること 


 デッサンや鉛筆画の制作では、絵画教室へ行っているのであれば、石膏モチーフの各種(立方体・三角錐・球体など)で、しっかり練習しましょう。

 自宅で取り組む場合には、白い卵・白無地のカップ&ソーサー・白いマグカップなどがオススメです。 下の画像のようなカップは、描き始めのモチーフとしては最適です。

上達の秘訣


  そして、難易度を徐々に引き上げるようにして、静物(花を含む)・人物・動物・風景へと順番に、繰り返し取り組んでいくことで、さまざまなジャンルに、まんべんなく上達していけます。
 
 花を描く際には、咲き姿のシンプルな白いチューリップや白いコスモスの「造花」から始めましょう。生花はすぐにしおれてしまうからです。
 
 または、画像を参考にして描くのも良いのですが、「造花」といえども「実物」に取り組む意味は大きいものです。微妙な陰影を観察して制作に取り込むことで、リアリティー(現実性)を増すことができます。

なかやま

鉛筆デッサン初心者の人には、いずれも白い、咲き姿の単純なトルコ桔梗・コスモス・チューリップの造花をオススメします。陰影をはっきり確認できて描きやすいですよ! 

各種展覧会や公募展で入選以上を目指す際の「核心」

第2回個展会場(埼玉県川口市総合文化センターリリア催し広場にて) 2001年 人物は筆者

 そして、やがてあなたが、「5作品ほど描いて」描くことに慣れてきた段階で、「描く以上は各種展覧会や公募展にも出品したい」と考えるならば、より一層画面構成を引き立てられる考察が必要になります。
 
 そこで、「構図」を研究し始めることや、描く以前の充分な「構想を練る」ことも必要になりますので、構図のたくさん載っている本を一冊購入しましょう。

 そして、簡単な構図から順番に取り組み、その構図に合わせてどのようなモチーフを組み合わせたら効果的だろうかと考えてください。この考える時間は、非常に楽しい時間になるはずです。

 筆者は、その部分では次から次へと「構想が湧いて来て、楽しくて夜も眠れない日が続いた」ものです。 

 そして、あなたの目指すべきステージは、市の公募展→県の公募展→全国公募展→個展と、刺激的な華々しい道が続いていきます。^^

 尚、筆者の場合には、一番最初が「個展(F10を主体に40作品)」の開催からでしたでしたが、今考えてみると恐ろしくなります。素人がいきなり個展から始めるのですから。^^

 しかも、各絵画団体の「会員」の偉い先生方へ、合計で800枚も招待状をお送ったのですからどうかしています。

 しかし、結果的に発表としては、成功をおさめることができました。今考えると「額に汗」ものです。^^

追いかける目標を持つことで、日々のモチベーションを思い切り高めることができます。

まとめ

 鉛筆デッサンの初心者が短期間で上達するためには、効率的で継続的な練習が必要です。以下では、ここまでの内容を踏まえ、上達のためのポイントを再度まとめます。

基本のテクニックと練習法

・簡単なモチーフから始める:球体や円柱など、シンプルな形状を練習し、影のつけ方に慣れましょう。

・ハッチングとクロスハッチング:影をつけるときには、平行線や交差する線を使って立体感と濃淡を表現します。

・ぼかし技法を活用:ティッシュペーパー及び綿棒や指で鉛筆の線をぼかし、滑らかなグラデーションを作り出します。

効率よく描くための練習方法

・短時間で集中する:タイマーを使って、3分や10分といった限られた時間でモチーフを描くことで、集中力が上がり、デッサン力が向上します。

・輪郭を捉える:形の輪郭をシンプルに捉える練習を行い、全体のバランスを理解します。詳細にこだわらず、輪郭に集中することがポイントです。

モチベーション維持のための工夫

・小さな目標を設定する:毎回達成しやすい目標を設けることで、達成感が得られ、継続的なモチベーションを維持しやすくなります。

・進捗を記録する:描いた作品を写真に残し、成長を確認することで達成感が得られ、次への意欲が湧いてきます。

・モチベーションをマックスに高める方法:市及び県や全国の公募展、そして、個展の展開を順を追って展開することを目標に持つと、刺激的で楽しい制作を連綿と続けられます。

新しい挑戦で飽きを防ぐ

・異なるテーマに挑戦:毎回異なるモチーフを描くことで、新鮮さを保ち、楽しみながら上達を目指します。

・角度や視点を変える:同じモチーフでも角度を変えて描くことで、デッサン力が向上します。

・光源の角度を変える:光の当たり方でモチーフの表情は変わります。いろいろな角度から光を当てて描いてみましょう。

インスピレーションを得る方法

・他のアーティストの作品を見る:インターネットやSNSで他の鉛筆アーティストの作品を参考にし、自分の目標とするスタイルを見つけましょう。

・スケッチブック及びデジカメやスマホを持ち歩く:日常の中で見つけたインスピレーションをスケッチや画像に残し、デッサンの習慣を身につけることができます。

 モノトーンの鉛筆のみで表現するデッサンは、シンプルでありながら奥深いものです。以上のポイントを実践し、短時間でも効率的に上達できるよう工夫してみましょう。日々の継続と工夫が、あなたのデッサン力を確実に高めてくれます。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。