途中で描くのをやめたくなる鉛筆画を最後まで仕上げる7つの工夫とは?

 こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

       筆者近影 作品「月のあかりに濡れる夜Ⅳ」と共に

 さて、鉛筆画の制作中に、「なぜか急に描きたくなくなる」「途中で手が止まってしまう」という経験は、多くの中級者の人が一度は感じたことのある壁ではないでしょうか。

 構図を整え、描写も進んでいるのに手が止まる。その原因は技術だけでなく、心理的・構成的な問題も複雑に絡み合っています。

 この記事では、途中で放棄しがちな鉛筆画を、最後まで仕上げるために有効な7つの工夫を具体的にご紹介。

 制作に迷いが生じたときの打開策を得ることで、作品完成の達成感をしっかりと味わえるようになれるでしょう。制作の継続力を高め、完成率を上げたい方は必読です。

 それでは、早速見ていきましょう!

Table of Contents

なぜ描きかけで手が止まるのか?原因を明確にする

     第1回個展出品作品 葡萄 1996 F6 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画を描き始めたものの、途中で放置してしまうという経験は、多くの鉛筆画中級者の人に共通する悩みです。

 作品が、未完成のまま積み上がっていく背景には、いくつかの明確な原因が潜んでいます。

 本章では、まずはその要因を把握し、次の対策へとつなげる視点を持つことが重要であることについて解説します。

理想と現実のギャップに苦しむ完璧主義

    第1回個展出品作品 トルコ桔梗 1996 F6 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画中級者になると、基礎力が身につき、作品の完成度に対する想い込みも高くなります。

 その結果、少しでも思い通りに描けない部分が出てくると、自身の技術への不満や失望が表面化するのではないでしょうか。

 「もっと上手くできるはずだったのに」、「この程度では納得できない」といった思いが強くなることで、制作を続ける意欲が急激に低下してしまうのです。

不完全な構図の計画が進行の妨げにもなる

     第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 構図や、完成イメージを曖昧にしたまま描き始めると、途中で方向性を見失いやすくなります。

 たとえば、「とりあえず主要なモチーフだけ描いて、背景は後で考える」という流れでは、画面全体のバランスが取れず、描き進める手が止まります。

 中盤以降、何を加えるべきか迷ったり、変更が重なってしまったりすることで、制作に対するモチベーションが減退します。

 この点を解消できるのは、まず本制作を始める前に、A4の紙を半分に切った大きさのエスキース(下絵)に、ボールペンで「構図分割基本線」を描きましょう。

 そこへ鉛筆で「描いては消し・描いては消し」を繰り返すことで、完成度が圧倒的に高まります。次のような構図分割基本線を描くと、画面を有効活用できます(3分割構図基本線の場合)。

 主役や準主役を⑤や⑥を中心線として配置し、地平線を⑦にすれば「大地の広さを」、⑧にすれば、空間の広がりを表現できます。そして、下に続きます画像では、モチーフ3個を使って「3角形の構図」を構成しています。

  • 黄色の線:3分割構図基本線
  • 緑色の線:3分割線
  • 青色の線:「抜け」に使うための線
  • ピンク色の線:モチーフで3角を構成する線

    ミヒカリコオロギボラのある静物 2022 F4 鉛筆画 中山眞治

 詳しくは、この記事の最終部分に、構図に関する関連記事を載せてありますので参照してください。

苦手意識からくる技術的なストレス

     第1回個展出品作品 反射 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 描いている途中で、苦手なモチーフ(手や顔、反射のあるガラスなど)に差しかかると、「このまま描き進めても失敗しそうだ」という不安が強まり、手が止まります。

 挑戦したい気持ちはあるものの、自信のなさや過去の失敗体験が足を引っ張り、「今はやめておこう」と先送りする心理が働きやすくなるのです。

 これも途中放棄の一因になります。

モチーフやテーマへの興味の薄れ

     第1回個展出品作品 静物Ⅱ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 当初は、興味を持って選んだモチーフでも、描いているうちに関心が薄れてしまうことがあります。

 特に、構成に工夫がない単調な静物や、個人的に興味が薄いテーマの場合、飽きが早く訪れるのです。

 また、感情的に引き込まれないモチーフは、描き続ける意欲そのものが湧きにくく、結果的に中断に至る可能性が高くなってしまうのでしょう。

 途中で描くのをやめてしまう背景には、精神的なプレッシャーと構成の曖昧さ、技術的な課題、さらにはモチーフに対する興味の低下といった要素が重なって存在しています。

なかやま

まずは、自身がどの傾向に陥りやすいかを分析することで、より有効な対処策を立てやすくなるのです。

小さな完成を積み重ねて達成感を得る工夫

   第1回個展出品作品 胡桃のある静物 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画を完成まで持っていくためには、「完成の達成感」を途中で何度も体験することが効果的です。

 本章では、全体を仕上げる前に部分的なゴールを設定し、小さな達成感を積み重ねることで、モチベーションを維持できることについて解説します。

画面を分割して「区切り」を設定する

     第1回個展出品作品 男と女 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 1つの作品を右半分、左半分、背景、主役といった具合に複数の領域に分け、それぞれを1つの目標として設定します。

 1エリアずつ丁寧に仕上げていくことで、全体の完成までに複数の達成感が得られ、途中で飽きることを防げるのです。

 完成形を一気に目指すよりも、小さな単位で集中する方が、心理的にも負担が軽くなります。

モチーフ単位で完成を目指す

   第1回個展出品作品 金剛力士像(吽形) 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 たとえば、人物デッサンであれば、「まずは目だけをしっかり描く」「次は髪の質感に集中する」といった具合に、モチーフ単位での完成を区切ることも効果的です。

 これにより、描写の質も上がり、途中であいまいになることが減ります。

 一区切りついたことで、「今日はここまでできた」と実感できて、次のパートへ自然に移行できます。

スケッチブックに進捗記録をつける

   第1回個展出品作品 金剛力士像(阿形) 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 日付ごとに、「今日はここを描いた」「次回はここから描く」とメモを残すと、途中から再開する際に心の準備ができます。

 また、記録を観ることで進捗が可視化され、「ここまで頑張った」という感覚が意欲を引き出してくれるのです。

 鉛筆画中級者の人にとって、自身を客観視する仕組みは制作継続の鍵となります。

「観てもらう部分」を意識する

     第1回個展出品作品 風神 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 途中でも、人に観てもらうような部分を作れると、他者の反応が制作の励みになります。

 「この髪の質感、すごいね」と言われたりすることで、続きも描きたくなる好循環が生まれるのです。

 人に観てもらう前提で仕上げる意識は、集中力の持続にもつながります。

鉛筆画を最後まで描くには、全体の完成よりも「小さな目標の達成」を意識する工夫が有効です。日常的に、取り組める目標設定を積み重ねていくことで、自然と作品の完成率が上がっていきます。

制作途中で立ち止まらないためのスケジューリング術

     第1回個展出品作品 雷神 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 制作の手が、途中で止まる大きな原因の一つは、「いつまでに何を終えるか」が不明瞭なことです。

 本章では、明確なスケジュールを立てることで、迷いを減らし、描き続けるリズムを保ちやすくなることについて解説します。

作業時間と回数の上限を決める

   第1回個展出品作品 ノートルダム寺院 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 1日1時間、または週に3回など、描く時間や頻度を予め決めておくと、取り組みやすくなれます。

 「時間があったら描こう」とするより、習慣化することで継続性が高まります。

 とくに完璧主義で、時間をかけすぎてしまう人には有効です。

7日・14日・30日ごとのマイルストーン(※)の設定

    第1回個展出品作品 サンドニ運河 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 スケジュールに中間目標を設定することで、ペースを客観的に管理できます。

 「1週間後には背景に着手」「3週間で仕上げ」といった目標を具体的に書き出し、視覚化しましょう。

 モチベーションの維持と、仕上げの明確化に役立ちます。

※ マイルストーンは、ビジネスやプロジェクト管理において、重要な中間目標や節目を指す言葉です。もともとは、道しるべとなる石碑を意味する言葉で、そこから転じて、目標達成までの重要な段階や出来事を表します。

カレンダーやToDo管理ツールの活用

    第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 スマホアプリや紙のカレンダーに、「次の描画日」や「確認ポイント」などを記録しておくと、頭の中だけで管理するより実行率が高くなります。

 視覚的なチェック機能は、制作の進行度を確認しやすく、未完で終わる確率を下げてくれます。

 制作を完了させるには、感覚だけに頼るのではなく、明確なスケジューリングが重要です。

なかやま

時間とタスクの可視化は、中断を防ぎ完成へと導くための強力な武器になります。

気分の波を味方につける描画タイミングの見極め方と根本的な考え方

   第1回個展出品作品 昼下がりの桟橋 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 作品を制作する気分になれないときに、無理に描いても成果は出にくく、結果的に途中放棄につながるのです。

 本章では、自身の感情や集中力の波を理解し、適切なタイミングによって制作することで、描き切る力を最大限に引き出せる方法について解説します。

作品を制作する際の、根本的で重要な要因とは「楽しんで描くこと」だった!

     第3回個展出品作品 椿Ⅰ 2024 SM 鉛筆画 中山眞治

 筆者が心がけている、制作するうえで重要な点をお伝えしておきます。それは、楽しんで描けるように自分自身を調整することです。

 具体的には、「疲れていたり」「イライラしていたり」「時間的な余裕がない」時には決して描かないということにつきます。気分が乗らなかったり、疲れている時には、サウナにでも入って軽く飲んで早く寝ましょう。^^

 前の晩に、軽くストレッチやウオーキングをしたり、休日の前であれば少しアルコールを飲んで、早めに眠れてすっきりした状態で、翌日「制作画面に向かう」ことが前提です。そして、「落ち着ける静かな曲」も必要ですね。

 平日であれば、帰宅途中で軽く食事をして帰り、入浴を済ませた後のさっぱりした気分で「制作画面に向かう」ことで集中力も増します。

 そして、あなたが鉛筆画中級者の人であれば、そこそこ制作枚数も増えて来ているでしょうから、構図の研究も始めましょう。「構図は面倒なもの」と思い込んでいるとしたら、そこから変えていく必要があります。

 筆者が、制作を途中でやめてしまいたと思ったときは、構図を研究していませんでした。描いていて、「まとまりがなく、見映えのしない、いつも似たような雰囲気になってしまう」と感じたものです。

 そこで、構図は簡単なものがたくさんありますので、あなたは構図のたくさん載っている本を一冊購入して、一番簡単な構図から取り扱うことにしましょう。

 その取り組んだ一つの構図で、静物・人物・動物・風景の全部に対応できますので、おのずとまとまりのある作品にも仕上がります。

 そして、一通りの制作が終わったところで、次に簡単な構図で、改めて静物・人物・動物・風景に取り組むのです。

 この場合の制作上のテクニックとして、「デフォルメ」を覚えておきましょう。

 それは、仮に風景の作品を制作するとした場合には、実際の風景には電線や電柱があっても、それらを削除して、「より見映えのする風景」にしましょう。これは、どのプロ画家も当たり前に行っていることなのです。

 何が言いたいのかというと、構図を扱う上で、各種構図分割線上やその交点などを有効活用して、モチーフの主役や準主役を配置していきますが、自然の風景が「都合よく」それらの線上や交点に納まることなどありえません。

 そこで、構図分割基本線や交点などへは、「あなたの都合の良いように」配置してよいのです。デフォルメは、削除・修整・拡大・縮小・つけたし・合成など何でもありです。

 このように、自身の都合の良い配置を前提にて、簡単な構図に取り組めれば、楽しくて仕方がなくなるはずです。

 次は、どんなモチーフをどのように組み合わせようかと、静物・人物・動物・風景の全部に思いをはせると、楽しくて夜も眠れないくらいになれます。^^

 前述していますが、簡単な構図についての関連記事を、この記事の最終部分に掲載しておきますので、それらを参考にすれば、当面の制作ができますので参照してください。

一番集中できる時間帯を知る

   第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅠ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 朝型・夜型など、自身がもっとも集中しやすい時間帯を把握することは重要です。

 短時間でも、集中して制作ができる時間に取り組むことで、モチベーションが自然と高まり、放置のリスクが減少します。

気分が沈んでいるきには無理に描かない

   第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅡ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 気分が乗らないときに、「描かなきゃ」と無理をすると作業が義務になり、楽しかったはずの鉛筆画が苦痛に変わります。ココが一番いけないところではないでしょうか。

 そうしたときには、資料集めや構図の見直しなど、間接的な作業に切り替えることで、リズムを保てます。

気分が乗っているときは長めに描く

   第1回個展出品作品 ブラザーウルフⅢ 1998 F10 鉛筆画 中山眞治

 逆に、気分が乗って集中しているときは、なるべく多めに時間を確保し、一気に進めておくことが大切です。

 波があるからこそ、調子のいい時を見逃さず活かすことが、完成への大きな追い風となります。

 筆者は、今までで一番気分が乗っていた時には、5日間で3枚のF10を描いたことがあります。今は、体力的にも精神的にも無理ですけどね。^^

感情の記録を活用する

     第1回個展出品作品 ノスリ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 スケッチブックやノートに、制作時の気分を一言メモしておくことで、自身の調子の傾向が観えるようになります。

 「この日は集中できた」「この時はストレスが多かった」など、客観的な分析は長期的な制作力の向上につながるのです。

自身の感情の波を理解し、それに逆らわず合わせることで、制作の継続性は格段に高まります。鉛筆画中級者の人ほど、技術ではなく感情との向き合い方が完成率を左右します。

描き直しや修整を恐れずに前に進む思考法

     第1回個展出品作品 ペンギン 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画の制作で、途中で止まる理由のひとつに、「失敗が怖い」「やり直しが面倒」といった感情があります。

 本章では、特に中盤でバランスが崩れたと感じたとき、それを修整するか放置するかでその作品の前途が決まります。

描き直しは「後退」ではなく「進化」と理解する

   第1回個展出品作品 ノーマ・ジーン 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 修整作業は、失敗を戻す行為ではなく、作品をより良くするためのプロセスです。

 失敗に気づいた段階で立ち止まり、冷静に修整を入れられるのは、むしろ中級者以上の証拠でもあります。

 描き直しを恐れず、変化を楽しむ意識が大切です。

 筆者は、ほぼ出来上がったモチーフの輪郭取りを、何となく気に入らなくて全部消してやり直したことが何度もあります。気に入らないまま取り組みを進めても、決して良い作品にはならないからです。

小さな修整を積極的に取り入れる

      第1回個展出品作品 人物 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 間違いが大きくなる前に、小さなうちに直す癖をつけると、途中で作品が破綻する可能性が減ります。

 また、細かく修整を繰り返すことで、「ちゃんと手を入れている」という実感が、制作のリズムを保つ助けにもなります。

過去の作品と比較しても意味が少ない

     第1回個展出品作品 少年 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 描き直しのときに、「前のほうがよかったかも」と思い悩むこともあるでしょうが、常に今の視点で見直すことが重要です。

 制作は変化の連続であり、常に「より良くしよう」と手を加える姿勢があってこそ、完成度が高まるのです。

 筆者は、苦しんで制作し直した作品の方が、完成度の高い作品になったことが何度もあります。

修整に疲れたら「別視点」から観る

     第1回個展出品作品 兄弟 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 どう直せばよいかわからないときは、鏡で左右反転させたり、上下逆さに観てみたり、画像化することで、客観的な視点を得られます。

 それにより新しい気づきが生まれ、修整の方向性も観えてきます。

なかやま

やり直しや修整は制作の敵ではなく、むしろ味方となる存在です。思考を柔軟に保ち、作品と対話を続ける姿勢こそが、最後まで描き切る力となります。

練習課題(3個)

     第1回個展出品作品 人物Ⅰ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 本章では、あなたが実際に手を動かして練習できる課題を用意しました。鉛筆画は、練習すればするほど、必ず上達できますので是非取り組んでみてください。

練習課題①:小さなモチーフで完成を体験する一日デッサン

 モチーフとして、リンゴ・コップ・小さな花瓶など、比較的単純で短時間で仕上げやすいものを選びます。

 制限時間を90分と決め、その中で必ず全体に陰影を入れ、作品としてまとめることを目標としましょう。

 途中で飽きない工夫として、最初に全体の大まかなトーンを置き、最後に細部を整える流れで進めます。この課題は、達成感を積み重ねる感覚を養うトレーニングです。

練習課題②:画面を4分割し、部分的に完成させる段階練習

 A4サイズの紙に、縦横2本ずつ線を描いて画面を4分割します。それぞれの領域を別々の時間に、1ブロックずつ完成させる意識で描いていきます。

 例えば1日目は左上、2日目は右上といった感じです。モチーフは1つで、例えばガラス瓶や布のある静物を選ぶとよいでしょう。

 各区画で達成感を味わいながら、全体のバランスも意識する力が鍛えられます。

 そこで、空きびん・空き缶・人や動物の毛並を描く方法として、筆者は次のような描き方を多くしています。

 まず、モチーフの輪郭を取り、一旦描いて、休憩をはさんで、離れたところからも観て、これでよいとなりましたら、その輪郭線の中をHB等の鉛筆を軽く持ち、優しいタッチで埋めましょう。

 そこへ、練り消しゴムを練って、先端を鋭いプラスドライバーやマイナスドライバーの形状にして、実物の光っているところを、制作画面上に「光を描く(拭き取る)」のです。

 その後は、それぞれに必要となるトーンを施せば完成へと向かえます。また、丸い物体へのトーンの入れ方では、その丸い形に応じた曲線でトーンを入れることが必要です。

練習課題③:スケジュール表付き長期デッサン計画

 制作対象を、「複雑な静物セット」や「風景スケッチ」にして、3週間の計画を立てます。

 週単位で、どの部分まで進めるか、どの時間に取り組むかをカレンダーやノートに記載して、進捗を確認できるようにしましょう。

 作業ごとに「達成できた点」「改善すべき点」を一言メモしていきます。この課題は、継続力と自己管理力を高め、途中放棄を防ぐ実践的トレーニングになります。

 描こうとしているモチーフをスマホなどで撮影し、その画像の右側に次のような表を作って貼っておきましょう。終わったところをチェックしておけば、制作の進捗が一目瞭然です。

まとめ

      第1回個展出品作品 人物Ⅳ 1997 F10 鉛筆画 

 鉛筆画を描く中で、途中で手が止まってしまい完成までたどり着かない経験は、多くの中級者の人が直面する壁です。

 しかし、その背景にある原因を知り、適切な工夫を取り入れることで、描き切る力を育むことができます。

 以下に、最後まで仕上げるための7つの具体的な工夫を整理してまとめました。

  • ① 原因を明確にして対処の土台を作る
     途中でやめたくなる原因は、完璧主義、構図の曖昧さ、技術的な不安、モチーフへの飽きなどが複雑に絡み合っています。まずは、自身がどの傾向にあるかを冷静に分析し、それに応じた対策を立てることが第一歩です。
  • ② 小さな完成を重ねて達成感を得る
     画面を分割したり、モチーフ単位で仕上げるなど、部分的な完成を意識することで、描き続けるモチベーションが持続します。進捗の観える化と達成体験の積み重ねが、継続の力になります。
  • ③ スケジュールを明確にして制作の流れを作る
     日程を決めてマイルストーンを設定し、ToDo管理を活用することで、迷いを減らし中断を防げます。「時間がある時に描く」から、「習慣化して描く」へ意識を切り替えることが大切です。
  • ④ 自身の気分と集中力の波を把握する
     調子が良い時には集中して一気に進め、気分が乗らない時は間接作業や構想練りに切り替えると無理なく続けられます。制作のリズムは、精神状態に寄り添うことで安定します。楽しんで描けるように、自身の調整も大切です。
  • ⑤ 描き直しを恐れず柔軟に修整する
     途中での修整ややり直しは、作品を良くするための必須工程です。小さな間違いを早めに直すことで破綻を防ぎ、描くこと自体への楽しさも増します。
  • ⑥ モチーフ選びに興味と意味を持たせる
     飽きにくいテーマや、自身の特に気に入ったモチーフを選ぶことで、最後まで関心を持続できます。興味を強く持ったモチーフは、自然と描きたいという意欲を引き出してくれます。
  • ⑦ 観てもらうことを前提に一部を仕上げる
     完成途中でも、観てもらうような部分を意識して描くと、第三者の反応が次の制作の推進力になります。誰かに観てもらうという目標が、手を止めずにいられる工夫にもなるのです。

 これらの工夫を、日常的な制作の中に組み込むことで、途中放棄を防ぎ、鉛筆画を確実に完成へと導くことができます。

 鉛筆画の制作を習慣として取り入れ、自信をもって仕上げまで描き切る力を身につけましょう。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。