こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
筆者近影 作品「人物Ⅶ」と共に
さて、鉛筆デッサンで「鼻」を描くのは、初心者の人にとって難しいポイントの一つでしょう。しかし、基本的な構造や光と影の扱いを理解できれば、リアルな鼻を描くことも可能になります。
この記事では、鼻のデッサンに必要な基本ステップを解説し、初心者の人が知るべきポイントをご紹介します。
形の取り方、陰影のつけ方、立体感を出すコツなどをご説明しますので、鉛筆だけで自然な表現ができるようになれます。あなたのデッサンスキルをレベルアップさせるために、ぜひ参考にしてください。
それでは、早速見ていきましょう!
鼻の構造を理解する!デッサンの基本知識
鼻のデッサンを正確に描くためには、まずその構造を理解することが重要です。鼻は単なる三角形ではなく、骨と軟骨、筋肉の組み合わせによって形作られています。
デッサンにおいては、これらの基本的な構造を意識しながら形を捉えることで、よりリアルな表現が可能になります。
本章では、鉛筆デッサンに適した方法で鼻の構造を分析し、具体的な描き方を解説します。
鼻の基本構造を把握する
出典画像:コトバンク
鼻は大きく分けて「鼻根」「鼻梁」「鼻尖」「鼻翼」の4つの部分で構成されています。
- 鼻根: 眉間のすぐ下に位置し、顔の骨格とつながる部分。影の付き方が重要。
- 鼻梁(鼻筋): 鼻の中央を縦に走るラインで、光が当たる部分が多いためハイライトの処理がポイント。
- 鼻尖(鼻先): 鼻の先端で、立体感を出すために影の強弱を調整することが必要。
- 鼻翼(小鼻): 鼻の両側に広がる部分で、曲線の描写が求められる。陰影を柔らかく入れるのがコツ。
このように細かく分解して考えることで、形を正しく捉えることができます。
立体的な鼻を描くためのガイドライン
デッサンを始める際には、まずシンプルな形を使ってガイドラインを描くのが有効です。
- 基本形を捉える – 鼻を円柱と球体で構成するように考え、形を大雑把に捉える。
- 軸を意識する – 顔の縦の中心線に対して鼻の位置を正確に配置し、左右のバランスを整える。
- 奥行きを考える – 斜めから見たときのパースペクティブ(遠近法)も意識して、形の歪みを防ぐ。
これらのガイドラインを意識することで、正確なプロポーション(比率)の鼻を描くことができます。
尚、顔全体の中で鼻の与える印象はかなり大きいものがありますので、顔全体の輪郭と鼻を含む各部の描き込みを終えられましたら、一旦休憩をはさみましょう。そして、少し離れたところからも全体を確認してみると、修整点が見つかるはずです。
筆者も、そのようにして必ず画面の「点検」を行っています。もしも、その一手間を惜しんで描き進んでしまうと、修整が困難な局面に出くわしてしまったり、仮に修整できても「画面が汚れてしまう」ことにもなりかねないからです。
陰影を使って鼻の構造を強調する
鼻の形を明確に表現するためには、光と影を適切に使い分けることが重要です。
- 光源を確認及び意識して、光の当たる部分と影(位置・角度・長さ・濃さ)になる部分を明確に配置する。
- 鼻梁にはハイライトを残し、鼻翼や鼻孔周辺にはグラデーション(階調)で柔らかい影を入れる。
- 強い影と弱い影を使い分けることで、より立体的な表現が可能になる。
特にモノトーンの鉛筆デッサンでは、明暗の差を適切にコントロールすることで、よりリアルな鼻を描くことができます。
第1回個展出品作品 マリリン・モンロー 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
シンプルな形から始める!鼻の輪郭を捉えるコツ
鼻のデッサンをリアルに描くためには、細かいディテール(詳細)を描く前に、シンプルな大雑把な形で捉えることが重要です。特に初心者の人の場合、いきなり複雑な形を描こうとするとバランスが崩れがちです。
まずは大雑把に基本的な形で捉えて、大きな輪郭を適切に掴むことから始めましょう。本章では、鉛筆デッサンにおいて鼻の輪郭をシンプルな形で捉えるコツを解説します。
基本の形を使って鼻をシンプルに捉える
鼻は複雑に見えますが、基本的な形で捉えると描きやすくなります。
- 正面の場合: 鼻を「三角形」または「台形」に捉えて、全体のバランスを取る。
- 横顔の場合: 鼻を「三角形」と「楕円」の組み合わせとして捉え、角度を意識する。
- 斜めの角度: 鼻の正面と側面を分けて考え、「台形+楕円」で形を捉える(上の画像はこれですね)。
このように、最初は単純な形で構造を捉え、細部を描き加えることでリアルなデッサンにつなげることができます。
輪郭線の強弱を意識して描く
モノトーンの鉛筆デッサンでは、輪郭の線をどのように扱うかが重要です。
- 鼻の「外側の輪郭」はぼかすように描き、強い線を使わない。はっきりと輪郭を描きすぎると、「取って付けたような」違和感が強調されてしまいますので、注意しましょう。
- 鼻の「内側(鼻孔や影の部分)」は濃い鉛筆で細かいラインを入れて立体感を出す。
- 鼻の付け根や側面の境界は、強調しすぎると不自然になるため、グラデーションで柔らかく仕上げる。
特に鼻は顔の中心にあるため、輪郭線の強弱が仕上がりに大きく影響します。
プロポーション(比率)と位置関係を正しく捉える
鼻の位置やサイズを間違えると、顔全体のバランスが崩れてしまいます。
- 顔の中心線を決める: まず顔の中心線上に鼻の位置を設定し、左右対称になるよう調整する。
- 目と鼻の距離を意識する: 一般的に、目と目の間隔とほぼ同じ幅が鼻の横幅になる。
- 口との距離も確認する: 鼻の下から口までの距離を測り、適切な配置にする。
第1回個展出品作品 人物 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
このように、基本の形や輪郭の強弱をコントロールしながらデッサンすることで、シンプルながらもリアルな鼻を描くことができます。
光と影で立体感を出す!陰影のつけ方のポイント
鉛筆デッサンで鼻をリアルに描くためには、光と影のバランスを適切に表現することが重要です。鼻は顔の中でも立体的な特徴が強い部分のため、陰影の付け方によってリアリティー(現実性)が大きく変わります。
モノトーンの鉛筆デッサンでは、光の方向を意識しながら陰影を描くことで、自然な奥行きを表現できます。本章では、鼻の陰影を描く際のポイントを解説します。
光源を意識した陰影の配置
陰影を適切に描くためには、まず光源の位置を明確にすることが大切です。
- 光源が上からの場合:鼻梁(鼻の中心部分)が最も明るくなり、鼻翼や鼻孔周辺が影になる。
- 光源が横からの場合:片側の鼻翼が暗くなり、鼻の立体感がより強調される。
- 光源が斜め上からの場合:鼻の影が顔に落ち、全体の陰影が深くなるため、グラデーション(階調)を意識する。
光の方向によって影の位置や濃さが変わるため、最初に光源を明確にして、それに基づいて陰影を配置することがポイントです。
グラデーションで自然な陰影を作る
モノトーンの鉛筆デッサンでは、濃淡の差を活かしたグラデーション(階調)が立体感を作ります。
- 薄い影から描き始める:最初はHBやBの鉛筆で薄い影を入れ、少しずつ濃くする。
- 小さくたたんだティッシュペーパーや綿棒で擦ってなじませる:不自然な線を避けるため、影の境界をぼかしながら馴染ませる。
- 影の濃淡をコントロールする:鼻翼や鼻孔の周辺は影を濃く、鼻梁は明るさを残すことで立体感を強調する。
このようにグラデーションを活かすことで、陰影が滑らかになり、自然な立体感を生み出せます。
影の境界をぼかして柔らかさを出す
鼻の陰影は、エッジ(陰影の縁)の硬さによって印象が大きく変わります。
- 柔らかい影を作る:鼻の輪郭付近は急激に暗くせず、ぼかしながら影を入れる。
- 鼻孔の影を強調しすぎない:鼻の穴を強い線で囲むと不自然になりやすいため、明るめのトーンから始めて、全体のバランスを観ながら徐々に濃くする。
- 鼻梁の影を直線的にしない:鼻梁の影はゆるやかなカーブを意識して描くことで、より自然な立体感が出る。
影の境界を滑らかに仕上げることで、鼻の形が柔らかく自然に見えるようになります。
このように、光源を意識し、グラデーションを使いながら影を丁寧に描くことで、鉛筆デッサンでもリアルな鼻の立体感を表現することができます。
リアルな鼻を描くための仕上げテクニック
鉛筆デッサンでリアルな鼻を描くためには、最終的な仕上げの段階がとても重要です。形や陰影を整えるだけでなく、細部の描写や質感を調整することで、より自然で立体的な表現が可能になります。
特にモノトーンの鉛筆画では、細かなコントラスト(明暗差)の調整や微妙な影の描き込みが仕上がりを大きく左右します。本章では、リアルな鼻を描くための仕上げテクニックを解説します。
ハイライトを入れて質感を引き立てる
鼻のリアルさを強調するためには、適切なハイライトを加えることが大切です。
- 鼻梁の光を強調する:鼻梁に最も光が当たる部分を残し、周囲を暗くすることで自然な立体感が生まれる。
- 鼻先のハイライトをぼかす:鼻の先端には強い光が当たりやすいため、練り消しゴムを使って微調整しながら光を表現する。
- 光の反射を考慮する:鼻の側面にもほんのわずかに明るい部分を残し、質感に深みを出す。
ハイライトを効果的に使うことで、鉛筆だけでもリアルな質感を演出できます。
微細な影を追加してリアルさを高める
仕上げの段階では、全体のバランスを見ながら微細な影を調整し、より立体的な印象を強めます。
- 鼻孔周辺の影をなじませる:鼻孔の輪郭をくっきり描くのではなく、影として描写することで自然に見える。
- 鼻と頬のつながりをぼかす:鼻の両側の影を適度に広げ、頬との境界を自然に溶け込ませることで、リアルな雰囲気を作る。この場合には、ティッシュペーパーを小さくたたんで擦ったり、綿棒や指で擦ることで調整できる。
- グラデーションを細かく調整する:仕上げ段階では、影の濃淡をより繊細にコントロールし、違和感のない仕上がりにする。
この微細な影の調整を丁寧に行うことで、絵全体のリアリティー(現実性)が大きく向上します。
最後のチェックと仕上げの工夫
完成直前の仕上げでは、全体のバランスを見直し、最終調整を加えます。
- 左右対称を確認する:鼻は中心に位置するため、左右のバランスが崩れていないかチェックする。
- 余分な線や汚れを取り除く:綿棒や練り消しゴムを使い、不要な線や濃すぎる影を調整する。
- 少し離れて確認する:近距離で描いていると気づかないバランスのズレを防ぐため、遠目から全体を見る習慣をつける。
この仕上げの工夫によって、より完成度の高いリアルな鼻を描くことができます。
第1回個展出品作品 人物Ⅰ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
以上のテクニックを活用すれば、鉛筆デッサンでもリアルな鼻の表現が可能になります。
初心者がやりがちな誤りとその修整方法
鼻のデッサンはシンプルな形に見えても、実際に描いてみるとバランスが崩れたり、立体感が 出なかったりすることがあります。特に初心者の人は、陰影や形の取り方でいくつかの共通した誤りをしがちです。
しかし、これらの誤りを理解し、適切に修整する方法を学ぶことで、リアルな鼻を描けるようになれます。本章では、初心者の人がやりがちな鼻のデッサンの誤りとその修整方法について解説します。
輪郭線を強く描きすぎる誤りとその修整
初心者の人がよくやる誤りの一つが、鼻の輪郭をはっきりとした線で描いてしまうことです。
- 問題点:鼻は顔の中心にあり、実際には明確な輪郭線がないため、強い線を入れると不自然になる。
- 修整方法:最初の輪郭線は薄く描き、形が決まった時点で周囲の影を少しずつ濃くして輪郭を自然に浮き上がらせる。
- 具体的なコツ:特に鼻の付け根や小鼻の部分は、グラデーションを使って輪郭をぼかしながら描くと、より自然な仕上がりになる。
陰影のコントラストが弱すぎるミスとその修正
リアルな鼻を描くには、陰影のコントラスト(明暗差)は重要ですが、初心者の人は影を薄く描きすぎて立体感が出ないことが多いものです。
- 問題点:全体的に影が薄すぎると、のっぺりとした印象になり、鼻が顔に馴染まず浮いてしまう。
- 修整方法:光源を確認及び意識して、最も暗くなる部分(鼻孔や鼻翼の下側)をしっかりと濃く描く。
- 具体的なコツ:HBやBの鉛筆で最初に薄く影を入れた後、4Bや6Bを使って暗い部分を重ねると、自然な立体感が生まれる。
左右対称を意識せずに描いてしまう誤りとその修整
鼻の形が左右対称になっていないと、顔全体のバランスが崩れてしまいます。
- 問題点:片方の鼻翼が大きくなったり、小鼻の高さが揃っていなかったりすることがある。
- 修整方法:描き始めには顔に縦の中心線を描き、左右のバランスをこまめに確認しながら描き進む。
- 具体的なコツ:途中で鏡に映して反転させたり、デッサンを逆さにしてバランスを見ることで、歪みに気づきやすくなる。
第1回個展出品作品 人物Ⅳ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
このように、初心者の人がやりがちな誤りを意識し、適切に修整することで、鉛筆デッサンのクオリティーを向上させることができます。
まとめ
鉛筆デッサンでリアルな鼻を描くには、形の捉え方、陰影の使い方、細部の仕上げを意識することが重要です。
初心者の人が陥りやすい誤りを回避し、プロのような仕上がりを目指すためのポイントを以下にまとめました。
基本構造を理解する
- 鼻は「鼻根」「鼻梁」「鼻尖」「鼻翼」の4つの要素で構成される
- シンプルな形(三角形や円)で大雑把に捉えて描き始める
- 顔の縦の中心線を意識し、左右のバランスを整える
輪郭線を描く際の注意点
- 輪郭線を強く描きすぎず、陰影で形を表現する
- 鼻の付け根や小鼻はグラデーションでぼかしながら描く
- 左右対称を意識し、中心線を基準に形を調整する
陰影のつけ方で立体感を出す
- 光源を決め、それに合わせて影の位置を調整する
- 鼻梁にはハイライトを残し、鼻翼や鼻孔周辺を濃く描く
- 影の境界をぼかして自然なグラデーションを作る
仕上げのテクニック
- ハイライトを加えてリアルな質感を演出する
- 余分な線や汚れを取り除き、作品全体のバランスを整える
- 仕上げの段階で一歩引いて見直し、全体の統一感を確認する
初心者がやりがちな誤りと修整方法
- 輪郭線を強く描きすぎる → 薄い線で描き、影を使って自然に仕上げる
- 陰影のコントラスト(明暗差)が弱い → 鼻孔や鼻翼の影を濃くし、メリハリをつける
- 左右対称にならない → 中心線を意識し、途中で鏡などを使って反転させたり、少し離れて眺めたりしながら確認する
鉛筆デッサンで鼻を描く際は、これらのポイントを意識しながら練習することで、リアルな表現が可能になります。モノトーンの鉛筆ならではの美しい陰影を活かし、より魅力的な作品に仕上げていきましょう。
ではまた!あなたの未来を応援しています。
このように鼻の構造を正しく理解し、シンプルな形から描き進めることで、初心者の人でもリアルな鼻を表現することができるでしょう。