こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
筆者近影 作品「黄昏」と共に
さて、鉛筆デッサンを始めたいけれど、何を描けば良いかわからないという人も多いのではないでしょうか?実は、デッサンのモチーフは、日常の中のあなたの身の回りにたくさん存在しています。
特別な道具や高価なアイテムは必要ありません。身の回りにある何気ないものこそ、描く楽しさとリアルな表現力を高める鍵になります。
この記事では、初心者の人から上級者の人までが楽しめる、シンプルで描きやすいモチーフを10個ご紹介します。あなたのデッサン技術を磨きながら、身近なものの美しさを再発見してみませんか?
それでは、早速見ていきましょう!
デッサン初心者におすすめ!シンプルなモチーフの選び方
第1回個展出品作品 男と女 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
鉛筆デッサンを始めたばかりの初心者の人にとって、モチーフ選びは最初のハードルです。複雑なものを選んでしまうと描ききれずに挫折することもあります。^^
そこで、初心者の人にオススメなのが「シンプルなモチーフ」です。シンプルでありながら、形や陰影を学ぶのに適したモチーフを選ぶことで、楽しく技術を磨くことができます。
本章では、鉛筆デッサンで扱いやすいモチーフ選びのポイントを紹介します。
シンプルな形状のモチーフを選ぶ
初心者の人には、単純な形状を持つモチーフがオススメです。たとえば、タマネギ及び白い卵や球体と立方体の箱などが良い例です。
これらは形を認識しやすく、光と影の位置を理解する練習に最適です。また、鉛筆による濃淡の表現を手軽に体験できるので、完成した作品に達成感を得られるでしょう。
質感を楽しめるモチーフに挑戦
デッサンには質感の表現も重要です。初心者のうちから木目のあるスプーンや布のしわなど、比較的簡単な質感のあるモチーフを取り入れると、表現力を高める練習になります。
シンプルな形状と異なる質感を組み合わせることで、鉛筆デッサンの幅が広がります。
出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏
モチーフの配置と光の角度を工夫する
モチーフを選びましたら、その配置や光の当て方にも工夫を加えましょう。光源を一つに絞り、影をしっかり現すことで、立体感を表現する練習ができます。
例えば、窓辺の自然光を利用して、影が柔らかく出るように配置すると、初心者の人でも自然な仕上がりを目指せます。
あるいは、あなたの自宅の部屋の明かりを消して、デスクの上の自在に動く照明だけをつけて、モチーフへ斜め上から光を当てると光と影を観察しやすく、且、制作しやすくなります。
デッサンが初心者の人は、シンプルな形状、質感のあるモチーフ、そして適切な光の設定を意識することで、スムーズに鉛筆デッサンを楽しむことができます。
身近な静物モチーフ:果物や花瓶の描き方のポイント
第1回個展出品作品 胡桃のある静物 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
静物デッサンは、初心者の人から上級者の人まで楽しめる鉛筆デッサンの基本です。
特に、果物や花瓶といったシンプルながらも奥深いモチーフは、形や質感、陰影の表現を学ぶのに最適です。
本章では、モノトーンの鉛筆デッサンにおいて、果物や花瓶をリアルに描くためのポイントを解説します。
果物の立体感を表現する方法
果物を描く際は、その丸みや独特の形状を正確に捉えることが重要です。まず、形を大まかに捉え、鉛筆の軽いタッチで輪郭を描きます。次に、光源を意識して、明るい部分と影の濃淡を丁寧に描き分けましょう。
リンゴやオレンジなど、表面にわずかな質感がある果物の場合、短い線や点を加えてリアルさを演出できます。影を描く際には、柔らかいぼかしを活用すると自然な立体感が生まれます。次の筆者の作品を参照してください。
林檎 2018 F3 鉛筆画 中山眞治
花瓶の素材感を引き出すコツ
花瓶は、その素材や形状によって描き方が異なります。
ガラス製の花瓶の場合、透明感を出すためにも光の反射や屈折を観察しましょう。鉛筆の細かい線を使って透明な部分を描き、反射光の強い部分を白く残すことでリアルな質感が生まれます。
第2回個展出品作品 コスモス 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
一方、陶器の花瓶では、表面の滑らかさを意識し、均一な濃淡のグラデーションを描くことがポイントです。模様がある場合は、全体の形状を損なわない範囲で模様のディテールを追加してください。
椿Ⅰ 2024 SM 鉛筆画 中山眞治
尚、模様や柄がある場合には、その部分を細密描写してしまうと、観てくださる人の視線をその部分へ引きつけてしまうので、ほどほどの描写にとどめて、全体に視線を向けてもらえるような配慮を心がけましょう。
配置と構図で魅力を引き出す
花瓶及び野菜や果物の魅力を最大限に引き出すには、配置と構図(※)が大切です。複数の果物を組み合わせる場合には、大きさや形が異なるものを選び、高さや位置を変えて配置すると動きが生まれます。
第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
上の作品では、黒いB4サイズの「下敷き」にそれぞれのモチーフを載せて、影までも細密に描いたうえで、影にはHBのトーンを均一に入れて実像を引き立てました。
花瓶を中心に据える場合、片側に果物を置いてバランスを取ると調和の取れた構図になります。また、光源を一つに固定し、明暗のコントラスト(明暗差)を強調することで、作品全体のリアリティーが向上します。
白椿 2024 SM 鉛筆画 中山眞治
※構図については、この記事の最後のところに関連記事を掲載しておきましたので、関心のある人は参照してください。
野菜及び果物や花瓶は、形、質感、光と影の表現を学ぶのに理想的な静物モチーフです。身近にあるこれらのアイテムを題材に、モノトーンの鉛筆デッサンで技術を磨きながら、独自の魅力的な作品を生み出してください。
日常のアイテムを活かす!鉛筆デッサンに最適な小物集
第1回個展出品作品 デコイのある静物 1998 鉛筆画 中山眞治
鉛筆デッサンの魅力は、特別な道具や高価なモチーフがなくても、日常にあるものから素晴らしい作品を生み出せる点にあります。
身の回りのアイテムを観察し、その形や質感、光と影の特徴を活かすことで、リアルで独自の表現が可能になります。
本章では、鉛筆デッサンに最適な日常アイテムをピックアップし、それぞれの描き方のポイントを解説します。
文房具をモチーフにする
鉛筆、消しゴム、シャープペンなどの文房具は、シンプルで描きやすいモチーフです。それぞれの形状や光沢感を観察しながら、リアルな描写を目指しましょう。
たとえば、鉛筆の木目やシャープペンの金属部分は、鉛筆の濃淡を使い分けることで質感を再現できます。
配置を工夫し、複数の文房具を組み合わせて立体感を強調すると、さらに魅力的な作品に仕上がります。次の筆者の作品のように「目玉クリップ」や「鉛筆たて」でさえモチーフになります。
第1回個展出品作品 反射 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
台所用品の質感を活かす
キッチンにあるスプーン、フォーク、コップなどの台所用品も、鉛筆デッサンに適したモチーフです。
金属製のスプーンは光の反射や陰影がわかりやすく、質感の表現を練習するのに最適です。次の筆者の作品を参照してください。ヤカンにフォーク・ナイフ・スプーン・マグカップ・フライパンの柄などの映り込みも入れてリアリティーを強調しています。
第1回個展出品作品 静物Ⅰ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治
一方、陶器製のコップやガラス瓶では、曲面や透明感の表現に挑戦できます。光源の位置を調整し、影を意識しながら描くことで、作品全体のリアリティーが向上します。
第1回個展出品作品 家族の肖像 1997 鉛筆画 中山眞治
ファッション小物で個性を出す
帽子、メガネ、時計、バッグといったファッション小物は、形や質感が多様で描き甲斐のあるモチーフです。たとえば、時計の文字盤や金属部分は細部にこだわることでリアルさが引き立ちます。次の筆者の作品を参照してください。
第1回個展出品作品 休日 1998 F10 鉛筆画 中山眞治
メガネの透明なレンズやバッグの布地の質感を描く際は、光と影のグラデーションに注意すると効果的です。これらの小物を使うことで、日常の中にアートの可能性を広げることができます。
身近な日常アイテムを活用した鉛筆デッサンは、シンプルでありながらも奥深い表現を楽しむ絶好の機会です。
それぞれのアイテムが持つ独自の特徴を捉え、光と影、質感を活かしたデッサンを通じて、技術を磨いてください。
シンプルだけど奥深い!風景デッサンに使えるモチーフ例
坂のある風景Ⅰ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治
風景デッサンは、鉛筆だけで「広がる世界を表現」する醍醐味があります。特にシンプルなモチーフを選ぶことで、初心者の人でも取り組みやすく、描くほどに奥深さを実感できるでしょう。
本章では、モノトーンの鉛筆デッサンを前提に、風景デッサンで使えるオススメのモチーフと、それを描く際のポイントを紹介します。
公園のベンチや樹木
公園は風景デッサンの宝庫です。ベンチや樹木は、形が比較的シンプルでありながら、奥行きや陰影の表現を学ぶのに最適なモチーフです。次の筆者の作品を参照してください。
フクロウのいる風景 2019 F1 鉛筆画 中山眞治
ベンチを描く際には、パースペクティブ(遠近法)を意識し、正確なラインを描くことで立体感が生まれます。また、樹木を描く際には、幹の質感や枝葉の濃淡を表現し、自然な雰囲気を演出しましょう。
街角のシンプルな建物
街角の建物や小さな家も、風景デッサンには欠かせないモチーフです。窓やドアといった直線的な要素は描きやすく、構図を整えやすい特徴があります。
さらに、建物の影や壁面の質感を鉛筆の濃淡で描き分けることで、リアルさを引き立てられます。初心者の人でも、屋根や壁のラインを揃えることで簡単にまとまりのある作品を仕上げられるでしょう。次の筆者の作品を参照してください。
坂のある風景Ⅱ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治
この作品では、パースペクティブ(遠近法)を用いながら、道路の突き当りのラインを画面の縦の√2の位置に設定してあります。こんな風にも構図は使えます。^^
因みに、√2の構図の寸法の出し方は、画面サイズ÷1.414で得られた寸法を作品の例であれば、下から測って設定しているということです。それ以外にも、上から測って設定することもできますし、画面の左右にもその分割点を見出すことができます。
構図の活用では、それらの分割線や、画面の縦横の2分割線と画面左右からの対角線なども上手に活用することで、あなたの強調したい主役のモチーフや強調したい部分をまとめることができます。
水面や橋のある景色
湖や川などの水辺の景色も、風景デッサンの魅力的なモチーフです。水面の反射や波紋は鉛筆の線で繊細に表現でき、描く技術を磨く絶好の機会となります。
第1回個展出品作品 昼下がりの桟橋 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
橋をモチーフにする場合は、その構造や周囲の風景との調和を意識すると、作品全体に奥行きが生まれます。特に光源を意識して影を加えると、立体感が増します。
風景デッサンにおけるシンプルなモチーフは、初心者の人から上級者の人まで楽しめる題材になります。
公園、街角、水辺といった身近な風景を観察し、鉛筆の濃淡や線のタッチでその魅力を引き出しましょう。これらのモチーフを通じて、風景デッサンの奥深さを存分に味わってください。
デッサンをもっと楽しむ!身近なものを題材にするメリット
第2回個展出品作品 パプリカのある静物 2000 F1 鉛筆画 中山眞治
デッサンを始める際、身近なものを題材にすることはとてもオススメです。自宅や日常生活の中にあるアイテムは、手軽で取り組みやすいだけでなく、観察力や表現力を自然に高める効果があります。
本章では、モノトーンの鉛筆デッサンを前提に、身近なものを題材にすることで得られるメリットを解説します。
手軽に始められる
身近なものを題材にする最大のメリットは、特別な準備が不要である点です。家にあるカップやリモコン、観葉植物などを選べば、すぐにデッサンを始められます。
第1回個展出品作品 静物Ⅲ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
これにより、「何を描こうかと迷う時間」を削減でき、描く楽しさに集中できます。また、身近な題材は既に馴染みのあるものが多いため、観察がしやすく、描きやすい点も初心者の人には大きな利点です。
観察力を養う
日常的に見慣れているものを改めてじっくり観察することで、細部への気づきが深まります。例えば、陶器のカップを描く際には、表面の滑らかさや光沢、影の形状などに注目します。
こうした観察力を養うことで、デッサンにおける陰影や質感の表現が向上します。身近なものを題材にすることで、観察眼を磨き、デッサン力を自然にレベルアップさせることができます。
反射 2018 F1 鉛筆画 中山眞治
継続するモチベーションを得やすい
身近なものを題材にすると、デッサンのハードルが低くなるため、継続しやすくなります。
たとえば、1日の終わりに机の上にある小物を短時間で描く習慣を作ることで、少しずつスキルを積み重ねることも可能になります。
また、家族や友人に身近なアイテムを描いてプレゼントすることで、作品を共有する喜びも味わえます。こうした小さな成功体験が、モチベーションの維持にもつながります。
身近なものを題材にすることは、デッサンをより楽しむための近道です。手軽さ、観察力の向上、モチベーションの継続といったメリットを活かしながら、デッサンのスキルを伸ばしてみましょう。
身近なアイテムを描くことで、新しい発見や感動を日常の中で体験してください。
まとめ
第2回個展出品作品 灯(あかり)の点(とも)る窓辺の静物 2000 F100 鉛筆画 中山眞治
鉛筆デッサンを始める際には、身近なアイテムを題材にすることは非常に効果的です。初心者の人から上級者の人まで、シンプルなモチーフを選ぶことで、描きやすさと奥深さの両方を楽しめます。
以下では、デッサン初心者の人に特にオススメのシンプルなモチーフ10選を、メリットや描き方のポイントとともにまとめます。
これらのモチーフを活用して、デッサンをもっと楽しく、よりスキルアップできる時間を作りましょう。
鉛筆デッサンにシンプルなモチーフを選ぶメリット
- 手軽に始められる: 家にあるものを使えるので特別な準備が不要。
- 観察力が身につく: 細部に目を向けることで表現力が向上する。
- 継続しやすい: 身近な題材は練習を続けるモチベーションになる。
鉛筆デッサンにぴったりなシンプルなモチーフ10選
モチーフ | 特徴 | 描き方のポイント |
1. リンゴ | 丸い形で立体感を表現しやすい | 光源を意識して濃淡を丁寧に描く |
2. 花瓶 | 滑らかな曲線や透明感が学べる | 陶器やガラスの質感を濃淡で再現 |
3. スプーン | 金属特有の反射や光沢を練習できる | 鏡面反射部分を白く残し陰影を加える |
4. ノート | 平面と立体のバランスが取れる | ページの折り目や影を正確に描く |
5. 時計 | 細部の描写に挑戦できる | 文字盤や金属部分を丁寧に仕上げる |
6. 観葉植物 | 葉の質感や曲線を練習できる | 光の当たり具合を観察し濃淡を調整 |
7. コップ | シンプルな形で陰影がわかりやすい | 光の反射や影を活かしてリアルさを表現 |
8. 本 | 線や面の描き分けが学べる | 表紙の影とページの重なりを意識する |
9. ベンチ | 直線と曲線のバランスを練習できる | 遠近法を取り入れて立体感を出す |
10. 靴 | 革や布の質感を描き分けられる | 質感の違いを濃淡と線で表現する |
モチーフを描く際のポイント
- 光源を一方向からの光に固定する: 立体感を出すために光と影を明確にする。
- 形を正確に捉える: 輪郭を丁寧に描くことでリアリティーが増す。
- 濃淡を使い分ける: 鉛筆のタッチを工夫して質感を再現する。
身近なモチーフを活用することで、手軽にデッサンを始め、スキルを向上させることができます。この記事で紹介しました10のシンプルなモチーフを描くことで、初心者の人から上級者の人まで楽しみながら学べるでしょう。
ぜひ、日常の中にアートの可能性を見つけて、鉛筆デッサンをもっと楽しんでください。
ではまた!あなたの未来を応援しています。
身近なアイテムに目を向け、あなたが描きたいと思うものから挑戦してみてください。少しずつ練習を重ねることで、確実にスキルアップしていけるでしょう。