こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。
筆者近影 作品「遠い約束」と共に
さて、手を描く鉛筆デッサンは、初心者の人にとって魅力的でありながら難しいテーマでもあります。しかし、基本的なコツを理解すれば、簡単にリアルな手を表現することもできます。
この記事では、初心者の人が手を描く際に注意すべき5つのポイントを解説します。手の構造を理解することから始まり、陰影や輪郭の描き方、よくある間違いを防ぐ方法まで、実践的なアドバイスをご紹介していきます。
このガイドを参考にしていただければ、鉛筆デッサンでのスキルが確実に向上し、リアルな手の描写も可能になります。
それでは、早速見ていきましょう!
手の構造を理解して描き始める方法
第1回個展出品作品 マリリン・モンロー 1996 F10 鉛筆画 中山眞治
鉛筆デッサンで手を描く際に、リアルさと正確さを追求するためには、手の構造を理解することが最初のステップです。手は骨、筋肉、関節によって構成されており、それらを正確に把握することで、自然な形状や動きを表現することができます。
本章では、モノトーンの鉛筆を使用した手のデッサンを成功させるための構造の理解と描き始めるコツを解説します。上の作品の中の手は、なまめかしくもありますよね。そんなリアルな手の鉛筆デッサンを目指しましょう。
手の骨格を簡単に捉える方法
手のデッサンを始める際には、まず骨格を把握することが重要です。手の骨は27個あり、主に指骨、中手骨、手根骨に分けられます。
出典画像:美容皮膚医学BEAUTY 第49号(Vol.6 No.6, 2023)特集:手を健やかに,
これらを細かく描く必要はありませんが、関節の位置を意識してスケッチすることで、手の自然な動きを表現できます。関節部分に小さな円を描き、それらを線で結ぶラフな構造図を作ると、全体のバランスがつかみやすくなります。
指の長さと関節の比率を正確に描くコツ
指を描くときには、各関節の長さや比率に注意しましょう。一般的に指は3つの関節に分かれており、根元から先端に向かって関節の長さが短くなります。この比率を正確に描くことで、自然な手の表現が可能になります。
また、指は完全にまっすぐではなく、わずかに曲線を描くため、関節の位置を軽く丸めるように意識すると、動きが感じられるデッサンになります。因みに、「手モデルの人」による手を美しく見せる方法としては、次のように考えているとのことです。
金子エミ 氏(手タレント) 私、手タレが思う♡手の黄金比
手の構造を正確に把握しながら描き始めることで、初心者の人でもリアルで表現力豊かな鉛筆デッサンが可能になります。練習を積み重ねることで、さらに洗練された作品を作り上げることができるでしょう。
手の筋肉を意識した陰影の付け方
手の筋肉は細かい陰影の描写で立体感を生み出します。特に手のひらや指の付け根部分は、筋肉の厚みを反映した柔らかな陰影が重要です。
光の当たる方向を確認できましたら、手の筋肉が盛り上がる部分と凹む部分を鉛筆の濃淡で描き分けます。強い光を受ける部分を明るく残し、陰影の境目を滑らかにぼかすことで、リアルな質感が得られます。
別の描き方の一例としては、手の輪郭を描き終えましたら、全体をHBの優しい軽いタッチで埋めて、光の当たっている部分を「練り消しゴム」で抜くこともできます。
また、微妙に明るい部分には練り消しゴムを小さな「しゃもじ」のような形状にして、優しく押し当てて微妙なトーンを残して、それ以外のトーンには、それぞれの濃さのトーンを乗せることで描き進んでいくこともできます。
初心者の人でも描ける簡単な手の輪郭の作り方
手のデッサンを始める際に、輪郭を正確に描くことは基本であり、重要なステップです。初心者の人でも簡単に手の輪郭を捉える方法を身につけることで、リアルでバランスの取れたデッサンが可能になります。
本章では、モノトーンの鉛筆を使って手の輪郭を効率的に描くためのテクニックを解説します。
手全体のアウトラインを簡単に捉える方法
まず、手全体の形をざっくりと捉えることから始めます。最初に手のひらを大雑把に四角形や台形で描き、そこへ指を加えるようにします。この時点で正確さを気にする必要はありません。
手全体をシンプルな形状で分解して捉えることで、バランスの取れた構図が作りやすくなります。指を描く際には、長さを均等にするのではなく、指ごとに異なる長さを意識してデッサンするのがポイントです。
自然な指の角度を描くための工夫
指の輪郭を描く際には、手のポーズに応じた自然な角度を意識しましょう。手を完全に広げた状態ではなく、ややカーブしたポーズを選ぶことで、リアルさが増します。例えば、次の画像の中の指のカーブなどがそうです。
鉛筆を軽く持ち、滑らかな動きで曲線を描くことで、硬い印象を避けられます。また、各指の幅や長さを慎重に比較しながらスケッチすることで、全体のバランスが整います。
前掲のマリリン・モンローの胸に当てた手の、指のカーブも参考にしてください。
指先の丸みをリアルに表現するコツ
指先の部分は特に注意が必要です。指先は完全な半円形ではなく、わずかに楕円形を帯びているため、柔らかな曲線で描くと自然に見えます。
また、指先と手のひらの接続部分を滑らかに描くことで、よりリアルな手の輪郭が完成します。最後に、全体の輪郭を確認しながら不要な線を消して整えると、より洗練されたデッサンが仕上がります。
初心者の人でもこれらの手順を取り入れることで、手の輪郭を簡単に描けるようになります。繰り返し練習することで、自分らしい表現を磨いていけます!
リアルさを高める光と陰影の描き方
鉛筆デッサンで手をリアルに表現するには、光と陰影の描き方が鍵です。光源を意識して陰影を丁寧に描き分けることで、立体感が生まれ、リアリティーが一層引き立ちます。
本章では、モノトーンの鉛筆を使った効果的な陰影の付け方を解説します。
光源を意識した陰影の配置方法
まず、描く手に対する光源の位置を確認します。光がどこから来て、手のどこに当たっていて、どのような陰影ができているのか、を明確にすると影が自然に配置できます。
例えば、上から光が当たる場合、手のひらの下や指の裏側に影ができるのが基本です。光が当たる部分は白いまま残し、影になる部分に濃淡をつけることで、リアルな立体感を演出できます。
あるいは、前述しましたように、一旦手の全面に淡いトーンを乗せてから、「練り消しゴム」を使って光っている部分を描いて、全体を徐々に整えていく方法もあります。
グラデーション(階調)を使った滑らかな陰影の描き方
陰影をリアルに見せるためには、濃淡の変化を滑らかに描くことが重要です。鉛筆の持ち方を工夫し、筆圧を調整して柔らかなグラデーションを作ります。
濃い部分から薄い部分へと自然につながるように、鉛筆の先端を軽く滑らせるように描きましょう。また、ティッシュペーパーを小さくたたんで擦ることで、さらに滑らかな表現が可能になります。あるいは、綿棒や指でも代用できます。
ぼかし専門の道具である「擦筆(さっぴつ)」を使う方法もありますが、筆者は「ティッシュペーパー」を小さくたたんで使うことがほとんどです。
擦筆の画像です
細部に陰影を加えることで生まれるリアリティー
陰影をつける際には、手の細部にも注意を払いましょう。例えば、関節部分や指の付け根、爪の周辺などに細かい陰影を加えることで、全体のリアリティーが向上します。
また、影の濃淡を変化させることで、柔らかさや硬さといった質感を表現できます。特に影の境界部分を滑らかにすることが、リアルさを高めるポイントです。
光と影の描き方を工夫することで、モノトーンの鉛筆デッサンに立体感とリアリティーを加えることができます。
鉛筆デッサンにおける生命線は、正確に輪郭を捉えることと、適切な陰影施せることです。その二つとも、良くモチーフを観察し、リラックスして取り組むことで対応できます。また、それらは、制作の数をこなすことで上達できます。
手のデッサンで避けるべきよくある間違い
出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏
鉛筆デッサンで手を描く際に、初心者の人が陥りやすい間違いを知ることはスキル向上の近道です。一方、手の構造や描き方を適切に理解しないまま進めると、不自然な作品になりがちです。
本章では、モノトーンの鉛筆を使った手のデッサンでよくある間違いと、それを避けるための対策を解説します。
手の構造を無視して描いてしまう
初心者の人がよく陥りがちな間違いの一つは、手の構造を理解せずに描き始めてしまうことです。手は骨や関節、筋肉で構成されており、それらを意識しないとリアルさに欠ける作品になります。
対策として、描き始める前に手の基本的な構造をよく観察し、ラフスなデッサンを行うことが重要です。
前述のように、描き始めは単純な形の合成として捉えることで、バランスの取れた形を描きやすくなります。
指の長さや角度を誤る
指の長さや角度を正確に描けないと、不自然な印象を与えてしまいます。特に、指の各関節の長さを均等に描いてしまうことがよくあるミスです。指はそれぞれ長さが異なり、自然なカーブを持っています。
解決策として、指ごとの長さを慎重に測り、関節の位置を明確にすることを心がけましょう。また、光と影を活用して指の奥行きを表現することで、よりリアルに見せることもできます。
陰影のつけ方が不自然になる
陰影のつけ方が均一すぎたり、強調しすぎると、手が平面的に見える原因になります。また、影の位置・方向・長さ・濃さが、光源と一致していない場合も不自然さが際立ちます。
これを防ぐには、光源の位置を明確に確認し、陰影の濃淡を緩やかに変化させる練習をすることが重要です。特に、手のひらや指の付け根部分など、影ができやすい箇所を観察しながら描くことで、自然な陰影が生まれます。
これらの間違いを避けることで、初心者の人でもリアルでバランスの取れた手のデッサンを仕上げることができます。
尚、手がテーブルなどに置かれている場合などには、その接点部分をしっかり濃く描くことで、安定感を強調できます。接点部分がはっきりしていない場合には、テーブルに接しているのか、宙に漂っているのかがはっきりせずに安定感を出せません。
練習を効率化するオススメの手のポーズ集
出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 三澤寛志 氏
鉛筆デッサンで手を描くスキルを上達させるには、多様なポーズを描く練習が効果的です。特に、初心者の人が取り組みやすい手のポーズを選ぶことで、効率的に技術を磨くことができます。
本章では、モノトーンの鉛筆を用いたデッサンに最適な手のポーズを紹介し、それぞれの練習ポイントを解説します。
自然に開いた手のポーズ
初心者の人におすすめのポーズは、自然に開いた手の形です。指を軽く広げた状態の手は、全体のバランスや指の長さを観察するのに最適です。このポーズでは、手のひらの凹凸や指の関節をしっかり捉える練習ができます。
また、光源を上に設定すると、手の立体感を描く練習としても効果的です。最初は全体をシンプルに描き、徐々に細部を加えていく方法が、制作を確かなものにしてくれます。
どの作品の制作においても、画面上のモチーフ全体に大雑把な輪郭で捉え、その輪郭を再度よく点検をしてから徐々に輪郭線全体を整えていくようにしましょう。初めから、部分的に細密な作業で取り組んでしまうようなことは避けましょう。
もっと言えば、我々人の目は、細かい模様や柄の部分に目を奪われてしまう習性があるのです。あなたの伝えたい作品上の感動や強調したい部分には、しっかりと細密描写をすべきですが、それほど感動や強調の必要のない部分には省略することも必要だということです。
握り拳のポーズ
握り拳は、手の筋肉の動きを理解するのに適したポーズです。手の甲に浮き上がる筋や、指の重なりによって生じる陰影を観察しながら描くことで、リアルな表現力を磨くことができます。
このポーズでは、光と影をしっかりと意識し、陰影を濃淡で描き分ける練習が重要です。特に指の曲線や手首との接続部分を描く際には、滑らかな線を意識しましょう。
指を握り込んでいる部分の影には、4B以上の鉛筆でしっかりとした影を入れましょう。この影が中途半端な場合には、リアリティーの乏しい作品になってしまうことがあります。
指先を使った動きのあるポーズ
動きのあるポーズは、手の柔軟性を表現する良い練習材料です。例えば、指先で物をつまむ動作や指を一本だけ曲げたポーズなど、細かな動きを伴う形を選びます。
このタイプのポーズでは、指の長さや角度、物を持つ際の手の自然なカーブを捉える練習ができます。また、動きのあるポーズは光と影のコントラスト(明暗差)が強調されるため、立体感を描くスキルの向上にもつながります。
これらのポーズを取り入れることで、デッサンの効率が大幅に向上します。初心者の人から上級者の人まで幅広いスキルレベルに対応しているため、自身の技量に合わせて挑戦してみてください!
まとめ
鉛筆デッサンで手を描くことは、初心者の人にとって大きな挑戦です。しかし、基本的なポイントを押さえることで、より効率的かつリアルな表現が可能になります。
以下では、これまでの内容を踏まえた重要なポイントを箇条書きで整理し、さらに鉛筆デッサンを向上させるためのアドバイスを紹介します。
初心者の人が注意すべき5つのポイント
- 手の構造を理解する
- 骨、関節、筋肉の位置を押さえ、バランスの取れた下描きを作る。
- 指の長さや角度を正確に捉える
- 指ごとの長さや自然なカーブを意識し、関節の位置を明確に描く。
- 光源を確認して意識した陰影をつける
- 光と影の濃淡を滑らかに描き分け、立体感を出す。
- リアルさを高めるディテール(詳細)を描き込む
- 爪や関節部分、手のひらの質感など細部を正確に描く。
- よくある間違いを避ける
- 指の長さの均一化や不自然な陰影など、初心者の人が陥りやすいミスを防ぐ。
効率的な練習方法
- シンプルなポーズから始める
- 自然な開いた手や握り拳など、基本的な形を描く練習を行う。
- 動きのあるポーズにも挑戦する
- 指先を使った動きのあるポーズを描き、柔軟性を表現する練習をする。
鉛筆デッサンで手を描く際の追加アドバイス
- 光源を一つに限定する
- 光と影を明確にするために、光源は一つに設定すると効果的です。例えばあなたの自宅のデスクの上の自在に動く照明があれば、はっきりとした陰影をつけて制作することもできます。また、光の角度を変えれば、さまざまな作品を制作することもできます。
- グラデーションを丁寧に描く
- 陰影の境界を滑らかにぼかすことで、リアルな質感を演出できます。ティッシュペーパーを小さくたたんで擦ったり、綿棒及び指や専門的な道具である擦筆も活用できます。
- 細部を観察する習慣をつける
- 手の動きや構造をよく観察し、細部を描き込むことで完成度が上がります。
初心者の人でもこれらのポイントを押さえられれば、鉛筆デッサンでリアルな手を描くスキルが着実に向上します。練習を重ね、楽しみながら表現力を磨いていきましょう!
ではまた!あなたの未来を応援しています。
筆者はどちらかというと、後者の描き方が多いですね。その方が描きやすく、簡単だからです。あなたも、色々な描き方を試してみましょう!