ステッドラーですぐに始められる鉛筆デッサンの初心者向け基礎講座!

 こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

       筆者近影 作品「パーティーの後で」と共に

 さて、ステッドラーの鉛筆を使ったデッサンをすぐに始めたい初心者の人へ。この基礎講座では、初めてでも安心して楽しめる鉛筆デッサンの基本を解説します。

 鉛筆の握り方や描き方、簡単なモチーフを用いた練習方法など、鉛筆デッサンの入門に欠かせない知識とテクニックが満載です。 

 さらに、ステッドラー鉛筆の特徴や、初心者の人がつまづきやすいポイントの克服方法も取り上げていきます。鉛筆デッサンの基礎を学びたい人は、ぜひこの講座を参考にしてスキルアップを目指してください。

 それでは、早速見ていきましょう!

Table of Contents

ステッドラー鉛筆の特徴とデッサンの魅力

 ステッドラー鉛筆は、その高品質な素材で、鉛筆デッサンにおいて特別な存在感を発揮しています。

 初心者の人からプロのアーティストまで、幅広く支持されるステッドラー鉛筆は、モノトーンの鉛筆デッサンに適した豊かな表現力が魅力です。

 本章では、ステッドラー鉛筆の特徴や、その魅力を活かしたデッサンの楽しみ方について解説します。

高品質な芯と安定した描き心地

 ステッドラー鉛筆の芯は、均一な硬度と柔らかな描き心地を提供してくれます。特にモノトーンの鉛筆デッサンにおいては、微細な陰影やグラデーションが重要です。

 ステッドラー鉛筆の芯は均一に削りやすく、線の太さや濃さの調整もしやすいため、初心者の人でも繊細な表現が可能です。

 そして、芯の硬度バリエーションも豊富で、H系統からB系統までの幅広い硬度を使い分けることで、滑らかな線から濃密な影まで、自由自在に表現できます。尚、ステッドラーの鉛筆は、10H~12Bまでの合計24種類あります。

 また、筆者はこのステッドラーの他にも、ファーバーカステルや三菱ユニも使っていますので、この3種類の製品で作者が感じている状態を説明します。

 ステッドラーは、「カリカリとした感触」で、描きやすいですが、6B以上の柔らかい鉛筆では削っていて、「若干折れやすい」印象もあります。しかし、どこの画材店でも販売しているので探す手間がありません。筆者は9H~8Bまで揃えています。

 あなたが最初に揃えるべき鉛筆の種類は、2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの合計7本あれば当面の制作ができます。やがてあなたが描くことに慣れて来て、これからも「鉛筆デッサンを続けていきたい」と思えるようになられましたらもう少し幅を広げていきましょう。

 一方、ファーバーカステルは、6B以上の鉛筆でも、削っていても折れにくい印象です。筆者は、HB~9Bまで揃えていますが、あくまでもファーバーカステルは予備的な位置づけです。そして、この鉛筆は、どこの画材店でも置いているわけではありません。

 また、三菱ユニも削っていて折れにくいですし、「しっとりとした描き味」で、特に筆者は、10Hと10Bには、この鉛筆を使っています。この鉛筆は、比較的多くの画材店でも見かけますが、ステッドラーのように、どこででも購入できるというわけではありません。

なかやま

鉛筆デッサンに使う鉛筆は、どこででも販売していて、たくさんの種類の中から選べるステッドラーがおススメです。

モノトーンデッサンに最適な耐久性と経済性

 鉛筆デッサンでは、長時間にわたる描写になることが多いものです。ステッドラー鉛筆の芯は耐久性が比較的高く、描き続けやすいのが特長です。

 モノトーンの鉛筆デッサンでは特に、安定した線を維持できることが重要なので、ステッドラーの鉛筆は、耐久性が比較的高いことで経済的な側面と、長期的なコストパフォーマンスに優れています。

鉛筆の握り方と角度で変わる表現の幅

 ステッドラー鉛筆の握り方や描く角度を変えることで、表現の幅が広がります。例えば、鉛筆を寝かせて芯の側面を使えば、幅広い線を描けて柔らかな陰影が得られ、先端を使って線を細く鋭くすることで、リアルなディテール(詳細)を引き立たせることもできます。

 このような表現力の違いを活かして、モノトーンのデッサンでは立体感や奥行きを表現しやすくなります。

 尚、筆者の場合には、次のような鉛筆ホルダーを使って描いていることが多いです。鉛筆をじかに握るよりも、一回り太くなるので握りやすくなるからです。

 また、鉛筆削りで削れなくなった短い鉛筆でも、この鉛筆ホルダーを使うことによって、ナイフやカッターで削れば2cmくらいの長さまで使いきることができますので、2~3本手元にあると便利です。

       筆者が30年間付き合っている鉛筆ホルダーです

鉛筆の握り方 A

      描き始め当初の大きな輪郭を描く際の握り方です

鉛筆の握り方 B

    細かい描写の際には文字を書く時の握り方で進んでいきましょう

鉛筆の握り方 C

   鉛筆を寝かせて芯の側面を使って描けば幅広い線を描くこともできます

なかやま

鉛筆の握り方は色々ありますが、描き始め当初に大きく輪郭を捉える際には、上記の握り方Aを試してみましょう。大きく輪郭を取った後に各部の細密描写をする際には、文字を書くときの握り方のBが適しています。

環境にも優しい素材とこだわりの品質

 ステッドラーは環境に配慮した素材を使用しており、持続可能な製品作りを進めています。

 鉛筆の木材にはFSC(森林管理協議会)認証を取得したものを使用し、デッサンに集中できる安定感が得られると同時に、地球環境にも貢献しています。こうした品質へのこだわりが、長く愛される理由のひとつでもあります。

初心者が知っておきたい鉛筆デッサンの基本テクニック

 デッサンは、モノトーンで表現する鉛筆アートの基礎です。特に鉛筆を使ったモノトーンの鉛筆デッサンは、シンプルながらも奥が深く、初心者の人が基礎を身につけるために最適な方法です。

 本章では、初心者の人が押さえておきたい基本テクニックについて、段階的に解説します。

線の強弱とメリハリをつける練習

 鉛筆デッサンでは、線の強弱を自在に操ることが重要です。例えば、力を入れて描いた濃い線は画面に力強さを与え、軽く描いた薄い線は優しい印象を作れます。

 最初は力加減を意識しながら、鉛筆の持ち方や描き方を試してみましょう。これにより、モノトーンでも作品にメリハリを出すことができます。

2B~4Bくらいの鉛筆による描線です

6B以上の鉛筆で芯先を寝かせた状態の描線です

鉛筆の角度と持ち方を変える

 鉛筆の持ち方や角度を変えることで、異なる表現が生まれます。例えば、鉛筆を立てて先端で描けば、鋭い線や細かいディテールを描けます。

 一方、鉛筆を寝かせて芯の側面を使って幅広い線を描くと、柔らかな陰影が簡単に表現できます。角度の変化に慣れておくと、デッサンの表現の幅がぐんと広がります。尚、鉛筆の削り方については、次の記事を参照してください。

明暗とグラデーションで立体感を演出

 鉛筆デッサンで立体感を表現するには、明暗とグラデーションの使い方がカギです。明るい部分と暗い部分をしっかり描き分け、滑らかなグラデーションをつけることで、平面的なモチーフが立体的に見えてきます。

 特に、初心者の人は影の濃淡を意識して、少しずつ暗くしていく練習を重ねましょう。例えば、次の筆者の作品を参照してください。

        水滴Ⅵ 2019 F3 鉛筆画 中山眞治

練り消しゴムを使ったハイライトの描写

 モノトーンの鉛筆デッサンでは、練り消しゴムを使ったハイライトの描写が効果的です。明るくしたい部分を練り消しゴムで軽く拭き取ることで、自然な光が当たっているような印象を演出できます。

 初心者の人は、陰影だけでなくハイライトを入れることで、よりリアリティーのある仕上がりを目指しましょう。例えば、次の筆者の作品を参照してください。

         葡萄 2019 F3 鉛筆画 中山眞治

 この作品では、葡萄(巨峰)のハイライトは暗いトーンによって一層引き立てられますので、是非試してみましょう。この場合のコツは、濃いトーンのところを思い切ったトーンを入れることで、ハイライトの効果をより一層強調できます。

練習に適したモチーフを選ぶ

 鉛筆デッサンを始める際には、初心者の人にとって描きやすいモチーフを選ぶことは重要なポイントです。たとえば、シンプルな幾何学形や果物など、形が分かりやすいものから始めると良いでしょう。

 これにより、基本的な線の描き方や陰影のつけ方を自然に学ぶことができます。特に、絵画教室では「石膏モチーフ」などが各種ありますが、自宅で制作する場合でも、白い卵及び白無地のカップ&ソーサーや白いマグカップなどで描いてみましょう。

 この「白い」にこだわっているのは、光と影の状態をつぶさに観察できるからです。例えば次のような、筆者の作品も描けます。部屋の照明の光がスプーンから卵へ反射している状況を描いています。

             反射 2018 F1 鉛筆画 中山眞治

テクスチャーの表現に挑戦する

 モノトーンの鉛筆デッサンでは、テクスチャー(質感)の表現が重要です。表面が滑らかなもの、ざらざらしたもの、柔らかいものなど、異なるテクスチャーを描き分ける練習をすると、リアリティーが増します。

 たとえば、木の質感や金属の反射を表現することで、作品全体が活き活きとした印象になります。

 筆者の次の作品も参照してください。

      モアイのある静物 2000 F30 鉛筆画 中山眞治

なかやま

反射をテーマにするのも面白いものです。あなたの自宅の身近な「空き缶」や「空きびん」を使って、上の作品のような作品を制作することもできます。

ステッドラー鉛筆で描くときの持ち方と角度のコツ

 ステッドラー鉛筆は、その描きやすさと安定した品質で、モノトーンデッサンに適したツールです。しかし、鉛筆の持ち方や角度を少し変えるだけで表現に大きな差が生まれます。

 本章では、ステッドラー鉛筆を使った際に効果的な握り方と角度のコツを紹介し、初心者の人でも簡単に取り入れられるテクニックを解説します。

握り方の基本:線を安定させるグリップ

 鉛筆デッサンにおける最初の大まかな輪郭を取る際には、前述していますように基本的な握り方として、鉛筆を人差し指・中指・親指で優しく「つまむ」ように優しく軽く持ち、肩と腕を振るって描くイメージで進んでいきましょう。

 この持ち方により、輪郭をリラックスして描くことが可能になります。また、付随して、安定した鉛筆デッサンを長時間続けても疲れない基本姿勢としては、足を組まずにイスに深く座ることで、疲れにくい体勢を作れます。

鉛筆を寝かせて描く:柔らかな陰影をつける方法

 鉛筆を少し寝かせて握ると、柔らかい陰影を描くのに役立ちます。鉛筆の芯先の側面を紙に当てることで、シャープな線ではなく、ふんわりとしたトーンが得られます。

 この持ち方は、ざっくりとした影をつけたり背景の色合いを調整したりする際に使えます。しかし、筆者は、鉛筆を寝かせ気味にして描線することはありますが、芯先の側面全体を使った描き方はしません。その理由は、背景などに使う際にはムラになってしまうからです。

 モチーフへ入れる色面や、背景などで均一なトーンを入れる際には、最終的に鉛筆の鋭い芯先で、描いて行く必要があり、鉛筆の芯先を完全に寝かせる描き方では、必要とする均一なトーンを得られないのです。

なかやま

鉛筆の芯先全体を画面に寝かせて描く方法は、こんな描き方もある程度で記憶しておきましょう。この方法を突き詰めると、芯先を長く削りださなくてはならなくなり、「折れやすくなる」原因にもなるからです。

芯先を尖らせて描く:ディテールを表現する

 細かいディテール(詳細)やシャープな輪郭を描くには、鉛筆を立てて先端を使うのが効果的です。特にステッドラーの鉛筆は、シャープな描き心地が特徴のため、細かい表現がしやすくなります。

 髪の毛や細かな模様など、細密な描写が求められる部分では、鉛筆を垂直に近い角度で握り、先端の鋭さを活かすことでリアルな質感を表現できます。次の筆者の作品を参照してください。髪の毛の一番濃いところは、6Bを使用しています。

     第1回個展出品作品 少年 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

力を加減して濃淡をコントロールする

 鉛筆デッサンでは、濃淡のコントロールが重要です。鉛筆を軽く握り、紙に軽く触れる程度で描けば薄いトーンが得られ、筆圧を強めれば濃いトーンを描けます。

 このように、力加減を調整することで、表現に深みが出ます。ステッドラー鉛筆は芯の滑らかさが特徴で、力加減を少し変えるだけで濃淡がスムーズに変わるため、初心者の人でも簡単に使いこなせます。

握り方と角度を組み合わせて表現力を高める

 ステッドラー鉛筆の握り方や角度を組み合わせて使うことで、作品にさまざまな質感や奥行きを加えることができます。

 例えば、輪郭線は細かく描き、陰影部分は鉛筆を寝かせ気味にして柔らかく描くなど、異なるテクニックを駆使することで作品がよりリアルに仕上がります。

 こうした基本テクニックを練習して、初心者の人でもステッドラー鉛筆の魅力を最大限に引き出せるデッサンを楽しめます。

鉛筆の扱い方は、実際にさまざまに描いてみないと実感できませんので、色々と描き進む中で学習していきましょう。

簡単に描ける初心者向けのデッサンモチーフ

 モノトーンの鉛筆デッサンを始める初心者の人には、シンプルで描きやすいモチーフを選ぶことが成功への鍵です。

 初めてのデッサンでは、形状がわかりやすく、陰影をはっきりと確認できるモチーフを選ぶとよいでしょう。

 本章では、初心者の人にオススメなデッサンモチーフをいくつか紹介します。モチーフ選びで上達を実感しやすくなり、鉛筆デッサンの基礎を無理なく学ぶことができます。

シンプルな立方体や円柱などの基本形

 基本形である立方体や円柱は、デッサン初心者の人に最適なモチーフです。これらの形は直線や円で構成されており、影やハイライトをつける練習にぴったりです。

 立方体を描くときは、光の位置を意識し、光が当たる面と影になる面を明確に描くことで、立体感が生まれます。

 円柱も同様に、グラデーション(階調)を意識しながら描くことで、立体的に見せることができます。基本形を習得することで、他の複雑な形にも応用が利くようになれます。

リンゴやオレンジなどのシンプルな果物や野菜

 果物は、初心者の人向けのモチーフとして人気です。リンゴやオレンジといった果物は、形がシンプルながらも丸みがあり、光と影の練習に役立ちます。

         林檎 2018 F3 鉛筆画 中山眞治

 野菜の表面には独特の質感があり、滑らかな部分とざらざらした部分を描き分けることで、リアルな質感表現の基礎を学べます。さらに、果物や野菜は形状が複雑すぎないため、描きやすいのもポイントです。

     第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

コップや空き瓶などのガラス製品

 透明なガラス製品は、初心者の人にとって陰影の基礎を学ぶ良い機会です。コップや空き瓶は、モノトーンデッサンにおいて光の反射や屈折を観察しやすいモチーフであり、光と影のコントラスト(明暗差)を理解するのに適しています。

 ガラスの透明感を出すためには、暗い部分と明るい部分を大胆に描き分けることが重要です。描き終えたときに透明感を感じられると、自信がつくものです。

 尚、このガラス製品の各種には、光を受けて光っている部分がある反面、黒く「ビシッ」と走っている線があるのでよく観察することが重要です。

 この濃いトーンをしっかり描き込むことで、ハイライト部分が「白い」ではなくて、光っているようにさえ表現できるのです。この件では、次のビンにも入っていますね。よく確認してください。

布やタオルなどの柔らかい素材

 布やタオルのような柔らかい素材も、初心者の人にオススメです。折り目やしわができるため、陰影を細かく観察する練習になります。

 布の柔らかさや折り目の流れを鉛筆で表現することで、立体的な表現力が身につきます。また、布は動きがあるため、同じモチーフでも異なる角度から描くことで、さまざまな練習が可能です。

東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏

なかやま

さまざまなモチーフのテクスチャー(風合いや感触)は、いっぺんに学ぼうとせずに、5作品ほど楽しんで描いて、描くこと慣れてこられましたら、少しずつ取組んでいきましょう。

植物や葉っぱで自然な曲線の練習

 葉っぱや植物も、初心者の人に適したモチーフです。植物は自然な曲線が多く、形に少しのズレがあっても個性として表現できます。

 特に葉の影や光の当たり方を観察し、葉脈を描き加えることで立体感が生まれます。植物の柔らかな質感や形の特徴を捉えることで、デッサン力がさらに向上します。次の筆者の作品も参照してください。

       鈴蘭 2021 F1 鉛筆画 中山眞治

造花の花や葉を描くこともオススメです。生花ではすぐにしおれたり枯れてしまいますが、当たり前ですが造花はいくら時間をかけて制作していても変化がありません。造花である程度描くことに慣れて来られましたら、生花へチャレンジしてみましょう。

よくある初心者の失敗と改善方法

 モノトーンの鉛筆デッサンを始めたばかりの初心者の人には、共通して陥りがちな失敗があります。

 しかし、これらのポイントを押さえ、適切な改善方法を身につけることで、鉛筆デッサンのスキルは格段に向上します。本章では、初心者の人が陥りやすいミスとその解決方法を解説します。

輪郭をしっかり描きすぎている

 初心者の人は、とかくモチーフの輪郭を濃く描きすぎる傾向があります。すべてのモチーフに濃い色でしっかり輪郭を取ってしまうと、不自然な仕上がりになってしまいます。

 輪郭線を描く際には、当初は前述していますように「肩や腕を振るって」大きく輪郭を優しいタッチで描き、これでよいという状態になりましたら、不要な線は「練り消しゴム」で整理しましょう。

 そして、改めて少しはっきりした輪郭を整える場合には、それまでは優しく描いてもしっかりとスケッチブックや紙に鉛筆の乗る、Bや2Bで描いていたならば、2段階落とした鉛筆で描き込みましょう。2Bで当初のデッサンをしていたならば、HBで描き込むということです。

 また、輪郭が描けましたら、一旦休憩をはさみましょう。当初の勢いでそのまま一気に描き進んでしまうと、その先に行って修整が難しくなったり、修整できてもスケッチブックや紙が汚れてしまうことがあるからです。

なかやま

筆者は、現在でも輪郭を取った後には、必ず休憩をはさみ、遠くから画面を観たりすることも交えて、制作画面全体の点検を行っています。必ず2~3ヶ所の修整が発生します。^^

線が均一でメリハリがない

 初心者の人によく見られるのが、線がすべて同じ強さで描かれているため、メリハリに欠けることです。線が均一だと、立体感や奥行きが出にくくなります。

 改善方法としては、鉛筆の角度や力加減を調整し、濃淡を意識して描くことです。強調したい部分には強い線を、影や背景には柔らかな線を用いることで、作品に奥行きが生まれます。

陰影が不足し平面的になる

 モノトーンデッサンでは陰影が重要な要素ですが、初心者の人は陰影が浅く、平面的な仕上がりになることが多いです。これを改善するためには、光源を意識して影の位置を明確に描き込む練習が必要です。

 影の濃淡をしっかり表現し、グラデーションをつけることで、立体的なデッサンに仕上げることができます。はじめはモチーフに対して光を当て、光と影の関係を観察することから始めましょう。

なかやま

背景に思い切った濃いトーンを持ってくることで、モチーフのハイライトが「輝いている」ようにさえ表現できます。次の筆者の作品を参照してください。

     第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

消しゴムを過度に使ってしまう

 初心者のうちは、少しのミスや線のブレが気になり、「練り消しゴム」を頻繁に使用してしまいがちです。練り消しゴムの使い過ぎは紙を傷める原因になり、自然な仕上がりを損なうことがあります。

 また、練り消しゴムで消したところは、練り消しゴムを使っていないところと比較して、その後トーンを入れていく際に、鉛筆の乗り具合が若干変わってくるので、練り消しゴムの使用は最小限にしましょう。

 改善方法としては、描く前に軽い下描きをすることで、大きな修整が少なくて済むようになります。また、練り消しゴムはハイライトを強調する際や、柔らかな影をつけるために限定的に使用するよう心がけると、作品に自然な陰影が生まれます。

画面に深めに食い込んだ鉛筆を消す際には、プラスチック消しゴムを使うこともありますが、制作で必要になる消しゴムは「練り消しゴム」でほとんど足ります。

ディテールに集中しすぎて全体が見えない

 初心者の人はディテール(詳細)に集中しすぎるあまり、全体のバランスを見失いがちです。結果として、全体の構成や形が崩れてしまうことがあります。

 これを防ぐには、まず全体のアウトラインや大まかな輪郭を先に描き、その後ディテール(詳細)に進むようにしましょう。そうすることで、全体のバランスを保ちながら、細部にも入念な仕上がりを実現できます。

 制作の手順は、まず全体の輪郭を捉えてから、徐々に全体をまんべんなく描き進んでいくような感じです。そして、注意する必要がある事は、我々人間の目は「細かい模様や柄」に引き寄せられてしまう習性があるということです。

 つまり、あなたが制作している画面上で、一番見てもらいたい部分やモチーフへ意識的に、観てくださる人の注意を引きたい場合には、その強調したい部分やモチーフには細密描写を施し、それ以外の部分やモチーフには「意図的に手を抜く」ことも必要だということです。

 全部のモチーフを克明に描き込んだ絵は、「何を言いたいのか分からない作品]と言われてしまうことがあります。このように、意図的に強調したい部分やモチーフを目立たせる場合の他のモチーフに対する省略などを「デフォルメ」と言います。

 デフォルメは、省略・修整・拡大・縮小・変形など自由自在です。要は、あなたが制作している作品の中で、あなたが見てくださる人へ伝えたい感動や喜びなどを、いかにして強調できるかということです。

 具体的には、制作画面の中の中心的なモチーフの形状や光加減にあなたが感動しているのならば、その中心的なモチーフ(主役や準主役)に、細密描写を施し、それ以外の脇役には意図的に細密描写を抑える描き方をするということです。

 あるいは、全体的なすべてのモチーフへ細密描写を施したとしても、主役や準主役にはしっかりと「ハイライトを描き込み」、それ以外のモチーフには「ハイライトを抑えて描く」ことで、主役や準主役を引き立てることができます。

なかやま

デフォルメは、どの作家でも当たり前に行っていることであり、具体的には、風景を描いていて邪魔になる電柱や電線を省略することなどは、当たり前に行われていることを記憶しておきましょう。

練習を重ねて基礎を固める重要性

 初心者の人が最も陥りやすいのは、練習を重ねずに次のステップに進んでしまうことです。モノトーンデッサンは、基礎をしっかりと固めることで飛躍的にスキルが向上します。

 まずは、基本の鉛筆の握り方や陰影のつけ方などを繰り返し練習し、自身の描き方の癖や改善点を確認することが重要です。こうした基本を重ねることで、初心者の人でも安定した鉛筆デッサンが描けるようになれます。

何の場合でもそうですが、基礎の習得にはしっかりと時間をかけましょう。かといって、時間をかけさえすればよいということでもありませんので、せめて描き初めの5作品くらいは、基礎をしっかり学びながら、楽しんで描いて行きましょう。

まとめ

 ステッドラー鉛筆でのモノトーンデッサンは、初心者の人が基本を習得することに適しています。以下では、基本的なテクニックから失敗を防ぐポイントまで、鉛筆デッサンを楽しむためのコツをまとめました。

基本テクニックとコツ

  • 線の強弱:線に強弱をつけ、濃淡を調整することで立体感を出す。
  • 握り方と角度:鉛筆を立てて細かいディテール、寝かせて柔らかい陰影を描くこともできる。
  • 陰影の使い方:光源を意識し、影の濃淡やグラデーションで立体的に表現する。

初心者向けモチーフの選び方

  • 立方体や円柱:基本形で光と影の基礎を学ぶ。
  • 果物(リンゴやオレンジ)や野菜類:丸みと質感を練習するのに最適。
  • ガラス製品(コップや瓶):透明感と光の反射を描く。
  • 布やタオル:折り目やしわを描き、柔らかさの表現を身につける。
  • 植物や葉っぱ:自然な曲線と葉脈でリアルな質感を練習する。当初は造花がオススメ。

よくある初心者の失敗と改善方法

  • 線が均一でメリハリがない:強弱を意識して描き分ける。
  • 陰影不足で平面的:光源を考慮して陰影をつけ、立体感を出す。影には思い切ったトーンも必要になることがある。
  • 練り消しゴムの多用:ハイライトや柔らかな影に使い、全体のバランスを保つ。
  • ディテールに集中しすぎる:まず全体の輪郭を決めてから、細部を描き込み、一番濃いトーンから徐々に明るいトーンへと描くことで描きやすさが増す。
  • 基礎練習不足:基本を繰り返し練習し、握り方や力加減に慣れる。

デッサンを楽しく続けるためのポイント

 ステッドラー鉛筆のデッサンは、基礎を重ねることでスキルが着実に向上します。初心者の人が陥りがちなミスや失敗も、改善方法を知っていれば成長のきっかけに変えられます。

  • 定期的に練習して描くことで、少しずつ上達を実感できる
  • 目標を立ててモチーフごとに描き方を工夫し、自分なりの表現を見つける

 これらのポイントを押さえ、ステッドラー鉛筆を使ってデッサンを楽しみながら基礎を固め、モノトーンの魅力を引き出しましょう。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。