鉛筆画の描き方を簡単に学べる7つの手順と押さえるべき基本スキル!

 こんにちは。私は、アトリエ光と影の代表で、プロ鉛筆画家の中山眞治です。

         筆者近影 作品「パーティーの後で」と共に

 さて、鉛筆画を始めたいけれど、どこから手をつければよいのかわからない初心者の人も多いのではないでしょうか?

 鉛筆画は、シンプルな道具を使って豊かな表現ができる魅力的なアートです。この記事では、初心者の人でも簡単に鉛筆画をマスターできる7つの手順と基本スキルをご紹介します。

 基礎をしっかり学び、少しずつステップを踏んでいけば、難しく感じるリアルな絵も描けるようになれます。道具選びや陰影の付け方、最後の仕上げまで、鉛筆画の楽しさを体感しながらスキルを身につけましょう。

 それでは、早速どうぞ!

Table of Contents

鉛筆画を始めるための道具選び

第2回個展出品作品 潮騒 2001 F100 鉛筆画 中山眞治

  鉛筆画を始める際には、適切な道具を選ぶことはとても重要です。必要最低限の道具が揃っていれば、作品を描く過程がスムーズになり、完成度も向上します。本章では、初心者にオススメな鉛筆画に欠かせない道具を紹介します。

鉛筆の選び方

 鉛筆にはさまざまな硬さがあり、それぞれの表現に違いが表れます。硬い鉛筆(H系統)は薄い線や細かいディテールに適しており、柔らかい鉛筆(B系統)は濃い線や陰影を描くのに向いています。

 最初は、2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの7種類があれば充分です。これらを使い分けることで、陰影や細部まで幅広い表現が可能になります。

スケッチブックや紙の選び方

 鉛筆画を描くための、スケッチブックや紙も重要です。紙肌は目の粗さによって鉛筆の線や質感が大きく変わります。

 スムーズな仕上がりを求めるならば、細かい目の紙が適していますが、質感を楽しみたい場合は粗めの紙を選ぶとよいでしょう。

 一般的には、中目程度の紙肌で、中くらいの厚さのスケッチブックや紙がオススメです。

消しゴムの選び方

 鉛筆画において、消しゴムは単にミスを修整するだけの道具ではなく、描画の一部としても使えます。柔らかい練り消しゴムは、細かい部分を消したり、明るい部分を作り出すのに最適です。

 硬いプラスチック消しゴムは、画面に深めに食い込んだ鉛筆の強い線を修整する際に使います。両方を使い分けることで、細かい表現や質感を描き出せますが、プラスチック消しゴムはあまり使いません。

定規やぼかし道具

 鉛筆画には定規やぼかし道具も役立ちます。

 定規は、直線を描いたり構図のバランスを取るのに便利で、ぼかし道具(ティッシュペーパー及び擦筆や綿棒)は、陰影やグラデーション(階調)を滑らかにするために使います。これらを使用することで、プロフェッショナルな仕上がりを得ることもできます。

 制作画面の中で、フリーハンドの線を中心に制作を進めていきますが、全体の構成を鎮める意味で定規を使った直線も必要になることも多いのです。

 下の作品を観てください。モチーフ全体が丸みを帯びたモチーフばかりですが、片手鍋の柄の直線が入ることで、場面にまとまりが出ていることを確認できるはずです。この柄の途中までは、定規の直線を使っています。

第1回個展出品作品 静物Ⅱ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

道具を揃えて準備を整えよう

 道具選びは、鉛筆画で成功するための第一歩です。初心者の人でも、適切な道具を選ぶことで絵を描く楽しさが倍増します。まずは基本の道具を揃え、徐々にスキルを高めていきましょう。

 特に、鉛筆の芯は、上の画像のような鉛筆削りで削ると、鋭い芯先は、微妙な細い線を描くことができて快適です。ナイフやカッターで削ると、芯先が長くなりがちなので、折れやすくもなりますので注意が必要です。

簡単な形を描いて基礎を固める

 鉛筆画を始める際には、基本的な形を描くことが非常に重要です。シンプルな形から描き始めることで、作品全体の構図やバランスをしっかりと把握することができて、作品制作の基礎を固めることができます。

 本章では、簡単な形を使って鉛筆画のスキルを高める方法について解説します。

描き始めの最初は楽しんで描くことが一番重要!

 鉛筆画を描き始めた最初には、「構図」や「構想を練る」などの余計なことは考えないで、あなたが楽しんで描くことが一番重要なことです。最初からいろいろ考えてしまうと、手が止まってしまい、結果的に挫折してしまう可能性が高まるからです。^^

 あなたの感じたままを、あなたの描きたいように描いて楽しみましょう。うまく描けなかろうが、形がいびつであろうが一向にかまいません。

基本形を捉える重要性

 鉛筆画の基礎は、物体をシンプルな形に分解して捉えることです。たとえば、リンゴを描く場合、最初は楕円や円として捉えます。

 この方法は、複雑なモチーフでもざっくりとした形に捉えることで、取り組みやすくなり、描写がスムーズに進みます。

 これにより、プロポーションやバランスを正確に保ちながら、作品全体の骨組みを作り上げることができます。

描くことにある程度慣れましたら次のステップとして構図を研究しましょう

 しかし、あなたが5作品ほど描いて、描くことに慣れてこられましたら、次の段階では、作品全体にまとまりが出て、観やすくなり、魅力的にもなる作品の描き方を考えて行きましょう。

 そのためには、構図の研究が必要であり、簡単な構図から取り組みを始めて、その構図に合うあなたの描きたいモチーフを、その構図の分割点に配置することを考えて行きましょう。それが「構想を練る」ということです。

 その際には、たくさんの構図の載っている本を一冊購入しましょう。筆者が現在も使っている構図の本は、もう30年も前の本ですが、ネットで現在でも購入できるようです。本の名前は次の通りです。

みみずく・アートシリーズ 構図エッセンス 視覚デザイン研究所編

立体感を意識して形を描く   

 基本形を描く際には、立体感を意識することが大切です。そして、2次元の平面上に形を描くだけでなく、物体の奥行きや体積も考慮しましょう。

 たとえば、球体を描くときは、光源の位置と、モチーフにできる影を意識しながら陰影をつけることで、形に立体感が生まれます。この練習により、鉛筆の使い方や陰影のつけ方が自然と身につきます。

  第2回個展出品作品 洋ナシのある静物 2001 F1 鉛筆画 中山眞治

 上の筆者の作品の洋ナシのように、光の当たっている部分の背景に濃いトーンを持ってくることで、リアルな表現ができます。また、洋ナシの右側には、卵からの反射光を受けてわずかに光っていますが、このような描写がリアリティー(現実性)の表現になります。

構図のバランスを学ぶ

 簡単な形を描くことで、構図全体のバランスを学ぶことができます。物体の配置や空間の取り方を理解することで、描きたいものが画面内でどのように見えるかを考えられるようになれます。

 練習としては、複数の簡単な形を使って、構図全体を作り上げる練習をすることがオススメです。これにより、複雑な作品でも自然なバランスを保つことができるようになれます。

暮らし 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

 たとえば、上の筆者の作品では、醤油さしは画面左側から測った黄金分割線上に配置していて、テーブルの表面部分の位置は、画面縦の上から測った√2分割線で区切っています。

 黄金分割は、我々人間が見て一番心地よい位置だと言われており、画面寸法÷1.618で求められます。また、√2分割は、画面寸法÷1.414で得られた寸法になります。

構図は難しい物ばかりではありませんので、簡単なものから順番に色々試してみましょう。

練習のポイント

 初心者の人は、最初に複雑な形を描こうとせず、まずは円や四角形などの簡単な形を何度も描くことが重要です。形の描写が正確にできるようになってこられましたら、徐々に難易度の高い形にチャレンジしましょう。

 このように、ステップバイステップで基礎を固めることが、最終的には高い描写力につながります。

秋 2018 F1 鉛筆画 中山眞治

 上の筆者の作品では、落ち葉、銀杏、ドングリなどの簡単な構成ですが、地表面に傾斜をつけて、大きく動きを出しています。こんなモチーフで構成することもできます。この構成の重要なポイントは、傾斜を受け止める視覚上の補助としての、その下の水平な部分です。

基礎が固まれば自由に描ける

 基本的な形をしっかりと描けるようになれば、複雑なモチーフやリアルな作品も簡単に描けるようになれます。

 基礎を固めることで、自由な発想と豊かな表現力を引き出すことができ、より高いレベルの鉛筆画へと進むことが可能になります。

陰影を使ったリアルな表現のコツ

 鉛筆画において、陰影はリアルな表現をするための重要な要素です。光と影を上手に使うことで、絵に立体感や奥行きを加え、現実味のある描写が可能になります。本章では、陰影を使ったリアルな表現のコツをご紹介します。

第2回個展出品作品 モアイのある静物 2000 F50 鉛筆画 中山眞治

 尚、上の作品では、ビンの光が空き缶に反射しています。このような反射をテーマにして描くこともできますし、モアイを除けば、あなたの部屋にいくらでもあるモチーフなはずなので、光と影の配置を色々実験してみましょう。

 この作品を制作した時のコツは、部屋の明かりを消して、デスクの上にある「自在に動く照明」をモチーフに充てて描いています。そうすることによって、はっきりと一方向からの光を受けたモチーフの反射を捉えられます。

光源を確認する

 陰影を描く上で最も重要なポイントは、光源の位置を確認することです。光源の方向によって、光を受けて光っている部分や影の落ち方と形が決まるからです。

 たとえば、モチーフの右側から光が当たっている場合、左側には影ができ、モチーフ本体の右側面は光を受けて明るくなります。重要なことは、描き始める前に光源の位置をしっかり把握しておくことで、リアルな陰影を描くことにつながります。

第2回個展出品作品 ランプの点(とも)る静物 2000 F30 鉛筆画 中山眞治

 上の作品では、実際に部屋の明かりを消して、ランプを点(とも)して制作しました。リアルな描写は、リアルな制作環境から生まれます。

 あなたも、実際に部屋の明かりを消して、自在に動くデスク上の照明及びランプやロウソクの灯(あかり)を使って試してみましょう。

 しかし、実際にランプやロウソクを点(とも)す場合には、その状況を画像に収めておきましょう。万一の事故に備える必要があるからです。

この場合のコツは、その画像を頼りに描き進めて、仕上りに近くなった時点で、改めて実際に灯りを点(とも)し、作品に足りていない要素を再度確認することです。

濃淡の幅を広げる   

 リアルな陰影を表現するためには、鉛筆の濃淡を幅広く使うことが極めて重要です。薄い影から濃い影まで、さまざまなトーンを組み合わせることで、立体感や奥行きが生まれます。

 HBやBの鉛筆で中間のトーンを描き、3Bや4Bの鉛筆を使って影の濃い部分を強調できると、物体をより立体的に見せることができます。

 あなたが描くことに慣れて来られましたら、それまで扱っていた一番濃い色が4Bまでであった場合には、5Bや6Bなどの鉛筆も用意しましょう。10Bまでは、どこでも購入できます。

 尚、白いモチーフの背景に特に濃いトーンを配置すると、主役を白く見せるばかりではなく、「輝いて」いるようにさえ表現できることを記憶しておきましょう。

    第2回個展出品作品 君の名は? 1999 F30 鉛筆画 中山眞治

 上の作品の、こちらを向いている花(黄色い枠の中の花)が主役なのですが、背景との明暗差を確認してみてください。

なかやま

濃い色をモチーフの背景に配置した場合には、背景の色を濃くした分だけ、モチーフのハイライトを強調できますよ!

グラデーションを意識する

     

 陰影をつける際には、グラデーション(階調)を意識することがリアルな表現につながります。影から、明るい部分への遷移を滑らかにすることで、自然な立体感が生まれます。

 ぼかし道具(ティッシュや綿棒など)を使って鉛筆の線をぼかし、滑らかな陰影を描き出すのも効果的です。特に球体や人物画などの、曲線部分にグラデーションを加えることで、リアルな質感を表現できます。

     第2回個展出品作品 ランプのある静物 2000 F50 鉛筆画 中山眞治

 上の白い石膏像の作品では、顔及び肩や胸と帽子に至るまで、3Hの鉛筆の優しい軽いタッチを根気よく乗せながら、最終的にはティッシュペーパーを小さくたたんで擦り、「ぼかし効果」を活用しています。

なかやま

グラデーション(階調)の表現こそリアリティーの神髄です。陰影のバリエーションを広げよう!

グラデーションを段階的に増やす

 陰影を描く際は、最初に薄く全体のトーンを描いてから、徐々に濃い影を加えていくことが重要です。一気に部分的に濃く描くのではなく、段階的にグラデーション(階調)を増やすことで、陰影に奥行きが生まれます。

 また、描いている途中で、全体のバランスを見ながら修整していくと、より自然な陰影を施せます。

午後の寛ぎ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

 上の作品では、背景全体には特に濃いトーンを配置せずに、モチーフのコーヒーポットの一番濃いところへ10Bを使っています。このように描くことで、まるでモチーフがしっかりと外光を受けて光っているようなリアルな描写もできます。

ハイライトを残す

 リアルな陰影を描く際に忘れてはならないのが、ハイライトです。光が強く当たる部分は白いまま残しておくか、あるいは、練り消しゴムで拭き取り、明るい部分を作り出します。

 このハイライトを適切に配置することで、物体の質感や形状が、よりリアルに際立ちます。特にガラスや金属など、反射の強い素材を描く際には、ハイライトが非常に効果的です。陰影のテクニックを駆使して、立体感のあるリアルな鉛筆画を描き上げましょう。

水滴Ⅵ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

 また、上の作品は、キッチンの情景ですが、水滴が部分的に光をうけて光っている「ハイライト」を詳細に描き込むことで、リアルな描写につながっています。同時に、水滴の床面との接している部分に濃い色を配置することで、より一層水滴のハイライトが活きてきます。

鉛筆を使い分けることで質感を描き分ける

筆者の描画道具入れです

 鉛筆画において、鉛筆の種類や硬さを使い分けることは、質感の違いを表現するために非常に重要です。

 適切な鉛筆を選んで使いこなすことで、スケッチブックや紙の上にさまざまな素材の質感をリアルに再現することが可能になります。本章では、鉛筆を使い分けて質感を描き分けるためのコツを解説します。

鉛筆の硬さを理解する

 鉛筆の硬さには、H系統とB系統があります。H系統の鉛筆は硬くて薄い線を引くのに適しており、金属やガラスのような滑らかな質感を表現するのに向いています。

 一方、B系統の鉛筆は柔らかく、濃い線が描けるため、布や毛皮のような柔らかい質感を描く際に効果的です。HBの鉛筆は中間の硬さで、広範囲の陰影や基礎的な形状の描写にも使えます。

素材に応じた鉛筆の使い分け

      出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇 氏

      出典画像:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 高沢哲明 氏

 素材の違いを表現するためには、それぞれの質感に合った鉛筆を使い分けることが大切です。たとえば、木材や石などの粗い質感を描く場合は、B系統の鉛筆を使って濃淡をはっきりさせ、粗さを強調します。

 一方、ガラスや金属のような滑らかな表面は、H系統の鉛筆で軽く均一な線を描き、光沢や反射を表現します。これにより、視覚的に異なる質感が生まれます。

鉛筆の持ち方で表現を変える

鉛筆の持ち方Ⅰ

鉛筆の持ち方Ⅱ

鉛筆の持ち方Ⅲ

 描き始めの、大きく輪郭を取る際には、上の画像の「鉛筆の持ち方Ⅰ」のように、鉛筆を人指し指・中指・親指で優しく軽く持ち、肩や腕を振るって大きく輪郭線を捉える際に効果的です。

 それ以外にも、鉛筆の持ち方は質感の表現に影響を与えます。たとえば、上の画像の「鉛筆の持ち方Ⅲ」のような持ち方は、寝かせて紙に当てると、広い範囲に線を描くことができ、柔らかい布や肌の質感を描く際に効果的な場合があります。

 逆に、鉛筆を立てて細かく「鉛筆の持ち方Ⅱ」のような握り方は、鋭い線を描いて硬い金属や木材の質感をリアルに表現できます。持ち方や筆圧を変えることで、質感にバリエーションを持たせることができます。

ブレンディングとシャープな線の使い分け

擦筆の画像です

 柔らかい質感を表現する際には、鉛筆の線の縁をぼかしてグラデーションを作るブレンディング(ぼかし技法)が効果的です。ティッシュペーパー及び擦筆や綿棒を使って、滑らかな陰影を作り出し、布や肌などの柔らかさを表現します。

 一方、シャープな線を残すことで、硬い物体のエッジを強調し、石や金属などの硬い質感を際立たせることもできます。

質感の違いを強調するためのコツ

 質感を描き分けるためには、モチーフごとの特徴をしっかりと観察し、その質感に合った鉛筆と技法を選ぶことが大切です。

 描く物の表面が滑らかなのか、ザラザラしているのかを理解し、適切な鉛筆を選んで使い分けることで、リアルな表現が可能になります。

ディテールを細かく描き込むテクニック

水滴Ⅴ 2019 F1 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆画でリアルな作品を仕上げるためには、ディテール(詳細)を細かく描き込む技術が不可欠です。細部にこだわることで、作品全体のクオリティーが大きく向上し、より迫力ある表現が可能になります。

 本章では、ディテールを描くための具体的なテクニックを紹介します。

形状を正確に捉えるための下描き

 初めから細かい部分に集中しすぎると、全体のバランスが崩れやすいため、全体像を意識しながら進めることがポイントです。

 ディテール(詳細)を描き込む前に、まずは正確な形状を捉えることが重要です。大まかな輪郭や構図を鉛筆で薄く下描きし、その上に少しずつディテールを加えていきます。

 尚、上の作品の下描きは、三分割構図基本線上に、三つのモチーフを主要な三分割線上に配置し、且、三角形の構図で描き進んでいます。

線の細さを調整してディテールを描く

 ディテール(詳細)を描くには、鉛筆の線の細さを自由に調整できることが大切です。鉛筆の芯を鋭く削り、非常に細い線を描くことで、繊細なディテールを表現することができます。

 特に、髪の毛や植物の葉、衣服のシワなど、細かい要素を描き込む際には、この技法が役立ちます。

 逆に、太い濃い線を使った粗い背景を作って、繊細なディテールのあるモチーフを引き立てる手法もあります。

クロスハッチングで細部に陰影を加える

 ディテールを強調するために、クロスハッチングを使って細かい陰影を追加しましょう。交差する線を使って影の濃さや光の反射を表現することで、立体感が増し、ディテールがよりリアルに見えます。また、布地や金属の表面など、質感を出す際にも効果的です。

第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

 上の作品では、画面の一番手前に、この作品の一番濃い6B・8B・10Bのトーンを配置して、その上に画面の一番明るいところを構成することで、中央の一番明るいところが、輝いて見えるほどの効果を得られています。

 このような濃いトーンの色面を構成するためには、クロスハッチングが欠かせません。繰り返し描き込んでいくことで、あなたの望みの濃さを得られるでしょう。

クロスハッチングは、いろいろな色面の構成に役立ちます。範囲が狭い面であっても、縦横斜めの4種類の方向からの線を重なり合わせることで、効果的なトーンを実現できます。

ぼかし道具を使ったグラデーション表現     

 ディテールの描写に深みを加えるためには、ぼかし道具を使ってグラデーションを作る技法は効果的です。ティッシュペーパー及び擦筆や綿棒などを、仕上の際には使うことも検討しましょう。

 鉛筆で描いた線をぼかし道具でぼかすことで、滑らかな陰影を作り出し、リアルなディテールを表現することができます。特に、曲面のあるモチーフや人物の顔及び肩や胸などの微妙な陰影を施す際に、効果を発揮できます。

     灯(あかり)の点(とも)る窓辺の静物 2022 F10 鉛筆画 中山眞治

 上の作品では、ろうそくの灯が室内を照らし出していますが、この中の球体やビンの一部分でも、ぼかし道具としてティッシュペーパーを使って調整しています。

なかやま

曲面の微妙な凹凸のあるモチーフでは、仕上にぼかし技法も検討しましょう。自然なグラデーションがリアルな表現につながるよ!

観察力を高めることが重要

 ディテール(詳細)をしっかり描くためには、モチーフをよく観察することが必要です。

 たとえ小さな部分でも、光の当たり方や影のつき方を細かく観察し、それを作品に反映させることで、ディテールの精度が上がります。モチーフを正確に描くために、観察する時間をしっかりと確保しましょう。

少しずつ描き込むことでリアリティーを追求する

 ディテールを描き込む際には、時間をかけて少しずつ描き進めることが重要です。一度に多くの細部を描こうとせず、少しずつ追加していくことで、バランスの取れた仕上がりになります。

 時間をかけて描写を重ねることで、作品全体に一貫したリアリティーが生まれます。ディテールを細かく描き込むことで、作品は一段とリアルに、そして魅力的になります。そのコツは、大きな要素の描写から徐々に小さな要素の描写へと進むことです。

 焦らず、細部にこだわって丁寧に仕上げることが、鉛筆画の完成度を高めるための鍵です。ただし、あなたの描こうとしている画面上に複数のモチーフがある場合には、あなたが主役や準主役として扱っているモチーフにはしっかりと細密描写しましょう。

 しかし、主役や準主役以外のモチーフには、意図的に「分かる程度の描写」にとどめることで、主役や準主役を引き立てられます。

 あるいは、すべてのモチーフに細密描写をした場合であっても、主役や準主役にはしっかりとハイライトを施す一方で、それ以外のモチーフには「ハイライトを抑えて描く」ことによって、主役や準主役を引き立てることができます。

よくある初心者の失敗を避けるコツ

 鉛筆画を始めたばかりの初心者の人が陥りやすい失敗には、いくつかのパターンがあります。

 これらの失敗を避けることで、スムーズに技術を向上させて、作品のクオリティーを高められます。本章では、よくある初心者の失敗を回避するためのコツを紹介します。

道具の選び方にこだわりすぎない

 初心者の人が陥りがちな失敗の一つに、道具にこだわりすぎることがあります。確かに質の良い鉛筆及びスケッチブックや紙は重要ですが、最初はそれほど高価な道具を揃える必要はありません。

 むしろ、自分の手に馴染む使いやすい道具を選ぶことが大切です。過度な道具選びよりも、まずは練習を重ねて技術を磨くことに集中しましょう。

力を入れすぎない

 鉛筆を強く握りしめて描くと、線が不自然に太くなり、消しゴムで消す際に紙を傷めてしまうこともあります。

 初心者の人は無意識に力を入れがちですが、軽いタッチで描くことで、柔らかく自然な線が描けます。

 練習として、力を抜いた状態で鉛筆を持ち、リラックスして描くことを心がけましょう。

構図を無視しない

 構図を無視して描き始めることは、初心者によく見られる失敗の一つです。作品全体のバランスを考えずに描くと、結果的に不自然な仕上がりになってしまいます。

 あなたが5作品ほど描いて、描くことに慣れてこられましたら、簡単な構図からでよいので、描く前に大まかな構図を決め、あなたの描きたいモチーフをその分割線上に配置していきましょう。モチーフが画面全体にどう配置されるかを考えることは大切です。

細部にこだわりすぎない

 部分的なディテール(詳細)にこだわりすぎて、全体のバランスを崩してしまうこともよくある失敗です。作品の全体像を意識せずに細部を描き込みすぎると、作品が重たく見えることがあります。

 まずは全体を軽く描いてから、徐々にディテールを加えることが大切です。バランスの取れた作品にするために、全体を何度も見直しながら描き進めましょう。

消しゴムの使い方に注意する

 消しゴムを頻繁に使うことも初心者にありがちな失敗です。間違いをその都度すぐに消していると、紙が汚れてきたり、表面が傷んだりすることがあります。

 まずは描いた線を活かして修整を加え、必要があれば軽く消す程度に留めることが重要です。消しゴムを多用せず、失敗を作品の一部として活かす姿勢が上達への近道でもあります。

練習を怠らない

 最も重要なことは、練習を怠らないことです。初心者のうちはすぐに上手く描けるようにはならないことが普通です。そこで、諦めずに続けることが成長につながるのです。

 少しずつ上達を感じられるよう、日々の練習を習慣にしましょう。焦らず、毎日の積み重ねが技術の向上に大きく影響します。

 初心者がよく陥る失敗を避けるためには、基本に忠実に取り組み、焦らずじっくりと技術を磨くことが大切です。これらのコツを意識しながら、鉛筆画を楽しんで描き進めてください。

上達のコツは、毎日たとえ10分でも集中して練習し、週に一度はたっぷりと時間を取ってしっかりと取り組みましょう!

仕上げのテクニックで作品を完成させる

 鉛筆画における仕上げのプロセスは、作品全体の完成度を大きく左右します。

 適切な仕上げを行うことで、作品に深みや細部の精密さが加わり、観てくださる人に強い印象を与えることができます。

 本章では、仕上げのテクニックを駆使して絵を完成させるためのコツを紹介します。

全体のバランスを確認する

 仕上げの段階では、まず作品全体のバランスを確認しましょう。全体のトーンや陰影のバランス、構図の整合性を見直し、不自然な部分がないかをチェックします。

 特に、影の濃さやハイライトの位置を調整することで、作品に立体感やリアリティーが加わります。この段階で作品の全体像が整っているか確認することが重要です。

ディテールを強調する      

 次に、作品の細部に注目して仕上げます。髪の毛や服のしわ、木の葉のディテールなど、細かい部分に焦点を当てることで、作品に深みが増します。

 細部を強調するには、硬めの鉛筆(H系統)を使って鋭い線を描き、細密さを表現します。一方、柔らかい鉛筆(B系統)を使うと、柔らかさや陰影がより繊細に表現できます。

       青木繁記念大賞展 奨励賞 郷愁2001 F100 鉛筆画 中山眞治

 上の作品では、こちらに向かって走ってくるSLの角度にずいぶん苦労しました。それは、まっすぐに走ってくるのでは面白みがないからですが、かといって傾けすぎるとバランスが悪くなります。

 そこで、「もうもう」と煙を吐き出している状態で、かなりのスピード感を出して、且、緩やかなカーブを曲がってこちらへ迫ってくる状態を想定しながら、バランスを取ったところ、この角度が一番落ち着きました。

 この角度のつけ方は筆者のオリジナルであり、後続の車両及び煙と信号機や樹木もすべて別々の画像で、筆者の合成による作品です。実は、このSLの顔は「テレホンカード」を使ったものです。^^

 このように、あなたが描きたい情景がない場合でも、それはあなたの感性でどのようにも作品化させて、ディテールを強調できるということを記憶しておいてください。

なかやま

実際にない風景であっても、いろいろな構成要素を合成することで、あなたの理想の作品に仕上げられるよ!

ハイライトと影の最終調整

 仕上げの段階では、ハイライトと影の最終調整を行います。光が当たる部分に練り消しゴムを使って明るさを加え、影の部分には濃い鉛筆でさらに深みを持たせましょう。

 ハイライトを入れることで、光沢や反射のある物体がよりリアルに見えます。特に金属やガラスのような素材を描く際には、この調整が重要です。

余分な線や汚れの除去

 仕上げの一環として、不要な線や汚れを取り除きます。鉛筆画では、紙の表面に余分な線や指の跡が残ることがあります。

 これを練り消しゴムやプラスチック消しゴムで慎重に取り除くことで、作品全体がきれいに仕上がります。細かい部分をきれいにすることで、プロフェッショナルな印象を与えることができます。

最終確認と微調整

 最後に、全体をもう一度見直し、必要に応じて微調整を行います。特に光と影のバランスや、視覚的な調和が取れているか確認します。

 ここで焦らず、冷静に細かい部分に手を加えることで、作品の完成度がさらに高まります。完成した作品を一度離れて見たり、他の角度から眺めることで、新たな気づきが得られることもあります。

 これらの仕上げのテクニックを使いこなすことで、鉛筆画にリアルさと深みを加え、完成度の高い作品に仕上げることができます。

なかやま

作品は、描き始め及び描いている途中や、最後にも離れて観てみることで、修整点が見えてきます。画面に近い制作時の視点から離れることで、作品全体のバランスを確認できるのです。

まとめ

 鉛筆画は、基本的な技法と適切な道具を使えば、初心者の人でも簡単に始められます。リアルな表現を追求するためには、いくつかのステップを踏みながら、陰影や質感を上手に描き分けることが重要です。以下に、鉛筆画を描く7つの手順を箇条書きでまとめました。

1 道具選びの基本:H系統とB系統の鉛筆を使い分け、適切な消しゴムやブレンディングツール(ぼかし道具)を揃えることが成功のカギです。

2 簡単な形から始める:物体をシンプルな形に分解し、立体感を意識して描くことで、描画の基礎を固めましょう。

3 陰影を効果的に使う:光源の位置を把握し、濃淡を幅広く使うことで、リアルな立体感を表現します。グラデーションやハイライトを駆使して、より自然な陰影を作り出しましょう。

4 質感を描き分ける:鉛筆の硬さや持ち方を調整することで、異なる素材の質感をリアルに描き分けることができます。ブレンディング(ぼかし技法)を活用して、柔らかさや滑らかさを強調することもポイントです。

5 ディテール描き込むテクニック:形状を正確に捉えるための下描きでは、線の細さを調整したり、クロスハッチングで細部に陰影を与えながら、ティッシュペーパー及び擦筆や綿棒を使ったグラデーションも施しながら、観察力を高めて、少しずつ描き込むことでリアリティーを追求できます。

6 よくある初心者の失敗を避けるコツ:道具の選び方にこだわりすぎない、力を入れすぎない、構図を無視しない、細部にこだわりすぎない、消しゴムの使い方に注意する、練習を怠らない。

7 仕上げで完成度を高める:最後に、作品全体のバランスを確認し、細部やハイライト、陰影の調整を行うことで、プロフェッショナルな仕上がりを目指しましょう。余分な線や汚れを取り除き、作品全体をきれいに整えることが大切です。

 鉛筆画の描き方をマスターするためには、これらの基本をしっかり押さえ、練習を重ねることが必要です。焦らずに段階を追ったステップを踏むことで、初心者の人でも短期間で上達し、リアルな表現力を身につけることができます。

 ではまた!あなたの未来を応援しています。